2004年の映画評



インストール (2004-12/28)
まったり過ごす深夜、何気にテレビを観ていたら、意外と面白いドラマがやってた...
みたいな深夜枠ドラマのフリースタイルなノリです、この映画。
それ故に、面白いけど“劇場で映画を観た”充実感はプチ薄い。深夜にテレビで観たい。
ストーリーはベタで古典的な思春期の悩みを、現代的なエロチャットを介して描いただけ。
野暮ったい昔の服を今風にアレンジしたリサイクルなイメージだな。
テレビ界の片岡Kが初監督、原作が綿矢りさ、とか話題は幾つもあるけど、
何と言っても本作の“売り”はキャストと内容の絶妙なバランスでしょう。
フットワークの軽い上戸彩と、子役界の四番打者・神木隆之介。この共演だけで“勝ち”です。
大森美香の脚本は好きだけど、原作に無い片想いのシーンは意味不明。必要ないと思う。
片岡K、綿矢りさ、大森美香、上戸彩、神木隆之介。セットでお得!な作品。


約三十の嘘 (2004-12/28)
ごめんなさい。正直に言って、面白くないです。つまらない。
人それぞれ判断するモノサシが違うし、作品に何を求めるかで感想も様々なのは勿論。
だからいきなり“つまらない”と言い放つのは元も子もないんだけど、
それでも端的に言っちゃいたいくらい、実にがっかりした。
密室劇、詐欺師六人の騙し合い、戯曲の映画化...こりゃもう三谷幸喜を求めちゃうでしょ?
嘘の上に嘘を重ねて、違う嘘を信じてる者同志の会話が奇跡的に成立したり、
嘘が嘘を生んで、本題と掛け離れた突拍子もない展開になったり、
そんな巧妙で上質な三谷ワールドが本作には欠片も見当たらない。
仰仰しいタイトルだが、申し訳程度の僅かなアイテムとしての“嘘”でしかなく、
結局のところメインで描きたかった“人間の面白さ”もイマイチ浅い。


バッドサンタ (2004-12/23)
ダメダメ大人と子供が一緒に暮らす羽目になり、互いに影響し合い変化していく...
そういうパターンは『ビッグ・ダディ』『アバウト・ア・ボーイ』とか、ありがち。
本作も敢えて上記の路線だとカテゴるなら、その中では何気に一番センスが良い。
心の変化が不自然じゃないし、そこに導くエピソードも“あざとさ”を感じない。
勿論ゴールに至る予定調和感はあるが、それさえもセンス良いユーモアにくすぐられる。
主人公のダメダメ大人っぷりが半端じゃないのも、むしろ感情移入し易くて良い。
そんなオヤジが意外と女性にモテるのも、ビリー・ボブ・ソーントンが演じると説得力がある。
大人も子供も“寂しい”キャラだから、予想範疇を少し越えた結末に涙ホロリ。
ビリー・ボブは注目したい俳優だし、監督は『ゴーストワールド』のテリー・ツワイゴフだし、
悪い映画な訳ないじゃ〜ん。結構、拾い物です。


カンフーハッスル (2004-12/16)
問.チャウ・シンチー監督・主演の前作『少林サッカー』好きですか?嫌いですか?
答1.好き:本作はあなたにとって御馳走です。涎じゅるじゅるもので楽しみましょう。
答2.嫌い:人それぞれ好みはあります。仕方ないです。さっさと帰って寝てください。
本作を楽しめるか否か?それは上記の質問に集約される。単純明快中の単純明快。
シンチーの真摯な香港テイスト喜劇センスを理解できない者、
あるいは心の余裕が欠けてる者は本作を観ないでいいです。
CGとワイヤーを使いまくって薄っぺらな“笑い”を作り出すだけの映画だと思ってる人、
それは大勘違いです。カンフーは本格的で、それを踏まえた上でのド派手アクション。
だから濃いエンターテイメントなのです。実際に出演陣は往年のカンフー映画スター勢揃い!
とかなんとか言っても、結局は“バカバカしい”が一番ぴったりの褒め言葉だな。


雨鱒の川 (2004-12/13)
親が決めた縁談が嫌で、初恋相手の幼なじみと駆け落ち...
簡単に言えばそんな話。それだけの話。それを子供・青年時代、半分ずつで観せる。
母親が病に倒れたり、主人公の女の子は耳が不自由だったり、
そんなエピソードが涙を誘うけど、監督のセンスが悪いので、素直に感情移入できない。
前作『解夏』もそうだったが、磯村一路監督にはがっかり。げんなり。
取って付けたような台詞、ぎこちなくて不自然な演出、そして子役の演技もあざとい。
本作のどこを切ってもセンスが悪い。まるで金太郎飴(^^;
原作が悪いんじゃなくて、脚本、監督の問題でしょう。悪い意味で昭和の邦画の匂い。
それを意図的に狙って作ったのなら分かるが、明らかに失敗した結果なのです。
玉木宏、綾瀬はるか、主演陣は旬なキャスティングなのに残念!


ベルヴィル・ランデブー (2004-12/9)
誘拐された孫を救うためにおばあちゃんが大冒険!ってストーリー設定が軸だが、
この映画にとってストーリーは豚カツの横のキャベツ的な存在。
つまり、話の内容を楽しむことがメインではないのだぁ。ひとつひとつの場面が魅力的。
小ネタのシュールさは半端じゃない。重箱の隅を突きつつも最大公約数で、
決して下品ではないナンセンスな雰囲気にココロくすぐられたら、もうジャンキー!
絵のタッチも笑いのツボで、登場キャラは、丸・細長・四角!このデフォルメ感覚が美的。
手塚治虫の実験アニメにも似た、懐かしさと新しさを感じる。
もし、ウディ・アレンが若きアニメーターだったら、こんな映画を作ったかも...とか思う。
2005年の正月ラインナップ、興行的には『ハウル』『インクレ』に劣るだろうが、
センスの良さでは群を抜いた作品!観た後はサントラ盤が欲しくなりますぅ。


雲のむこう、約束の場所 (2004-12/7)
新海誠の前作、短編アニメ『ほしのこえ』を観た時は衝撃だった。
アニメで魅せる画、カット割り、ストーリー設定、全てが新鮮に見えた。
ひとつひとつの要素は既成だが、組み合わせ方が実に新しい。
こんなアプローチの仕方があったんだぁ!と目からウロコ状態。
何もかも自分ひとりで作り上げたというセンス良い才能にも圧倒された。
そんな彼の初長編作品が“つまらない”訳がない。
作風は『ほしのこえ』の延長線上だが、SF部分の内容がより複雑で見応えあり。
単純に言えばSFとセンチな青春ドラマの融合ストーリー。これが切ない。
新海誠が“知る人ぞ知る”的な存在なだけに、作品もまだまだ知られていないが、
宮崎、大友などと並ぶ世界的アニメーターとして、もっと高く評価されるべき。


ターミナル (2004-12/3)
ゴルフを人生に例える人がいるが、『ターミナル』も人生そのもの。
失敗あり、困難あり、でも諦めずに希望を抱き、夢の実現を信じる...
空港に閉じ込められた数か月の生活は、まるで人生の縮図。
スムーズさに欠ける展開と、ひとつひとつのエピソードの説得力が弱い点は気になるが、
軽く笑えて軽く泣ける映画として、肩の力を抜いて楽しめる。
『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』『ターミナル』と立て続けに、
軽やかで旨味のある作品を撮るスピルバーグ。良くも悪くも余力を残しつつ作った映画。
六割程度の実力で仕上げたからこそ、こちらも気負いなく観ることができる。
ただ、スピルバーグにはもっともっとエンターテイメントを期待しちゃうのも観客側の本音。
腹ごなしに観る映画レベルとしてなら、充分に満足できる佳作。


世界でいちばん不運で幸せな私 (2004-11/29)
監督はジャン=ピエール・ジュネなの?と思っちゃうくらい、
所どころ観られる遊び感覚の映像演出がまるで『アメリ』です。
意図的に真似てる?それともフランスのポップ感覚はこういうもの?
でも『アメリ』と全く違うストーリーで、少年少女がゲームという名目で悪戯ばかりする話。
この悪戯が憎めないんだな...と思ったら大間違い!度が過ぎてて観てらんない。
そんな二人は大人になってもゲームを続けている為、互いの恋愛感情を信じられない
...って、観てて歯痒いモード全開です。じれったい。
永遠の愛を信じるヤン・サミュエル監督の気持ちは共感できるけど、
『卒業』で花嫁を連れて行かれ、取り残された花婿に同情する僕としては、
本作の結末、素直には楽しめなかった。まあ洒落たラストなんだけどね。


ゴジラ FINAL WARS (2004-11/28)
あの北村龍平がゴジラを撮る!ってことが最大の期待要因だったのに、
結果的に食卓に出された料理は予想外のお味。ひと口食べてごちそう様。
料理人の腕前が良くても食材が悪いと、煮ても焼いても食えないのですか?
でも北村監督は「自信作!」みたいに言ってるんだよなぁ。疑心暗鬼。
まるで日曜朝のテレビで観られる特撮戦隊ものテイスト。あるいは昭和50年代、
日本がアメリカに対抗して頑張って作ったけどコケたSF映画のノリ。
格好いいはずの北村的バトルシーンまで泥臭く見えちゃう。げんなり。
映画が和・洋・中などの料理だとすれば、『ゴジラ』は“まかない料理”なんだろうなぁ。
ファンだけが楽しめばいいみたいな楽屋ウケ作品。怪獣総出演でファンは大満足でしょう。
着ぐるみとCGの変な使い分けもファンは逆に嬉しいのかな?無礼講だ、無礼講だぁ(^^;


Mr.インクレディブル (2004-11/25)
拝啓ピクサー様。貴社の数々の作品が大好きなのにも関わらず、
今回は初の人間キャラ主人公ということで、観る前は眉唾でした。ごめんなさい。
貴社のセンスを少しでも疑っていた自分が恥ずかしいです。謝罪いたします。
確かに今までのテイストと違いますが、それがこんなに面白いなんて!楽し過ぎます。
さすがCG技術よりもストーリーを重視するピクサーです。恐れ入りました。
大人にしか分からない感慨深い趣が良質なコメディへと昇華されている様は素晴らしいです。
観た後は、丸一日ずっと遊園地で遊びまくったような充実感と爽快な気持ちです。
『スパイダーマン』『007』『スパイキッズ』『ルパン三世』それらの映画を、
まとめて同時に観たくらいの興奮状態...って、他の作品を例えに挙げるなんて失礼ですね。
こんなチープなことしか言えない僕を許してください。至福の映画をありがとう。


僕の彼女を紹介します (2004-11/19)
本日のサービス定食は『新・猟奇的な彼女』でございま〜す!
前作がウケにウケましたので、材料から味付けまで、同じように作ってみましたぁ!
料理長クァク・ジョエンが人気食材チョン・ジヒョンを再び“猟奇的な”キャラに設定して、
前半は笑わせ、後半は泣かせる、という味の変化まで前作同様でございます。
別エピソードの挿入、恋愛映画なのにアクションシーン、そんな添え物もご用意しました。
ラストシーンはファンサービスたっぷりのスパイスを効かせてみました。
ただし、料理長の腕前は野暮ったい野暮ったくないギリギリのラインです。
あと、召し上がる前にお客様へ質問がございます。本作のチラシに書いてある
“『ゴースト』とも『シティ・オブ・エンジェル』とも違う至上の愛…”
という内容バレバレの宣伝文句はいかがなもんでしょうか?(^^;


スカイキャプテン ワールド・オブ・トゥモロー (2004-11/17)
ご立派でマニアックなオタク映画ですねぇ。頭からっぽにして観たら、
観終わっても頭からっぽのまんま。何も残らない何も残さない!あっもちろん良い意味で。
映画は仮想現実だぁ!小難しいことは要らねぇ!祭だ祭だ娯楽祭だぁ!
サイボーグとか超人のスーパーヒーローじゃなく、ひとりの空軍パイロットが地球を救う...
ってのが良いよねぇ。設定は過去なのに、ロボットやアイテムはめちゃめちゃ未来じゃ〜ん。
小学生がデタラメに思いついたホラ話を映画にしました的テイストで、何でもありあり。
豪華キャスト陣がブルーバックで撮影して、あとは全てCG合成。ディープな世界だぁ。
“神業”と“馬鹿馬鹿しい”は紙一重なり。改めて実感。
SF大活劇なのにラストシーンのオチ台詞はまるでベタなコント。逆に爆笑しちまいました。
将来、グウィネスが「出演したことは私の汚点」とか言っちゃってるんじゃないの〜?


ハウルの動く城 (2004-11/14)
人気小説の映像化、賛否両論あって当然。原作と違うから嫌だ!とか、
映画のオリジナリティが良い!とか、何を期待するか?何を求めるか?で観方は変わる。
でも確実に言えるのは、いつもの宮崎アニメ・テイストが存分に盛り込まれている!ってこと。
ハイテンポで魅せる目まぐるしいストーリー展開、愛らしいキャラたちの登場、
そしてリアル感を伴った上でのファンタジー。故に怒濤のエンターテイメント!
何時間でも何日でも、この映画を観続けていたいと思える魅力的な世界が楽しい。
ただし、メインに据えた「反戦」テーマが露骨であざとく感じるし、
観終わって釈然としないストーリー展開の不親切な部分もある。
つまり、評価が分かれるであろう要因が内在してることは否めない。
声優・木村拓哉も然り、観る者によって巧いとも拙いとも、どちらにも捉えることができる。


恋の門 (2004-11/9)
脚本、監督、出演陣...幾つもの素敵な要素が絡み合っての結果だとも言えるが、
本作が面白い最大の理由は原作でしょう。羽生生純の原作コミック。
主人公の面白さだけで飯三杯は食べられちゃうね(^^;
一般社会的には閉ざされた世界観で生きるディープなキャラ設定は、
もうそれだけでシュール。魅力的。ココロを揺さぶられます。くすぐったい。
石の漫画芸術家、コスプレ、コミケ…ああ、このアングラ加減がたまりません!
ギャグの応酬、ポップな映像、リアリティあるラブコメ。
笑いのためだけに登場する脇キャラの豪華さも贅沢。
松尾スズキ的センスのあざとさには頷けないが、まあ本作はディープさが面白いです。
テレビドラマを観慣れた人は「この作風、クドカンに似てるぅ」と逆転的印象を持つかな?


SAW ソウ (2004-11/2)
緻密に計算されたサプライズ・ムービーで、謎、謎、謎の幕の内弁当状態!
更には目を覆いたくなるような恐怖の連続で、緊張感の持続は他の映画の比じゃない。
アイデアの勝利!勝ちまくり!見事な超エンターテイメント作品...
と、以上が観る前から期待して予め用意していた映画評の文章なのだが、
“明日の遠足を楽しみに準備していたけど雨で延期”みたいな気持ちです。
謎、伏線、恐怖が濃密に散りばめられているが、前代未聞の傑作!と評する程のことはない。
“新人監督、低予算のわりには”って前置きが必要。幾つかの伏線が不自然だったり、
設定に疑問が残ったりする。“ツッコミどころ”はこの手の映画に付き物だが、
そういった一切が感じられない作品だと思っていたので、ある意味、期待ハズレ。
オチも冷静に観れば、まるでドリフのコントだしねぇ(^^;


2046 (2004-10/29)
「意味分からない」とか「難しい」という感想が多いだろうなぁ。
イコール、ウケない。ヒットしない。全国拡大系の公開だが、基本的には単館系の作品。
「キムタクが出てるから」ってミーハー気分だけで観たらケガします。ヤケドします。
つまり、予備知識がない状態で観たら「つまらな〜い」で終わっちゃいます。
本作は“カーウァイ監督の前作『花様年華』の後日談的内容”という触れ込みだったが、
これが完全に続編!紛れもなくパート2です。SFでも何でもなく『花様年華2』です。
主人公は同じだし、セリフ的にも画的にも『花様年華』からの引用がある。
それが分かるか分からないかで、本作の理解度が大きく変わるだろう。
前作を観ていれば、な〜んも難しいことはない。とてもシンプルな内容です。
“人は誰でも過去の呪縛から逃れられない”ただ、それだけを描いた映画です。


オールド・ボーイ (2004-10/28)
歳とって久々に運動したら翌日以降の筋肉痛がツライ。
本作はまさにそんな映画。精神的な筋肉痛が後から後から効いてくる。
訳分からぬまま15年間も監禁されていた男が、解放後に復讐するって話で、
その設定だけでも充分アナーキーで謎に満ち満ちていて、心惹かれる。
が、しかし、凄いのは結末。全貌が明らかになった時、
今まで観たこともなかったようなツイスト(どんでん返し)が心の筋肉痛と化す。
「あれ?地味なオチ?」と思うかも知れないが、この手の結末が実は何より衝撃的。
人が人たる指針は“モラル”だから、それが破壊されるのは死ぬよりツライ。
15年間なぜ監禁されたか?じゃなく、15年後なぜ解放されたのか?が本作の鍵です。
これだけの驚愕な話を、映像的な遊びも含め、娯楽作品に昇華したのはパク・チャヌク監督の手腕。


隠し剣 鬼の爪 (2004-10/25)
山田洋次、初の時代劇『たそがれ清兵衛』は主人公のキャラに魅力があった。
痛快に強かったり、格好良かったり、偉そうだったり、そんな時代劇定番の侍ではない。
貧乏で地味な暮らしだが、武士の心は失わず、誠実に生き、愛する者を大切にする田舎侍。
だからこそ誰もが主人公に容易く共感し、描かれた生き様に感動を覚えたのだろう。
で、今回の主人公・片桐宗蔵も全く同様のキャラ設定だと言っても差し支えない。
しかも、話まで前作と似ている。焼直し?セルフ・リメイク?と思っちゃうくらい。
それでいいのか?そんなことでいいのか山田洋次?…いや、いいんです!それが良いのだぁ!
類似したテーマでも、その内容が良ければ、何度でも映画にすればいい。して欲しい。
それ故に本作も前作同様、静かに感動し、そして涙する。
似てると言っても、『たそがれ清兵衛』プラス・アルファな要素が幾つかあって、より良い。


コラテラル (2004-10/22)
下手すればB級風味に成り下がりかねないギリギリの作品が、
マイケル・マン監督と主演トム様によって箔が付き、見事話題作に持ち上げられた。
“あのトムが悪役!”というのが売り文句だが、ストーリー的に観れば、
主演はジェイミー・フォックス扮するタクシー運転手。決してトムのワンマン映画では無い。
例えば『男はつらいよ』みたいな『僕はロスのタクシードライバー』って映画シリーズがあって、
毎回タクシー運転手が乗客の事件に巻き込まれる様をコミカル&スリリングに描く。
そして今回はトム様を特別ゲストに迎え、運転手と殺し屋のエピソードの巻なのだ〜!
と、そんな風に自分を騙しながら観れば気軽に楽しめる内容です(^^;
それで本当にプロの殺し屋かぁ?とか、刑事の描き方が御座成りじゃないかぁ?など、
ツッコミどころも満載で、違う楽しみ方もできます。


いま、会いにゆきます (2004-10/21)
本作で描かれていることはとてつもなく普通で、とてつもなくシンプル。
それは誰もが経験のある“好き”という気持ち。だからこそ最大公約数的な共感を生む。
ただし、それだけを何の工夫もせずに描いたなら、映画としての面白みは無いだろう。
本作の基本設定は、逝ったはずの妻が現世に甦るという非科学的SF純愛映画。
現実離れした単なるファンタジーならば、作品と観客の距離は密接になりにくい。
でも本当に大事な要素は終盤のツイスト(ひねり)にある。
決してファンタジーではなく、誰もが共感して幸福感を味わえる終盤のツイストは、
気恥ずかしいほどシンプルなのに、切ない嬉し涙を誘う。
東宝のヒット作『黄泉がえり』『世界の中心で、愛をさけぶ』を連想させる本作だが、
核となる部分の魅せ方は前二作と全く違う。似て否なるもの。


モンスター (2004-10/14)
巨額な製作費と豪華なキャスティングで話題の大作でも、時々、
「この映画、誰も作りたくて作った訳じゃないんじゃないの?」と思えるくらい、
作品に愛情が感じられない駄作がある。そんな作品は観ていて興醒めで気分が悪い。
だが本作は違う。監督、スタッフ、出演陣が全霊を込めて、愛情たっぷりで作られた作品。
そんな熱意に満ち満ちた映画は観るだけで自然と涙が溢れてくる。観る価値ありまくり。
実在の殺人犯、その人生を決して肯定も否定もせずに描く。
そのアプローチは冷静だが、胸が痛むほど切ない気持ちを伴わずに観ることはできない。
本作は微に入り細に入りセンスの良い素晴らしい作品。
ただ残念なのは、クリスティーナ・リッチが高く評価されていないということ。
絶賛されるシャーリーズの陰に隠れて目立たないが、クリスティーナの表現力は絶妙。


感染/予言 (2004-10/11)
笑える映画、泣ける映画と同様に、ホラー映画の“怖さ”も感知する個人差がある。
その人が持つ情報(知識)や今までの経験によって、何を怖いと感じるかが違う。
冒頭約70文字で当たり前のことを書いたが、つまり何を言いたいかというと、
「感染」「予言」どちらも僕は全く怖くなかった。
“怖さ”以外にストーリーが巧いと思えるようなセンスの良さも見当たらない。
道を歩いてて曲がり角から急に人が飛び出してくる的な“怖さ”や、
大きな効果音などは驚いて当然。気持ち悪いメイク技術で怖がらせるのもベタ。
センス良い映画を求める人、濃いホラー映画ファンは本作を観てもつまらない。
単純な“怖さ”だけで満足な人は楽しめるだろう。
このJホラープロジェクトはあと四本、ひとつくらい秀作があることを願う。


笑の大学 (2004-10/5)
三谷幸喜、最高ッ!本作の緻密に計算された“笑い”は全て三谷幸喜によるもの。
もともと二人芝居の戯曲として発表されたこの作品は、その時点で既に最高傑作でした。
舞台作品の良さが映画化で損なわれないだろうか?と心配だったが、
さすが星護監督。三谷ドラマを撮ってきただけあって、よく分かってらっしゃる。
残念ながら、脚本の素晴らしさ以上の出来にはなっていないが、
三谷クオリティを忠実に再現することは成功してると言っていいだろう。
セリフも演出も舞台時とほぼ同じで、“間”も絶妙に映像化されている。
1996年に西村雅彦と近藤芳正で上演された作品だが、
役所&稲垣の再演舞台を観劇しているかのような錯覚に陥り、カーテンコールしたくなる。
笑って笑って笑って泣ける!そんなセンスの良い作品に出会いたい人は必ず観るべし。


マイ・ボディガード (2004-10/4)
藤田まこと扮する中村主水が悪者をバッサバッサと斬り倒していきます...
あれ?違った?デンゼル・ワシントン版『必殺仕事人』じゃないの?と思っちゃうくらい、
デンゼルが少女誘拐犯を次々に殺していきます。そりゃもう凄まじい。
暴力シーンが強く印象に残る映画ですが、決して単純なバイオレンス映画ではない。
根深い人間ドラマを物語るフォーマットの一部として復讐劇が描かれている。
気力を失った主人公が生きる希望、人生の意味を見出だしていくストーリー。
『LEON』や『サイモン・バーチ』にも通ずるテーマが本作には感じられる。
でもやっぱり殺戮シーンは衝撃的。重たい正月映画だなぁ。
ダコタちゃんは『コール』に続いて二年連続正月映画で誘拐されちゃうんですね。
トニー・スコット監督の映像演出テクニックは凝り過ぎて少しあざとい。


丹下左膳 百万両の壷 (2004-10/1)
子供の頃に食わず嫌いだった食べ物も、大人になったら好きで食べるようになる...
そんな感じってあるよね。例えば時代劇ってのもそれに当てはまると思う。
大人的観賞物で、若者が好んで観るドラマではない。
で、本作はベタな時代劇ではなく、若者向け的なポップな作りになっている...
と予想していたが、意外とベタな時代劇だった。わりと“普通”な作品。
と言っても、美術セットや衣裳はカラフルな色使いだし、
トヨエツ、和久井映見などのキャスティングも新鮮で、若干のポップさは感じる。
でも、時代劇らしからぬテンポとか、映像演出が斬新とか、そういう新しさは見当たらない。
若者も年輩も無難に楽しめる最大公約数的な時代劇ってことです。
もっともっと痛快で、もっともっと笑える丹下左膳が観たかったなぁ。


デビルマン (2004-9/30)
キッパリ言います。那須博之監督の起用は失敗だと思います。
名作に成り得るはずの作品が完全なB級映画に終始している。
その原因は脚本、監督、キャスト。三拍子揃った体たらく。
説明臭い構成と取って付けたようなセリフ三昧の脚本は決して巧いと言えない。
『ビー・バップ…』『湘爆』などVシネの域を出ない古くさい演出は那須監督のセンスの悪さ。
そして何と言っても伊崎兄弟の下手な演技が映画を台無しにしている。
テレビアニメとは違う原作のダークなエッセンスを忠実に映画化してくれたのは嬉しいが、
食材が良くても料理人の腕とレシピが間違っていれば食えたもんじゃない!
原作の衝撃的な内容を知らない人は悲惨な結末を覚悟して観ましょう。
単なる勧善懲悪ヒーローものではありません。映画を観るより原作本を買って読んだ方が良いです。


ヴィレッジ (2004-9/23)
最後の最後ご褒美を貰うために約90分の退屈を我慢しなければならない...
という状況を“シャマラン・テンション”と名付けたい(^^;
では、その最後のご褒美が今回は素敵なのかどうか?
無敵のヒーローや宇宙人を登場させてきた作品歴があるだけに、
本作も突飛なモノが出てくるのか?いや実は今回は何も出てきません。
でも衝撃的なオチ、またもや驚かされます。シャマラン・テンション=目から鱗。
ストーリーの出発点が最後に解る仕組みだが、視点を変えるとこんな作品が出来ちゃうんだねぇ。
巧い!と言っておきます。しかも悲しくて切ないお話。
シャマラン作品って、謎やオチの部分だけが注目されているが、
意外と深いテーマや良いメッセージを扱ってたりするんだなぁ。


SURVIVE STYLE 5+ (2004-9/16)
何が面白いって、こんなマニアックな映画を東宝が配給してるってことが笑える。
ストーリーらしいストーリーが無く、シュール&アナーキーな内容で、
斬新気味な映像と構成に最も力を注いだ二時間尺のオムニバス的コント映画。
バカバカしいものに金と時間、才能と手間暇をたっぷり費やす大人の本気遊びです。
でも、CMクリエーターがやりたいように好きなように作ったという割りには、
意外と許容範囲のアブノーマルさ。“親切な不条理”てな感じ。
どうせなら観客を突き放すくらい“不親切な不条理”の世界まで行ききって欲しかった。
最大公約数を意識して作った訳ではないけど、結果的には意外と最大公約数的な作品。
だから誰が観ても分かるタイプの笑いが散りばめられてます。
P.T.アンダーソンの『マグノリア』を彷彿とするバカオチは最高!


トゥー・ブラザーズ (2004-9/9)
かわいいだけの動物映画ではない。ある意味、単刀直入なメッセージ映画。
脚本の中心柱として、人間の醜い私利私欲を描くあたり、
さすがジャン=ジャック・アノー監督。しかも何と言っても物語は子虎がメインなので、
人間ドラマの比重が小さく、子虎のシーンが山盛りの構成になっている。
メッセージ性のある人間ドラマを描き、動物映画として成立している点は高く評価してもいい。
しかし、あまりにも巧く簡潔に作り上げているため、少し無機質に感じてしまう。
動物を脚本通りに撮る苦労は想像を絶する大変さだろうが、
30頭もの虎を場面ごとに使い分けたという裏事情を知っちゃうと、
「さっきの子虎とこの子虎は違うんだろうなぁ」と思って感情移入できず興醒め。
斜めから見ず、素直にピュアな気持ちで観賞できる人は感動しちゃってください。


LOVERS (2004-9/3)
チャン・イーモウ作品というブランド名だけで惹かれてしまう。
『初恋のきた道』『HERO』、本作は後者同様、中国時代劇アクションだが、
タイトルが示す通り、恋愛激情、嘘か誠か?的な要素があり、それも大きな見所。
男女三人の騙し合いストーリーとアクションシーンが見事に融合して、
スピーディーだわスリリングだわ綺麗だわと、スクリーンに目が釘づけ。
週刊誌を読み捨てるような感覚の単なるアクション映画ではなく、
チャン・イーモウの美学が表現された逸品だと言って過言ではない。
“罠”は仕組まれているが、ストーリー背景は単純で、朝廷と反勢力の話。
歴史もの、時代劇が苦手な人も抵抗を感じずに作品の世界観に誘われること間違いなし。
それにしてもチャン・ツィイーは出演作ごとに加速度を増して魅力的になっていきます。


バイオハザードU アポカリプス (2004-9/1)
「ゾンビ映画?恐怖?夜眠れなくなっちゃうの?キャー!」とか思ってる人いますか?
前作同様、確かに“ゾンビありき”ですが、怖い映画じゃないです。
真っ当なアクション映画です。ミラ・ジョヴォの無敵なアクションが痛快で、
様々なアクションシーンを興奮して観る楽しさがいっぱい詰まった作品。
ストーリー説明に余計な時間を割くこともなく、始まってすぐ本題。そして緊張感持続の末、
約90分で終幕。この潔さが良い。ポップコーンとコーラが似合う映画だねぇ(^^;
基本ストーリーは単純だから、仮に前作未見でも充分に楽しめる...
と言いたいが、“意外なオチもの?”的なラストだったりするのでストーリーも要注意!
ゾンビバトルがメインじゃないの?近未来SFものに転換?トリック?
ちょっとした疑問を残しつつ、続編を予感させるラストなんだなぁ。


誰も知らない (2004-8/31)
本作は誰が何と言おうと是枝監督の作品!つまり是枝センスが成し遂げた偉業なんです。
カンヌだ!柳楽だ!と、ほんの一部分のポイントだけが先行してるけど、
本作は“是枝監督ありき”です。これぞ是枝!注目すべきは監督のセンスなのです。
実際の事件をモチーフにした映画。そのアプローチは幾らでもある。
残酷さを強調するとか、サスペンス風に仕上げるとか、完全フィクション化するとか、
それは監督のさじ加減ひとつ。では、是枝監督はどう撮ったのかと言うと、
ドキュメンタリータッチ、あざとくない程度のフィクション、価値観を押し付けないボーダーレス、
そして人間の本質をデフォルメし過ぎることなく描き、魅せてくれる。
赤や青、緑や黄色、黒や茶色でもなく、白い色の映画です。この白さは心に染みる。
出演陣では、個人的に韓英恵が素敵だと思います。


スウィングガールズ (2004-8/27)
観る人を幸せにする映画...という常套文句がありますが、
センスの良い映画を観るとホント幸せな気持ちになる。
「やったね矢口監督、ホームランだぁ!」と言いたくなる本作は、
センス良い矢口タッチが濃密に練り込まれた秀逸の作品。
全てのシーンに無駄が無く、且つ笑え、常に次のシーンへの伏線となり、
スピーディーな怒濤の展開で楽しませてくれる。魅せられる。
停滞することなく展開するジェットコースター的ストーリーという意味で、
前作『ウォーターボーイズ』より『秘密の花園』『アドレナリンドライブ』に近い。
これぞ矢口史靖!弁当、バイト、いのしし...他にもギャグてんこ盛り。
キャラ良し、ギャグ良し、ストーリー良し。そこにジャズ音楽が加わり、至福の満腹。


アイ,ロボット (2004-8/24)
人間とロボットが共存する近未来。そこで事件が?ロボットが?...となると、
『マトリックス』以来、顕著にパターン化された“お決まり”の展開が予想される。
そう、その通りの内容だが、平和に暮らしてる人間とロボットに不和が生じるまでの、
この映画なりの過程を映像と共に楽しめばいい。そんな作品。
伏線と謎が散りばめられたサスペンスとして観るよりも、映像を堪能する映画でしょう。
画面の半分以上がCG状態で、主演のウィルとロボット達の大格闘は見応え充分!
CGか実写か区別つかない程の仰仰しい映像は、その凄さが逆に大爆笑もの。
製作費と手間暇を莫大に費やした“おバカSF映画”だと小声で言っておきます。
観賞後三日も経てば忘れてしまうような内容だけど、
観てる時は娯楽大作としてエキサイトに楽しめます。それでいいんじゃない?


箪笥 (2004-8/18)
悲しい。つらい。胸が痛い。ほとんど全編、謎だらけの展開で、
最後の最後に真相が分かる!というパターンの作品。
全てを把握した時に感じる悲しみは他のホラー映画に類を見ない。
良く出来た作品だと言える。が、しかし、敢えて厳しい観方をすれば、
恐怖だけを売りにした訳ではないからそんなに怖くないし、
幼い姉妹の悲しい物語はホラーの要素が邪魔して感情移入しきれない。
そういった意味で“中途半端さ”を感じないでもない。
融合、調和、新しいジャンル、ホラーに捉われない作品として観れば、高く評価できる。
でもハッキリ一言で銘打つなら『シックス・センス』なんだけどね(^^;
姉妹役のイム・スジョンとムン・グニョンのツーショットは切なくも美しい。


永遠の片想い (2004-8/13)
定番!韓国のピュアな恋愛映画。切なくて悲しい純愛。楽しくて少し笑えてポップ。
そして最後は確実に泣ける。泣くに決まってるじゃ〜ん的な。これぞ韓国の純愛映画。
男女三人の友情が三角関係に発展して...というお約束パターンに苦笑いしつつ、
実は両想いなのに成就しない片想いに共感して胸が痛くなる。キュンキュン!
全体的に大雑把な観方をすれば好印象な作品なのだが、
ところどころ、取って付けたような下手な演出があるのも否めない。
最初の出会いで時計を巻き戻す?名前を取り替える?寝てる間にキス?などなど、
巧そうで巧くない伏線のオンパレードに少し興醒め。
しかも、村の郵便配達員のエピソードは 何?無理矢理じゃん。
まあ、韓国映画を見慣れた人にとっては豪華な若手共演なので、それが魅力。


マインド・ゲーム (2004-8/10)
宮崎でも押井でも大友でもない、これぞ湯浅政明アニメ!
「テンポが良い」とか「痛快、爽快」の域を脱していて、
目まぐるしいシーンの変化に着いて行くのが必死。どんだけ絵コンテ書いたん?
きっと一瞬のおもしろシーンを幾つも観逃してしまう。ハイセンス&ハイテンション!
そしてストーリーがシュール&ショック!好きなコの前でヤクザに撃ち殺された青年、
神様に会って無理矢理生き還り、巨大クジラの中で楽しく暮らす...って、なんだコレ?
でも、ノスタルジックな世界や人生を見つめ直すテーマも混在していて、
それらを前代未聞的な映像と構成力で魅せつけてくれる。このテイストは実写化不可能。
他の敏腕アニメーターとは違う方向で、アニメの限界を超越する湯浅政明に惜しみなく拍手!
ただ、吉本風味全開にする必要はないかも。ウィズアウト吉本でも充分に傑作と成り得る。


華氏911 (2004-8/9)
ドキュメンタリー形式のエンターテイメント作品。
明確で斬新な意見を持っていても、その表現方法が拙いと、人に伝わりにくいし、
何より面白みが欠けていると、耳を傾ける気がしない。
その点、マイケル・ムーアは冗舌なアプローチで、我々を楽しませてくれる。
退屈で抑揚のないドキュメンタリー映画ではなく、ムーア流の娯楽映画だ。
大統領選の真相、ブッシュとビン・ラディンの関係、議員の本音など、
衝撃の裏事情をユーモアセンス抜群の構成力で魅せる。
ただし、本作の観点はあくまでムーア個人の意見なので、
それに同調するか否かは観た人それぞれの問題だろう。
でも、難しい内容が苦手な人も、ムーアのエンターテイメントを楽しめるはず。


マッハ! (2004-8/5)
いやぁ、こりゃ新鮮だわ!本作は決してB級映画ではありません。
れっきとしたタイの超ド級エンターテイメントです。
分かり易く言うなら、昭和晩期のジャッキー・チェン映画です。
あるいは、申し訳程度のストーリーが付いたサルティンバンコ?キダム?木下大サーカス?
VFXやワイヤーに頼らない生アクションは見応え充分!ホント新鮮に楽しめます。
子供でも分かる単純明快な話、そして勧善懲悪、潔いねぇ。ある意味、粋だねぇ。
敵に追われた主人公が街中を走り回るシーン、三輪タクシーのカーテェイス、
ムエタイ・バトル、どのアクションシーンもスクリーンに目が釘づけ!
デジタル主流の中、アナログでこんなに頑張ってる作品は表彰もの。
主人公はタイの織田裕二、ヒロインは意外と可愛いタイの内山理名です(^^;


サンダーバード (2004-7/30)
本作の特徴を挙げるなら、『ラブ・アクチュアリー』『アバウト・ア・ボーイ』等を作った、
イギリスのワーキング・タイトルが製作を手掛けてるってこと。
だからオシャレでユーモアのあるドラマが何より重視されている。
60年代テレビ版のリメイク?VFX満載のSF映画?そんな予想や期待感は捨てるべし。
『サンダーバード』を観るというより、ワーキング・タイトルの作品を楽しむつもりで、
気負うことなく観れば、それなりに面白いでしょう。
作品のテイストをもっと平たく言えば、まるで『スパイキッズ』です。
サンダーバードが全編活躍する内容ではなく、隊員にしてもらえない末っ子が、
友達と一緒にサンダーバードの危機を救う話。まさにキッズ・ムービー。
もうちょっと有名な役者が出てれば画に箔が付くのになぁ。


リディック (2004-7/29)
“大作=おもしろい”という方程式を安易に信じちゃいけない。
莫大な製作費が掛かってる分、巨大なセットもVFXの出来も、確かにスゴイ。
でも、ストーリーや演出は製作者のセンス善し悪し次第。
本作は真面目に凝視できないような突飛なSF映画。
それでも、娯楽大作として二時間たっぷり楽しませてくれりゃ文句は無いが、
見応えを感じないアクション、単純な話のわりには説明臭いセリフの数々、
そして、どの作品でも代わり映えしないヴィン・ディーゼル。
この映画を観たことを後悔しちゃいそうな興醒め作品です。
製作、主演のヴィン・ディーゼルのマスターベーション映画だな、これは。
劇場の座席が揺れたり動いたりするアトラクションだったら、楽しいかもね(^^;


モナリザ・スマイル (2004-7/28)
生徒と教師、考え方の違いで反発し、幾つかのエピソードを経て、
和解、信頼し合う...そんなキング・オブ・ベタな物語展開で、
特筆すべき魅力は皆無に等しい。つまらない。退屈。
真面目な生徒と斬新な教師という基本図式によって成立するパターンだが、
それほど真面目な生徒じゃないし、それほど斬新な教師でもない。
エピソードも抑揚が無く御座成り。一体どこで感動していいものやら分からない。
しかも、生徒たちが教師を慕うようになるプロセスが打算的、利己的な理由なので、
観ていて同情はするが、清い感動の涙など流せるもんじゃない!
男性が一方的にバカな悪者扱いで描かれてる点は笑えるけどね。
ジュリロバが主演ってのも、今更“売り”としてはキツイなぁ。


ぼくセザール10歳半1m39cm (2004-7/21)
文字通り10歳半の男のコが主人公。彼のコンプレックスを軸に物語が進み、
友達との冒険旅行を経て、最後はハッピーエンドで幸せ気分。
ダイアローグ形式で描かれる子供世界は笑いあり、切なさあり、とっても素敵な映画です。
...と、まるでホメた文章を並べましたが、結構あざとい作品なのだ。
子供って、実は大人が思ってるほど子供っぽくなくて、いろいろ考えて悩んでる!
という視点で描かれた内容だが、その“大人びた子供像”自体が大人的発想で、
逆に、子供の世界を巧く描けてない感じがしてしまう。
幾つか観られる笑いの場面も、呆れるほどベタなのに、
監督自身そのベタさに気づいちゃいない。まるで“騙しきれてない嘘”みたいな映画。
でも、まあ、素直に騙されて観ると、わりかし幸せな気分になります。


茶の味 (2004-7/20)
さすが石井克人監督!センスの良い笑いで魅せてくれます。
マシンガン的な笑いじゃなく、脇腹をくすぐられる感じの小気味よい笑い。
でも笑えるポイントは明確で分かり易い。しかも影像だからこそ作り出せる笑いが多い。
だからと言って、ギャグ映画、おバカコメディの域にあらず、とても和みます。癒されます。
真夏に一服の清涼剤!劇場がユーモアセンスたっぷりの避暑地と化します。和むねぇ。
本作のストーリーを語るのは容易くなく、幾つものエピソードで綴られる構成。
マンガっぽいキャラのオンパレードだが、人間の本質、生活感が絶妙に描かれてます。
豪華多数のキャスティングも嫌味が無く、巧妙な配役。
まったり、のんびり、のほほんと、この映画の世界観に浸ると幸せ気分満喫。
それ故に、一日中でも本作を観ていたい。そして観た後は思い出し笑い必至。


スパイダーマン2 (2004-7/13)
ええ話やぁ。切ないわぁ。泣けてくるでぇ。
ヒーローアクションものって、戦闘シーンやVFXのみに力を注ぎ、
ドラマの部分が無機質気味になる場合が多いけど、本作は前作同様、
トビー・マグワイア演じるピーターの人間ドラマの要素が色濃い。
仮にスパイダーマン活躍シーンが無くて、ドラマ部分だけの映画だとしても、
作品としてのクオリティは悪くなく、充分に楽しめるはず。
も、も、勿論、アクションシーンは前作以上の見応えがあるから、
ドラマファン、アクションファン、どちらも満足させる仕上がりです。
やっぱり地味な青年役ピカイチのトビーが主人公ってのが良いんだよねぇ。
好感がもてるスパイダーマン、既に製作が決っている続編も期待。


4人の食卓 (2004-7/9)
サイコホラーというジャンルで宣伝されてますが、これは人間ドラマを描いた映画です。
しかも、悲しい悲しい人間ドラマ。あまりにも切ない。
物語の上っ面のみを観たとしても、その悲しみは確実に伝わってくる。
が、しかし、内容の全貌を完璧に把握するのは難しい。
“難解”と言うと、観る側の理解力次第って感じだけど、本作はそうじゃない。
“不親切な作品”と言っちゃう方が適切。幾つかのエピソードがあるのだが、
謎が解明されてひとつに繋がる?ラストシーンの意味は?だからオチは?
ヒントや謎解きが描かれなさ過ぎて“巧さ”が見えてこない。
観客に媚びる作品にする必要はないが、良質なパズルなのに、
誰も完成できなかったら欠陥品だと思われてしまう。そういう意味で実に惜しい。


ロスト・イン・トランスレーション (2004-7/6)
全編わりと淡々とした内容だから、退屈だと思う人も多いかも知れない。
でも、作品に感情移入しちゃいましょう。切なくなります。気持ち良い切なさ。
来たくもない海外に無理矢理連れて来られ、異国でひとりぼっち...
映画と同じような体験をしてなくても、似たような“孤独感”は共感できる。
むしろ胸が痛いほど分かります。そして、孤独と不安を共有する者同志が惹かれ合う淡い恋心。
ラストに流れる、はっぴいえんどの曲「風をあつめて」が、また切なさを増幅。
“理解不能な異国”として、日本をデフォルメして観せる場面もありますが、
それはコメディ要素として、笑って水に流しましょう。
決して日本がバカにされてる訳ではありません。監督ソフィアはセンス良いです。
ビルとスカーレットも好演。デフォルメされた演技より控え目な役こそ難しいはず。


リアリズムの宿 (2004-6/29)
いつまでもずっと観てたい映画。五時間でも六時間でも、この世界観に浸っていたい。
アメリカ人がアメリカのコメディを観て大爆笑するような派手さではないけど、
脇腹をずっとくすぐられているみたいな笑いの快感が気持ちいい。
この心地好さにハマったら抜けられない!観終わってもニヤニヤ笑ってしまいます。
話的に大きなエピソードは無いし、ベタでキャッチーなギャグの連続でもない。
でも、まったりとしたテンポの中で観られる会話劇に笑いの至福を感じる。
男二人旅にとどまらず、女のコがひとり関わるだけで、ほんのり切ない気分も味わえる。
長塚圭史、山本浩司、尾野真千子、ベストキャスティング!
場末の温泉街を舞台にした、過度ではない笑いと哀愁漂うシュールなロードムービー。
好き嫌いが明確に分かれる作品でしょう。


ハリー・ポッターとアズカバンの囚人 (2004-6/24)
前二作とも「優等生的な作品」だから、つまんな〜い!と言った僕ですが、
今回はゲイリー・オールドマンが出るってことで、すごく楽しみだった。
久々の映画出演、しかも悪役、どんなダークっぷりを魅せてくれるのか?
が、しかし、なかなか登場しないんだなぁ。待ちくたびれて退屈。
しかも、遂に凶悪脱獄犯がハリーの前に現われたかと思ったら、余計なヒネリ(^^;
ゲイリーの変態キャラが唯一の楽しみだったのに残念。がっかり。
と、マニアック気味な観方をしてしまいましたが、映画の出来としては、
相変らず全てを無難に満たしている作品です。故に魅力が感じられません。
ストーリーを解決する大オチもズルい!だったら最初から全部その方法を使えばいいじゃん!
メインキャスト三人は今後どんな映画に出るのか?子役の壁は切ないねぇ。


スチームボーイ (2004-6/20)
子供から大人まで無条件に楽しめるエンターテインメント。
大友作品は難しい?『AKIRA』を観てそう思ってる人もいるだろうけど、
心配ご無用。本作は分かり易いストーリーです。痛快冒険活劇!
19世紀のイギリスを舞台に、発明品が悪用されないように少年が頑張る話。
あまりにヒネリの無いストーリーなので、逆に物足りないくらい。
でも大友スタイルこだわりの画は緻密で精巧。細かいところまで美しく描ききってます。
スピード感あって、迫力あって、映像美は圧巻!素敵です。
そして素晴らしいのがスティーブ・ジャブロンスキーの音楽。
全編ほぼずっと聞えてくる彼の音楽は邦画をハリウッド映画にしてくれます。
小西真奈美の声優っぷりも最高。ド肝抜かれます。巧い!


69 sixty nine (2004-6/11)
原作が村上龍、監督が季相日、主演が妻夫木、安藤...
でも、いかにも宮藤官九郎の作品て印象が色濃い!
妄想が影像として現れたり、方言に字幕が出たり、爆笑のセリフ、下ネタ。
もちろん原作や監督のセンスも絡み合っての結果だろうが、
脚本がクドカンだからこその“笑い”が全面に溢れている。
学生運動末期の69年を舞台に描いているが、な〜んも難しい内容ではない。
実際、季監督もクドカンも70年代生まれだから、69年未体験者。
つまり、リアル69年ではなく、ある意味、空想的69年だから面白い。
ロックとエロの“おバカ青春映画”ですぅ!
観て楽しんで笑って、ちょっぴり元気になる作品。


ブラザーフッド (2004-6/10)
「韓国中が泣いた」という宣伝文句に嘘偽り無し。こりゃ泣ける。
韓国は泣ける恋愛映画が沢山あるが、本作はまた違う“泣き”。
無理矢理戦火に駆り出された兄と弟。兄弟愛と言ってしまえば簡単だが、
驚愕の展開を経て迎えるラストを観れば、二人の絆に泣かずにはいられない。
そして本作は立派な戦争映画として成立している点も高く評価できる。
“立派な...”と言うのは変な表現かも知れないけど、
舞台設定、時代背景で戦争を扱っている作品が必ずしも戦争映画では無かったりする中、
本作は戦争の“残酷さ・愚かさ”を見事に描いている。
邦画で観られる日本人の心情と、ハリウッドのエンターテイメント性、
どちらも内含した韓国映画のポジションは素晴らしい!


深呼吸の必要 (2004-6/1)
さとうきびを刈るバイトで、都会から沖縄にやって来た若者たち。
基本的には全編さとうきびを刈る話です。んで、もちろん映画的な展開として、
それぞれディープな挫折や虚無を抱えた若者たちの悩みが順番に浮き彫りになります。
口論したり慰めたりしつつ、最後は連帯感や達成感を経験して爽やかに終わり。
文字にすると淡泊なストーリーだけど、観ると意外に癒される作品です。
大きな抑揚は無く、若者それぞれのエピソードも取って付けたみたいだけど、
自分もさとうきび刈りに参加してるような錯覚になり、
観終わった時は清涼感がある。ちょっと元気になる。
東宝作品以外の映画は初出演となる長澤まさみ。
ほとんどセリフが無い暗い役だけど、彼女の魅力を静かに味わうことができます。


デイ・アフター・トゥモロー (2004-5/27)
宇宙人侵略でも巨大隕石衝突でも火山大爆発でもなく、
異常気象が原因で地球が滅亡の危機を迎える。都市が海に沈んだり、
巨大竜巻が街を破壊したり、そういう影像はVFXで圧倒的な迫力。
そしてストーリーテラー的な役割で、気象学者を軸にその家族のエピソードが描かれる。
『ディープインパクト』をイメージすれば、内容的方向性は大方の違いはない。
まあ比較的ベタな作品。でもエメリッヒ作品なので、安心して影像の凄さを満喫できる。
いや、安心どころじゃなく、スペクタクルな影像にハラハラドキドキ!
映画を楽しもう!という素直な姿勢で観れば、とっても面白い。
テーマパークの災害アトラクションに入場した気分で観ましょう。
異常気象...案外リアルな設定で、遠からず近からず怖いかも。


シルミド (2004-5/25)
とにかく韓国映画は秀作が多い。個人的にはピュアな恋愛ものが好きだが、
重いテーマが軸になったシリアスな作品も見応えがある。
韓国の政治的歴史的背景が映画としての題材になるので、
観慣れた邦画やハリウッド映画に無い衝撃と緊張感が伴う。
本作も南北対立時代の、悲劇的な実話を描き、
他国の映画では観られない“痛み”“哀しみ”に触れることができる。
この実話、とにかく凄まじく酷虐。南北問題がもたらす非人道的な出来事で、
終幕の戦闘シーンは切なくて泣けます。驚愕の内容を低いテンションではなく、
“魅せる”作品に昇華させたカン・ウソク監督に拍手。
主演のソル・ギョングは哀しみを背負った役が似合い過ぎます(^^;


キューティーハニー (2004-5/24)
アイドル好きが喜び、コスプレ好きが目を輝かせ、アニメ好きが興奮し、
特撮ヒーロー好きが元気になり、コメディ映画好きが笑顔になる作品。
おバカな内容に時間と費用を掛け、本気で作る大人のココロが素敵です。
オープニングがアニメだったり、実写映像をコマ撮りした手法とか、
突然ミッチーが歌いだしたり、いろんなアイデアが盛り沢山。
全米配給も決まり、センス良い珍品であるのは間違いないのだが、
庵野監督作品にしては及第点ギリギリ。スピーディーなテンポ良さが持続するかと思えば、
失速するシーンもあるし、“笑い”と映像のぎこちない距離も感じる。
サトエリの演技も、作品自体のテンションに到達していない感が否めない。
もっと面白い映画になるべき余地が残された、実に惜しい作品。


21グラム (2004-5/21)
例えば、とても美味しいものを食べさせてくれる店があり、料理目当てに訪店する。
そしたら実際に料理が美味いだけじゃなく、店の内装も雰囲気も自分好み。
店員の接客も丁寧で優しい。何もかもパーフェクトで、期待以上の至福を満喫する。
本作はそんな“期待以上のレストラン”です。アレハンドロ監督のマジックに魅せられます。
観る者それぞれがいろんなことを考え廻らす“生と死”に関するテーマを描き、
そのストーリー設定は(仮に重いテーマを無視して観たとしても)スリリングで興味深い。
更に役者陣の人間描写が重厚。テーマ・物語・役者、以上でも見応え充分なのに、
時間軸が前後バラバラな、斬新で効果的な構成演出に驚かされる!
まるで二時間のダイジェスト版?てな感じの分刻み変則構成にすることで、
無駄なシーンがなくなり、感情的にも知的にも刺激される秀作となっている。


トロイ (2004-5/18)
A国の王子がB国の姫にホレて略奪しちゃったから、
B国が怒ってA国を攻める。B国には最強無敵の兵士アキレスが居て大活躍!
以上、たったそれだけの話の歴史活劇...と言うより戦争映画。
愛?名誉?情熱?運命?そんな大義名分で、結局は剣と弓で殺し合う。
しかも、美しい物語とか英雄とか言って、トロイ戦争を讃える映画って、どうなの?
あっ勿論、戦争の悲しみが随所随所に描いてあるけど、基本的には美化してる。
観終わって「ちょっと待って。だから何?」って思っちゃいます。
でも映像迫力は壮大で圧巻。こんな画が作れちゃうなんて凄い!と素直にココロん中で拍手。
引きの画で数万人の兵士がババ〜ンと映し出されたら、それだけで鳥肌もの。
とりあえず、スペクタクルな映像とマッチョなブラピを堪能すればいいんじゃない?


下妻物語 (2004-5/17)
完璧!笑いと感動の振り幅が見事。ってか、全編笑いの応酬。
だからこそベタで些細な感動シーンも印象的だったりする。
いや、笑いだけじゃなく、意外にストーリーテーマも良くて胸が熱くなります。
アウトロー、友情、こだわり、夢、生き方...そんな、真顔で描くと泥臭くもなる内容を、
ポップでキャッチーな笑いの連打!連打!で魅せてくれる。
登場人物キャラ、セリフ、演出構成、全てが絶妙の間で、
毎分何回の笑いがあるか的な勢い。これこそエンターテイメント!
中島哲也監督、映画という映像作品を本気で遊びまくってます。
浦安にある某TDLなんかより本作を観る方が絶対おもしろい(^^;
端役に至るまでミスキャスト無しの出演陣も豪華で最高です。


レディ・キラーズ (2004-5/13)
55年作品『マダムと泥棒』を何故コーエン兄弟がトム・ハンクス主演でリメイク?
トムだからこその演出的効果は無いに等しいし、
コーエン兄弟ならオリジナルストーリーで撮る方が面白いに決まってる。
しかもリメイクとしてのコーエン兄弟的な新しいアプローチも特筆する程は見当たらない。
『ディボース・ショウ』と立て続けに緩い作品だと“コーエン作品にハズレなし”と言えなくなっちゃう(^^;
とは言え、本作もコーエンらしいシニカルなストーリー展開!
開始1時間は退屈極まりないユーモアセンスに欠けた内容だが、
後半30分はハチャメチャで大爆笑!まるでクイズ番組の、
「最後の問題は百万点です――おいおい今迄はなんだったの?」みたいなノリ。
でもリメイクの元ネタを既に観て知ってる人は楽しむポイントナッシングでしょう。


パッション (2004-5/11)
衝撃的な拷問シーンが、やたら取り出たされている。
作品のごく一部の要素だけが注目されることを、監督は嫌がるのが常。
が、本作は間違いなく凄惨なシーンがポイント。そこが大事。それこそが大事。
拷問が最大目的ではないにしろ、メル・ギブソンが描きたかったことの大きなひとつ。
どんなに拷問を受けようとも、拷問人を赦し、祈り続けるキリストの姿を観れば、
キリスト教徒じゃなくても涙し、何かを感じることだろう。
幕の内弁当的にいろんな要素が詰まっていて、ポップで楽しめる作品ではなく、
ひとつのことを丁寧に丁寧に描き上げた、まるで日の丸弁当(^^;
巨額な私費を投じ、ラテン語アラム語で脚本を書き、数々の非難を浴びながらも公開した、
メル・ギブソンの熱い想いに触れるだけでも価値のある驚愕的な作品。


CASSHERN (2004-5/7)
いやぁ、凄い凄い!こんなにも明確な世界観が描かれてる作品だとは思わなかった。
今までの邦画には無かった映像!実写でもアニメでもない、VFX独特の別次元へと導いてくれる。
美を基調にした映像は、更にアクションありドラマありで圧巻!衝撃的!
劇場映画初監督でこれだけの作品を撮るとは、紀里谷監督スゴ腕。
でも、だからこそ、映像センスばかりが際立って、役者陣の演技が無機質に見える。
豪華なキャストだが、紀里谷ワールドを実現するための駒に過ぎないって印象を受ける。
『エヴァンゲリオン』『マトリックスレボリューション』のように、
終盤近くから始まる主人公お悩み系のセリフ攻め問題提起は少し萎える。あざとい。
まあ、それも紀里谷ワールドなのでしょう。熱い想いなのでしょう。
アニメの実写版は陳腐?と思わずに、一見の価値あり。


死に花 (2004-5/6)
日本映画界の大御所ばかりが出演してる...というだけで、
ああ年輩の人が観る映画だなぁとか思ってませんか?
監督は犬童一心、脚本は小林弘利。つまらない作品になる訳がない。
老若男女が楽しめるセンス良い映画なんです。だってストーリーが奇天烈。
70歳代の老人たちが銀行の金庫目指して地下に穴を掘りまくる!
それだけなら似たような映画もあるけど、本作はラストが痛快!
ハッキリ言ってすごい展開。アナーキー!良い意味でバカバカしくて爆笑しちゃいました。
“大人のファンタジー”って表現があるけど、本作は“老人のファンタジー”です。
メッセージ性がありつつ、娯楽作品としても完成度の高い優良邦画。
山崎努は歳を重ねるごとに渋くなって、格好いいなぁ。


世界の中心で、愛をさけぶ (2004-4/27)
これは大泥棒映画です。僕のココロは奪われました。泣きっぱなし状態。
サクとアキのキャラ設定、キスシーンの無用化、キーアイテムとしてのカセットテープ、
そして婚約者・律子の存在。原作から昇華した映画的アプローチが施されている。
行定監督によって脚色された映画化は原作より巧くて清いと思う。
ただ、先に原作を読んで感動した人は、映画の世界観に戸惑いを覚えるかも知れない。
原作の内容を期待するのではなく、心を白紙に戻してから映画を観るのもひとつの方法。
でも、原作と映画の違いを真摯に見据えて、「ベストセラー小説を映画化することの難しさ」
を淘汰した行定監督のセンスの良さに陶酔してもらいたい。
本作で森山未來と長澤まさみを初めて知ることになる人も多いだろうが、
彼等が演じるピュアなサクとアキは涙なしでは観れません。素敵過ぎます。


ビッグ・フィッシュ (2004-4/23)
ティム・バートン作品の特徴と言えば、風変わりな設定、デフォルメされたキャラクター、
それをファンタジックに魅せつつ、兼て現実の厳しさ、困難も描く。
観る者がバートン自身の劣等感にどれほど共感できるか?がポイントなのだが、
でも、エンターテイメントとして昇華した作品でもあるところがバートンのセンスの良さ。
が、本作に関しては、バートン丸くなった?落ち着いた?大人になった?って感じ。
コミカルでファンタジー、お得意のフリークスキャラも登場で、“らしさ”はあるものの、
いつもの“決して最大公約数的ではない”バートンが、妙に洗練されちゃった作品でもある。
だからディープなファンには物足りないが、一般的には丁度いい秀作でしょう。
ウディ・アレン『地球は女で回ってる』程の露骨さではないが、
幾つものショートストーリーがコラージュされていて、一粒で二度も三度も美味しい映画。


スクール・オブ・ロック (2004-4/21)
コメディ映画としても、大人と子供の交流話としても、
サクセスストーリー的な展開としても、全くセオリー通りの作品。
でも、だからこそ安心して身を委ねて素直に笑える揺りかごコメディ。
敢えて例えちゃうと、メリル主演『ミュージック・オブ・ハート』のロックバンド版。
だからロックネタ満載。洋楽に詳しい人と疎い人では楽しめる度に大きな落差あり。
主演のジャック・ブラックは実際にギャグロックバンドをやってるだけに、
本作では水を得た魚。芸風炸裂大爆発!濃いったらありゃしない。まさにブラック!(^^;
濃過ぎるが故に、ブレイク当時のジム・キャリーみたく好き嫌いがハッキリ分かれる存在。
どっちにしろジャックは今後主演作も増えるだろうし、注目の役者です。
再度言いますが、ロックネタが分かるかどうかで笑いのポイントが倍は違っちゃいますよ。


オアシス (2004-4/19)
例えば役者の演技で、「悲しくて辛くて泣いてる」姿よりも、
「悲しくても涙を堪えて笑顔を作る」方が、より切なく感じませんか?
本作は悲しい話を悲しみ一色で暗く描くだけではなく、笑いや楽しさも配色されている。
だからこそ、より悲しい。より切ない。とてつもなく胸が痛い。
人は人を嫌う。社会に適応して生きるということは、自分で自分に無理を強いること。
だから、それを邪魔する者を嫌う。排他する。そしてそんな自分を正しいと思い込む。
自分に内在するダークなもの、認めたくないもの、日常の中で目を背けたくなること、
そういうものと対峙するべきだと、この映画を観て改めて気づかされる。
社会から疎外された者同志の恋愛、そしてその周囲の人々...
笑いと涙だけでなく、たくさんの想いに出会う作品です。


キル・ビル Vol.2 (2004-4/17)
前作を観て作風を知ってる分、続編の内容的衝撃度は薄い...
ということは全く無い!おもしろ衝撃度完全キープ。いや、むしろポイントアップ!
元々ひとつの映画だった作品を二本に分けて公開した訳だから、
きっちりテイストを変えてくるあたり、タランティーノのセンス良き遊び心が伺えます。
タラちゃん、ホント楽しみながら作ったんだろなぁ。羨ますぃ〜!
前作程の派手さは無いけど、でも、またまたいろんな要素が詰め込まれた映画幕の内弁当!
ウェスタン、カンフー、ゾンビ映画...をリスペクトしてパロった映像は楽し過ぎて涙もの。
細かい元ネタを知らなくても充分に心くすぐられます。
本作はまるで映画祭り!作品一本でフェスティバル成立って感じ。
内容的プロセスを楽しむために、ストーリーはハッピーエンドだということ、敢えて知っておきましょう。


コールドマウンテン (2004-4/16)
愛する人に会いたくて戦地から脱走する男、彼を村で待ち続ける女。
恋愛映画の要素は確かにあるけど、そこに重きを置いてるような印象は薄い。
それよりも、悲劇を生み出す戦争を描いた映画として見応えがある。
戦時中の、兵士ではない人々の生き方、暮らしを見せることで、
戦争の残酷な被害を我々に伝える「戦争映画」なのだ。
恋愛ものを期待するのではなく、戦争映画として真摯に受けとめられるべき作品。
しかも、ジュード側とニコール側のドラマが別々に平行して描かれ、
どちら側も次から次へと出来事が起こるので、スクリーンから目が離せない。
それにしても、苦労知らずの令嬢がニコールで、タフな田舎女がレニーって、
分かり易過ぎる見事なキャスティング!レニーちゃんハマリ役。


卒業の朝 (2004-4/12)
“普通”という言葉は曖昧なので遣いたくない。遣わないようにしてる。
でも敢えて、遣う方が効果ありそうなので、意図的に使用する。
この映画、普通です。とってもとっても普通なのです(^^;
教師と生徒の感動ストーリー!と聞いて、ある程度の想像ができると思うが、
全く以て想像範疇内の王道ストーリー。キング・オブ・ベタ。
ただ、王道ストーリーと言っても、反抗的な生徒と教師が最後に和解するってオチではない。
感動作にありがちのキレイな終幕ではないのが、ある意味、リアルで新しいかも。
いやぁ、でも、まあ、ベタでもいいから感動まっしぐら路線で泣かせてほしかったなぁ。
理想通りにはいかない厳しい現実と対峙し、ささやかな喜びを見つけ生きていくしかない...
と、そんな気持ちにさせられる作品です。


ホーンテッド・マンション (2004-4/9)
大人の観賞に堪える娯楽作品?それとも子供に媚びたベタな映画?
──いいえ、どちらでもありません。
ホラー映画の要素がたっぷり?それともコメディ?
──いいえ、どちらでもありません。
男性向け?女性向け?──いいえ、どちらでもありません。
じゃあ、ディズニー好きが観る映画?──いいえ、違います。
だったら誰が観る映画なの?──こんな映画、誰も観ません。
でも、エディー・マーフィ主演だから楽しいでしょ?──いいえ、それは気のせいです。
ディズニーランドのアトラクションを映画化した訳だから、知名度はあるけど、
ハッキリ言って名前負けです。笑えない、怖くない、楽しめない。


ディボース・ショウ (2004-4/6)
どっちに転んでもコーエン兄弟!つまんない訳がない!
いつものコーエンテイストを期待して観ると、ちょっと物足りないかも知れないが、
それでも、そこら辺の映画よりは随分おもしろい。
コーエン兄弟にしては珍しく、いや初のメジャー作品だから、
それなりに誰でも楽しめる最大公約数な作りになってますが、センスの良さは抜群。
前半、細かいユニークさはありつつも、ストーリー的には「あれ?」だけど、
後半、緻密に計算された展開の波が押し寄せて来ます。
コーエン兄弟がベタな作品を作るはずないじゃ〜ん!
まあ、肩の力を抜いた実力五割てな感じの緩い仕上がりですけどね。
それも意図的、計算ずくなんでしょう。コーエン作品にハズレなし!


恋人はスナイパー (2004-4/5)
マクドナルドのハンバーガー、あの品質で84円だから嬉しい。
仮に、いくら高級素材使用って言われても、1個500円なら買わない。
本作は500円のバーガーです。テレビドラマを映画化すると、
気負い過ぎた作り方で、ドラマファンをがっかりさせる場合がある。
テレビと同じ品質で充分なのに、高級素材で500円な感じが失敗。
しかもアクション的な見どころもテレビ時より少なく、
ラストも感動させようとする演出が無理矢理でスムーズさに欠ける。
最初から最後まで緊張感は持続するが、大きな抑揚はない。
水野美紀も終始ぐったりしてるように見えて、彼女の魅力が感じられない。
まあ、テレビ版のファンが贔屓目に観賞すればいいんじゃない?って作品。


Jam Films2 (2004-4/1)
前作は、まるでテーマパークのアトラクションを遊びまくったような楽しさがあった。
僅か15分の短編だが、どの話も巧く作られた極上のエンターテイメントだった。
今回は趣が変わり、CMやPVの監督らが少し長めの短編を撮る四本オムニバス。
これが吉とでるか凶とでるか?結果は...小吉気味の凶(^^;
四本とも確かに面白いが、「変わったことをしてやろう」的な監督の意図が先行して、
エンターテイメントに昇華しきれてない。実に惜しい。
が、しかし、その中でも『机上の空論』はラーメンズと小島監督のセンスが絶妙に交じり合い、
楽しめる、笑える作品になっている。ベタな恋愛講座ものだが、
ラーメンズ小林の“計算された笑い”が興味深い。舞台では表せない見事な映像作品。
四本全体としては、映画を観た充実感不足でしょう。


eiko (2004-3/29)
意外な掘り出しモノ見つけたぁ!と言いたくなる邦画です。
番宣コピーにあるように『アメリ』を期待して観たのだけれども、
前半は全くアメリじゃない。むしろ悲劇。エイコが可哀相に思える。
が、しかし、最後まで観ると分かる。アメリです。
いや、ある意味アメリより文脈的に深い幸せ感があります。
騙されてばかりいるエイコの、それでも人を信じようとするココロが、
周囲に確実に伝わっていく過程は優しくて切なくて愛しい。
ベタなお涙頂戴ものではないが、涙なしには観られない。しかも悲しい涙ではありません。
役者陣も最高で、麻生久美子は適役だし、ジュリーもいい味だしてる。
更に久々のコミカルじゃない阿部サダヲは好感度アップ。


クリビアにおまかせ! (2004-3/25)
フランク・キャプラ『我が家の楽園』にも似た風変わりな人々が住むクリビアハウス。
緩い設定と緩いストーリーと、突然歌い踊る系の緩いミュージカル。
野暮ったいオシャレ感が小気味良いと思ったり思わなかったり。
60年代のオランダTVドラマを映画化した訳だから、意図的な作風なんですねぇ。
退屈だぁ!とか、つまんない!とか言わずに、無条件降伏して身を委ねましょう。
そしたら良い意味でのキッチュな世界にのめり込んで心地いいはずです。
斬新!とか、センス良いミュージカル!とか、決して期待しないで観ましょう。
風変わり住人全員のキャラが活かしきれてなかったり、
無理矢理ハッピーエンドな締め方で、細かな問題未解決状態だったり、
そんなツッコミは絶対しちゃいけません。親バカ的寛大な心を持ちましょう(^^;


花と蛇 (2004-3/23)
石井隆ワールドに団鬼六の原作、そこに杉本彩がフューチャリングされて、
そりゃもう濃いったらありゃしない。濃過ぎて消化不良をもたらします(^^;
とにかく杉本彩の熱演は半端じゃない。撮影中、ハードなプレイに失神したり、
血管が切れたって言うんだからスゴイ!彩さま見事ですぅ。
でもホメたくなるのはそこだけ。話的にも映像的にもお腹いっぱいで吐きそう。
味そのものは良いけど、肉じゃがのじゃがいもばかり食べさせられてるような感覚に陥る。
しかもSMを本意気でやってるにも関わらず、そのリアルさが伝わってこない。
まあ、それは観る側の受け止め方にも問題がある。
偽物エンターテイメントに慣れて、それを逆にリアルと感じるようになっているのかも知れない。
とにかく、欲望むき出し変態精神いっぱいの人は観賞の価値ありです。


ドッグヴィル (2004-3/15)
ラース監督、やってくれましたぁ!期待を裏切らない見事な天才芸。
アメリカ人を皮肉ってる設定だけど、特定民族に関わらず、人間の本質を絶妙に描いてくれる。
偽善の裏側と言うか、善悪の精神構造、あるいは人間のモロ弱い部分…
そんな残酷な映像を決してアナーキーではなく、
むしろエンターテイメントと呼んでもいい領域にまで昇華させて観せてくれる。
三時間の長尺をたっぷり遣って登場人物の心理描写を映し出すから、
観る者は有無を言えず犬村の無力な傍観者と化してしまう。そして偽善を自覚する。
白線と最小限の家具しかないセットの効果もすこぶる圧巻!
舞台演劇でもなく映画でもない、これぞラース作品の出来上がり〜ッ(^^;
発想も脚本も演出も全て申し分ない見応えありまくりの映画でございます。


殺人の追憶 (2004-3/10)
連続殺人、犯行に隠された謎、捜査する刑事たち、犯人は誰?
そんなストーリーだが、決して犯罪ミステリーではない。
目からウロコの謎解きがあり、衝撃的な結末!みたいな映画だと侮ってはいけない。
元になっている実話が未解決であるが故に劇中でも犯人は捕まらない。
推理的な要因はあくまでも設定のみ。本作の見所は刑事たちの人間ドラマ。
シリアスで暗くて悲愴感漂う内容に思われがちだが、意外にコミカルな演出も多い。
残酷な事件とコミカルシーン、まるで水と油?いやいや実はこれがスイカに塩。
映画の成立方法として、こんな良いバランスがあったのかぁ!
と嬉しいショックを受けました。大きな抑揚は無いけど退屈しない作品。
やっぱり韓国映画は面白い。改めてそう思う。


ペイチェック 消された記憶 (2004-3/5)
ジョン・ウー監督作品なのに徹底的にB級。それは主演がベンだから?
それも確かに理由のひとつ。でも大要因はストーリーでしょう。
消された三年の記憶に一体何が起こっていたのか?って設定は良い。
が、しかし、少しずつ明らかになる謎解きが実にしょぼい。
お世辞にも巧いと言えない。目からウロコが全く落ちない。
ネタバレにならないよう、ストーリーと関係のない例えで言うならば、
目覚めると六等分されたケーキがあるが、部屋には自分も含めて五人しか居ない。
なぜ?実は一人がトイレに行ってるからだ...そんな程度の謎解きなんだなぁ(^^;
記憶をビジュアル化した映像もスタイリッシュさに欠ける。
ジョン・ウー恒例、白い鳩の登場も無理矢理って感じで笑ってしもた。


恋愛適齢期 (2004-3/3)
ジャックとダイアンが主演だけど、敢えて決め打ちします。ダイアン・キートン最高!
新しい恋をし始める中年女性を過剰じゃなく、かつ強調すべきところは強調し、
実に魅力的に演じている。特異な役ではない、こういう演技こそが本当は難しい。
いやらしくなく笑えるエッチシーンや、後半の戯曲執筆シーンはとても印象的。
ジャックでもなくキアヌでもなく、見所はダイアン・キートンです。断言します。
主演陣からイメージする訳ではないが、本作はいろんな映画の要素と重なるところがある。
『恋愛小説家』『アニー・ホール』『ユー・ガット・メール』『ハイ・フィデリティ』等々。
良い意味で恋愛名作を堪能できる美味しい作品です。
大筋はベタなお約束通りのストーリー展開だが、興醒めせず、
逆にそれが安心感さえ得ることのできる良質な恋愛映画です。


花とアリス (2004-3/2)
先告します。僕は岩井俊二作品に無条件降伏しています。つまりファンです。
厳密に言うと無条件ではなく条件付です。「陰・岩井」より「陽・岩井」が好きです。
そんな「陽・岩井」作品が好物の僕が言います。『花とアリス』最高!ファンタスティック!
何気ないセリフも小粋な演出も、映像も音楽もストーリーも何もかも素晴らしい。
人物の心情変化の描き方も無理なくあざとくなく実に巧妙。
きっと岩井俊二は実力の半分も発揮してないだろうけど、
それでも楽にハードルを飛び越える力量は彼のセンス良さが成し得る業。
終幕近くの切ない告白シーンと落語のインサートは不思議な良さが絶妙。
納豆にマヨネーズ?エーッ!と思いきや、食べたら意外に美味だった、みたいな(^^;
まあ岩井作品ファンじゃなかったら、映画を観た充実感が少し欠ける作品かも知れない。


イノセンス (2004-2/27)
本作を友達と観た人の多くは「難しかった。分かった?」と話すことだろう。
アニメ映画という娯楽作品の領域ではあるが、まるで押井守の思想書を読むが如し。
斬新なストーリーを楽しむこともできるが、本質的な見方は“セリフを読む”こと。
何気に油断して観ていたら、重要なセリフを理解できず置いてけぼりを食らう。
しかも良い意味で不親切な作品。例えばストーリーをアルファベット順列だとすると、
“ABCD”は語ることなく、いきなり“EFG”から始めて、
「分からない人に順を追って説明しないよ」的な演出になっている。
と言うか、前作があって、これは続編だということをもっとアピールした方がいいんじゃない?
興行的な意図として、敢えて続編を強調する番宣をしてないけど、
話的には完全に『GHOST IN THE SHELL』の続き。前作を観てから劇場に行きましょう。


アップタウン・ガールズ (2004-2/24)
心に残る見応えある良い映画が美味しい料理だとすれば、
本作はポテトチップス。小腹が減ったのでとりあえず間に合わせで食べて満足!みたいな。
ベタな話だけど興醒めするほど悪くなく、だからと言ってセンス良いコメディでもない。
ノーテンキな大人とマセた子供が反発しながら影響し合うストーリーは既に古典。
他の類似作と一線を画する要素はダコタちゃんの起用でしょう。
作品の出来には関係なく、ダコタちゃんが出てるだけで映画の魅力が増す。
お決まり通り後半はお涙頂戴系いい話になっていくんだけど、
それならそれで、前半はもっとハチャメチャにしてもいいんじゃない?
楽しさは伝わってくるが、笑える域には程遠い演出。
こういう映画は笑いと涙の振り幅が大きくないとねぇ。


伝説のワニ ジェイク (2004-2/23)
テレビで放送されてた頃を知らないけど、テレビシリーズを再編集した様まる分かり。
こういう荒唐無稽な内容は好きだし、犬童一心監督作品も興味あるけど、
これって映画化する必要あるの?まあ確かに24人のエピソードを繋げることで、
ジェイクの姿がより鮮明に浮き彫りになりつつある感じはするけど、
集中力の欠けた単なる羅列構成になっちゃうのも否めないかなぁ。
犬童一心、山村アニメ、そしてcobaの音楽、気持ちの良いアンサンブルは正解。
キャスト陣も多彩で魅力的だけど、やっぱり「映画を観た!!」っていう充実感は無い。
テレビ番組を局の試写室で観賞したみたいなイメージ。
解釈自由パターンも好きだけど、エピソード羅列構成に集中力を持たせるなら、
ジェイクの存在理由をもっと分かり易く描いた方が面白いんじゃない?


ゼブラーマン (2004-2/20)
残念。とても残念。悔しくて仕方ない。この不満をどこにぶつければいい?
映画のアイデアは最高なのに、その良さを活かしきれてない。
つまり、クドカンの面白い脚本が三池監督のセンスで台無し!
料理で例えると、レシピは斬新で完璧なのに、料理人の腕が悪いって感じ。
三池監督を悪く言うつもりは全くありません。ただ、クドカンとは合わないです。
表現方法としての相性や持味の違いってあるもんねぇ。
クドカンの脚本は笑えるセリフや面白いシーンが幾つもあるのに、
三池監督の演出とテンポの悪さで、笑えない映画と化している。
この作風の不一致に気づかない人は、クドカンの脚本がつまらないと思うかも。
クドカンは面白いよ!センス良いよ!それだけは勘違いしないで観てください。


N.Y.式ハッピー・セラピー (2004-2/19)
ジャック・ニコルソンとアダム・サンドラーが共演のコメディ。それだけで見もの!
って言うか、それだけが見もの!特別センスが良い訳でもなく、巧妙なストーリーでもない。
公開時ほとんど話題にならず、その後ビデオ化され新作の時期だけ目立つみたいな。
観た人に感想を聞いても「まあまあ」と全員が言いそうな作品。
と、上映中ずっとバカにして観てたのだが、最後の最後に顔面パ〜ンチ!効いたぁ!
意外とハメ系な映画なんですねぇ。まんまとハメられました。
ヒステリックにブチ切れる奴ばかりに囲まれて主人公が可哀相。笑えないよ...とか、
思うんだけど、最後まで観たらホッとする。まあ、めでたしめでたし。
でも、やっぱり、そんなに上質なコメディでもないね。
何の先入観も無く観れば、それなりに楽しいけど、期待して観たらがっかりする。


1980 (2004-2/17)
太宰治『人間失格』で、竹一が主人公に「ワザ。ワザ」と言いますが、
僕も監督のケラさんに言いたいです。「ワザ。ワザ」あっ、もちろん良い意味です(^^;
この映画、好き嫌いが明白に分かれるでしょう。受け入れられない人も多そう。僕は好きです。
ベタな笑いなんだけど、ベタを更にデフォルメすることで逆にシュールになっちゃう。
そんな笑いが気持ちいい〜!てらうことなく映画の世界に身も心も委ねましょう。
本作は60年代生まれの人なら見事ストライクど真ん中な内容だけど、
1980年を知らなくても、青春固着人は共感できます。ケラさんの気持ちも分かるってもんだ。
メインストーリーも愉快だが、散りばめられた小ネタを楽しむべし。
とにかく照れながら観るのは禁物。オープンハートでラフ&ラフ。
犬山イヌコ、ともさか、蒼井優というバランス良いキャスティングも心地いい。


ロード・オブ・ザ・リング 王の帰還 (2004-2/16)
第一章は「序章的な退屈さ」とバカにしました。
第二章は打って変わって「壮大!スペクタクル」と褒めました。
そして第三章、もう言葉もありません。ありがとうございました。
三部作にしないで、もっと凝縮しろよ!とか思ってたことをお詫びします。
観客が長い長い旅を疑似体験するためには、十時間以上にも及ぶ超大作を、
三年掛けて公開する必要があったんですね。素晴らしき哉、ピーター・ジャクソン監督!
最終章だから本作まるごとクライマックス。故に全編が見所。三時間半が苦痛じゃない。
監督お得意の怪物も出るわ出るわで、呼吸するのも忘れるくらい見入ってしまいました。
大筋や圧倒的な映像迫力だけでなく、登場人物それぞれの細かなドラマが描かれているのも魅力。
本当、こんなバカでかいスケールの作品を拝見できて、幸せ者です。


マスター・アンド・コマンダー (2004-2/13)
で?だから何?つまんな〜い!退屈しまくり。
アニメばかり観ていた子供の頃、大人のドラマとか観ても全く面白いと思わなかった、
そんな感覚に近いものを感じた。つまらないよ〜!チャンネル変えて〜!
お金かかってる大作だし、映像も迫力あるし、しょぼい要素は見当たらない。
だけど観終わって心の中に響く声は「だから何?」なんだよねぇ。
センスが悪いと言う訳ではない。決して安っぽくはない。
でもなぁ“戦場の海で乗組員は大変だぁ”ってだけのシンプルな内容、
今時わざわざ映画で観たいか?って疑問が大海原に浮かんでます(^^;
反戦映画じゃないんでしょ?娯楽作品でしょ?だったら楽しませてよぉ。
私生活まる出しみたいなラッセルの偉そう振りが鼻に付く映画です。


ドラッグストア・ガール (2004-2/9)
何も考えずにボケ〜ッと笑えます。楽しいです。嬉しいです。例えるなら、
好きな人が夕飯の用意をしてる台所。まだ出来上がってはいないけど、
夕飯前にちょっと摘み食い。これが美味しいんだぁ!って感じの嬉しさ。
クドカンが肩の力抜きつつ、でも好きなように書いてるニュアンスが全編から滲み出てる。
大筋は取り立てて面白い訳ではないが、場面ごとのセリフや、
俳優陣の持味が見事に引き出されていて、クスッと笑い続けられる作品になってます。
って言うか、笑いを軸に捉えた場合、田中麗奈が主演じゃな〜い!
柄本明を筆頭にオッチャン五人が主演の映画ですぅ。そこにクドカンらしさがよく出てる。
後半は笑いのテンポが失速するし、ラストも尻すぼみなのが残念だけど、
まあ、気楽に微笑できる作品としては充分です。


イン・アメリカ 小さな三つの願いごと (2004-2/1)
ストーリーはさて置き、演出のセンスが小粋でラブリー。
幼い息子の死を乗り越えられない貧乏な四人家族の話なんだけど、
ずっと十歳の娘の視点で描かれる。だからどんな不幸が起ころうとも、
その純真無垢なストーリーテラーっぷりに救われてしまう。って言うか、
この娘たちがカワイイ〜!特に妹が最高!育てたいって思っちゃうもんねぇ(^^;
話的に大きな盛り上がりもなく地味で、後半は『グリーンマイル』しちゃう感じもあるけど、
でも基本的にはお涙頂戴の良い話。この映画を褒める人はいても、バカにする人はいないだろう。
サブタイトルの“三つの願いごと”に関するエピソードは、ほんのりファンタジックだし、
子供のフィルターを通した心温まる演出は幸せ気分さえ感じる。
いやぁ子供たちはカワイイだけじゃなく、演技も巧いわぁ。


ラブ・アクチュアリー (2004-1/30)
「あの二人の恋が良かった」「私はあの告白の仕方が好き」と、
この映画を観た後、誰もがそんな会話で盛り上がるんだろう。
それだけポップで軽妙で、力まないで観られる映画ってこと。
誰でも無難に楽しめる作品!だと言って良いでしょう。が、しかし、実は...
とてつもなく完成度の高い、素晴らしい映画なのです。すごい、すごい、すごい!
とてもナチュラルな演出になってるから、逆に気づきにくいけど、
10コ程のエピソードをコラージュ的に無理なく構成する技は見事!巧い!
難易度の高いウルトラ技を、涼しげな顔で難なくやってのける格好良さ。憎い、憎い!
どのエピソードも面白いし、質、量ともに充実してます。しかもピュアなのが嬉しい。
あざとく笑わせようとしない程度のコメディ要素が気持ち良い。


女はみんな生きている (2004-1/22)
心の中に感情が詰まったタンスがあり、映画を観たら、引き出しを開けられてしまう。
もちろん作品が面白くなかったら、引き出しが全く開かない時もある。
例えば本作の場合、二段目の嫌な引き出しを開けられて、辛いなぁと思っていたら、
不意に五段目を開けられて、びっくりハッピー!みたいな感じ。
前半は悲しいエピソードが描かれるから、ブルーな気持ちで真っ青。
「観たら元気になる」ってコピーは女性が対象で、男性向きじゃないの?
と不審を抱いたが、後半はめちゃ痛快で、身を乗り出して見入ってしまいました。
虚しい人生の機微を描きつつも、犯罪劇のスリリングさもたっぷりで、
一粒で二度も三度も美味しい。残酷で辛くて悲しい...けど、痛快!爽快!
陰と陽を巧く表現していて、どちらの要素も際立ってるから見事。


解夏 (2004-1/19)
センス悪ッ!脚本も演出も下手です。
そういうポイントが何箇所かあるってレベルじゃなくて、全編、良くないです。
不必要なセリフ、稚拙な構成、無駄な映像のオンパレードで興醒め大会!
さだまさし原作の話は悲しくて切なくて良いのに、映画の出来は惨憺たるもの。
失明を表現する画はそれかぁ?モンゴルロケは必要かぁ?
雨シーンの衣裳は白かぁ?時間軸が不自然じゃないかぁ?
等々、細かい指摘は山程あります。話の素材が良いだけに勿体ないです。
と言うか、この短編小説を二時間尺にするのは無理あるかもね。
展開が停滞しまくって、中盤は山場ありゃしない。退屈。
まあ、それでも悲しい話だから涙しちゃいます。映像センスが良ければもっと感動のはず。


バレット・モンク (2004-1/15)
地上波で放映される時はきっと深夜だろうなぁ的な匂いがプンプンします。
で、深夜に暇で何気に気負いなく観てみたら、案外おもしろかった楽しめたって感じ。
ジョン・ウー製作だし、チョウ・ユンファ主演だし、しかもハリウッド映画だから、
箔があるし、ワイヤーアクションもイケてるし、画的にもヘンテコではないんだよねぇ。
でもなぁ、どう観たって、なんでこんな映画作るの?と思っちゃう作品なんだなぁ。
製作者、監督、脚本家、出演陣、みんな頼まれ仕事を片手間にこなしたの?
スタッフ誰一人として、本気モードが不在!という印象なんですぅ。
じゃあ誰がこの映画作ろうって言い出したの?あれ?誰だっけ?みたいな(^^;
とは言え、一流のスタッフだから、片手間仕事でも見応えはあります。
アメコミ原作なのでストーリーはかなり荒い。気にしちゃダメってかぁ。


ハリウッド的殺人事件 (2004-1/8)
出たぁ、軽ぅ!吹けば飛ぶような将棋の駒みたいな映画(^^;
町の至る所にコカコーラの自販機があるのと同様な確率で、
最もありがちな刑事コンビもの映画なんだけど、これが実に軽い!
ルーズな刑事と熱血感溢れる刑事のコンビ成立がセオリーなのに、
この二人はどちらもノリが軽い。刑事という仕事をバカにしてるのか?と思いきや、
捜査は捜査で見事に解決してくれる。でも決して格好良くはない。
しかも二人がハリソンとジョシュなんだから、それが妙に面白い。
一流なのか三流なのか訳が分からないトーンにハマってしまうと意外と笑えます。
近年四、五本のハリソン主演作の中では一番いい感じ。
あざとく笑わせようとするコメディ映画じゃないから気負いなく観れます。


ミスティック・リバー (2004-1/7)
殺人事件が起こる。犯人は誰?動機は何?それだけならベタな犯罪ミステリー。
ストーリーを複雑にしたり犯人が意外な人物だったり、目からウロコ系の映画も最近ありがち。
他とは違う本作の焦点は、三人の男それぞれの人生が痛いほど胸に染みるという事。
と言っても、順を追って彼等の人生を描き観せるのではない。
三人が11歳の時に体験した忌まわしい事件以降の25年間は実写では描かれない。
でも、そこが一番重要なところで、永遠に心から消し去ることのない苦悩、悲しみが、
36歳現在の彼等を観るだけで伝わってくる。それがとても辛い。
犯罪ミステリーではなく、人生の悲しみを見据える映画。静かに激しい作品。
構成が難しい内容だが、脚本も演出も巧い。あざとさが感じられないのが良い。
内に秘めた思いをデフォルメしないティム・ロビンスの演技は素晴らしい。


タイムライン (2004-1/6)
華がな〜い!話がつまらない訳ではないし、映像がしょぼい訳でもない。
役者の演技力が低レベル?いや違う違う。キャストそのものがネームバリュー無し!
一般的に有名な役者が出てないから、いまいち華がないんだよ。
せっかくのエンターテイメント大作なのにB級感が否めない。
有名どころが出てれば良いって主義じゃないけど、でもキャスティングは重要です。
ストーリー設定はキング・オブ・ベタと言ってもいいタイムスリップもの。
だけど、ハラハラドキドキ感あり、始終緊迫感ありで、それなりに楽しめる。
USJやTDLで、待ち時間ゼロのアトラクションだから、とりあえず観ておこう!
みたいなニュアンスで観賞すれば充分に楽しめますぅ(^^;
冒頭十数分、伏線&前フリの大安売り状態なのがちょっと興醒め。