2005年の映画評



東京ゾンビ (2005-12/27)
毎年、年末になると、CD売り上げ年間ランキングなんぞ発表になります。
聴き覚えあるヒット曲が並ぶ中、これそんなに売れた?という曲があったりする。
大ヒットした訳じゃないが、一年間かけて秘かに売り上げを積み重ねた名曲…
そう、本作はそんなタイプの映画なんです。大作が目白押し正月映画ラインナップの中、
ダークホース、大穴です!「おせちもいいけどカレーもね」的な存在(^^;
マンガが原作なんだけど、本当、マンガそのまま実写映画にしましたぁのテンション。
はっきり言って“おバカ”です。シュールでブラックな“おバカ”丸出し作品。
東京中ゾンビだらけ!だけどホラー映画ではないですよぉ。ユルユル・コメディです。
大手映画会社では決して配給しないようなミニシアター系独特の内容、
こういうのがたまに観たくなるんだなぁ。浅野忠信の飄々とした演技がハマってます。


チキン・リトル (2005-12/26)
劇場で映画を観たら、その作品の善し悪しに関する満足度とは別に、
「映画を観たぁ」という観賞充実感は最低でも欲しいものです。
本作、そんな充実感を全く伴わない“薄っぺらお手軽ムービー”です。
例えるなら、お腹すいて食事がしたくてファミレスに入ったのに、
ポテチやポッキーなど、スナック菓子ばかり出されて食べさせられた感じ。
最初からスナック菓子を求めるようなココロモードで観れば、暇つぶし感覚で楽しめる。
昔ながらのカートゥーン的ギャグ満載で、ハートウォーミングなストーリー仕立て…
でも、芯が無いんだなぁ。表面的なハートウォーミング。ココロに響くものが欠けてます。
CG技術は素晴らしいんだけど、つまり、ハード面よりソフト面が駄目だね。
いやぁ、ここ最近ディズニー作品はコケまくり。ピクサーの爪の垢でも煎じてください。


SAYURI (2005-12/21)
映画化もされた三谷幸喜作品『笑の大学』で「チャーチルが握る寿司が食えるか?」
という名台詞があるが、あなたは、ロブ・マーシャルが撮った芸者映画が観れますか?(^^;
ひと昔前、西洋人が描く“日本”は誤解と偏見ありまくりの“変なニッポン”だった。
でも、『ラスト・サムライ』でその印象は払拭された…と思っていたが、
本作、時代考証の妙、日本語混じりの英語、やっぱり少し変なニッポンです。
日本に似た、どこか架空の国のお話。まあ、見飽きたベタな時代劇よりは楽すぅいです。
子供が一人前の花形芸者に育つまでの“基本的”ストーリーなので、
「芸者とはこんな風です」と外国人が外国人に向けて紹介する映画かも。
ただ、映像はキレイだし抑揚ある内容だし、観ていて退屈はしません。
観終わってココロに何か残るか?と問われれば…それは黙秘権を行使します。


キング・コング (2005-12/15)
単なる怪物もの?いや『L.O.T.R.』のピーター・ジャクソン監督が撮るんだから、
素晴らしい大作に仕上がってるはず!でも、おバカ映画だったらどうしよう…と、
観賞前は定軸から左右に一定周期で運動する振り子みたいな気持ちでした。
それが一転、観てる時の状態を(映画に必要な)二つの言葉を遣って表現します。
【スクリーンの前で「釘付け」になり「息を呑む」三時間でしたぁ!】
費用掛けてCG映像を作れば何でも出来ちゃう!って分かってるけど、こりゃすごいわぁ。
興奮するねぇ。例えばUSJで好きなアトラクション連続百回体感したくらいの興奮度。
最初の一時間は映画監督と主演女優のドラマなのだが、撮影隊が怪しい島に着いてから、
急に映画のトーンが変わる。手に汗握る!って、こんな作品のことを言うんだろうなぁ。
まあ簡単に言っちゃえば『ジュラシック・パーク』のノリ。でも最後は泣いちゃうかも。


探偵事務所5” 5ナンバーで呼ばれる探偵達の物語 (2005-12/9)
ネット配信も含め全28話あるってスゲ〜ッ!とか、結局は『濱マイク』の焼直し?とか、
様々な賛否両論があるのは容易に想像できる。本作は成宮主演・宮迫主演の二話構成で、
まるでTVドラマ。でも内容的に事件が繋がっているので、一本の映画として成立している。
すっごく個人的な見解だが、80年代中期に登場した映画監督・林海象…
その頃は今みたくサブカルチャーが主流ポジションに台道し得る時代ではなく、
サブカルはサブカルでしかなかった。故に林海象はマニアックな存在を逸脱し切れなかった。
林海象、彼は十年早過ぎた“センス良いクリエイター”だと僕は思う。
そんな彼の仕事を“観る”ことは、もうそれだけで満足なのです。
林海象がマニアック度を発揮すればもっと面白い作品になるだろう。
本作は最大公約数を意識して7割くらいの実力で作ってる印象ですねぇ。


Mr.&Mrs.スミス (2005-12/5)
レトルトカレー、どの銘柄が好きですか?僕のお気に入りはカレーマルシェ。
もちろん専門店やインド料理屋で食べるキーマカレーの方が美味しいですが、
レトルトの中ではカレーマルシェが最高。で、本作はカレーマルシェみたいな映画です。
“マニアックな映画”と“最大公約数的な映画”って単純二分化した場合、
明らかに本作は後者ド真ん中に位置する。誰が観ても適度に楽しめる作品。
何ヵ月も何年も印象が薄れない、ココロが揺さ振られる名作ではないが、
ハリウッドのスター映画としては最上級の娯楽作品なのです。
つまり、それが私的観点から鑑みるカレーマルシェのポジションなり(^^;
アクションの見せ場も小技・大技あり、くすっと笑える場面あり、
史上最大の夫婦喧嘩ムービーは見応え充分です。な〜んにも考えないで満喫しましょう。


ロード・オブ・ウォー (2005-12/2)
意外にもブラピと同い歳のニコラス・ケイジさん、特にアイドル・スターではないし、
だからと言って超個性派タイプでもない。でも常に人気があってギャラも結構高い。
まあアカデミー受賞俳優だしねぇ、演技も“あざとくない”くらいで丁度良い。
そんなニコラスさんが本作では、国から国へ渡り歩く武器商人を演じます。
武器商人の話?それってフィクション?本当の話?とか思うでしょ?
監督が『ガタカ』『シモーヌ』のアンドリュー・ニコルだから、
大前提が非現実な設定の話かと思いきや、なんと実話がベースになってます。
実在する何人かの武器商人をモデルにした“半フィクション”映画。
エピソード的に大盛り上がり大会の内容ではないので、娯楽要素は薄めだが、
「戦争の裏側で、こんなことが行なわれてるんだなぁ」と興味深く観れる作品。


ザスーラ (2005-11/29)
気持ち次第です。って何が?本作を楽しめるかどうか、観る側の気持ち次第ってこと。
全てが現実に起こるボード・ゲー!っつーと『ジュマンジ』を彷彿しますか?
『ジュマンジ』みたいなエンターテイメント的な肉付けと、
感情をグッと惹きつける緻密なストーリーの骨組みを本作に期待しないでください。
そんなの期待しちゃったら「金返せ!」と言いたくなりますから。
浅い浅い、表面的な娯楽要素だけの作品です。その要素ですら顕著ではありません。
早送りしようと思って劇場で無意識にリモコンを探してしまいました(^^;
時代錯誤おバカSF映画だと頭から決めつけて観れば「意外に面白いじゃん」てな感じ。
ゲームをする兄弟の父親役でティム・ロビンスが出てますが、
限りなく意味なし出演だと解釈して、まず間違いないです。


大停電の夜に (2005-11/25)
例えば、クリスマスプレゼントを貰います。メリークリスマス!と渡された箱。
ものすごく派手で豪華なラッピングが綺麗。すごくいい物?と期待大。
箱を開けるとオシャレな置物が!ありがとう!大事にします!と、
その場では嬉しがったりするが、家に持って帰ると置き場所に困る。
正直、こんなの貰っても迷惑なんだよなぁ、要らねぇ…と、本作はそんな感じです(^^;
豪華で多彩なキャスト陣、クリスマスの夜に東京中が停電になるというアイデア、ただそれだけ。
実質は誰も喜ばない暇つぶし程度の内容。良い作品風に見えるだけ。
エピソード数々あるが、不倫、隠し子、昔の恋人、などなど不誠実な話てんこ盛り。
心温まるかぁ?錯覚じゃないの?『マグノリア』みたく登場人物が微妙に繋がってるが、
それなら最後に蛙を降らせてちょーだい。だったら拍手します。


エリザベスタウン (2005-11/21)
観終わった時の濃厚な印象は「映画的な御都合主義ストーリー展開じゃん」です。
ドキュメント映画は別として、映画は全て基本的にフィクション。つまり絵空事。
例えば、作り話を“これは嘘丸出しですよぉ”と、堂々とした演出で魅せる作品があります。
最近で言うと、『シン・シティ』や『エターナル・サンシャイン』などです。
そういう作品、大好きです。極上のファンタジィ、エンターテイメントだと思う。
それにひきかえ、嘘の予定調和を“いかにも現実っぽく”構成する映画は興醒めです。
まさに本作、都合良いエピソードの連続!こりゃ興醒めだな…と言いたいところだが、
なんだか意外に心地好い。御都合主義に無条件降伏して身を委ねると気持ち良く観れる。
「こんなことが実生活で起こってほしい!」と希望的観測が湧いて、ちょっとセンチ。
キャメロン・クロウのオシャレな演出と、センス良い音楽セレクトが小気味好い作品。


TAKESHIS’ (2005-11/15)
本作、基本的に観なくていいです。下記条件に当てはまる人だけ是非ご覧ください。
北野武が何をやっても絶賛しちゃう北野武の大ファン、
『3−4×10月』『みんな〜やってるか』『菊次郎の夏』が好きな人、
ありきたりな映画を観飽きた映画通、他の映画全て観て本作以外観るものがない人、
“世界のキタノ”と称されてる現状を把握したい人、賛否両論の訳を知りたい人、
本作の内容について周囲の者に語りたい人、映画評を書くのが趣味の人、
京野ことみのヌードが観たい、美輪明宏♪よいとまけの唄を聴きたい、
好きな人が本作を観たがってるならデートに誘う口実にしましょう、
好きな人が本作を観て良かったと言ってるなら話題合わせで行きましょう、
それから、えっと、あのぅ、他には…


ブラザーズ・グリム (2005-11/10)
『未来世紀ブラジル』『12モンキーズ』のテリー・ギリアム監督作品にしては分かり易い。
それ故に物足りなさをごっつう感じる。余計な期待は暖簾に腕押し。
魔物退治と偽って詐欺行為を繰り返してるグリム兄弟、遂に本当の魔物と対峙する!
それだけの単純な話。大作気味の豪華な映像と、調味料的に少々のコミカルさ。
まあ、このコミカル要素があるから、わりと楽しく観れるんだけどね。
って言うか、グリムを主人公にしてるけど決して伝記ものじゃありません。
グリム童話の登場人物が時折姿を見せるけど、特に必然性はありません。
じゃあ何故グリム?って疑問が頭から消えません。
そういう意味で、あんまり巧い映画だとは言えないですねぇ。悪くはないけど。
映画を観た最低限の充実感は伴うが、観た後、何も残らない何も残さない作品。


ナッシング (2005-11/8)
男二人だけになっちゃったぁ!な〜んにも無い真っ白な世界!こりゃどうなってるの?
どうなるの?てな具合の映画。実は全てが夢でしたとか、誰かの陰謀なのですとか、
ラストの衝撃なオチで謎が解明される!みたいな内容ではないんです。
ただただ白い世界と男二人。それだけ、本当にそれだけなんです。
あの『CUBE』のヴィンチェンゾ・ナタリ監督作品だから、
「なんか凄い隠し技があるだろう」と期待しちゃいそうですが、それはナッシング(^^;
厳しいなぁ。興行的に失敗するのは目に見えてるもんなぁ。その潔さがむしろ心地いいかも。
でも、こういう作品、わりと好きです。シンプルだけど良いメッセージも含まれてるしね。
監督自ら本作のことを「メインディッシュ後のデザート感覚」って言ってるし、
これはこれで、いいんじゃない?かなり偏ったファンタジィ・コメディです。コントです。


親切なクムジャさん (2005-11/2)
ええもん観させてもらいました。わしゃ嬉しいわ。良質なセンスに触れると幸せやなぁ。
と、あざとく大阪弁で書き始めましたが、パク・チャヌク監督ほんまええ仕事しまっせ!
本作で完結する復讐三部作、前二作の『復讐者に憐れみを』と『オールド・ボーイ』は、
二重構造的なストーリーになっていて、それが面白い要素のひとつだったが、
本作はわりとストレート。三作を観比べると一番シンプルなストーリー設定です。
でも、映像演出、楽しんで画を作ってるという印象は最上に感じられる。つまり巧い。
非現実に徹底した舞台設定という訳ではないが、日常では味わうことのない内容を描き、
しかも見慣れた風景、カットさえも視覚的に非凡なアングルで作り上げる。
グロテスクな話なので敬遠されがちな作品だろうけど、実はとっても映画的で、娯楽作品。
久々のイ・ヨンエも素晴らしい。韓流ブームに乗り遅れた女優だが、僕は昔からファンです。


イン・ハー・シューズ (2005-11/1)
とある架空の教室「キャメロンに泣かされましたぁ」と言う生徒。
先生は勿論「またキャメロンにイジメられたの?」と訊くだろう。
生徒は「違います。キャメロンに感動したんです」と意外な発言。
こりゃびっくり!そうです、そんな映画なんです。相反するキャラクターの姉妹、
それぞれの“再生”を描いた爽やか感動系の人間ドラマなのだが、
キャメロンが“いい人”を演じてる訳ではなく、いつもの“セクシーおバカ”な役柄!
にも関わらず、観終わったら涙ぽろり。これぞ「てじな〜にゃ!」の気分です(^^;
姉妹だけの話かと思いきや、途中から必然的に祖母の存在が重要になったり、
その祖母の仲間たちが登場したり、全ての登場人物が御座成りじゃない描き方なのが良い。
キーアイテムの詩は原文と字幕だとニュアンスが違って、分かりにくいのが残念。


ソウ2 (2005-10/31)
さあ、ゲームをしよう。映画『ソウ』の続編を考えて、脚本を執筆しなさい。
あくまでも前作の続編的内容でなければならない、という点に配慮しながら書きなさい。
良いアイデアが浮かばなければゲームオーバー、あなたをバカの国に連行します(^^;
てな課題を見事クリアしたのが本作です!…と感じるような出来に仕上がっています。
“前作以上に衝撃のラスト”を期待するのはハードルがあまりに高過ぎますが、
でも、観終わって「なるほど」と感心する内容です。ちゃんと“続編”です!
殺人ネタの恐怖感は前作でテイストを知っちゃってる分、本作ではインパクトが薄い。
それはパート2の宿命であり、クオリティが落ちてないだけ良いとしましょう。
とか言いつつ、スクリーンを凝視できなかった僕です。怖い怖い、痛い痛い!
犯人ジグソウの精神論に焦点を当てることで、この映画に“意味”が出てきます。


コープス・ブライド (2005-10/14)
ストップモーション・アニメ良いですぅ!例えば『ウォレスとグルミット』『ピングー』
最近は日本でも『緑玉紳士』があったし、勿論『ナイトメア・ビフォア・クリスマス』も大好き。
“監督もキャストも頼まれ仕事感覚で、誰も作品に愛情を持ってないんじゃないの?”
てな映画も多い中、ストップモーション・アニメは作り手の愛と熱意が間違いなく満ち溢れてる。
だって本作は1〜2秒の映像を撮るために12時間も費やす…もうそれだけで、
作品に注がれる本気度は半端じゃない!観ていて愛情が伝わってくるもん。
キャラクターの人物像も御座なりじゃないし、画も木目細やか。ティム・バートン色が全開!
それに、やっぱりバートンは劣等感てんこ盛り人間の味方なんだよ。それが嬉しいよ。
本作、上映時間が短いせいもあり、話の見せ場が淡泊気味かな?って感じで少し物足りないけど、
でも、そんなことより何より、センス良いアーティスティックな職人芸をご堪能ください。


ドミノ (2005-10/11)
名優の娘で、モデル経験もあるドミノ・ハーヴェイ。実在した人物。
何不自由ない暮らしを捨て、犯罪者を追う危険な賞金稼ぎとなった彼女の半生を描く…
ってか、キーラ・ナイトレイ頑張ってますねぇ。まるで別人?ってくらいワイルドです。
ナタリー・ポートマンのそっくりさん的存在だったのになぁ。ビッグになりました。
でも、本作で胸はあらわなのに尻は吹き替えって、キーラさん、そのこだわりは何?(^^;
さて本作の内容ですが、ドミノの半生を赤裸々にすることに焦点を絞るのかと思いきや、
賞金稼ぎのワン・エピソードがメインで、スリリングな犯罪劇化してます。
伝記映画の要素よりも“どんでん返しサプライズ・ムービー”色が濃いかなぁ。
そんな作品だと思ってなかったので、複雑な話に対応するココロの準備が…って感じ。
まあ、トニー・スコット監督だから映像はスタイリッシュでカッチョイイですなぁ。


シン・シティ (2005-10/6)
こりゃいい!すごい!本作は今年最大級の棚から牡丹餅じゃ〜ん!
アメコミを映画化、ダークでバイオレンスなハード・ボイルド、原作テイストを忠実に再現、
モノクロ画面に効果的な赤、微妙に絡む3つのエピソード、強烈で印象的なシーンの連続、
贅沢過ぎる豪華キャスト陣…何をどう説明しようとも“百聞は一見に如かず”なり。
原作が完璧な絵コンテなので、原画通りのシーンをグリーンバックで撮影し、
実写的アレンジを施したコミックの絵を背景として合成する。おお、ファンタスティック!
監督協会を抜けてまでも本作を撮りたかったロドリゲス監督の熱意は本物。
原作者が共同監督、タランティーノがゲスト監督、ご馳走三昧ヨダレじゅるじゅるぅ。
絶対的に楽しんで作ったであろうプロセスが観て取れる、本気の逸品。続編も楽しみ!
ただ、万人ウケと言うより、映画通やマニア好みかなぁ。好き嫌いがハッキリ分かれるでしょう。


私の頭の中の消しゴム (2005-10/4)
出たぁ!出ましたぁ!韓国、純愛映画の中でも特に王道。
愛する人が記憶を失っていく…ああ悲しい、なんて切ない話なんだぁ。
例えばそれを『きみに読む物語』は回想シーンで綴ります。
あるいは『50回目のファースト・キス』はコメディタッチで笑わせます。
などなど演出手法は幾多あるが、本作はシンプル・イズ・ベスト。正統派、真っ向勝負。
二人が出会い、恋愛に発展、やがて結婚。そして彼女の記憶が…と、
バカに話を説明するが如く、順を追って丁寧にストーリーを観せてくれます。
それ故に、各駅停車で旅するが如く、ゆっくり確実に感情移入できます。
斜めから俯瞰せず、素直な気持ちで観れば、誰でも必ず泣けます。
何ひとつ小技が見え隠れしない、オーソドックスな泣けるラブ・ストーリーです。


タッチ (2005-9/30)
漫画『タッチ』を実写映画化しよう→キャスティングはどうする?という順序ではなく、
東宝自社女優の長澤まさみ主演作を撮ろう→何の映画にする?→南ちゃんを演じさせよう!
てな具合の企画だから、例えB級アイドル映画になったとしても当然の結果な訳です。
が、しかし、センスの良い犬童一心が監督に起用されたことで、
長澤まさみファンじゃなくても観ていられる“爽やか青春映画”に化けたのです。
例えば、今関あきよし、金子修介が監督だったら、正真正銘B級アイドル映画だったでしょう。
さすが犬童一心、切ない映画がお得意!とは言え、漫画の実写化、主演女優ありき、
という難しいハードルにしては…というレベルの巧さだってことを書き添えておきます(^^;
所詮、企画モノは企画モノなんです。万人が高得点を掲げるような作品ではない。
でも、まあ、漫画と同じセリフやカット割りを探すマニアックな観方をすれば楽しめます。


8月のクリスマス (2005-9/27)
韓国映画のリメイク作を撮るにあたって、山崎まさよしが主演に抜擢された訳だが、
山崎まさよしデビュー10周年を記念して企画、作られたファンサービス映画?
と勘違いしちゃうくらい“まさやん”色の濃ゆ〜い映画です。でも、だからと言って、
悪い出来ではありません。オリジナルと微妙な違いはあるが、
本質的に作品が持つ雰囲気は同じです。完全リメイクに限りなく近い。
んじゃあ、本作はリメイク成功作品か?と言うと、その点は判断が難しい。
オリジナルを忠実に再現した映画?だったらオリジナルを観れば事足りる。
リメイクするからには、何らかの要素でオリジナルを越えた作品になっていないとねぇ。
何らかの要素…それが山崎まさよしファンサービスってことしか見当たらない(^^;
まあ、とにかく、感情移入して泣ける悲しい映画ですぅ。


運命じゃない人 (2005-9/15)
うわぁ、すご〜い!やられたぁ。お見事。とにかく演出、構成が巧い!…と言っても、
突拍子もなく斬新だとか、あざとさが鼻に付くような“巧妙さ”ではない。
サラッと何気に巧い感じ。やっぱり脚本が良いんだねぇ。内田けんじ素晴らしいセンス。
五人の登場人物が絡み合う話で、弱気で優しい男がとりあえず主役。
彼を軸にしたメイン・ストーリーは他愛もないエピソード。ちょっとほのぼの。
でも、同日の出来事を他の四人の視点で描くと意外な真相が分かってくる。で、コメディ。
いわゆるパズル的なおもしろさ。徐々に犯罪的要素とか人のダークな部分が見えてくるが、
全て明らかになり、ラストは逆にもっとほのぼのしちゃいます。
実は秘かに、ちょっぴり名作かも。内田けんじ監督、要注目です。
本作、海外でも高く評価されてるのに、国内であまり知られていないのが残念。


サヨナラCOLOR (2005-9/12)
取って付けたような、わざとらしい演出&場面が鼻につくかなぁ?とか、
ストーリー展開のスムーズさがイマイチかなぁ?とか、気になる要素は幾つかあるが、
それより何より、本作は監督・主演:竹中直人の“欲求まる出し”映画だってこと。
この企画の原点となった脚本は別の人が執筆してる訳だが、でも、ストーリーから演出まで、
竹中直人が好き勝手にやりたい放題!という印象が否めません。
居酒屋の女将と男女の関係、女子高生と援交、そして初恋相手との再会…
設定を文字にすると、かなりエロ映画っぽい。が、しかし、ところがどっこい、
全然エロじゃなく、むしろ“ピュア”です。キレイです。慰められます。癒されます。
なんだかんだ言っても、こういう映画、大好きです!誰にも薦めず秘かに好きでいたい作品。
最後に流れる永積タカシの曲がとてつもなく記憶に残る。CD欲しくなりますぅ。


七人の弔 (2005-9/5)
「アイデアの勝利」とか「脚本が巧妙」とか、
映画作品の出来は脚本の善し悪しで決まる…と常々思っています。
監督の映像化センスが悪くても、脚本が巧けりゃ面白い映画!と言っても過言ではない。
が、たま〜に「脚本は良いのに惜しいなぁ」と感じる作品もある訳で、本作がこれに当たる。
映像演出が特に下手なんじゃないけど、脚本があまりに良過ぎるから、
その“巧さ”だけが妙に浮いてます。じゃあ、どうすれば正解か?は分からないので、
本作を丸ごとダンカン作品として受け止めるしかない。脚本も監督もダンカンだから、
彼の中では文字を画にする過程で生じるズレは無いに等しいのだろう。それでいいのだ!
親に見捨てられる子供達をブラック・コメディで描いた秀作であることは間違いない。
ダンカンのセンス、わりと好きです。今後も期待してます。


容疑者 室井慎次 (2005-9/1)
本作は『踊る』シリーズ本広克行じゃなく、脚本を書いてきた君塚良一が監督。
彼は前作の監督デビュー作『MAKOTO』で“真実を知ることの大切さ”を描いてましたが、
今回も意図的に(?)似たような、いや、ほぼ同じテーマです。
“真実を知ることの大切さ”を映画というフィクションの中で描く…って、
ちょっとパラドックス気味ですよねぇ。てな余談はさて置き、
本作は派手なアクションもスリリングな展開も無い、静かな静かな作品です。
青島刑事が主人公のメインシリーズと巧く区別化した結果だろう。
でもねぇ、やっぱり『踊る』の娯楽性を期待するお客さんにとっては物足りないんだよね。
全く別物として観れば楽しい…いや“昭和の香り”漂う映像だし、セリフは説明臭いし、
ファンサービス映画と言うより、ファンがサービスで観てあげる作品(^^;


チャーリーとチョコレート工場 (2005-8/31)
好きな映画監督は?てな質問には「ウディ・アレンとティム・バートン」と答えます。
映画通だと思われたいの?と勘ぐられても困ります。本当に好きなんです。
で、本作は最高に素晴らしい。ブラボー!ファンタスティック!何度でも観たい。
バートン好きだからそう思うんじゃないの?と勘ぐられても困ります。本当に傑作なんです。
例えば『マーズ・アタック』はバートンのマニアックさが色濃い作品。
そして『ビッグ・フィッシュ』は一般ウケする最大公約数的要素が比較的強い作品。
本作は前者と後者が見事にバランス良く描かれていて、ファンもそうじゃない人もハマる。
二時間ずっと笑顔が尽きないので、観終わった時に頬が痛いです。もう、ヤバすぎ!
工場見学チケットが当たるまでの演出、ウンパ・ルンパの歌と踊り、幼少時期の回想…
なにもかもが上品にアナーキーです。大人の映画なので子供は観ちゃダメ!(^^;


シンデレラマン (2005-8/26)
私生活でケンカ大好き暴れん坊のラッセル・クロウ。
彼が自ら長年温めていた企画が本作、アメリカの大恐慌時代に実在したボクサーの話。
趣味と実益を兼ねた、ラッセルのためのラッセルによるラッセルの映画!
…てな言い方をすれば、ファンしか楽しめない偏り作品だと思われるかも知れない。
が、意外にクラシックな装いでキレイに仕上がった作品。なかなか見入ってしまう。
画的にはボクシングが軸だが、家族愛を描いたヒューマン・ドラマです。
実在した時代的英雄の物語なので、有無を言わさず感動させちゃいます。
アメリカって、この手の自国ヒーロー映画が本当に好きですよねぇ。自慰ですか?(^^;
ボクシング場面は迫力あって、手に汗握って鳥肌もの。つまんない映画が多い中、
「映画を観たなぁ!」という充実感は確実に得られる作品でしょう。王道だけどね。


南極日誌 (2005-8/24)
南極探検隊の話っつーと、アドベンチャー?アクション?と思うのが人の常。
だが本作はホラー映画に近い。てか、そういう要素が“売り”だったりする訳。
『殺人の追憶』のソン・ガンホ、『オールド・ボーイ』のユ・ジテ、
韓国二大俳優共演ってのも魅力だし、壮大なロケーションってのも充分“売り”になる。
でもやっぱり“怖い映画!”ってのが本作の優先的な本質なのです。
だからって「すご〜く怖いよぉ」とオススメできないのが本作の特徴。
ホラーテイストはB級、いやいやC級レベルでドンジャラホイ。
狂気と化す隊長は“きっとこうなるだろう”予想範囲内の行動。その映像も意外にチープ。
韓国で興行的にコケ気味だったのも納得。はぁ〜こりゃこりゃ残念。
ダラダラ前置きが無く、いきなり南極の本題から始まるスタートは良いんだけどなぁ。


サマータイムマシン・ブルース (2005-8/18)
タイムマシンの映画?SFじゃん!日本でもハリウッド級のSF映画を作ったのかーッ?…って、
いやいや本作は青春ドタバタ活劇です。しかも喜劇です。
大学の部室に突如タイムマシンが現われて、過去に行く?それとも未来?何が起こるの?
と思いきや、エアコンのリモコンってアイテムだけのために、昨日と今日を行ったり来たり…
なんなんだぁ?バカバカしくて笑えます。おもしろ過ぎです。伏線と小ネタのオンパレードで、
しかも確信犯的パズル構造だから、最初から最後まで何ひとつ見逃せない。
まあ意味ありげなシーンが多いので、見逃さないでしょうけどね。
本広克行監督のポップな映像センスはやっぱり素敵です。
てか、劇団ヨーロッパ企画の原作が良いんでしょうねぇ。舞台版が観たくなります。
“タイムマシン、ムダ使い”ってキャッチコピーが効いてます。


奥さまは魔女 (2005-8/16)
ニコール・キッドマン、ノン・ジャンルで何でも出ますねぇ。
グロい系あり、コメディあり、文芸大作あり…のニコールさん。
商店街の店舗に例えるなら、もう何屋か判別不可能の域。電化製品あり服あり漬物あり(^^;
そんなニコール出演の本作は、ラブコメ撮ったら優等生のノーラ・エフロン監督作。
“優等生”っつーと「あいつ何でも無難にこなすから感じ悪いよなぁ」と思われがちだが、
ノーラ・エフロンの優等生っぷりは愛らしくて好感が持てる。
身を委ねて安心して観てられるラブコメ・ファンタジーです。
TVドラマ『奥さまは魔女』の単純リメイクじゃなく、劇中劇のスタイルを含んだ二重構造で、
本物の魔女が『奥さまは魔女』リメイク版のサマンサ役を演じるって設定がユニーク。
ポップでオシャレで最大公約数的に楽しめる作品となっております。


亡国のイージス (2005-8/11)
ああ、これは日本の硬派なエンターテイメントだわ。簡単に言っちゃうと、
真田広之バージョン『ダイハード』です。あるいは『ローレライ』+アルファです。
まあ『亡国のイージス』の原作が映画化しにくいってことで、
その小規模バージョンとして書かれたのが『ローレライ』なんだよね。二作を見比べると納得。
で、その映画化しにくい原作を映画にしちゃったんだから見応えありありでしょう。
阪本順治監督だから映像センスも良い。安心して観てられる。
膨大な頁数の原作だから、映画で何を描いて何を描かないか、難しいところだが、
ストーリー展開の巧みさだけじゃなく、登場人物の心理や人間像も丁寧に描かれている。
物足りないエピソードもあったりするが、かなり巧い脚本でしょう。
ただひとつ、スクリーン釘付けの緊張感の中、手旗信号のシーンは少し失笑気味。


リンダ リンダ リンダ (2005-8/9)
2005年の夏映画、最高傑作の逸品がコレ!!
『ばかのハコ船』『リアリズムの宿』等の山下淳弘監督と言えば、
社会からズレた感じの情けないダメダメ男の悲哀を描いたら日本一なのだが、
果たしてガールズポップな作品は大丈夫かぁ?という心配もなんのその、問題ナッシング。
今まで見られなかった新たな山下テイストが見事に確立!と言うよりは、
従来の素晴らしい山下センスのニュアンスがそのまま本作に活かされてます。
気まずい空気の微妙な緊張感の中に漂う緩い会話劇…そういうノリがとっても心地良い。
いちファンとして、予想以上、期待以上の仕上がりで大満足フェスティバル!
例えるなら、まるで“童貞くんに念願の彼女ができましたぁ”てなイメージです(^^;
ひとりひとり名前の羅列は省略するが、最高で最強のキャスティングですぅ。


亀は意外と速く泳ぐ (2005-8/2)
ゆるゆる三木聡の、ゆるゆるコメディ。ある意味これはファンタジー。
えっ?平凡な主婦の日常を描いてますか?んじゃあシリアスです。シリ&アスです。
「YahYahYah」を歌うのはチャゲ&アスカですか?低俗なダジャレですか?
上野樹里が扮する平凡な主婦がスパイ教育される話です。だったら『007』ですね。
上野樹里はボンドガールです。まるで接着剤みたいな女のコってことですか?
あるいは上野樹里がコショウちゃんや唐辛子ちゃんとスパイスガールズを結成ですね。
…と、以上、訳の分からん文章を書きましたが、そんなこと言いたくなる映画なんですぅ。
ゆるゆる、ゆるゆる。でも、平凡で退屈な日常も、スパイとしての自分を自覚して、
意識的に“平凡”を演出しようとすると、意外に難しくて新鮮だったりする。
そんな大切な視点が描かれてる“心地いい”ゆるゆるコメディなのです。


マダガスカル (2005-7/26)
『シュレック』のドリームワークスが作るCGアニメは相変わらずセンス良さげ!
健全ド真ん中のディズニーアニメと違い、ドリームワークスはブラックユーモア満載。
アニメだし、かわいいキャラ登場だし、子供が楽しめるのは勿論だが、
ストーリーの一部一部、そんな中に秘められた幾つかのギャグネタ、
もう完全に大人向けなんです。お子ちゃまには分かりませ〜ん。
特に、随所に見られる有名映画のパロディ・シーンなんて
(例えば『キャスト・アウェイ』『アメリカン・ビューティ』)、
映画観てない人には全く分からない状態じゃないの?そんな不親切感が逆に面白いよね。
メインキャラのライオン、シマウマ、カバ、キリンも良いけど、
意外に重要な役を担うペンギンたちの活躍が見物です!


アイランド (2005-7/22)
『ザ・ロック』『アルマゲドン』『パール・ハーバー』のマイケル・ベイ監督作品。
上記は“売れ線狙い”のブラッカイマーが製作。でも本作は違う。ブラッカイマー抜き。
ブラッカイマーが口出ししないマイケル・ベイの映画、良いっすねぇ。
軽過ぎず重過ぎずの頃合いエンターテイメントが何たるか、よく分かってらっしゃる!
近未来の話で謎、謎、謎。そして迫力満載のアクションシーン。見応え充分!
自分が生活してる世の中が実は偽りの現実かも?って設定がまるで『マトリックス』だが、
切り口が異なるものなので、『マトリックス』より分かり易い。
派手なカーチェイスのシーンまで『マトリックス』ぽいかも(^^;
とにかく、二時間強ずっとスクリーンに釘付け間違いなし。気軽に楽しめ楽しめー!
スカーレット・ヨハンソンとブシェミが出てるので『ゴースト・ワールド』を思い出しちゃいました。


ロボッツ (2005-7/21)
本作は20世紀FOXのCGアニメ。ドリームワークス、ディズニー、ピクサーなど、
各社が力を入れている分野である。長編アニメ部門のオスカーをゲットしようと必死。
でも、つまり、それだけ期待できるってことで、各社のCGアニメはどれも面白い。
そんな状況の中、いまいちパッとしないのが本作。つまんないです。
キャラクター、セリフ、全体的なストーリー、どの要素も魅力が欠けている。
あまりにも表面的なストーリー展開で説得力が無い。故に感情移入すら不可能。
大人も子供も楽しめる…ではなく、画だけで嬉しがる園児向き?って感じ(^^;
ハチャメチャなギャグや、大人が楽しめるユーモアが欲しいなぁ。
街の交通システムがNHK『ピタゴラスイッチ』みたいな仕掛けで、それだけは面白い。
20世紀FOX次回作『アイス・エイジ2』予告編の方が魅力的です。


緑玉紳士 (2005-7/16)
ジャッキー・チェン、ヴィンセント・ギャロ、ウディ・アレンなどなど、
監督・脚本・主演、更には音楽まで、ひとりで何でもかんでもやって映画を作る人が居る。
作品の善し悪しは別として、そんな人には「すげぇ!」と感心してしまいます。
本作はクリエイター栗田やすおが、ひとりで四年半かけて作ったパペット・アニメ。
す、す、すげぇ!それだけで敬礼しちゃいます。大喝采。
繰り返しますが、作品の善し悪しは別として…です(^^;
“ストーリー”“笑い”は特別センスが良いとは思えませんでした。
例えば、新製品のお茶が発売されて、味の違いは分からないけど、
ペットボトルの型が斬新で面白みあるから愛飲するみたいな印象。
「あー」「うー」だけでセリフが無いのはセンス良いかもねぇ。


ハービー 機械じかけのキューピッド (2005-7/15)
“全米ティーン、憧れの的”リンジー・ローハン主演…のディズニー実写映画と言えば、
『フォーチュン・クッキー』『ファミリー・ゲーム』てな感じで、
本作も同様、ファミリー映画ほのぼの系。充実した映画観賞を“食事”に例えるなら、
本作は美味しい腹いっぱいの料理じゃなくて、ティータイムのケーキですねぇ。
ちょっとお茶しない?ここのケーキ美味しいらしいよ!みたいなノリで観てください。
人間のような感情を持った車が女のコと出会い、幸せをもたらす話…って、
見た目ただのワーゲンだし、キャラクターグッズで人気が出る程かわいい訳じゃない。
やっぱリンジーのファンサービス映画って要素が色濃いなぁ。
てか、日本語吹替版が土屋アンナっていうのが見事!
リンジーと声質が似てる、いや同じじゃーん!なるほど顔立ちも似てるよね。納得。


オープン・ウォーター (2005-7/10)
“怖い映画”っつーと『リング』『呪怨』みたいなホラー作品を想像しがちだが、
本作の“怖さ”はちと異なる。幽霊や狂気な殺人鬼が迫り来る恐怖じゃなくて、
誰もが生活の延長線上で体験し得る可能性がある恐怖。
“人間の内側から分泌される”タイプの恐怖を描いた映画なのです。
故に、主人公(ダイバー夫婦)に同化して観る想像力が乏しい人は本作がつまんないでしょう。
というか、映画いっぱい観慣れて、普通枠じゃ物足りないと感じてる映画通が楽しむ作品かな。
土日を利用して三年かけて撮影したとか、CGを使わず全て本物の映像だとか、
「低予算アイデア勝負で、こんな斬新な映画できましたぁ」というのを拝見しときましょう。
実際にウエットスーツ着て水に浮きながら、本作を観たら絶対に怖いはず!
そんな体感アトラクション無いかなぁ?(^^;


イン・ザ・プール (2005-7/5)
「この監督の新作が発表されたら是非とも観なくっちゃ!」
と思わずにはいられない対象となる監督さんが洋邦問わずいるもので、
例えばウディ・アレン、ティム・バートン、岩井俊二、三谷幸喜、大林宣彦などなど。
そして今回、新たにリストアップされました三木聡。(僕的に)こりゃめでたい!
シティボーイズのライブが好きで、何度か劇場に足を運んだことがあるが、
そのライブの作・演出を手掛けていたのが三木聡。本作で見事、映画監督デビュー。
シティボーイズの独特な世界を知ってる人、本作はその世界観そのままですよぉ。
未見の人、この緩〜い会話劇と絶妙な“間”が生み出す笑いを一度ご賞味あれ!
主演の松尾スズキ、自作の舞台や映画では“あざとさ”が鼻に付く感じだが、本作みたく、
他人の手の中で遊ばされてるくらいの方が丁度いいね。本作のオダギリジョーも最高。


フライ,ダディ,フライ (2005-6/30)
本作の“売り”は何ですか?岡田准一ですか?堤真一ですか?
『GO』の金城一紀が原作・脚本ってことですか?ミスチルの書き下ろし曲ですか?
原作小説は秀作なのかも知れないけど、読んでないから分かりません。
少なくとも映画は褒める箇所が見当たりません。
岡田准一ファンだけが観て喜べばいいんじゃないの?って思っちゃいます(^^;
シリアスなのかコミカルなのか、どっちつかずです。シリアスの中にも少々の“笑い”を、
てな狙いだろうけど、“笑い”のレベルが低く、食い合わせの悪い料理みたい。
脚本の出来不出来もあるが、監督の演出センスが悪いのも大きな原因だろう。
親父ガンバレ、家族を守る、二人の絆…描かれてるテーマは悪くないのに、
最終的に完成した映像作品は安っぽいアイドル映画に毛が三本。残念でしたぁ。


宇宙戦争 (2005-6/30)
宇宙人の地球侵略?トム・クルーズ父ちゃんが娘ダコタちゃんを守る?なんなんだぁ?
SFとか言いながら家族愛を描いただけの実はテンション低い映画なんじゃないの?
…と眉唾だった自分を反省モード。ごめんなさい。
スピルバーグさん、やってくれますねぇ!さすがですねぇ!達人ですねぇ!
SF、アクション、戦争ドラマ、いろいろ撮ってきただけのことはあります。
宇宙人が地球を破壊していくド迫力ある映像で魅せつける娯楽大作でもあるし、
そんな危機状況下で人間同志がエゴ丸出しの醜態を曝す“戦争映画”の要素もある。
宇宙人と戦うのではなく、逃げ切れるだけ逃げまくる主人公ってのが何よりリアルに感じる。
テーマパークの体感アトラクションで遊んでるような臨場感です。
オチも宇宙人映画ありがちの“おバカ”レベルじゃなく、わりと良質なラストだと思われます。


50回目のファースト・キス (2005-6/23)
ここ数年“記憶”を扱った映画って、なんか妙に多いよねぇ。
『メメント』『マシニスト』『エターナル・サンシャイン』『フォーガットン』等々。
記憶を無くしちゃいましたぁ!って設定だと、サスペンスでも恋愛話でも何だってアリ。
ある意味ちょっと卑怯だよね。ジャンケンで変な手の形を出して、
「これは無敵!グーにもチョキにもパーにも勝つオールマイティ」と言うくらい卑怯(^^;
もう記憶系の話は“あざとい”んだなぁ。てか、不思議な話になるから、
それなりにおもしろかったりする…悔しいかな認めざるを得ない。
アダム・サンドラーが主演なので、勿論コメディタッチで笑わせてくれます。
んで、一日しか記憶がもたないが故の切ない展開で、ラストはお涙ちょうだい。
ドリュー・バリモアがラブコメのヒロインって、もう無理あんじゃねーの?


メリンダとメリンダ (2005-6/22)
ウディ・アレンはセンスが良い料理人だ。
センス良いが故に、彼が腕によりをかけて調理した料理は最上級に美味い。
センス良いが故に、多少適当に作った料理でも、そんじょそこらの味には負けない。
つまり何を作っても、程度の差こそあれ、不味い料理はあり得な〜い!ってこと。
ただ空腹を満たせばいいといった食べ物ではなく、その料理を味わえる喜びは至福。
(日本公開的に)前作『さよなら…』は、ウディが“衣裳タンスから着慣れた服を持ってきた”
みたいな印象だったが、本作は“久々に一張羅を新調した”感じの作品になっている。
メリンダの人生を喜劇作家と悲劇作家がそれぞれ物語るという二部並列構成で、
ウディの“技”が効いている。もちろん彼らしい台詞劇でもある。
ウディ・アレン節を知らない人にとっては、ちょっと分かりにくい作品かも…ね。


スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐 (2005-6/20)
どんな切り口で映画を観るか、それによって作品の印象や評価が違ってくる。
監督や脚本家の意図、キャスティングが決まるまでの裏話、原作小説との相違点…などなど。
もちろん制作背景など何も知らず、ストーリーと映像だけを観て楽しいのが基本です。
でも、SWシリーズはいろんなことを知れば知るほど、より面白く観れる作品なのです。
例えば新三部作と旧三部作、1と4、2と5、3と6の構成が実は似た展開になっていて、
それはルーカスが確信犯的に“歴史は繰り返す”というテーマを提示している…とか、
新旧で違いがある宇宙船のデザイン、本作は旧三部作に繋がるデザインになってる…とか、
マニアックな視点だけど、SWには再発見する喜びがある。
SWのコアなファンじゃなくても(僕も特にファンという訳ではありません)、
長年、映画ファンを楽しませてくれたこのシリーズの完結に拍手しましょう。


タナカヒロシのすべて (2005-6/17)
鳥肌実をお菓子に例えると“暴君ハバネロ”だぁ!と言っても、
僕は彼の舞台を観たことがありません。あくまでイメージです。
過激な芸風で、知る人ぞ知る存在だという噂だけは聞いてます。
そんな彼の初主演映画、アナーキーな作品かと思いきや、全くそんなことはない。
むしろ“ゆる〜い”日常を描いた、でも一風変わったタナカヒロシの生活ドラマです。
かつら工場に勤め、独身、無口、無趣味、平々凡々で退屈な生活、それが彼の幸せ。
なのに突然、父と母が…、ペットの猫が…、悪徳業者が…、会社が…などなど
不幸な出来事が起こりまくり、彼は“テルミンと俳句の会”にハマっていく。
そんなストーリー、観てみたくなるでしょう?放っておけない映画です(^^;
決してテンションの高い内容ではないが、ちょっとだけイイ話なのです。


ライフ・アクアティック (2005-6/14)
真面目な表情で冗談を言う。ワン&オンリー的なハイセンスな冗談。
しかも言った本人は決して笑わない。無表情一貫。
本作はそんな“笑い”の鉄則を心得た緩〜い秀作(!?)。
誰にでも分かる“笑い”ではなく、それが“笑い”なのかどうか一瞬戸惑うシーンの連続。
『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』のウェス・アンダーソン監督の世界全開!
アンダーソン節の変人キャラ多数登場。みな変人だからノーマルに会話が噛み合う訳ない。
子供騙しのキッチュなセットはまるでコント。でもイケてるデタラメ感が心地いい。
おバカ映画だが、「あざといなぁ」と「センス良いなぁ」だと、確実に後者でしょう。
おちゃらけハイテンションでギャグをするんじゃなく、
笑わせる素振りを見せないでユーモアをパフォームする、つまり…(本文冒頭に戻る)


四日間の奇蹟 (2005-6/9)
「映像化するのが難しい」と言われる原作小説が時々あるけど、
本作は脚色、演出は勿論のこと、何より役者陣の演技力がとても大事。
あと四日の生命と診断された意識不明の女性、その心が幼い少女の身体に宿る。
つまり少女役の尾高杏奈は石田ゆり子を演じなくてはならない。
そういった意味で、主演の吉岡秀隆や石田ゆり子よりも、
“尾高杏奈の映画”と言っていいだろう。彼女の表現力を観るための作品。
原作はミステリーの分野で受賞した小説だが、どちらかといえばファンタジー系。
だから、ミラクルで不思議な話が苦手な人は感情移入できないかも。
でも単なるファンタジーじゃなく、人生が“救われる”リアルなテーマがあります。
泣ける映画!ではあるが、ポップな感じは欠けてます。少し昭和の匂いがします。


電車男 (2005-6/9)
昨年十月に映画化の情報が流れ始め、今年二月に制作発表、そして六月公開。
とんとん拍子の急ピッチで撮られた本作。旬のうちに映画化、連ドラ化の前に公開…
という“間に合わせ”的な作品なわりには良く出来たと思います。無難に合格点。
巧くもなく下手でもなく「こんなもんだろうなぁ」という評価がホント的確。
インターネット上の書き込みで成立した物語がそのまま書籍化された訳で、
そのニュアンスを壊さずに映像化すれば、こんな作品になります。
古くは森田芳光の『ハル』、近年では岩井俊二の『リリィ・シュシュのすべて』のように、
インターネットを介した物語は必ず“文字映像”が多い。子供の頃に絵を描いていて、
絵の中に文字を書き過ぎると先生に注意されませんでしたか?そんなことを思い出します(^^;
原作本がある映画化、『世界の中心で…』のカセットテープみたいな工夫が本作に欲しかったなぁ。


オペレッタ狸御殿 (2005-6/7)
予想していた以上に観てて気恥ずかしくなる作品。
スクリーンに映し出される映像、それを観てる観客、劇場が異様な雰囲気です。
スタイリッシュでもなけりゃ、古びた昭和の匂いもしない…なんなんだ、この映画?
“オペレッタ”は喜歌劇、つまり滑稽なミュージカルな訳だから、
歌って踊ってお祭り騒ぎ!!の楽しい要素が全編てんこ盛りなのは確かです。
でもなぁ、作り手と観る側の温度差があまりにも違うような気がするなぁ。
鈴木清順監督、お爺ちゃんにしては良いセンスだと思います。よくがんばりました。
オダジョー、嫌々やってませんかぁ?チャン・ツィイーも初日本映画がこれでいいのかぁ?
由紀さおりは素晴らしいエンターテイナーです。なんでも出来るなぁ。感服。
狸と人は恋におちてはなりませぬ…誰も本作を観てはなりませぬ。あっ口が滑りました(^^;


戦国自衛隊1549 (2005-6/6)
リメイク?1979年に映画化された原版と似て非なる作品。
自衛隊が戦国時代にタイムスリップ!て設定だけ拝借して、ストーリーは全く別もの。
原版“武田信玄vs上杉謙信”より、織田信長を軸に描く本作の方が馴染み深い。
…てか、どっちでもいいです。つまんないです。
まあ百歩譲って福井晴敏が書いたストーリーは面白いとしても、
映像がしょぼい。監督のセンスが悪いんでしょう。迫力とか格好良さは皆無。
製作費15億円?どこにそんな巨額な費用を投じたの?無駄使いしたらママに怒られますよ(^^;
原版は昭和の角川映画っつーことで、男臭い生臭い内容だったから、
本作の方が洗練された印象は受けるが、それでも映像センスは“昭和”を感じてしまいます。
こういう作品が大々的に公開されちゃうから、邦画のイメージが悪くなるんだろうなぁ。


female フィーメイル (2005-6/5)
五人の女性作家が書き下ろした小説をそれぞれ映画化したオムニバス短編集。
つまり『JamFilms』シリーズ“どの作品も原作が女性”版です。
まあ、脚本や監督は男性だったりするので、徹底した“女性版”て訳でもないかなぁ。
本作を敢えて低俗な言い方で表現するならば…
健全なミニシアターで女性が公然と観られるエロ映画!
五本中、三本はエッチシーンがあります。つまり濡れ場ってやつです。
エロビデオみたいに、それだけが目的の映像って程ではないが、でも結構、大胆!
高岡早紀はエッチな役が抜群に似合います。輝いてる。濡れ場じゃないが長谷川京子もエロチック。
東宝映画では長澤まさみの陰に隠れて目立たない大塚ちひろも本作では良いキャラです。
男性陣では加瀬亮が素敵だなぁ。まだまだメジャーではないが、大注目の役者です。


ホステージ (2005-6/1)
原作映画化権を買い、製作総指揮を務め、自分の役が“美味しい”ように脚本を書かせ、
満を持して主演する。“自分のための自分による自分の映画”ですか?
大金掛けて自分アピール大会ですか?と思いたくなる作品も多い。
が、でも、その映画が面白いならオールOK!自分フェスも問題ナッシング。
本作、間違いなくブルース・ウィリスの“自分”映画ですが、話は面白い。
人質立てこもり事件が起きるが、その事件と関連した形で、
警官(B.ウィリス)の妻と娘の誘拐事件も勃発。二つの人質事件に挟まれて、
ウィリスどうする?どうなる?二時間たっぷり緊迫感が持続します。
それにしても、娘役でウィリスの実娘ルーマーが出てますが、いかがなものでしょうか?
パーツ的にデミ・ムーアに似てるっちゃ似てるが、顔でかッ!(^^;


ミリオンダラー・ベイビー (2005-5/31)
無名の女子ボクサーが成功していくプロセスを描いたボクシング映画でしょ?
「そんなの興味ない」と思ってる人も多いだろう。でもハッキリ言います。明言します。
本作はボクシング映画ではありません!少なくとも“単なるスポ魂もの”ではないのです。
前半、中盤の女子ボクサーのサクセスストーリーは前戯、つまり前フリ。
とは言え、役者陣の名演とリング上のシーンなど、前フリだけでも充分に見入ってしまう。
本作の核心は後半の意外な展開にある。こんな話だったのかぁ?と驚かされます。
そして、普段は意識しないような事柄を考えずにはいられません。
涙を止めようにも、どうしていいか分からない状態に陥ります。
ヒラリー、モーガン、クリント、素晴らし過ぎッ!アカデミー賞四部門制覇、納得の秀作。
印象的な映画音楽も自ら手掛け、70歳を過ぎても作品を撮り続けるクリントに拍手!


サハラ 死の砂漠を脱出せよ (2005-5/30)
ノンストップ・アクション!が売り文句として掲げられてますが、んんん、そうかぁ?
息つく暇ない程のアクションシーン連続!じゃないぞぉ。特に前半は退屈じゃん。
正攻法で順序立てた構成になっているが、この種の娯楽大作はもっと大胆に作ってほしい。
とにかく冒頭からハラハラドキドキ的なシーンで始めて、つかみはOK!が希望。
確かに後半は敵地からの脱出、格闘シーンなどアクション三昧気味だが、
腹八分目に満たない程度の痛快感です。腹いっぱいにしてくれ〜!
映像不可能な原作、遂に映画化!って言うけど、今はなんでも作れる世の中なんだよ。
言葉のマジックに騙されちゃいけません。前代未聞の凄い作品じゃないです。
シリーズ化するんなら、次はパワーアップしまくりでお願いします。
とりあえず本作は及第点ギリギリの冒険活劇ですなぁ。無難。


フォーガットン (2005-5/27)
失笑を買う!って、こういう映画の為にある言葉なんだろうなぁ。本作、買いまくりです。
子供を事故で亡くした母親、でも周囲の者は皆、口を揃えて言う
「あなたには最初から子供なんて居ないんだよ」と。このストーリー設定、発想は素晴らしい。
誰もが一様に興味惹かれるアイデア。なぜ?謎の結末は?そしてオチを観て、げんなり。
典型的なアイデア負け作品。でかでかと広げた風呂敷、ちゃんと畳めないなら広げるなッ!
こんなオチが有効なら、どんな話の映画だって、このパターンで片付けられるじゃん。
謎が解明(クリアではないですが)されて、オチを観た時、椅子から転け落ちてしまいました。
おバカ映画を作る気じゃないのに、結果的にそうなったおバカ映画がイチバン質が悪い。
ネタ暴露する悪趣味はないので言いませんが、駄作好きな人だけ是非どーぞ観てください。
ラストで故いかりや長介が出てきて「ダメだこりゃ」と言ってくれたら最高の作品なのになぁ(^^;


バタフライ・エフェクト (2005-5/25)
こりゃいい!すごい!時空を超えて過去を書き直すと、別の新しい人生が実現する…
ってーと、安っぽいファンタジー?SF?タイムマシンが登場?とか思いますか?
確かに根も葉も欠けた話だが、これが結構、人生の機微を深く重たく描いてます。
やり直し人生が幾パターンも観られるので、何本もの映画を一度に観賞したような充実感。
こりゃもう、てんこ盛り!パラレル・ワールド万歳!
実際に映画化された作品を観て、ああだこうだ言うのは呑気で容易いが、
こんなアイデアどうやって脚本化する?完成したシナリオをどんな風に映像化する?
そんなことを慮ると鳥肌が立ちます。絶対的困難。センスの良さが最低必要条件です。
しかも本作、ラストはハッピーエンドなのに切ない、悲しい。その真意は観れば分かる。
本作を敢えて例えるなら『バック・トゥ・ザ・フューチャ』のダークサイド版。


スカーレット・レター (2005-5/24)
韓国映画が日本で注目され始めた原点の役者!と言えば、
『八月のクリスマス』、『シュリ』、『カル』のハン・ソッキュでしょう。
今は“旬”の扱いをされていないが、彼の存在を忘れてはいけない。
そんな彼の久々の主演作は、ものごっつぅヘビー。狂気。
決して昼間に観る映画ではない(昼間に観ちゃった僕は一日中滅入ってました)。
今から“何かが始まる”嫌な期待感たっぷりの冒頭から、過激なクライマックスまで、
観れば観るほど呼吸困難に陥る感覚に襲われます。愛、欲望の極限状態は残酷。
もはや“サスペンス”を超えてます。そこらの流行Jホラーなんかより、よっぽど怖い。
車のトランクのシーンは少し唐突な気がするが、結果的に最も印象に残るシーンだ。
本作が遺作となったイ・ウンジュ、彼女の作品をもっと観たかったです。


皇帝ペンギン (2005-5/20)
ある種、創作で最も重要なことは、どれだけ“削除”できるか!だと思う。
作者は自分の作品に「あれもこれも詰め込みたい」衝動がある。
が、余計なものを削ぎ落とすことこそ芸術なのだ。作り手誰もが感じる“難しさ”だろう。
本作はドキュメント映画。南極でペンギンの映像を8880時間も撮影。
完成した本編は一時間半に満たない上映時間。これぞ究極の削ぎ落とし!削除の美学。
しかも「退屈なドキュメンタリーだろぅ?」なんて思ったら大間違い!
過酷な大自然の中、断食し続けて子育てするペンギンの姿は驚異です。圧巻です。
誰からも教わることなく、こんな風に繁殖活動を行うなんて、本能って素晴らしいなぁ!
厳密な意味で人間は本能が欠けているから、本作を観ると、動物の本能に憧れちゃいます(^^;
映画に何を求めるか?で本作の感想は違うだろうが、充実のドキュメンタリー最高です。感動!


最後の恋のはじめ方 (2005-5/16)
私的なことだが、仕事で28時間不眠のまま本作を観た。つまんない映画なら寝てもいいや!
という心構えだったが、上映が始まり数分後、楽しくて完全に目が覚めてしまう。
帰宅後も暫らく寝れませんでした。つまり、それだけ面白くて気持ちいい作品だってこと!
心身ともに疲れた時は栄養ドリンクよりもセンスの良いラブコメ!これ鉄則。
恋愛否定派の男女が最後には結ばれるとか、進行形の二人が急に相手の秘密を知って破局?とか、
ラブコメの王道パターンは安心して観てられます。本作も然り、類に漏れず古典的です。
ストーリーを盛り上げる小ネタ笑いも、B級おバカ映画ほど下品じゃないのが小気味好い。
恋愛コンサルタントを演じるウィル・スミスの言動に笑う!というよりも、
彼のクライアントである会計士のダメ男ちゃんがコミカル担当です。主役を喰う勢い!
そういった意味で、ウィルはボケではなくツッコミです。ボケるシーンもあるにはあるけどね。


クローサー (2005-5/13)
まあ単純に言っちゃえば、男女四人、二組のカップルの、当然のことながら恋愛話。
誰と誰が結ばれて、浮気あり嫉妬あり、傷ついたり傷つけたり…って、
テレビドラマでもよくあるタイプの恋愛劇で、本作が特異で斬新なストーリーって訳ではない。
でも、なんだかなぁ、これが結構イケちゃうんだぁ。ハマるハマる!
とにかく構成が巧い。描かれていない場面、つまり行間を読ませる“作り”なのだ。
時系列を英数記号で例えるなら、A→C→E→Gという風に描き、B、D、Fは想像するしかない。
四角関係のダイジェスト?てな展開だが、決して不親切な映画ではなく、
観る人それぞれの気持ちで行間が微妙に変わってくる。読ませ上手!
どの登場人物に感情移入するかで、感想も様々でしょう。こりゃあ大人の映画だわ。
でも恋愛に関しては大人も幼稚だし、他者の恋愛はバカっぽく見えるし…いろいろ思う作品です。


さよなら、さよならハリウッド (2005-5/12)
とっても美味しいと評判の、行列のできる超有名レストランで頂く食事よりも、
大好きな人が自分のために作ってくれた料理の方が断然美味い!
味そのものだけを客観的に検討すれば、後者は前者に劣るだろう。
だけど「美味しい」って、味だけじゃないもんねぇ。♪信じることさ〜必ず最後に愛は勝つぅ
ウディ・アレンの映画は僕にとって“大好きな人が作ってくれた料理”なのだぁ。
手に汗握るド派手なアクションシーンで興奮させる訳じゃなく、
意外なツイストを挿入したストーリー展開で驚かせる訳でもない。
低予算で撮られた、チビでハゲでメガネの小心者が監督・主演の映画だ。
以前にも書いたが、“ウディ・アレン”というジャンルの作品なのです。
ウディ・アレン映画を好きな自分が…大好きです(^^;


恋は五・七・五! (2005-5/10)
本作の監督・脚本は、ぴあフィルムフェスティバル出身の荻上直子。
そう、あの、知る人ぞ知る秀作『バーバー吉野』を撮った荻上直子監督です。
前作と同様、本作も、シュールさよりもポップな感覚の比重が大きい。
嫌味で大袈裟な演出ではなく、ジワ〜ッと笑える“田舎派コメディ”なのだ。
主人公の女子高生が半ば強制的に俳句部に入れられ、
最終的には俳句の大会にまで出場するようになる、その過程をユーモアに描いたストーリー。
ジャンル的には長澤まさみが『世界の中心で…』以前に主演した『ロボコン』や、
矢口史靖監督の『ウォーターボーイズ』『スウィングガールズ』と全く同じと言っていい。
そういう意味では、ベタで予定調和な内容だが、それを承知で楽しむべし!
主演の関めぐみ(ちょっと飯田圭織似?)は今後どんどん人気者になるだろうなぁ。


炎のメモリアル (2005-5/9)
あまりにも抽象的で主観ど真ん中の言葉だから、使用が憚られるが、敢えて言います。
本作は「普通」の映画です。ストーリー展開やオチにツイストのある作品が多い昨今、
珍しく正統、真っ当、正攻法で作られた「普通」の映画です。逆に新鮮。
でも、一見「普通」だからこそ、なかなか気づかれにくいが、実はかなり“巧い”です。
下手をすると、何の面白みもない様な日常の些細な出来事の数々を、
映画というエンターテイメントで“魅せる”領域まで見事に昇華させて描いている。
そして“緊張と緩和”の遣い分けは憎い程に緻密で巧妙。
『マイ・ドッグ・スキップ』のジェイ・ラッセル監督、またも素敵な作品をやってくれました。
主演のホアキン・フェニックスは地味ながらジワジワ良い役者になってきたし、
駄作でコケることが多いトラボルタも本作では味わい深い存在感を見せてくれます。


レモニー・スニケットの世にも不幸せな物語 (2005-5/6)
敢えて例えるなら『ホーム・アローン』ダーク・ファンタジー版です。
長くて仰々しいタイトルで逆説的な効果を狙ってるが、な〜んてことはない、
ジム・キャリー扮する怪しいオヤジが、遺産目当てで幼い三姉弟妹を殺そうとする話。
違う映画のオープニングで始まったり、語り手(ジュード・ロウ)が物語を一時停止させたり、
わりと小粋な演出で魅せてくれるのは楽しい。でも“三姉弟妹に次々と降りかかる災難”
という程テンポ良くもないし、三姉弟妹が危機を切り抜く方法もイマイチ痛快さに欠ける。
冒頭から数十分で既にストーリーに惰性を感じてしまいます。
まあ、セットや映像はかなり丁寧に細かく作りこんでるけどね。
家で好きな菓子でも食べつつ寝ながら観るDVDとしては最高でしょう(^^;
ジム・キャリー、いつもながらのキレ芸は見応えありあり!


キングダム・オブ・ヘブン (2005-4/28)
本作を観るべき人、観て楽しめる人か否か?下記の三つの質問にお答えください。
1.オーランド・ブルームのファン!彼の初主演作だから観逃せないわ!とか思ってる?
2.『アレキサンダー』『キングアーサー』とか、超大作スペクタクル史劇が好きですか?
3.リドリー・スコット監督に無条件降伏してますか?
ひとつも「YES」と答えなかった人は本作を観なくていいです(^^;
最近やたらと多いスペクタクル史劇、も〜ええっちゅうねん!
征服、争い、裏切り、国を守る、誰かを守る…似たり寄ったりの話ばっかなんだよぉ。
んで、広大な地に何千何万の兵士が集っての戦闘シーンを空中撮影して大迫力!!がお決まり。
興醒めってなくらいの順序立てたストーリー展開で、淡々と長時間やるでしょ?
退屈で退屈で観てらんない!歴史大作、苦手です。本作も特異ではないです。


フェーンチャン ぼくの恋人 (2005-4/27)
「ぬる〜い湯に二時間つかった風呂上がり」
↑本作を観終わった時の状態です。良い意味でも悪い意味でも解釈自由型ですぅ。
アメリカ映画的に言うなら、マコーレ・カルキンくん(例えが古ッ!)とダコタちゃんが主演で、
小学生の初恋エピソードを描いた話。舞台はタイです。だってタイの映画だもん。
なんだか監督は日本のアニメが好きらしく、『ドラえもん』『タッチ』の要素が顕著に見られます。
つまり、どういうことかと言うと、キャラもストーリーもありきたり。
こんな内容の映画、洋邦問わず今迄いっくらでもある。♪ベッタベタ〜のコッテコテ。
でも、いいんです。こういうオーソドックスな作品がタイで作られたってことが良いんです。
郷愁を感じて涙するか、昭和の匂いを察知して気恥ずかしくなるか、それはあなたの自由型。
『マッハ!』『アタックナンバーハーフ』と、タイ頑張ってますねぇ。


交渉人 真下正義 (2005-4/26)
外出していてお腹が減りました。あっマクドナルドがある。ハンバーガーを買って食べました。
あれ?いつも食べてる味と違うぞ。物足りない味。と思ったらハンバーグが入ってないじゃ〜ん!
本作、そんな感じです。単純に“ハンバーグ=織田裕二”という訳ではありません。
青島刑事不在は承知の上。それでもシリーズ映画を名乗るのなら、最低限のマナーは必要なはず。
『踊る大捜査線』のテイストなんかあったもんじゃない!役名と聴き慣れた音楽だけ。
ユースケ主演の全く別の映画だと思って観てください。そういう心構えが必要です。
それでも、犯罪もの、パニック映画としてもB級ランクでしょう。
緊迫感は薄く、テンポは特別良くもなく、セリフはベタで無駄が多い。巧くない!
まあ、次の『容疑者 室井慎次』に続く話だろうから、それを観て全てが分かる仕組みなのだろう。
本広監督はポップな感覚だから好きなんだけどなぁ。本作は観なかったことにしましょうか?(^^;


ザ・インタープリター (2005-4/22)
やっぱり主演俳優の存在って大事なんだなぁ…と改めて感じます。
だって本作、無名な役者が主演だったら観る価値ほとんど無いも〜ん。
ニコール・キッドマンとショーン・ペンだから観てられるんだよ。
シドニー・ポラック監督の社会派サスペンス!ってーと、少し期待しちゃいそうだけど、
本作の“売り”は二大俳優の共演と、初の国連本部内での撮影、ただそれだけ。
ホントそれだけです。それ以外に特筆する要素は見当たらないなぁ。
大統領暗殺計画を知ってしまった女性通訳者と、彼女を守るシークレット・サービス…
捜査していくうちに意外な真相が!そこに二人の恋話が申し訳程度に付け加えられる。
一応、どんでん返し!な展開だけど、そこは驚くとこではありません。
こんな内容なら、いっそ駄作って言えるほどダメ映画に仕上げてくれる方が潔いかも(^^;


クレヨンしんちゃん 伝説を呼ぶブリブリ3分ポッキリ大進撃 (2005-4/20)
本作の評価は、2パターンの基準どちらを採用するかで観方が変わってきます。
その1:大人にも定評がある、ここ最近何作かの巧妙&感動系しんちゃんを期待する。
その2:大人向けの要素は気にせず、本来アニメは子供が楽しむべきなんだと考える。
前者の観点で言えば、本作は最悪です。クレしん映画史上一番つまんない。
が、しかし、後者の基準で観るなら、初期のテイスト復活!初心忘るべからずな潔さです。
映画版は監督によって雰囲気が違うから、そんな違いを見出だす楽しみ方もある。
ちなみに本作はムトウ監督。ただやっぱり、原恵一監督の作風を期待する人が多いので、
前者の基準で本作を観て、がっかりする人が続出でしょう。
抑揚がなく、深みがなく、見せ場も山場もノープランな印象さえ受ける。
後者の基準をココロに用意して観賞することをオススメします。


真夜中の弥次さん喜多さん (2005-4/19)
クドカンの“笑い”を野球の投手に例えるなら、変化球を自由自在に使い分け、
打者の心理や弱点を読み取り内角外角とコースを決める、そんなピッチャーではない!
硬球を投げるフリして豆腐を投げる、しかも木綿か絹ごしかにこだわる!!クドカンはそんな投手だ。
常識の隅を突くユーモアでもなく、計算して知的に常軌を逸する訳でもない。
思い付きと勢いで現実から脱線する“笑い”なのだ。その発想センスが最良にして最高。
本作はクドカン的“笑い”が満員電車すし詰め状態。どこを切ってもクドカンの金太郎飴。
だからこそ敢えて言います。しんどい。あまり良い意味ではなく、お腹いっぱい。
もう食べられないよぉと断ってるにも関わらず、強引に口へと押し込まれる感じ。吐きます。
楽しい気分も後半は興醒め。やりたい放題好き放題のクドカン作品はノーサンキュ気味。
『マンハッタン』『魔法使い』等ドラマの脚本を書いてるくらいのクドカンが丁度良いです。


バッド・エデュケーション (2005-4/18)
好きか嫌いか?で言うと、特に好きな訳ではないが、他に類を見ないアルモドバル作品なので、
そのセンス、貴く評価します。でもでも、今回は敢えて低俗に書いちゃいます。
出たぁ!出ましたぁ!アルモドバルの純情な変態映画ぁ。よっ、待ってました!
しかも本作はプライベート度が密に高い。私小説ならぬ私映画。
前々作、前作と世界中で認められたから、この度は“やりたい放題”です。
まるで若き日の自分自身が主人公のような話。女装は序の口、同性愛、少年愛、性的犯罪、
アルモドバルの美しくも切ない愛のかたちが濃縮ジュースぶっかけ状態。
だからって決して品性下劣な映画ではないのが、さすがアルモドバル!
劇中劇、いや劇中劇中劇な演出や、サスペンスな要素もあって、結構ポップ。
あっ、でも、アルモドバルを知らない人は、その世界観を予習してから観賞してくださいね。


大統領の理髪師 (2005-4/15)
改めて言うまでもなく、人気の韓国作品。
でもブームのストライクど真ん中って、純愛モノだったり、
派手な演出展開だったり、イケメン俳優でしょ?本作はと言えば、かなり地味。
そしてルックスが“売り”の主人公でもない。だけど、これが良いんだなぁ。とっても良い。
60〜70年代の、とある町の散髪屋さん話だが、当時の社会情勢がリンクする。
韓国、激動の時代に小市民が政治に困惑する姿が絶妙に描かれる。
全体的にコミカルな作風になっているが、その実、内容の本質は悲しくてツライ。
例えば、悲しい時に悲しい顔をするより、悲しいのに笑顔で涙を我慢する方が切ないでしょ?
本作はそういう映画です。だから巧い!邦画でも洋画でもなく、ディス・イズ・韓国映画!
韓国四天王にキャーキャー言ってる人、こういう良質な韓国映画を観てください。


インファナル・アフェアV 終極無間 (2005-4/11)
『 I 』…犯罪サスペンスでありながら、勧善懲悪から最も離れた巧妙な人間ドラマ。
『 II 』…前作の知られざる過去を描き、シリーズ全体に深みをもたらした重要な作品。
そして本作…おまけ?観終わって正直そう思った。『インファナル・アフェアおまけ編』かぁ?(^^;
まあ三部作だから、I、II、Vと全てを観て何もかも分かるシステムだし、
確かに本作で新しい事実関係も明らかになるけど、衝撃!って程ではない。
一時間弱で描けるくらいの内容。あとはトニー・レオンのお茶目な姿をお楽しみくださ〜い。
この三部作、本作で少し平均点を下げた印象は否めないが、全部的に◎です。
にしても、人生ってホント厳しい!“自己存在証明の苦悩”は何よりもツライねぇ。
さて最後に分かりきった注意点です。『 I 』も『 II 』も観ないで本作を観賞するべからず!
お金を持たずして食堂に入るくらい有り得ないことです。少なくとも『 I 』は必観でしょう。


ハイド・アンド・シーク 暗闇のかくれんぼ (2005-4/8)
デ・ニーロとダコタちゃんだから、なんとか最低限の見応えがあるんだよ。
知名度の低いB級役者的キャスティングだったら、こんな映画、誰も観ないね。
次々と起こる怪現象、そして謎の存在、果たして正体は?どんでん返しのラストが!
そういうサプライズ映画が山程ある昨今、本作は既に“ベタの王道”と位置付けられる。
こんな結末じゃ、もう驚かないんだよぉ。それに勘の鋭い人ならオチが読める。
五年くらい前だったら「斬新!」だと思ったかも知れないねぇ的な内容。
全貌が明らかになって、最後の最後のラストシーンもセオリー通り。興醒めです。
ところで韓国映画『箪笥』ってハリウッドでリメイクされるんでしょ?
本作、『箪笥』のリメイクかと思っちゃいました。「似て非なり」と言えるかどうか微妙。
いっそのこと『クローゼット』てなタイトルにすれば良かったんじゃない?(^^;


コンスタンティン (2005-4/5)
神様お許しください。本作を“つまらない”と書くことを…てか、
この映画を観ることは何の罰ですかぁ?二時間ずっと退屈の刑?(^^;
次々と起こる断片的な怪エピソードがクライマックスに向けて見事に繋がっていく巧妙さ!
な〜んつって、心にも思ってないコメントで茶化してみました。
確かにパズル的おもしろさの要素はあるけど、ストーリー自体が“おバカ”だもんなぁ。
天国と地獄と現世、悪魔が来たりて笛を吹く、キアヌはヘビースモーカーのエクソシスト!
だから?だから何なの?クエスチョンマークの応酬。なぜ?の嵐。
でも、まあ紙一重なんだよね。本作を観て深いとこまで思慮する人にとっては秀作だろう。
だけど万人ウケしない作品であることは否めない。皆「何これ?」って感じるでしょう。
ウィノナの『ロスト・ソウルズ』、キアヌの『ディアボロス』等を思い出しちゃいました。


Shall we Dance? (2005-4/1)
これリメイクですか?コピーじゃないの?しかも“完コピ”状態!
良い意味で「類似品にご注意ください」と言いたくなります(^^;
周防監督オリジナル版のテイストと同じ。うりふたつ。複製品。
細かいカット割りまで一緒?ってくらい、同じシーンのオンパレード。笑えるポイントまで同じ。
勿論それが悪い訳ではなく、むしろ上質のレプリカ作品として成立しているので魅力的。
設計図を見てプラモを組み立てる作業も、誰かの完成品を参考にしながらだと巧く作れる!
みたいな感じで、オリジナルから最低必要なモノだけを取り出して凝縮したニュアンス。
オリジナルより、より一層、洗練されているので、とても観易いです。
調理人は違えど同じレシピ、故に全く同じ味の料理でございま〜す!という印象ですね。
日本映画の微妙なノリがそのまま全米で通用しちゃう!って、嬉しくなっちゃいます。


英語完全征服 (2005-3/29)
楽しい!笑える!面白い!んでもって、ちょっぴり切ない。
英語コンプレックスで英会話教室に通うヒロインの七転八倒とラブストーリーの映画ですが、
完全なる爆笑コメディなので、ひとつひとつの演出が最高に笑える。
一目惚れしたヒロインからハートマークが飛び出し、画面上に花が咲きまくる、
夢で見た不条理な話が映像化され、いきなりアクション映画になる、
実写とアニメが唐突に融合したり、ココロの声が漫画みたいな吹き出しで文字に…
そんなコミカルなファンタジー要素たっぷりの演出です。こういう映画、大好き!
『猟奇的な彼女』『アメリ』『アリーmyLOVE』みたいな感じです。
いや、より一層ポップな仕上がりでラブコメ度が濃厚、濃密。
勿論、お約束通りの胸キュン展開がラストを飾ります。


サイドウェイ (2005-3/17)
うわぁ〜ハマったぁ!やられたぁ!ゆる〜いパンチだと思って油断してたら、
見事なダメージ!わたくし30代のダメ男は完全に本作にハマってしまいました。
オヤジ二人のロードムービー!?リチャード・ギアだったらロマンスも納得だけど、
本作は美貌も人生もパーフェクトにダメ中年男が主演。モテる訳ないじゃーん!
と思うが、それが逆にリアルで、旅先の恋愛話も説得力がある。
「俺は価値のない男だ」とマイナス思考てんこ盛りの主人公に共感してしまった僕は、
感情移入して切ない気持ちになりっぱなし。ラストは泣いちゃいました。
『アバウト・シュミット』然り、アレクサンダー・ペイン監督のラスト展開には心くすぐられます。
本作はオヤジにウケる映画だな。観て、反面教師にして、勇気づけられるって寸法よぉ。
メイン男女四人のキャスティングは絶妙です。ポール・ジアマッティ最高!


アビエイター (2005-3/16)
あれ?どこだっけ?ベッドの下?タンスの裏?部屋の隅々を探しても見つからない…
と、探しても探しても見当たらない探し物みたいな映画です。つまり、見せ場が無い!
面白みが全く見つからない!本作を“徳川埋蔵金”映画と命名します(^^;
大富豪&プレイボーイ&極度の潔癖症ハワード・ヒューズが財を投じて映画を撮り、
俺は地球最速の男!!と豪語して飛行機を造り続ける、それだけの話でございます。
後半、ヒューズが落ちぶれて病んでいく場面は僅かに見どころ気味かなぁ。
スコセッシ監督が観客に媚びない作風だから仕方ないっちゃ仕方ないけど、
観ていて、喜怒哀楽のどの感情も動かされない。刺激されない。無機質な作品。
メディア露出しなくなったヒューズの晩年を描いてくれたらディープで魅力的作品だったかも。
まあ、セット美術や衣裳は何気に豪華だから画面の色彩は素敵です。


エターナル・サンシャイン (2005-3/2)
脚本家チャーリー・カウフマンの優れた仕事っぷり、拝見させて頂きました。
「センスが良い」とか、そんなこと口幅ったくて言えません。だって神業なんですもん!
こんなストーリー、こんな脚本、どうやって書くの?フツー思いつくかぁ?
カウフマン作品は本作で五本目、ひとつたりともハズレがない。まあ興行的な不発はあるけど(^^;
カウフマンは奇抜な構成術を遣うので、観る側は理解するのが難しいかも知れない。
でも、人の脳内出来事を描く手法、それ自体が目的かのような『マルコヴィッチの穴』とは違い、
本作は恋愛映画の手段として脳内映像を用いるため、比較的分かり易いはず。
何重構造になってるの?って巧みな『アダプテーション』ほど難易度は高くない。
僕個人的には、カウフマン自身を投影したような内気で小心者の主人公に好感を抱きます。
脚本のみならず、映像演出・音楽・役者陣も全て素晴らしい大傑作です。


あずみ2 Death or Love (2005-3/1)
腐っても鯛。どの監督が撮っても、原作の世界観が良いので、落第点にはならない。
でも本作を観て、改めて前作の完成度の高さを実感。北村龍平監督、最高ッス!
今回登板の金子修介監督が撮ると、アイドル映画に毛が三本、五本…てな仕上がり。
これは『あずみ』ではないです。『あずみ』に似せた作品です。
って、ちょっと言い過ぎかも。ごめんなさい。で、謝りついでに言わせてもらいます。
ごめんなさい、北村監督以外での続編は決して作らないでください。お願いです。
前作の続きとして、不自然に登場人物を増やし、無理に時間尺を引き延ばしたような展開なので、
スピード感が無く、結末に向けてノルマ的に話を進めてるだけの印象を受けます。
上戸彩は好演だけど、演出下手のせいで主人公あずみも前作ほど強い感じがしない。
敵キャラも“やり過ぎ”で、まるで漫画です。あっ、原作は漫画なんですけどね(^^;


マシニスト (2005-2/28)
ブラッド・アンダーソン監督は巧いなぁ。多分どんな風な作品を撮っても、
観客の期待に応える及第点は楽にクリアしちゃうんだろうね。ま、今回は脚本書いてないけど。
アンダーソン監督は“観せ方”が巧いんだよなぁ。前作『セッション9』もそうだけど、
本作も結末を知ってしまうと、意外に“ありがち”なベタ気味のストーリーだったりする。
でも、一年間の不眠症、見知らぬ男、工場での事故、意味不明のメモ…など、
不思議な出来事と謎を散りばめ、観客の感情を煽る煽る。魅せる。それが巧い。
風呂敷を大袈裟に広げるだけ広げて、こぢんまり畳む映画って、がっかりするのが常だけど、
アンダーソン監督の演出展開は上質だから、期待外れな気持ちを感じない。
オチはどうであれ、至るまでの過程で、お腹いっぱい!エンタメ満腹中枢が満たされます。
何より主演のクリスチャン・ベイルのリアル30kg激痩せが“怖さ”を盛り上げます。す、すごい!


ローレライ (2005-2/27)
「日本映画は嫌〜い」とか「お金払ってまで邦画は観たくない」と言う人が多いが、
面白い邦画は結構ある。なんでもかんでもじゃないが、僕は邦画でセンス良い作品が大好き。
ただ、監督も脚本家も役者陣も“頼まれ仕事でやっただけ?”みたいな大作映画も確かにある。
本作も、製作費だけノルマ的に投じた、しょぼい作品だと思っていた…が、しかし、
違うんだなぁ。作り手の愛情がたっぷり込められた映画なんです。すごく良く出来てます。
余計なイントロは割愛し、テンションの高低を上手く構成する、その全体の抑揚が気持ちいい。
ハリウッドに引けを取らない迫力の映像は見応え充分。圧巻!見せ場は何回もあります。
『デビルマン』や『ゴジラ』を観たら、「日本映画はまだこんなレベルなの?」と、
がっかりするが、本作を観れば、「日本でもこんな作品できるじゃん」と嬉しくなります。
第二次大戦が舞台だが、ローレライの秘密は意外に“近未来”を感じます。プチびっくり。


ビヨンドtheシー (2005-2/23)
二時間、ケヴィン・スペイシー出ずっぱり!歌って踊るケヴィンのワンマンショー!
例えば『リディック』は主演、製作のヴィン・ディーゼルのマスターベーション映画だったが、
本作は監督、主演、製作ケヴィンのマスターベーション映画か?否か?
力の込もった立派な自慰作品です(^^; いやいや自慰に終わらないエンターテイメントです。
実在した歌手ボビー・ダーリンの伝記映画だが、彼に興味が無くても充分に楽しめる。
ここ数年、パッとしないケヴィン映画が続いたが、歌とダンスの特訓に情熱注いでたのね?
本作を観れば納得。ケヴィン半端じゃない!音楽シーンは猛烈に楽しい。
ボビーが自伝映画を作ろうとしてるという架空のストーリー設定になっているので、
ケヴィンの若造りも薄髪も劇中ノリツッコミで無理なく問題解決。
ジェイミー・フォックスの『Ray』と同じ年に公開だったのが、ちょっと不運かなぁ。


トニー滝谷 (2005-2/22)
数ある村上春樹作品の中で、どうして市川準はこの作品(しかも短編)を選んだのだろう?
確かにシンプルさが良い素敵な原作だけど、映画化までした市川準の惚れ込み様は分からない。
本作がダメだと言いたい訳じゃない。むしろ秀作だと思う。ある観点で、
こんなに素晴らしい映画は今まで一度も観たことがない!と言ってもいいぐらい。
その観点とは“バランス”です。原作小説がある映画って、原作の力が強かったり、
あるいは脚色が濃かったり、映像や役者が不必要に際立ったりする場合が多い。
しかし、本作は全てのバランスが絶妙な力加減なのです。見事です。奇跡です。
村上春樹の原作、市川準の演出、イッセー尾形と宮沢りえの演技と存在感、坂本龍一の音楽、
どの要素もバランス良く映画に共存していて、その心地好さが故に見惚れてしまう。
あまり抑揚のないストーリーだから、好き嫌いは否めないが、“バランス”は一見の価値あり。


ブリジット・ジョーンズの日記 きれそうなわたしの12か月 (2005-2/21)
クイズ番組で「サービス問題」ってありますが、本作は“サービス映画”ですぅ!
前作がヒットしたので、感謝の気持ちを込めて“たっぷり笑わせます”的な仕上がり。
恋も仕事も上手くいったりいかなかったり…そんな全体ストーリー像はさて置き、
“お間抜けブリジットのドジっぷりで笑わせまっせぇ”が先行、最優先な内容。
スカイダイブで下ネタ、弁護士パーティーで失態、スキー場で大コケ、取材先のタイで…
等々、ありとあらゆるシーンで、お約束のオチがあります。笑わせます。
芸人レニーのショートコント集が一本の映画になりました〜!てかぁ。
やっぱレニーはコメディエンヌだわ。シリアスな映画出演は控えめにお願いします。
しかし、役作り“デブ度”は半端じゃない。見てはイケナイものを見る感覚(^^;
前作同様、ブリジットの気持ちが映像化するファンタジーな演出も楽しいです。


シャーク・テイル (2005-2/19)
イッツ、パーティー!ハリウッド・アクター&アクトレス、ヴォイス・フェスティバル!
つまり声優祭りなんだなぁ。ニワトリが先か卵が先か?いや、アニメが先か声優が先か?(^^;
豪華声優陣のリアルな雰囲気に似せたキャラの数々、それが本作の一番の見所なんです。
ウィルやデ・ニーロは勿論、スコセッシのキャラも太く濃い眉が悪意的(!?)にクリソツ。
キャラの可愛さではディズニーに適わないドリームワークス、違う方向で工夫してます。ご立派。
オリジナルキャストありきのキャラなので、日本語吹替版がどんなに上手くても、
大前提の“可笑しみ”が欠如するのが残念。ってか吹替の人選は大変だったでしょうね。
ストーリーに深みが無く、印象は薄いが、ポップでスピーディな展開が気持ちいい。
数ある小ネタも楽しくて、大人的“笑い”が満載。オープニングの釣り糸の演出が小粋!
声優に似せたキャラも含めて、子供より大人が楽しめる作品です。


Jam FilmsS (2005-2/17)
初めて観る新しいタイプの映画に、人は新鮮味と面白さを見出だす。そして続編が要望され、
作られちゃったりする。人は前作で得られた衝撃を再び味わいたくて、期待して観る。
続編は前作同様の面白さをキープした仕上がり。でも、その鮮度に対して既に免疫があるので、
前作ほどの衝撃は得られない。故に「パート1の方が良かったなぁ」と思っちゃったりする。
ということで、ご多分に漏れず『JamFilms』はシリーズ第1作目が一番良かったなぁ!と。
第2作目もラーメンズの『机上の空論』は秀逸だった。今回も短編七作品どれも悪くはない。
でも、第1作目の雑巾を搾りに搾って、二、三滴こぼれた“おこぼれ面白さ”な印象を受ける。
その中でも阿部雄一監督の『すべり台』が最高!石原さとみを小学生役に据えた時点で、
もうアイデア勝利でしょう。起承転結が明確で、きっちり“オチ”ます。
しかし今回はどの短編も人間の欲望が丸出しだなぁ。…で、『3』じゃなくて『エス』なの?


岸辺のふたり (2005-2/16)
数多くの要望から、DVD発売後に劇場公開。しかも8分間のセリフ無し短編アニメ。
この“異例な出来事”ってだけで、どんなに素晴らしい作品なのだろう?と期待してしまう。
更に「感動する」「最後には涙が…」等と事前に聞かされてしまうと、
否応無しに期待は膨張し、自分にとって都合の良い理想型作品を想像してしまう。
そんな状況に陥ってしまえば、ちょっとやそっとのことでは収拾がつかなくなる。
だから本作は前評判を知らずに何気に観て、何気に胸に染みたい作品である。
ストーリー設定はあるが、象徴的な内容だと言っていい。故に、誰もが好きに解釈して、
自分の中のココロの引き出しと同調できるか否か。わりと最大公約数的だと思われます。
キレイだし、心地好いし、細かな演出も素敵。とにかく巧いのは間違いない。
※この文章すら読まずに先に観るべき作品…矛盾を含んだ映画評。


ロング・エンゲージメント (2005-2/15)
ジャン=ピエール・ジュネ監督作品と言えば『アメリ』!って図式が周知だが、
『デリカテッセン』や『ロスト・チルドレン』から一貫してジュネは独特な演出が特徴。
細かい細かいカット割り、レトロな色使い、そしてダークなファンタジー。
でもやっぱり、本作はどの作品に近い?と訊かれれば、「勿論アメリ!」と答えてしまう。
ディープな内容が故に万人ウケしなかった過去のジュネ作風だが、
モア・ポップに洗練された『アメリ』の演出が本作でもあちこちに見られる。
以前の作品は日陰ジュネ、最近は日向ジュネ。そんな感じだな。
本作は日向ジュネだけど、『アメリ』みたいなモノを期待して観ると怪我をします。
戦争映画の要素もあるので、リアルな戦場シーンは気を抜かず観ましょう。
でも、リアルもファンタジーも見事にジュネ風味で調理されてます。


セルラー (2005-2/14)
監督は違うけど、ラリー・コーエン作品って繋がりで言うなら、
『フォーン・ブース』と同様、電話一本で次々とストーリーを展開し、
比較的短い上映時間で見事に完結させる潔さが良い。ちんたらプロローグを描かずに、
冒頭から即本題、観客の気持ちを掴んだら結末まで一気に魅せる!
最終的に事件の全貌を知ってしまうと、わりとベタな内容だったりするが、
とにかく携帯電話を題材にした“面白いアイデア”が勝利の映画だと言える。
『フォーン・ブース』ほど人間の本質を巧く曝け出す深みは見当たらないが、
それでも充分に見応えある小品です。“上質な火曜サスペンス劇場”てな感じ。
必要不必要は別にして、笑えるシーンもあります。
同監督『デッド・コースター』のワンシーンが小さく引用されてる遊び心はマニアック?


アレキサンダー (2005-1/28)
莫大な製作費を投じ、壮大なスケールでシリアスに作りさえすれば、
それだけで“良い映画”風に見えてしまう、ベタなセオリーまっしぐらな歴史活劇。
確かに華々しい映像は魅力的だし、戦闘シーンの迫力も圧巻。
更にはアレキサンダー大王の一生についてもお勉強できちゃうという、本当“良い映画”風。
力のある映画監督はこういう映像を撮りたくなるんだろうなぁ、と。
史劇ものがあまり好きじゃない僕は、観た後、心に残るものが特に無い。
「紀元前の偉大な勇者も現代人と同じような悩みがあったんだね」とか、そんな程度。
しかも冷静に観れば、“野蛮”で“変態”な人物ばっかりの映画じゃん。
金髪がヅラにしか見えないコリン・ファレルと、唇オバケのアンジェリーナ・ジョリー、
このチンピラ系キャスティングが物凄くB級感を漂わせています(^^;


Ray レイ (2005-1/27)
もちろん事実を基にして作られた、レイ・チャールズの半生を描く伝記映画。
女遊び、ヤク中、仲間の裏切り、金銭トラブル、そんなエピソードは予想範疇内。
「トリビアの泉」だったらボツになるだろう的な“あるある”ネタ。
だから特に驚くこともないけど、何がスゴイって、そりゃジェイミー・フォックスでしょう。
演技とかモノマネの域を超えて、レイ本人そのもの!栗貫ルパンの比じゃない(^^;
『コラテラル』のタクシー運ちゃんとは別人です。ジェイミー素晴らし過ぎます。
ストーリーと音楽、音楽とストーリー、単調にならない巧い構成で、
見飽きない内容なのも魅力的。要所要所に挿入される幼少期のトラウマ映像も効果的。
レイの曲を知ってれば知ってる程、より面白さを感じられます。CDで予習復習必至。
さだまさし自伝的映画『精霊流し』のレイ・チャールズ版と言ったら語弊ありますか?


MAKOTO (2005-1/26)
欽ちゃん一家の構成作家(若者は知らない?)から、今や見事、
人気ドラマ脚本家となった君塚良一の満を持しての初監督作品。
観客の気を惹きつける程の力を感じないワンカット長回し、やり過ぎの風や雨のシーン、
退屈としか思えないセリフや映像の“間”の取り方、映画を盛り上げない音楽、
東山で正解か?ベッキーを上手く遣いこなせてるか?の危ういキャスティング等々、
どう観ても褒める要素が見当たらない。徳川埋蔵金を見つけるより難しい(^^;
テレビの深夜枠で放映されて、「そう言えば、そんな映画あったよなぁ」的な作品。
“霊が見える”って設定だけど、監察医が事件の切ない真相を解明していくって話なら、
ドラマ『きらきらひかる』の方が、よっぽど面白い。原作は同じなのに大違い。
しかし和久井映見は幸薄いキャラが定着しちゃってるなぁ。


ふたりにグギづけ (2005-1/24)
ファレリー兄弟の高級な笑い?下品な笑い?まさに紙一重のエンタメ作品。
腰が結合した双生児兄弟の話って!?『愛しのローズマリー』もそうだったけど、
ストーリー設定が際々。でも、その発想が秀逸。
結合兄弟がスポーツしたり料理するシーン、更にはエッチや喧嘩の工夫は笑えて当たり前。
しかも最終的には、ちょっと“ええ話”です。後味さわやか。
“ファレリー兄弟にしてはスパイスが効いてないなぁ。片手間で作ったんじゃないの?”
てな印象を受けないでもないけど、だからこそ気楽に観られるって感じ。
マット・デイモンとグレッグ・キニアが主演だが、当初のキャスティング予定は、
ジム・キャリーとウディ・アレンだったらしい。ウディだけ老化症の設定で。
その二人だったら、もっと最高に面白かっただろうなぁ。観てみたい!


銀のエンゼル (2005-1/21)
TV番組「水曜どうでしょう」ファン必見。鈴井貴之の監督作品第三弾!
ちゅうことで、ファンの僕は贔屓目が故に好意的に観れましたが、
正直なところ映画の出来はイマイチ緩い。弱い。物足りない。惜しい。
決してアップテンポな展開を期待してる訳じゃないんだよ。のんびりした作品も大好きなんだよ。
登場人物それぞれ“あと一枚で銀のエンゼルが揃う”的な人生を描く趣旨は面白い。
でもね、個々のエピソードが浅くて、それらが集まっても全体的に説得力が欠けちゃってる。
まるで極薄味のおかずてんこ盛り幕の内弁当。濃いおかず一品でもあれば良かったのになぁ。
個々のエピソードで、もっと派手に遊んだ方が楽しくなると思うんだけどね。
たまに笑えるシーンもあるにはあるが、センス良い演出だとは言えません。
まあ前作『river』よりは生活臭が漂っていて親近感を覚えます。


きみに読む物語 (2005-1/19)
純愛?永遠の愛?そんなの嘘だ、ある訳ねぇ!と思ってるあなた、
そんな自分が好きですか?満足ですか?懐疑心も大切ですが、
ここは心を無防備にして“永遠の愛”を信じてみましょう。そして本作を観ましょう。
映画の中だけのフィクションじゃ〜ん!と斜めからツッコミ入れず、
素直な気持ちで“愛”に触れて泣きましょう。幸せも悲しみも感じる、甘く切ない涙です。
今は年老いた男女だが、若い頃、二人がどんな出会いをし、どんな風に愛を育んだか...
現在と回想の物語で、しかも純愛が描かれている点、まるで『セカチュー』だが、
やっぱり恋愛の仕方がアメリカだなぁと思う。若い二人の恋愛が派手だわ。大袈裟だわ。
日本人、真似できましぇ〜ん。羨ましいけど恥ずかしいです。
でも、強かに愛する気持ちは共感できるはず。激しくも、静かな静かな作品です。


ボーン・スプレマシー (2005-1/17)
出ましたぁ!マット・デイモンの“勘違い作品”第二弾。
マットはアクションスターの器ではありません。もちろん良い意味で。
本屋の中にスポーツジムが開設されたような場違いなイメージがします。
前作はストーリーもアクションシーンも緩々で中途半端な印象だったが、
本作は...やや向上。ナポリ、ベルリン、モスクワ、ニューヨークと、
次々にシーン展開するのでスピードは感じるが、実のところストーリーは牛歩レベル(^^;
でも三部作のうちの一篇だと思うと「こんなもんかなぁ」と寛大な気持ちで観れちゃう。
三作ひっぱる程の“謎”でも無いんだけどね。まあ次作で真相が明らかになるのだろう。
いっそのこと三作を一本の映画に凝縮して観せてくれたら濃い内容で見応えあるかも。
『グッド・ウィル・ハンティング』や『レインメーカー』の弱気で誠実なマットに早く戻ってね!


オペラ座の怪人 (2005-1/14)
『シカゴ』『ムーラン・ルージュ』あるいは三谷幸喜の舞台『オケピ』など、
センス良きミュージカルが好きな僕ですが、王道のキング・オブ・ミュージカルは苦手。
なんでもかんでも歌い過ぎなんだよーッ!歌にする必要があるとこだけ、その何ヶ所だけ、
おっ巧い!と思える遣い方でセリフをメロディに乗せてほしいなぁ。
アンドリュー・ロイド=ウェバーのスコアも正直言って僕はそんなに良い曲だと感じない。
でも、ミュージカル『オペラ座の怪人』は世界的に名作として賞賛されてる訳で、
しかも舞台劇では実現不可能なシーンを見事に、より豪華に映像化してる。
だから素晴らしい出来なのだろう。不必要な歌が多くてストーリー展開が停滞、
故にテンポが悪くて退屈!と僕が言っても、ミュージカル音痴の戯言でしょうか?
ミニー・ドライヴァーの歌唱力に驚いたが、後で調べたら、吹き替えでした。(^^;


オーシャンズ12 (2005-1/12)
ハリウッド映画祭りだぁ!豪華俳優フェスティバル〜!それだけでいいじゃん。
ストーリー展開?そんなもの気にせずに、お祭りごととして観て楽しめばいい作品な訳。
泥棒仲間が再集結する理由がしょぼいとか、強盗シーンがチープとか、
前作同様、登場人物が不必要に多過ぎとか、見せ場がナイナイナ〜イとか、
つまらない要素たっぷりだが、ハリウッド俳優祭りの名のもとに許してあげます。
ストーリー的には“意外なオチ”がラストで明らかになるが、
全貌を知ったとたん、逆に興醒め間違いなし。こりゃ豪華なコントだわ。
結果的に“駄作”と思う人も多いだろうが、でも、ソダーバーグ監督の思惑は強か。
本作然り、『フル・フロンタル』もそうだが、ビジネス優先、サービス過剰、
等々のハリウッド式に異を唱えた作品。そういう気持ちは買います。


ネバーランド (2005-1/11)
子供が大好きで、無邪気に少年たちと遊んでる劇作家バリ(ピーター・パンの原作者)。
彼を見てると、なんだかジャイケル・マクソン(仮名)が脳裏に浮かぶ。
バリが今の時代に同じことをしてたら、どんなに良い作品を書いたとしても、
バッシングの嵐なのではないか?でも実際は彼の書いた物語が世界中で愛され、
その誕生秘話はこうして映画にもなった。う〜んジャイケル可哀相。
そう思うと泣けてくる。そういう意味で泣ける。ネバーランド繋がりで涙なしには観れません(^^;
と、話が脱線気味ですが、本作は“普通に良い映画”って感じ。
何より上映時間が短いのが良い。それ故に淡々としているが、人物描写が浅いという訳ではない。
余計なモノを削ぎ落として要点だけを描いてるので、物足りなさや不調和は感じない。
現実とファンタジーが融合する演出は観ていて和みます。“普通に良い映画”です。


スーパーサイズ・ミー (2005-1/6)
ドキュメンタリーを娯楽映画に昇華させる構成演出はマイケル・ムーアっぽいノリなので、
もう既に目新しさは欠けるが、でもこういう作品はアイデア勝負。
30日間マックを食べ続けるとどうなるか?それを自ら人体実験して映画にする...
そんなアイデアだけで充分“勝利”なのだ。モーガン・スパーロック、お見事!
前人未踏のドキュメンタリー、その全容を目撃するという意味で、観る価値あり。
でも内容から受け取れるメッセージはあくまでスパーロックの意見なので、
本作を観て、どう感じるかは自分次第!ってとこが重要かな。
明らかにマックを攻撃してる映画だけど、実は...
「ファーストフードばかり食べて肥満になってる奴は自己管理できてねぇんだ!
もっと利口になりやがれ!」と消費者を一喝してるように思えます。