2003年の映画評



ジョゼと虎と魚たち (2003-12/31)
リアルな人間の本質、特に恋愛に関する欲を描いた作品だが、決して泥臭くはない。
むしろキレイに魅せる。それは犬童一心のセンスが良いからで、彼の監督作品はハズレが無い。
切なくて、心が痛み、涙が溢れだす。でも、その涙は心を浄化することはなく、
観たあと息苦しい気持ちになる。絵空事が絵空事に終わらず、観る者の実感を如実に写し出す。
どこにでもある、誰にもある、恋愛における自分勝手な欲望を具体化したストーリー。
この映画を観て、普段は意識しない自己の奥深い内面を懐疑するか、
あるいは美化した思い出を思い返して郷愁するに止まるか、それは人それぞれ。
いろんなことを考えてしまう作品だが、特に重たいテーマを観客に投げ掛けてる訳ではない。
ましてや意図的に問題提議する説教臭い作風にもなっていないのは、
再記するが、犬童一心監督のセンスが良いからです。そして追記、池脇千鶴は無敵!


東京ゴッドファーザーズ (2003-12/24)
今年、最も批評し難い作品です。苦渋の選択。
素晴らしい!と絶賛することも可。逆に酷評も可。
そういう意味では誰もが観る価値あり、と言うか、観てもらいたい。
“賛否両論な映画”はよくあるが、そういうレッテルでもない。
巧い!と誰もが口を揃えて言うだろう。特にストーリーの紡ぎ方は絶妙。
実写ではなく、アニメだからこそのクオリティーも観ることができる。
気持ち良いファンタジーに酔い痴れ、笑えるし、悲しく切ない想いもある。
でも、なんだろう?この印象の薄さは?心に残るものが何も無いと言ってもいい。
誰もが住みたがる夢のような幸せの国なのに、そこには誰も住人が居ない...とか、
生理学的に人間が最も安らぐ形状に作られた温泉なのに、湯がぬる過ぎる...みたいな。


最後の恋、初めての恋 (2003-12/18)
先に言っておきます。明らかに的外れな文章を書きます。
メロメロメロンちゃんのメロンな所をメロメロメロメロ〜(ラーメンズのネタ)
みたいな気持ちになる映画ですぅ。だって、ドン・ジェが可愛い!とろけちゃいますぅ。
カタコトの日本語を喋るドン・ジェが、こりゃまた可愛いんだなぁ。
ああ、キュートでチャーミングなドン・ジェを堪能できただけで大満足です。
あまりにも私的?偏ったコメント?では映画の内容について...
登場人物、誰に感情移入しても、悲しくて切なくて胸が痛みます。ただ、どんなに悲しくても、
スクリーン上では結局、美男美女の恋愛なんだぁと思うと、自己投影しきれず距離を感じる。
それでも、シュー・ジンレイ演じるミン、最後のセリフは確実に泣ける。ハンカチ必需。
『八月のクリスマス』と重なって見える印象があるのは否めないかなぁ。


シービスケット (2003-12/16) 
シービスケットと言う競走馬を通して、男三人が失意の底から再生する話。
と、とてつもなくキング・オブ・ベタな話なんだけど、これが実話なんだよねぇ。
大恐慌のアメリカに夢と希望をもたらした本当の話なんだから、ベタでも仕方ないかぁ。
競馬の話だから、普段、競馬に馴染みがない人は親近感が湧かないかな?
いや、分かり易いストーリーだから、誰でも感動するのかな?
“全米が泣いた”とか“感動”とか、そんな売り文句はともかく、この映画の見所は他にある。
難しい騎手役を全うするトビー・マグワイア。彼は孤独な役が似合い過ぎる。
それと、CGを使わずに、走る馬群の中を撮影する迫力ある映像。
例えば、この映画をウディ・アレンの『カメレオンマン』みたいな作りにしたら、
もっと面白いかも!って、それじゃ趣旨が違うかぁ(^^;


グループ魂のでんきまむし (2003-12/11)
まるで映研サークルが撮ったようなチープな作り。
そしてアナーキーな内容。イジメ、ゲロ吐き、血みどろ、人肉喰い...etc.
例えば、グループ魂ファンのお姉ちゃんがこっそり隠し持ってる、
このビデオを小学生の弟が勝手に観たら確実にトラウマが残る。
真摯に観たらブルー必至。だからグループ魂ファン以外は観ない方が懸命。
逆にファンは観るべし。グループ魂の“笑い”が分かる人にとってはたまらなく面白い!
取って付けたような妙な笑いがツボを通激。
笑えるが、結構ツライ悲しい話です。でも泣いちゃダメ。笑う映画なのです。
クドカン自身が脚本を書いたグループ魂の映画を観てみたいなぁ。
※1999年作品。PLANET studyo plus oneにて上映(2003.12)。


コール (2003-12/9)
な、な、なんだこりゃ?新手の宣伝詐欺映画かぁ!?
正月映画のポジションで公開される犯罪サスペンス、
ならば巧妙な内容を期待するのが当然でしょう。
なのに、なぜ?こんなにも陳腐なバカスリラーなの?
犯罪に隠された本当の動機にびっくり?この程度の真相で驚かそうとする脚本にびっくり!
過去に何度も完全犯罪を成功させた犯人グループ?そんな実績が嘘みたいなマヌケな手口!
そして最後は暴走アクションでめちゃくちゃな展開。迫力的なシーンならなんでもありってかぁ?
妖しさ満開セロンと変態ベーコンの代名詞的作品として歴史に残るのは必至。
ただし、ダコタちゃんは最高!自分の可愛さを知ってらっしゃる。演技力抜群。
ダコタちゃんを観るためにこの映画は存在価値あり。


チャーリーと14人のキッズ (2003-12/4)
この映画のタイトルって何だっけ?
エディ・マーフィ主演『つまらない映画なので料金返します』だっけ?
違う違う、『センスのセの字も感じられません』かぁ?(^^;
とにかく、ベタ過ぎる程ベタなストーリーと、ベタな笑いの見本みたいな作品。
ベタな作りでもいいんだけど、ベタでも、演出やタイミング、見せ方で面白くもなるんだよ。
この作品は、そんなセンスが全くない!楽しめない!笑えない!観る価値なし!
例えどんなに憎たらしいガキでも、“かわいい〜!”とか思える、
そんな子供好きな人だけが観ればいいんじゃない?
あっ、最後にひとつだけ、この映画を褒めておきます。
上映時間(=苦痛時間)が90分という短さで良かったですぅ。


river (2003-12/1)
鈴井さん、シリアスで悲しい話を撮りましたねぇ。サスペンスですねぇ。
誰もがひとりひとり背負ってる人生の悲しみ、弱みがあり、
それを背景に描きつつ、謎が謎呼ぶストーリー展開、そして意外なオチ...
と、鈴井さんがやりたいことは分かるんだけど、なんだかねぇ、
取って付けた様なセリフと演出。巧さが感じられない。
こういう映画を本気で作りたくて作ったというより、例えば、
出演陣と予算と日数を与えられて、無理矢理作らされた?って匂いがする。
だからハッキリ言っちゃえば、「水曜どうでしょう」ファン以外が観たら、つまんないだろう。
逆に、ファンにとってはヨダレもので嬉しい作品です。
今後もこのメンバーで作品を撮ってもらいたいものです。次こそ期待してます。


ラスト・サムライ (2003-11/27)
本作のトム・クルーズに限らず、『キル・ビル』のタランティーノにも言えることだが、
自分が好きなもの、惹かれたものへの敬意の表し方が、実に誠意に満ちている。
上辺だけでなく、心の込もった尊敬の念があれば、愛は成就する。
そんな真摯な姿勢が本作には感じられる。作品として見事に成就した形なのだ。
ハリウッドが異文化を描いた映画の違和感は全く無い。
しかも、サムライ映画という形式の出来だけに頼らず、ストーリーの芯も堅実だ。
ハリウッドが日本を撮ったことへの喜びではなく、
これだけの愛情が注がれた作品の完成に、惜しみなく拍手を贈りたい。
渡辺謙、真田広之の格好良さは今までの日本映画の比じゃないと言ってもいいだろう。
素晴らしいセンスの良質な映画を観ることができて感動です。


きょうのできごと (2003-11/24)
良くできた映画、巧い映画、面白い映画...と、誰かにオススメしたい作品ではない。
“好きなタイプの映画”と言うのが一番しっくりする。こういう作品、好きです。
どういう作品かと言うと、大学生くらいの若者数人の何気ない一日のエピソード。
特に大きな出来事もなく、ささやかな日常を淡々と描く。
そんなささやかな日常が、実は掛けがえなく愛しい。
何気ない内容を映画で描くことこそ難しい。そんな目に見えない高いハードルを、
センスの良さで余裕のハイジャンピングする行定監督。行定作品にハズレなし!
妻夫木聡、田中麗奈などの役者陣も魅力的です。
いつも身近に居る人だから、ありがたさを忘れがちだが、
そんな人こそ実は大切な存在!そんな感じで“大切な映画”だと言いたい。


ブルース・オールマイティ (2003-11/19)
たま〜にあるよね。予告編の方が面白い映画(^^;
逆に言うと、三分程の予告編を無理矢理二時間に引き延ばした感じ?
笑えて泣ける映画、最高!ジム・キャリーもお得意路線で完璧!
でも脚本の木目が細やかじゃない。せっかくの面白い設定を活かしきれてない。
笑いと涙、どちらの要素も振り幅が最大限であればある程、
そのどちらもが効果的に惹き立ってくるのに、
本作はとても中途半端に終始している感が否めない。残念無念ギリアウト!
煮込みきれてない肉じゃがを食べるみたいな物足りなさ。
もっと火を通せば美味しくなるのになぁ。
でも、肉じゃがの作り方自体はレシピ通りで悪くないですぅ。


ファインディング・ニモ (2003-11/15)
劇中ずっと、カクレクマノミの父マーリンは息子ニモを探している。
一方、僕は観賞中ずっと、本作の“おもしろさ”を探している。
そして、マーリンはニモの居場所を見つけだす。めでたし、めでたし。
でも、僕は“おもしろさ”を見つけだせなかった。がっかり、がっかり。
ピクサー作品は映像美が素晴らしいだけじゃなく、ストーリー演出のセンスも良い。
でも本作は何?一本調子でインパクトの欠けたストーリー展開。
しかも、画的にも変化が乏しい。そりゃ海ばっかだもん。ずっと真っ青(^^;
とは言え、ピクサー作品だから腐っても鯛。そこら辺のつまらない映画とは格が違う。
間違いなく健全安全娯楽作でしょう。平均点は楽にクリアしてます。
クラゲの映像には思わず目を奪われました。


マトリックス レボリューションズ (2003-11/12)
“期待を裏切る”には良い意味と悪い意味がある。
大胆に予想外で驚かされる場合と消化不良な場合。
本作は前者?後者?それは観る者の捉え方次第。
明らかなのは、前二作品とは趣きが違うということ。
大きなストーリーのうねりは無く、終末へのプロセスを静かに見守るだけ。
いや勿論、戦闘シーン等CG映像の迫力は圧巻!
ハッピーエンドかアンハッピーエンドか、解釈に個人差はあれど、
そんな賛否も含め、四年間、映画ファンを楽しませてくれた、
ウォシャウスキー兄弟のセンスは拍手もの。エンターテイメントです。
解釈次第で面白くもつまらなくもなる映画、感情と想像力のフル回転必至。


アイデンティティー (2003-11/1)
いつも利用する近所の本屋。通勤前に立ち寄ってみたら、
昨夜は確かにあったはずの本屋が牛丼屋になってる。
不思議に思って入ってみると、「今日も遅刻か?減給するぞ」と言われ、
なぜか自分が牛丼屋の従業員になってしまっている。
そ、そ、そんなのあり得ない!想像の範疇を逸脱してる!
と、この映画を例えるとこんな感じ。例え、いっぱいいっぱいです(^^;
ベタな設定の推理系サスペンスと侮るべからず。衝撃的な展開。
二つの“セオリー違反”に驚かされてしまうが、説得力があって巧妙。
広げ過ぎた風呂敷も、こんな畳み方があったんですねぇ。
今迄ありそうでなかったタイプの秀作。でも、笑ってしまいました。


福耳 (2003-10/30)
冷静さを保持して先に言います。野暮ったい映画です。
セリフも画も演出も、昭和の古い匂いがします。
老人の幽霊が青年にとり憑き...と、設定はポップだが、
テーマやストーリー展開は昔ながらのベタな作品。
妙に端役陣が豪華なのも興醒めする要因だし、
脚本家としてはセンス良いクドカンも、役者の魅力はゼロに近い。
でも、でも、個人的にハマりました。笑いました。泣きました。
野暮ったいテーマも大好きです。心が浄化されました。
心に残るセリフが数あり、薄れかけていた勇気や自信が再興しました。
忘れられない大切な作品です。逆転ホームラン!


ラブストーリー (2003-10/23)
クァク・ジョエン監督の新作!ならば観ずにはいられないでしょう。
しかも、ピュアでシンプルな古典的恋愛映画なの!?そりゃ観るべき。
が、しかし、期待したものと少し違う味付けの料理が出されちゃったかなぁ(^^;
決して不味い訳ではない。確かに美味い。でも、この料理がシンプルか?
それなら最初から“凝った料理です”と言ってよね...って感じ。
何を期待するのか心構えが違ってくるんだから。
最後のオチが、いかにも映画的決着。もっとシンプルな作りを希望。
とかなんとか言っても、無垢な登場人物が切なくて泣ける。
後半、悲しいエピソードの連続にハンカチは必須。
まあ、ハッキリ言っちゃうと“昼メロ”青春版なんですけど。


キル・ビル (2003-10/18)
タランティーノ、●△※♪○¥★#◎◆♂□$▼〒♀☆÷×■!?
おおっ、言葉になってない?そのくらい衝撃的ってこと。
めちゃ格好良くて、世界一イケてる...B級映画!
バカにしてる訳じゃありません。ホメてます。完全にホメてます。
脚本も構成も編集も見事。スタイリッシュでありながら遊び感覚も満載。
何より話が分かり易いのが良い。でも、いろんな要素が詰め込まれていて、
それらを全て把握するのが難しいのも逆に良い。
殺傷シーンの残忍さも、戦争映画のそれとは違って、良い意味で無機質。
タランティーノは本当に日本が好きなんだなぁ。
自分の好きなモノを巧く活かして作品に昇華させる彼の力量に拍手です。


ティアーズ・オブ・ザ・サン (2003-10/15)
戦争の残酷さ、愚かさを描いた映画は常に作られるべきだろう。
例えそれが新作としての鮮やかな要素や斬新さに欠けているとしても。
そういう意味で、本作は数ある戦争映画の単なる一本に過ぎない。
登場人物の心境の変化や、戦争に対する疑念、
それらをセリフとして多く語らず、淡々とエピソードだけを映し出す。
そのエピソードも多数ではなく、ただひとつの任務遂行。
何ひとつ目新しさを感じないタイプの映画です。
特筆すべきことと言えば、居場所を勘違いしてるような、
居心地の悪いキャスティング二人。
ブルース・ウィルスとモニカ・ベルッチ...なんか違うような気がする(^^;


DUEL 〜 2LDK/荒神 (2003-10/9)
『JamFilms』堤版と北村版のロングバージョンって感じ。
堤、北村ファンには、よだれジュルジュルものでしょう。
北村監督のセンス、チャンバラを新感覚で撮るってのは、かなり難しいこと。
でも、それを実現してるんだからスゴイね。格好良い!
ただ、僕は堤監督の作風が大好きなので、『2LDK』の方が勝ち。
小池栄子と野波麻帆を遣って、やり放題加減全開なのが圧巻!
しかも悲しい話なんだな実は。堤ブラックマジック!
『2LDK』も『荒神』も、とにかくメインの役者陣の演技に圧倒される。
キャスティングも監督のセンスだからね。センス良いです。
映画代1800円払って、素晴らしい作品二つ観れるんだから贅沢。


インファナル・アフェア (2003-9/30)
“マフィアと警察”というベタな基本設定でありながら、
勧善懲悪から最も離れた人間ドラマを描いてるので、
芯の太い、深い内容で、全編、緊張感を持続しながら観れてしまう。
善と悪の葛藤、不確実な自己認識...
そんな人間の本質をメインに据えつつ、
ストーリーの面でも、単なる犯罪推理ものではなく、
上質のサスペンスとして成立しているところが巧い。
敢えて例えるなら、個人の内面を、よりリアルに描いた『フェイスオフ』。
この完成度をハリウッドが忠実に映画化できるか否か、それも楽しみなところ。
続編や序章版も製作されるらしいが、内容的にコケないことを願う。


恋は邪魔者 (2003-9/25)
最高!観終わって心の中でスタンディングオベーション。大喝采!
嬉しくて嬉しくて至福の時を感じて、涙が止まりませ〜ん。
全編ずっと流れてるジャズ、虹のような色彩、ファッション、演出、セット...
全てが60年代を粋に再構築。オシャレ〜!
しかも、映像演出が素晴らしいだけでなく、脚本が実に巧妙。テンポも軽妙。
画面を観てるだけでも楽しいのに、ストーリーは驚きの展開。
それでいて、レニーとユアンの豪華キャスティング。パ、パラダイスだぁ!
一粒で何度おいしい状態なの?ハッピーに押し潰されるぅ(^^;
ベタなラブコメか?と油断して観なかったら、確実に後悔します。
2003年ベスト1候補のエンターテイメント作品です。太鼓判!


トゥームレイダー2 (2003-9/24)
こういうタイプの作品に何を求めるか?ストーリーの巧さ?じゃないよね。
勿論アクションシーンです。迫力あるアクション映像を観て気分爽快!
そんな唯一の期待どころが暖簾に腕押し状態。
アクションの連続連続で、怒濤の興奮を味わいたいのに、
やたらと魅力ないシーンが多い。説明くさいセリフも多くてげんなり。
CG処理であらゆる映像演出が可能なのだから、
あとは脚本や監督のセンスで魅せることが最重要。
本作はそういうソフトの部分が物足りない。
まあ、相変わらずソウルフルな顔のアンジェリーナさんを堪能しましょう(^^;
ヤン・デ・ボンは映画を作る度にパワーダウンしてくなぁ。


マッチスティック・メン (2003-9/18)
退屈なシーンが全くない。楽しくて切なくて、とても心地好い。
詐欺犯罪、父娘のコミュニケーション、潔癖症、いろんな要素があり、
それが全編オシャレな演出で構築されている。
単なる父娘話なら、お涙頂戴系に終始しがちだが、
主人公が潔癖症の詐欺師ってことで、楽しさ満載。
冒頭からずっと笑顔で観ちゃいます。そして最後は...。
リドリー・スコットにしては珍しく軽快でコミカルな作品。
メインキャスト三人の魅力もたっぷり堪能できますぅ。
良質な映画を観ると、適温適度な快晴の空に包まれて、
雲の上で居眠りしたような爽快感を感じてしまうなぁ。


シモーヌ (2003-9/11)
現実世界の中で非日常を描くとアナーキーなものになるが、
アンドリュー・ニコルが書く話は非現実を日常化するので面白い。
設定自体、大前提が夢のような話で、ある意味ファンタジー。
ただ、非現実的な日常を映像化するのは難しく、
本作でも、CG女優をコンピューターで扱う場面は決して巧いとは言えない。
昭和のSF?B級映画?それくらいチープ。
でも、その点は目をつぶって許そう...と思えるくらい全編が楽しい。
非現実世界の住人が見せる反応を眺めるだけで笑える。爆笑もの。
アル・パチーノが主演で画に箔が付いてるのもポイントアップだし、
ウィノナも一粒で二度美味しい状態の役柄で嬉しさ倍増。


バリスティック (2003-9/5)
でたでたぁ!なんで今時こんな映画を作るの?的な作品。
脚本が特に下手な訳でもなく、アクションシーンが陳腐な訳でもない。
でも取り立てて突出する何かがある訳でもない。
十数年前なら高く評価されたかも知れないけど、
なんで今時こんな映画を作ろうと思うの?
年末の道路工事みたく、ノルマ調整的な意味ですか?(^^;
例えば、部屋のテレビで本作が流れてるとして、
何か別の用事をしながら、アクションシーンだけチラチラ観たりすると、
なんか面白い映画じゃん!って思えるかもね。
三人でチャリエン!ならともかく、ルーシー・リュー主演は地味。


フォーンブース (2003-9/3)
意識してるしてないに関わらず、大人は誰でも自分を脚色している。
その“作られた自分のキャラ”を暴かれ、素の自分が曝け出るのって、
とてもツライ。たまらなく不安にもなる。
でも、それと同時に、重荷になっていた余計なものが削ぎ落とされ、
本当に大切なことだけが残り、逆に楽になるかも知れない。
そんな人間の本質を描きつつも、そこに辿り着くまでの展開が、
シンプルな設定なのに上質のサスペンスとして成立している。
脚本の段階で勝利!な作品。セリフも映像演出も無駄がない。
全編ずっと続く緊迫感と、80分の上映時間が丁度心地よい。
核となるコリン・ファレルの表現力も見所のひとつ。


ロボコン (2003-9/2)
実は、僕はロボットコンテストが好きで、毎年テレビで観てます。
だから劇中に登場する数々のマシーンに馴染みがあり、親近感が湧く。
しかも、映画的に盛り上がる試合内容を演出してあるので、
ロボコンファンは手に汗握って楽しめる作品でしょう。
逆にロボコンを嫌いな人は観ない方が良いです。
とは言え、ロボコンを知らない人でも単純に楽しめる、
最大公約数的なストーリー展開になってます。
そういう意味では、あまりにもベタで浅い浅い青春ドラマです。
あと、何より注目すべきなのは主演の長澤まさみ。
まだまだ演技が上手いとは言えないが、広末、奥菜の匂いを感じた。


コンフェッション (2003-8/31)
クルーニー、カウフマン、サム・ロックウェル、彼等に喝采の拍手を贈りたい。
何もかもが素晴らしい。映画はこのくらいの見応えがないとね。
まず初監督クルーニーのセンスが良い。映像演出が憎い!小粋!
仲がいいだけあって、良い意味でソダーバーグ風。
そんなエンターテイメントな演出が出来るのも、
そもそもカウフマンの脚本が巧いからでしょう。見事な脚色!
そしてサム・ロックウェルのやり過ぎず、控え過ぎずな好演が、
映画をより楽しくする要素になってるのも間違いない。
ただ、ソダーバーグ&クルーニー作品の決まりきった出演陣には少し興醒め。
でも、何度でも観て楽しみたい映画ですぅ。


ドラゴンヘッド (2003-8/26)
この作品をコンコンとノックしたら、カラカラカラッポと音がする(^^;
ウズベキスタンに作り上げた壮大なセットは迫力あって称賛すべきだが、
とにかく内容が薄い。ドラマが無い。抑揚も無い。
原作を無理矢理コンパクトに端折ったような展開なので、
最初から最後まで低いテンションで、テンポも何もあったもんじゃない。
登場人物のキャラ背景も描けてないに等しい。
二時間ずっと退屈で、観終えて残るものと言えば、
座りっぱなしで疲れた腰の痛さと、SAYAKAの妙な声の高さだけ。
この作品“絶望という未来”ってコピーだけど、
正確には“絶望という映画”なんだろうなぁ。


アダプテーション (2003-8/21)
「何なんだ?スゴい!」と映画を観て思ったから、
評の書き出しにしよう…と思ったから、それを冒頭に書こう…と思ったから、
それを冒頭に書こう…と思ったから、それを冒頭に…(^^;
↑そんな映画なんですぅ。まるでエッシャーの絵のような映画。
チャーリー・カウフマンのセンスは素晴らしい!天晴れ!喝采!
こんなの映画化不可能状態な脚本じゃない?
それを巧妙に映像化したスパイク・ジョーンズもカッチョイイ。
両者の神業を堪能する作品でしょう。難易度Cのウルトラ技!
爆笑するような映画ではないが、迷路に入り込んだら笑いが止まらない。
でも、こんなメタフィジックな映画は一般ウケしないんだろうなぁ。


ライフ・イズ・ジャーニー (2003-8/12)
脚本・監督・出演、田辺誠一による四話オムニバス実験的短編。
“実験”と言えば、手塚治虫の実験アニメを思い出すが、
本作は手塚ほどの衝撃度はなく、真新しい手法を試みてる訳でもない。
勿論、ストーリーや設定に幾つかのアイディアが見受けられるが、
特に驚くほどではない。“ベタな斬新さ”という感じ。
どうせなら、もっと理解不能な領域にまで手を伸ばしてほしいかなぁ。
そういう意味では、アナーキーな発想を表現してる訳でもないので、
誰が観ても、それなりに楽しめる作品だと言える。
市川実日子、つぐみ、hitomi、近藤公園、小林賢太郎など、
魅力的で気になるキャスティングは田辺誠一のセンス良いチョイス!


10日間で男を上手にフル方法 (2003-8/7)
小腹がすいただけなので、食事をする程でもなく、
大好きな板チョコ一枚を食べて、とりあえずは満足!みたいな作品。
10日間で...というより3日間で内容を忘れてしまう程度の軽〜い話だけど、
主人公が男にフラレる目的で行動するネタが最高。
もうこれはズルい!ってくらい笑える。全ネタ完笑。
ありきたりな結末はあっさりしてて物足りない感が拭えないが、
とにかく、おバカネタの数々は間違いなく大爆笑。
この映画ではケイト・ハドソンが一番得してるね。
クールで仕事も出来る役柄でありながら、おバカっぷりも披露。
一粒で二度おいしい状態の彼女の魅力をたっぷり堪能できます。


ターミネーター3 (2003-7/31)
こういう作品の続編って、CG技術やアクションシーンは、
前作より明らかに迫力あるものに仕上がっている。
でも何年も前に作られたストーリー設定が、
当時は斬新だったが今では味気ない…的イメージに陥る場合が多い。
という訳で、三作目は作らんでもよかったんちゃうの?
マシーン・シュワちゃんは年齢的に無理があり、
オバさん化気味のクレア・デーンズは華がなく、
画面に違和感が漂いまくっているのは否めない。
それと、笑わせようとするシーンがあるが、この映画にそんなもの要らない。
でも、トイレで闘うシーンは意味不明で大爆笑。


パイレーツ・オブ・カリビアン 呪われた海賊たち (2003-7/27)
大海原を行く帆船、まるで絵画を見るような優雅さ。
そして壮大なセットの凄さに圧倒され、CGアクションには心奪われる。
ブラッカイマー製作の映画は、余計な期待はせず、斜めから観ることを放棄し、
遊園地のアトラクションに乗るような気持ちで観賞すれば、
充分に楽しめる。ジェットコースターで両手を上げるみたいな楽しさ。
それでいいじゃん。そこにココロがなくても、娯楽モノとして成立してるよ。
拍手、拍手、パチパチパチ(ココロのない拍手)。
単純明快な話で、お気軽に楽しめる作品だが、とにかく長いッ!しんどい。
前半の展開は早いが、中盤から、やや胃にもたれる感じ(^^;
ひとつハッキリ言えるのは、ジョニー・デップの三枚目海賊が見所でしょう。


踊る大捜査線2 (2003-7/22)
テレビ以来のファンだから、映画版内容の善し悪しに関わらず、
新作!と言うだけで嬉しい。つまらない訳がない。
楽しい二時間を満喫いたしました...と言うのも本音だが、
実は、『踊る』シリーズの限界もフツフツ感じた作品でした。
登場人物のキャラと人間関係の設定だけを頼りにしていて、
ストーリー展開の工夫が御座なり。
事件はインパクトに欠け、上下関係を越えた友情シーンはお決まり、
所轄の不遇さを熱く訴えるパターンも相変わらず。
もう『踊る』に新しい要素は期待できない。新鮮味ゼロ。
更に続編を観たいと思いつつも、もう完結した方がいいとも感じてしまう。


トーク・トゥ・ハー (2003-7/17)
他に類を見ないアルモドバル監督の独特なセンスが高く評価されるのは納得。
でも決して、一般受けする監督ではない。好き嫌いが両極端に分かれる。
ミーハー感覚で気軽に観ると大ケガしてしまう映画です(^^;
アルモドバルの作風を敢えて低俗な言い方で表現するなら、
“奇想天外な変態映画”なのだ。
もちろん、様々なタイプの人物を描き、文脈を絡ませる手法は巧いし、
そこにある愛の世界観も、登場人物への感情移入さえ成功すれば、
痛い程ピュアに感じて、涙なしには観てられないだろう。
自分の中にある密かなアブノーマルさを認めてる人は必見。
劇中の短編映画『縮みゆく恋人』は最高!でもキワモノ。


ゲロッパ! (2003-7/3)
「おもろなかったら金返す」と豪語した井筒監督、
確かに金は返さないでいい作品です。おもしろかったです。
てか、JBを誘拐するって設定自体キテレツ!ズルイです。
しかも役者陣みんなハイテンションだから、何をやっても楽しい。
ただ、どんな端役も井筒的人脈で、有名人が次々と出てくるのが、
ストーリーの邪魔って言うか、まるでバラエティ番組のテイスト。
そんな要素も“豪華!”と解釈してしまえば、
エンターテイメントの必須条件だとも思えるかなぁ。
ストーリー性がしっかりした二時間の上品で下品なコント!
そんな印象の作品ですね。音楽に工夫が欲しかったけどね(^^;


ミニミニ大作戦 (2003-6/30)
お洒落で痛快な泥棒劇と言えば「ルパン三世」でしょう。
マーク・ウォルバーグ扮するルパンのもとに次元と五右衛門が集まり、
綿密な計画を練って金塊を盗みますぅ...って映画(^^;
峰不二子がシャーリーズ・セロン。う〜ん最高!
あるいは、イタリア映画「黄金の七人」アクション完備の現代版って感じ。
ただし、お洒落度とテンポがイマイチで、
ストーリー展開がノルマ消化的な印象を受けるのが残念。
例えるなら、昼ゴハンと夜ゴハンのインターバルに、
腹の足しで食べる間食にしては美味い!贅沢!
逆に言えば、ディナーとしては物足りないかも。


デッドコースター (2003-6/27)
痛い痛い痛い!ホラー映画と言うより、アウチ系?デス系?
次々と見せる残虐的でショッキングな死。
しかもリアルだからタチが悪い。スクリーン凝視不可状態。
実は「ファイナル・デスティネーション」の続編だから、
パターンは前作と全く同じ。リメイクって感じ。
ただ、やたらと前作の話がフリとして登場するので、
続編として巧く成立してるって言うか、
いや逆にそんな巧さ必要ないじゃ〜ん!とも思う。
とにかく痛い痛いシーンを観て、たっぷり冷汗をかきましょう。
おばけモノの怖さとは違う恐怖です。


トゥー・ウィークス・ノーティス (2003-6/27)
有名どころ共演の成就系ラブコメ作品って、わりと定期的に製作される。
前半、仲が悪かったり、すれ違うばかりの男女が、
最終的には結ばれる...というのが王道のパターン。
だから、このジャンルの映画に特異な展開を求めてはいけない。
シーンやセリフに少しばかりセンスの良さがあったり、
あとは役者のキャラ設定を楽しむことができればOK!
そういう意味では、製作も兼ねてるサンドラの、
“あんたの歳でこの映画はないんじゃないの?”
という呆れて物も言えない的なポイントで観賞すれば、
かなり楽しめます。笑えます(^^;


マイ・ビッグ・ファット・ウェディング (2003-6/26)
例えば、マクドナルドの新店舗が開店したとする。
悪い立地条件にも関わらず大盛況で、行列の毎日。
他店舗と異なる魅力が何かあるはず。そこだけの新メニュー?
あるいは味が違う?特別な内装?期待大で店に行ってみる。
そしたら別に変わったこともなく、通常のマクドナルド。
がっかり。繁盛してる理由が分からない...そんな感じの作品でした(^^;
口コミで大ヒットした低予算インディペンデント映画だから、
他の成就系ラブコメとはひと味違うんだろなぁと思っていたのに、
ありがちなベタなストーリー展開で、描き方も浅い。
ベタはベタなりに笑えるシーン豊富だけどね。


チャーリーズ・エンジェル フルスロットル (2003-6/19)
おいしい所だけをテンポ良く繋ぎ合わせるのが予告編。
そんな予告編の1時間40分バージョンを観たような感覚。
つまり、見所満載。痛快!爽快!デミ妖怪?(^^;
寿司屋に例えるなら、大トロばっかり連発で食べるみたいな。
アクションシーンが面白いのは当たり前で、それ以外も楽し過ぎる。
バーゲンセール期間外も常に安くて、お求め易い店って感じ?
とにかく全編、笑顔で観れてしまう贅沢な娯楽作品。
ただし、ストーリー展開を堪能する充実度は満たされません。
ストーリーあったっけ?的に、何も残らない何も残さない映画。
キャメロン・ディアスはやっぱりコメディ&セクシー路線がイチバン!


二重スパイ (2003-6/10)
政治的背景をベースにした韓国版の昼メロ。
全編テンションの低い緊迫感と、抑揚のない展開で引っ張り、
予想範囲内の結末で幕を閉じる。
タイトルから安易に推測可能なストーリーそのままの作品。
とは言っても、韓国映画は他国では描けない政治的背景があるので、
それを観るだけでも価値があると言える。
少なくとも日本で諜報員スパイもの映画を作ったら、
嘘っぽさ最高峰のB級感で観てられない。
韓国映画の醍醐味を把握した上で本作を観ると、
それなりのおもしろさを見出だせる。


恋愛寫眞 (2003-5/28)
あれれれれぇ?これって本当に堤幸彦作品?ぬかに釘って感じ。
スタイリッシュな映像演出と小粋で不親切な笑い...
それが堤映画!という期待も虚しく砕け散り、
かなりB級的な出来だと思わずにはいられない。
誰かが堤演出を真似て作った映画かぁ?という印象を受ける。
ストーリー的、セリフ的には好きな箇所が幾つかあったが、
でもラブストーリーとサスペンスの融合が見事!とはお世辞でも言えない。
高く評価する唯一のポイントは広末涼子。
昔のピュアなイメージが薄れてきた今ぐらいの彼女が、
女優としてとっても良いのではないだろうか。


マトリックス リローデッド (2003-5/22)
大爆笑!「マトリックス」ってコメディ?ギャグ映画?
...バカにしてる訳ではありません。それだけスゴイ!ってこと。
スゴ過ぎて瞳孔開きっぱなし、目が点、まばたき不能。もう笑うしかない。
CG系の映画って、大雑把に言うと、タイプが二つに分けられる。
とにかく映像が見せたくて、ストーリーは申し訳程度の映像先行型。
複雑な空想物語を描くために映像技術を駆使するストーリー先行型。
「マトリックス」は後者気味だが、どちらのカテゴリーにも当てはまると言える。
だから観応え充分。圧巻!観どころ金太郎アメ状態。
ただし、話的には完結編へと向かうための繋ぎっぽい印象は否めない。
それでも、セリフひとつひとつ克明に把握しながら観ないと置いてかれるかも。


愛してる、愛してない... (2003-5/19)
オドレイ・トトゥは「アメリ」の次の主演作として、
敢えて意図的に本作を選んだのだろうか?
だとしたら、オドレイの狙いは巧妙で強かだと言える。
「アメリ」と似たイメージキャラを持続させつつ、それでいて、
ある意味「アメリ」と真逆の内容でイメージを変貌させる。
“周囲を幸せにする妄想系アメリ”に対して、
本作は“周囲を不幸にする妄想系ヒロイン”の決定版(^^;
ベタな不倫ドラマを描く前半の45分間、つまらない映画だと思う。
しかし後半、サイコスリラー的に真相が明かされていく。
デュアルムービー的なテクニックの見事さを観るだけでも価値あり!


めぐりあう時間たち (2003-5/13)
原作の勝ち?脚本の勝ち?監督のセンス?とにかくスゴイ!
時代もヒロインも違う三つの話が入り混じりながら並行し、
一冊の小説をキーワードに、たった一日の出来事を描く。
その構成・編集は緻密に計算されていて、違和感がないのは勿論、
冒頭からラストまで緊張感が途切れることなく惹きつけられる。
そして、登場人物の心情を巧みに表現する役者陣の名演技も拍手喝采!
ただし、この映画、観る者に訴えかけるテーマは超ディープに暗い。
“人生における問い”を真摯に受け止め、どう昇華するかは観る者に委ねられる。
映画の“作り方”の絶妙さに心地良くなる反面、
何人もの“生きる辛さ”を目のあたりにして、どん底にヘコむこと必須。


アバウト・シュミット (2003-5/7)
主人公を自分に置き換えたり、感情移入して観たら、
救いようのない切なさで息苦しくなってしまう。
直接的な大きなパンチで殴られた痛みではなく、
気がつかないうちに、ココロのあちこちに青あざが出来てたような痛み。
地味で淡淡とした作品だが、ツラくて切ない気持ちが後からじんわり効いてくる。
無口で多くを語らない主人公が、手紙という形式を借りて、
胸の奥に押し込めた感情をモノローグ的に語る手法が良い。
そしてジャック・ニコルソンの抑えた演技が笑えて泣ける。
キャシー・ベイツにもびっくり!度胸あるなぁ(^^;


あずみ (2003-5/6)
上戸彩主演だからアイドル映画だろうとナメて観たら精神的に怪我するね。
むしろ、この映画の主演を見事やり遂げた上戸彩に拍手!
衝撃的な話、センス良い映像、そして圧巻のキャスティング。
数少ない“劇場に足を運んで観るべき邦画”のひとつでしょう。
原作のテイストを忠実に描き上げてる...と言うより、
原作の内容から、抑える要素とデフォルメする要素を、
バランス良く表現してるところが実に巧妙。
それと、新感覚で撮ろうとすると“やり過ぎ”が目立つものだが、
北村監督は斬新過ぎない演出とカット割りで勝負する潔さが気持ち良い。
強いて減点を挙げると、ワイヤーアクションのナチュラルさが足りないかな?
でも、とにかくカッコイイ作品。鳥肌ものです。


クローサー (2003-4/19)
やるねぇ!やってくれるねぇ!意外なところに意外な逸品。
単純に「チャーリーズ・エンジェル」アジア版だと思ったら大間違い。
侮っちゃいけない!美女アクションという意味では同じカテゴリーだけど、
ストーリー的にはアプローチが全然違う。
切なくて悲しいドラマがベーシックにあり、且つアクションがカッチョイイ〜!
珈琲一杯の料金でトーストも付いちゃうモーニングセット感覚で、
アクション楽しんで、泣ける話も味わえる。
もちろん人情ドラマがメインではないから、その淡泊さは否めないけどね。
アクションシーンのBGMに♪CLOSE TO YOUを使うセンスが素晴らしく気持ちいい。
ヴィッキー・チャオってカワイイなぁ。


歓楽通り (2003-4/14)
ちょっとだけ嬉しいことがあって、だから、ちょっとだけ酒を飲んで、
ちょっとだけ良い気持ちになって、ほんのり幸せ。って感じの味わいがする映画。
ちょっとだけ嬉しい!のであって、とっても嬉しい!ではない。微妙。
でもストーリーは悲しくて切ない。
設定や話の展開が決して悪い訳ではないが、
特に音楽と演出が良くて、もうそれだけで雰囲気に酔い痴れてしまう。
パトリス・ルコント監督作品を初めて観たが、
わりと好きかも...って、自分的新発見。ほんのり新確認。
結構、大人の人生を切なく描き、しかも映像的にファンタジックだったりする、
そんな作風の監督なんだねぇ。


ピノッキオ (2003-4/2)
ベニーニ自身が演じる実写版!という設定を知った時から、
デンジャラスな香りがする無理な映像に覚悟はしていたけど、
実際に観ると、想像を遥かに超えるおぞましさ。身の毛もよだつ。
まるで、芸達者な中年が集まって繰り広げる二時間のコント(^^;
原作があるからストーリーそのものに文句はないが、
全体的に平らな印象を受ける脚本構成は頂けません。
製作費54億円も投じただけあって、CG映像は見事!
ならば、「ロード・オブ・ザ・リング」のゴラムみたく、
ベニーニの演技の上にピノッキオの姿をCGで作ってほしい。
こんな作品を本気で作ったベニーニの行動力と勇気だけは買う。


ボイス (2003-3/26)
怖い怖い。何が怖いって、この映画の“つまらなさ”が怖い!
《本年度最も恐ろしい映画》と銘打ってるセンスが恐ろしい(^^;
恐怖シーンはセオリー通りのベタな演出だし、
怪奇の原因を導くストーリー展開は陳腐。
まるで“火曜サスペンス劇場、夏だから少しホラー気味にしました”みたいなテイスト。
携帯電話をホラーアイテムとして起用するのって、
地味だし、話が広がらないし、限界あるんだよなぁ。
映画を観た充実感が全く得られない作品です。
ただ、女優陣はキレイで、それだけが唯一の観賞的歓喜でした。


007 ダイ・アナザー・デイ (2003-3/20)
例えば、牛丼屋に行くのは牛丼を食べたいからです。
パン屋に行くのはパンが欲しいからです。当たり前のことです。
パスタ専門店で寿司を求めたり、本屋で野菜を買おうとするのは間違ってます。
...という意味で、この映画は期待通り、あるいは予想通りと言えるでしょう。
007シリーズに複雑なストーリーや大逆転なオチ、心に残るような感動は求めてない。
痛快で無茶なアクションと絶対的に無敵なボンドが観たいだけ。
ラーメンが食べたくて、ラーメン屋に入ってラーメンを食べた。
もうそれだけで満足。充分、気持ちは満たされました。
でも欲を言うなら、もうちょっとスパイスが効いたラーメンが食べたかったかなぁ(^^;
金網フェンスをペンチで切ってるボンドは間抜けですぅ。


シカゴ (2003-3/14)
利己的な欲望を描いたダークな話なのに、二時間ずっと笑顔で見惚れてしまう。
ミュージカルシーンに心奪われ、出演陣の圧倒的なパフォーマンスに魅了される。
主人公の空想としてミュージカルシーンを挿入するという構成で、
急に歌い踊りだす違和感を見事に解消してるロブ・マーシャル監督のセンス。
飽きさせないテンポの良さ。現実と空想の象徴的な明暗。そして色彩。
その他、音楽から演技に至るまで、何ひとつ酷評する要素がない。
しかも、ミュージカルシーンがあることで、
登場人物の心理や場面状況が分かり易いという効果もある。
豪華!贅沢!優雅!夢々しい大人のエンターテイメントです。
観たことはないが、ブロードウェイの舞台より素晴らしい完成度ではないだろうか。
ゼルウィガー、ゼタ=ジョーンズの最高の代表作。


スコルピオンの恋まじない (2003-3/12)
“嬉しくて涙が溢れる”
ウディ・アレンの映画はコメディーである。笑える。だけど泣ける。
悲しくて泣くんじゃない。至福の喜びに自然と涙が溢れだす。
劇場が暗転し、数本の予告編に続いて、ウディの映画が上映される。
そしていつも思う...この至福の時間が終わらなければいい。
ウディ・アレンという名の酸素が無ければ、
生きていけない心身になったのかも知れない。
センスの良いウディ映画を好きな自分自身を誇りに思う。
彼について書くと、いつも、のろけ話みたくなります(^^;


クリスティーナの好きなコト (2003-3/5)
どの映画も料金一律ということに疑問を持ちませんか?
だとして、つまんないと知りつつ、料金出して観に行く勇気ってのも必要。
それが“おバカ映画”なら、なおさら。
でも本作はC・ディアスのセクシーお下劣コメディエンヌぶりを楽しむだけでも価値あり。
彼女はこうでなくっちゃ!文芸作、大作で気取ってる彼女には魅力を感じない。
やっぱりノーテンキでエッチなキャメロンが一番!最高ですぅ!
しかも、この映画、「サウスパーク」の脚本家が手掛け、
ファレリー兄弟と繋がりのあるロジャー・カンブルが監督。
ってだけで、おバカ期待度フルモードじゃない?
でも、それならそれで、もっと過激でもいいかも。下ネタ50%増量希望。


キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン (2003-3/4)
スピルバーグだ!レオ様だ!ハンクスだ!こりゃスゴイぞぉ!
...みたいな期待をせず、気負いなく観ればそれなりに楽しめる。
散歩中に小腹が空いたのでハンバーガーを買って食べるとか、
電車の中で暇潰しにスポーツ新聞や週刊誌を読むだとか、
そういう気楽な感覚で観賞するべく作品なのです。
ストーリー自体は可もなく不可もなく、下手すりゃB級映画になりかねない内容を、
監督、脚本、そして豪華キャストに彩られて、無難にAランクへと昇華してる作品。
スピルバーグ然り、主演の二人も、実力の6割程度で、
つまり、肩の力を抜いて作った映画だという印象は否めない。
まあ、50・60年代のアメリカ映画の2003年版て感じ。そう思うと楽しく観れる。
レオ様ファンは彼のコスプレを充分に堪能してください(^^;


アレックス (2003-2/19)
テーマに関する云々を別にすれば、時間軸を逆から描く方法は面白いと思う。
でも、意外なオチ、衝撃的な展開...そんな手法に踊らされた作品かも知れない。
唱いたいメッセージがあるとして、それを観客に伝えるために、
時間軸を逆から描く方法が果たして最適なのだろうか?
暴力シーンは?差別的発言は?そのままじゃん!の域を超えてる?
確かに、人間の愚かさ、残酷さを目の当たりにして、
それをただただ傍観するしかない自分の無力さは思い知らされる。
だけど、あまりにストレートな表現方法に興醒め。
底なし沼だと思っていたのに実は水位の低い浅い池でした...
そんな感じの作品(^^;


ロード・オブ・ザ・リング 二つの塔 (2003-2/12)
すごいなぁ。こんな映画どうやって撮るのかなぁ?目が点になります。
壮大、スペクタクルって、この作品のことを言うんだろうなぁ。
前作は上映時間の苦痛さと序章的退屈さだけが印象に残ったが、
第二部は明らかに前作より面白いと断言できる。
興味深い新キャラの登場、平行する三つのドラマ、そして迫力ある映像。
特に最後の戦シーンは映画史に残るべく圧巻!
でもやっぱり三時間は長い。キツイ。勘弁してくれ感は否めない。
折角いっぱい作ったんだからもっと食べて、
と満腹なのに目の前に手料理が並ぶ感じのツラさ。吐きそう。
この内容を二時間に凝縮してくれたら、もっと褒めるのになぁ(^^;


戦場のピアニスト (2003-2/7)
本作は紛れもない“戦争映画”である。
しかも、誰が悪いという明確な図式を導くのではなく、
ある意味、公平に“人の心の奥にある醜さ、卑しさ”
を描いてる...という点では高く評価したい。
ただ、映画的構成としては散漫な印象を受けた。
実話だから、極力ありのままが良いのかも知れないが、
ピアニストという精神的キーワードをもっと露骨に多用して欲しかった。
映画とは虚構のエンターテイメントなのだから、
より良く魅せる嘘の演出効果は過剰でもいいと思う。
エイドリアン・ブロディの演奏シーンは鳥肌もの!


Mr.ディーズ (2003-2/5)
例えば、喫茶店がある。美味しくもないしサービスも悪い。最低の店。
でもお気に入りの店員がいる。憧れの人に会うためだけで店に通う。
僕は「ここは最高の店だぁ!」と言うだろう。
さて、僕はウィノナ・ライダーが大好きです。めちゃ好きです。
ということで、この映画は最高だぁ!...です(^^;
つまり、そのこと以外、この映画を褒める点はありません。
ストーリーもギャグも全くイケてない。別に構わない。
久々にウィノナを堪能できただけで幸せです。
アダム・サンドラーのギャグセンスは僕には合わない。
僕の前座席の女性は大爆笑して「すごい笑った。面白い。良かった」と言ってた。
そんな人も居るんですね!?


ラスト・プレゼント (2003-1/29)
涙の金太郎飴。どのシーン観ても涙腺開放大会!
あるいは、涙のわんこそば。遠慮容赦ない“泣き”の応酬。
斬新な展開や巧妙なヒネリは全く無い、ストレート速球一本勝負だが、
余命僅かな妻、旦那は売れないコメディアンという設定だけで充分切ない。充分悲しい。
いがみ合う者が死という運命を介することでしか互いに優しくなれない、
という人間の嫌な本質が見え隠れするのは興醒めだけど、
とにかくこの映画は“泣き”の王道!それに尽きる。
ホント韓国恋愛映画のピュアさは素晴らしくてハマってしまう。
イ・ジョンジェ、イ・ヨンエのキャスティングも最高。


リロ&スティッチ (2003-1/23)
スティッチは凶暴で水が苦手、おまけにルックスまで...
まるでギズモじゃん!パクり?盗作?それはさて置き、
親も居なくて、友達からも仲間外れにされてる少女リロが悲しい。
流れ星に“友達をください”と祈るいたいけないリロの姿を涙なしには観られない。
そんなリロと、愛を知る由もないスティッチの出逢い。
感動に満ち溢れる物語...のはずだったが、これが微妙。
破壊プログラムしか備わってないスティッチが、
家族の大切さ、優しさ、愛を知っていく過程の描き方が薄い。
短時間省略型?やっぱりマンガだよなぁ的説得力の弱さは否めない。
全体的には良いストーリーなんだけどね。惜しいなぁ。


猟奇的な彼女 (2003-1/17)
近年の韓国映画はホント秀作が多い。心に残る作品が幾つもある。
邦題の付け方の善し悪しは微妙だが、
本作もセンスが良く、ピュアで、そして巧い。
ラブストーリーに“意外な巧さ”は必ずしも必要ではない。
場合によってはそれが邪魔な要素だったりもするが、
この作品は“巧さ”がストーリーを断然ピュアに守り立てる。
エピソード紹介がノルマ消化的な印象もあって、
テンポが失速し、中弛みする部分は否めないが、
その減点を踏まえても良い映画と言える。好きな作品だ。
「イルマーレ」にも出ていたチョン・ジヒョンは明確に注目女優でしょう。


ストーカー (2003-1/16)
邦題「ストーカー」って?まるでB級サイコスリラーみたいじゃん!
原題「OneHourPhoto」の方が良い。あるいはこんなのはどう?
「仕上がりは1時間後でございま〜す」「あなたの街の写真屋さんはロビンでしょ?」
ああ、B級以下になってしまう(^^; とにかくタイトルから受ける印象って大切。
この映画は“怖い”ではなく、むしろ“悲しい”
「インソムニア」で悪役ロビンを観た時がっかりしたけど、
本作は決して悪役には納まらない、ある意味ピュアな役柄だと思う。
主人公の孤独感、寂しさ、そして心の中の譲れないもの...が、
巧く描かれていて、観たあと心にずっしりとした重みを感じずにはいられない。
主人公に共感して、救いようのない悲哀に泣きだしそうになる。


カンパニー・マン (2003-1/15)
スゴイ、スゴイ、やってくれるなぁ!
二重も三重も事実を隠し偽る巧妙な展開。
入り組んだ話を作ってやるぜ!的な意図満開丸出しだけど、
映像演出もスタイリッシュでセンス良し。
アクションに頼らず複雑なストーリーで見せるルパン三世てかぁ!?
最初から最後まで目が離せないテンションの持続は見応えありあり。
謎を謎のまま放置せず、大オチで全てに決着をつける潔さ。
でも大オチの後の小オチはバカバカしくて密かに爆笑(^^;
前作「CUBE」と変わらぬ質の高い作品を撮ったヴィンチェンゾ・ナタリ監督に完敗。
今後も期待できそう!


ボーン・アイデンティティー (2003-1/7)
勘違いです。これはマット・デイモンの勘違い作品です。
体を鍛え上げてアクションシーンに挑むマットはマットじゃありません(^^;
まあ、それは五万歩譲って良いとしても、この作品は“どっち付かず”です。
観客がメロメロになるド派手なアクション映画なら、ストーリーは幼稚でもOK。
あるいは、巧妙なストーリー展開で魅了するなら、アクションは地味でOK。
が、しかし、本作はストーリー緩々、アクション程々。
前半は謎!謎!謎!で惹きつけられるけど、ただそれだけ。
オチは緩〜い説得力の欠けた、目から鱗が落ちない程度。
2日前の夕食、何やったか忘れたぁ的な心に残らない映画ですぅ。