2006年の映画評



リトル・ミス・サンシャイン
本作、ひと言で例えるなら“バンドエイド”みたいな映画です。
ジャンル的にはコメディだけど、腹がよじれるほどバカバカしい“笑い”ではなく、
どちらかと言えば、ハートウォーミングなコメディです。いい感じ。
自分で考えたサクセス術で頭いっぱいの父親、哲学思想に影響されて無言な息子、
失恋で自殺未遂のホモ叔父…など、変人家族のロード・ムービー。意外にプチ・シュール。
ハッキリ言って、テーマは“人生の負け組”を肯定する内容です。
だから、観ていて癒されるぅ。思いも依らぬ癒され方しちゃいます。こりゃ気持ちいい。
そんな意味で“バンドエイド”みたいな優しい優しい映画なんです。
お腹すいた時、食べるものが何も無くて諦めていたら、戸棚の中に煎餅を発見!
煎餅たった一枚のことでも、めちゃ嬉しい!そんな味わいの作品です。


無花果の顔
例えば、桃井かおり宅にお呼ばれされたとする。彼女ご自慢の手料理で持て成してくれます。
テーブルの上に出てきたのはハンバーグ。確かに見た目はハンバーグ。
でも、味は…美味しくない訳じゃないけど、ハンバーグの味ではない。
「どう?美味いっしょ?」と問いかけてくる桃井かおり。さて、どう返事すればいい?
あのぅ、全く別の新しい料理だと思って食べれば、こういう味の物なんだ!って感じです。
つまり、本作、そんな感じ。桃井かおりが「どう?面白いっしょ?」と問う。
あのぅ、映画というより、コミカル気味なイメージ映像の長い版!ですよねぇ。
そう、ストーリー重視の作品ではなくて、映像的な演出、あるいは変な間で構築された、
“当たり前”じゃない映画。良い意味で、あざとい。でも、センスがいまいち。
中途半端と言うか、練れてないと言うか、雰囲気だけと言うか…惜しい作品です。


硫黄島からの手紙
戦争映画の評を書くのが、基本的には苦手です。それはなぜかと言うと、
作品の出来が良くないと感じた時、そのことを覆い隠さず書いて酷評すると、
“戦争”そのものを軽視してる、あるいは、ピースフルなハートを持ってない?
と誤解されるからです。平和について思うことと、作品に対する映画評は、別ものです。
それとこれとは別ってこと。…という前振りを書くと、いかにも今から、
本作の酷評を述べる言い訳みたいですが、そんなことないですよ。
本作は素晴らしい、意義ある作品です。ただ、内容のみに絞って言うなら、
日本映画が今まで作ってきた戦争映画と大差はありません。重要なことは、
戦争の敵国それぞれの視点で二部作を撮り、それがイーストウッドの作品で、しかも、
本作がハリウッド映画だということ。す、すごい!是非この衝撃を“目撃”してください。


鉄コン筋クリート
正直、ちょっとしんどかった。マニアックなもの、尋常じゃないウルトラC難度の技、
そういうの好きだけど、本作には着いていけず、映画と自分の距離を埋められなかった。
連ドラを途中から観た、そんな感じ。「確かに興味深いけど、なんだかよく分からん」
そんな印象を否めません。僕の感性が劣ってる、あるいは理解能力不足、なのかも。
僕は“ベタ”なものより“シュール”な方が好き。そういった意味では、本作、好きですが、
例えば、コント屋のラーメンズは、新大阪から新幹線で東京に向かってると思っていたら、
実は辿り着くのは博多だったりします。例えるなら、そんな“シュール”さ。
だから僕はラーメンズ大好きです。本作の場合、新幹線で新大阪→東京のつもりが、
気がつくと、ジャスコでレジのバイトしてる!?みたいな不思議な“シュール”です。
映画の内容を具体的に書かない、この映画評の文章も“シュール”ですか?(^^;


武士の一分
「キムタクって格好いい!めっちゃ好き」とか言ってる人のセンスを疑います。
え?いやいや、キムタクが格好悪いと言いたいんじゃなくて、そんな当たり前なこと、
わざわざ口にしなくていいじゃん!って意味。「新幹線は速い乗り物だ」と、
わざわざ言う?そういうこと。ベタな発言を自覚せず言う意識、センス悪い(^^;
さて、本作、キムタク主演!ってことで、やっぱりスタームービーの箔がある。
でも、それだけじゃなくて、山田洋次×藤沢周平の作品だから、これが良いんだぁ。
『たそがれ…』『隠し剣…』同様、テレビではあまり観られない“切ない時代劇”です。
静と動、で言えば“静”で、アクション時代劇ではなく、静かに熱い想いが込み上げてきて、
感動するタイプの映画です。しかも各配役陣がいい味を醸し出しています。
ただ、二時間の作品としては、少し薄い印象を受ける。もう少しエピソードが欲しい。


暗いところで待ち合わせ
最近やっと、乙一の小説が続々と映画化されてますねぇ。遅いくらいです。
96年のデビュー作『夏と花火と私の死体』を読んだ時、そのセンス良い文体・構成に驚いた。
しかも、16歳で書いた作品だと知って、さらに度肝を抜かれた。
「今後やたらと話題になり、映像化されるんだろうなぁ」と思った。
が、人気作家と言われるようになっても、意外と“知る人ぞ知る”程度に留まっていた。
いやはや、これからは原作・乙一の映画が出まくる…と期待したいところ。
だけど、なんだろう?本作然り、映像化されると、乙一のセンスが全面に出てこない。
ちょっとだけ異質気味な『火曜サスペンス劇場』並みの仕上がり。
ううむ、乙一の面白さは文形態?それ故に、なかなか映画化されないのかも。
最後にひと言。本作、ちょい役で有名人が何人か出てますが、そういうの興醒めです。


unknown / アンノウン
密室。謎系。どんでん返し。それらの要素から、『ソウ』との類似性を強調されているが、
それは商業的な売り文句に過ぎない。『ソウ』とは違う!廃棄工場で目覚めた五人の男、
縄で縛られてる者、ケガをしてる者、争った形跡、そして全員が記憶を失っている。
その謎がパズル・ピース的に解る展開で、これが結構、巧い。すぐ判明することだが、
三人は誘拐犯、二人は人質。逃げようと争いになり、暴発した工場薬品で皆が意識を失う。
数時間後に犯人の仲間がやって来るので、人質は殺される。さて、自分は殺される側?
それとも犯人?状況を打破し、自分が生き残れるかどうか、考えなければならない。
駆け引き、騙し合い、互いの心理戦、なかなか見応えがある。オチも意外。
こんな話を自分でゼロから作り出せと言われても無理…という素直な気持ちで観ましょう。
ただ、複雑なミステリーも、どんでん返しも、見慣れて驚かない昨今ではありますが…。


ソウ3
続編には“利と不利”が必ずある。本作の場合、前二作がヒットしたから、
製作費は容易く調達できたであろうし、撮る前から、ある程度のヒットも約束されている。
でも、だからこそ、クリアしなければならないハードルの高さも、いきなり半端じゃない。
そんな中、前作は続編としての合格点を、わりかし楽に修了していたと思う。
ストーリーに重要な意味があったし、殺人ゲームの見応えも充分だった。
前作は、別の映画として書かれてた脚本を、『ソウ』の続編として仕立て直したものだったが、
本作はちゃんと、『ソウ』の原案者、リー・ワネルが書き下ろし、つじつまを合わせてる。
が、その帳尻合わせが喰わせもので、過去のゲームの種明かし!みたいになってる。
ジグソウが自らメイクしてたり、人形や装置を作ってたり、そんな場面は見たくなかった。
興醒め。文脈は綺麗に繋がるが、ありがた迷惑です。内容のインパクトは確実に微弱。


椿山課長の七日間
笑えて泣ける映画、良いね。対極の要素が同居する作品、良いね。まあ本作の場合、
そのどちらの要素も、そんなにディープではなく、振り幅は無難な距離感。
だからこそ最大公約数的作品で、若年層も年配の方も楽しめる、万人ウケ映画。
浅田次郎の原作で、主演が西田敏行、伊東美咲。それだけで充分に最大公約数。
死者が自分の居なくなった現世が心配で、数日だけ別人の姿で様子を見に行く…
う〜ん、浅田次郎らしいファンタジーだわ。うまいねぇ、浅田さん、うまいねぇ。
ただ、映像にしちゃうと、邦画の野暮ったさが気になるところなんですが。
いい意味で“そこそこ”の作品だから、具体的な文句を挙げることもないんだけど、
強いて言うなら、音楽が良くない。センス悪い。効果音みたいなサントラ。
でも、センス良いはずの服部隆之さんなんだなぁ。どうしたのハットリさん?


サッド・ムービー
例えば『僕の彼女を紹介します』は、『猟奇的な彼女』ファンへのサービス映画でした…
と、少なくとも僕はそう思ってます。例えば、マニアックなところで言うと、
『僕のニューヨークライフ』は、ウディ・アレンの映画が大好きな人への、
ファン・サービス作品です。つまり、内容の善し悪しは別にして、
ファンだけが喜んでくれればいい、みたいな印象を受ける作品!なのです。
逆に言えば、対象とされるファン以外が観ても「つまらな〜い」のです。
本作、何かのファン・サービスもの?と感じてしまうくらい、内容が浅い。
四組の“別れ”話が群像劇形式で進行しますが、誰でも予想できるベタな結末だったり、
唐突な展開だったり、登場人物の心境変化がスムーズに描けていなかったり、
とにかく御粗末です。巧い演出はありません。何のファン・サービスだろう?(^^;


トンマッコルへようこそ
観賞後、ものすごく疲れました。それは良い意味での疲労感。ぐったり。
心地いい、爽快な疲労の訳は、二時間ちょっとの時間で、“喜怒哀楽”
全ての感情が刺激されたからです。ココロが動きっぱなし状態。
笑って、嬉しくて泣いて、時には怒りにも似た気持ちが湧き、切なくて泣く。
ココロを浄化する、最高のエンターテイメント作品です。スタンディング・オベーション!
敵同士の兵士が、平和で素朴な村で鉢合わせ。最初は戦おうとするものの、
次第にココロを交わし、村で仲良く生活するようになる。が、やがて…という話で、
登場人物の心境の変化を上手く描かないと、作品の説得力が欠けてしまう、難しい内容。
でも、そういう高いハードルを、見事に楽勝クリアしてます。無駄も不足も見当たらない。
一年に数本しか出会えない貴重な良質作品。2006年ベスト10に間違いなくランキングです!


パビリオン山椒魚
きっと多分、おそらく概ね、イッパンピーポーは、本作を観たら、
「なんだこりゃ?」と思うだろう。イッパンピーポーとは一般人のことです。
ここで言うところの“一般人”とは、劇場で映画を観るのは年に数本、
ツタヤで借りて観るのは月に数本、で、マイナー作品は知らず、ベタなものが好き。
「そんな言い方して、お前は一般人じゃないのか?」とツッコミますか?
まあ、図にのった“映画通”気取りです。偉そうにゴメンナサイ。
映画は、ストーリー設定や話の展開・構成で魅力を醸し出す場合と、
キャラ設定や映像演出で面白さを生む場合と、大きく分けて二つある。
どちらも兼ね備えてる作品もあるが、本作は明らかに後者です。アナーキーです。
フォーマットはどうでもよくて、映画の通常感覚を破るツイストが大事?みたいな作品。


父親たちの星条旗
戦争を題材にした映画だからと言って、必ずしも全て“戦争映画”なのではない。
莫大な製作費を使い、映像技術を駆使して、リアルで迫力のある戦闘シーンが撮りたい!
ということだけが目的なんじゃないの?と、眉唾に思わざるをえない作品も時々ある。
でも本作は、正真正銘、立派な戦争映画。“立派な”という表現は不適切かも知れないが、
戦争の「愚かさ・残酷さ・悲惨さ」が欠けることなく描かれている。
しかも、“自国が被害者・敵国が加害者”みたいな方程式を用いてない。
善悪は、そう簡単に決めつけられるものではない…
クリント・イーストウッド監督の特徴的な考え方のひとつだろう。
本作は、むしろ、自国アメリカの“非”を浮き彫りにしているあたりが面白い。
日米双方の視点で、二作品撮る構想も、他の戦争映画と格別化されて興味深い。


サンキュー・スモーキング
ジャンル分けしちゃうと“コメディ”とカテゴライズされる作品。
でも、そう単純に“コメディ”か?バカバカしいギャグ映画ではないし、
ジャック・ブラックやベン・スティラーみたいな、コメディアンが主演の作品でもない。
タイトルからして、タバコの何らかの話?と想像はできるが、遠からず近からず、です。
主人公を簡単に説明すると、タバコ研究所のスポークスマン。確かに“タバコ”ですね。
テレビ討論会なんかで、嫌煙派とトーク・バトルします。確かに“タバコ”ですね。
赤唐辛子に酢を加えて作ったスパイシーな液体。それは“タバスコ”ですね(^^;
冗談はさて置き、本作、タバコがキーアイテムですが、厳密に言うと、いろんな状況下で、
話術巧みな主人公が、相手の正論も完全否定して、丸め込んじゃう…それが面白い。
オシャレな感じのユニークな映画です。もっとコメディ要素が強いと良いのになぁ。


16ブロック
ブルース・ウィリスが刑事役?そりゃイコール『ダイハード』ってなイメージ?
本作、そんな愉快・痛快・アクション祭り大作映画ではありません。
どちらかっつーと地味な作品です。東映系列の劇場にぴったり(^^;
落ちぶれた刑事が、囚人を裁判所まで護送する。すぐに済むはずの任務だったが、
何者かに襲撃される刑事と囚人。てんやわんやの大騒動。追っ手から逃げる逃げる。
まあ、そんな話で、銃撃戦もストーリーも、セオリー通りで大味。
派手さも新鮮味も欠けてます。なら、駄作か?と問われれば、そう簡単に断言できない。
終盤に分かってくる刑事の胸のうち、囚人が抱いてる夢や希望…
そんなことが、じわりじわりココロに染みてくる、地味ながら気持ちのいい作品。
これで、もっと派手な見応えある内容なら、超イケてるんだけどなぁ。


カポーティ
例えば、あなたはフランス人…いや、ものほんフランス人並みに仏語ペラペ〜ラだとします。
だったら、駅前留学の仏語教室で、仏語を話す生徒の会話を聞いて、
発音の上手い人・下手な人、正確な文法・間違った文法の人、はっきり分かりますね?
でも、実際には、あなたは仏語が喋れません。仏語を話す人の上手い下手が分からない。
デタラメな仏語でも、「フランス語を喋れるなんてスゴ〜イ」とか思っちゃったりします。
例えが乱暴でスミマセン。何が言いたいかというと、上記の例えが本作なのです。
作家として、納得のいく素晴らしい作品を仕上げる為なら、偽善も、人を裏切ることも、
どんなリスクも辞さないトルーマン・カポーティ。実在した作家。
彼のココロの葛藤を描いた映画なので、アーティストの苦悩に共感できるか否か?で、
本作に面白みを見出だせるか、そうじゃないか、大きく違ってきます。


虹の女神 Rainbow Song
いやぁ、「切ない、切ない、切ない」です。胸がキュンと。
TV、映画、小説、漫画と、恋愛ストーリーは余るほどあって、
ありがちな出来事、予想範囲内の展開…そんな作品、いっくらでも世に溢れています。
だから、何でもかんでも感動できる訳じゃなくて、ハードルが高い分、
際立って“センスが良い”ものしかココロ動かされません。
本作は、斬新な内容ではなく、むしろ、定番的パターンとも言えるエピソードかも知れない。
でも、セリフの間、映像の色合い、音、演技…映画を構成する全ての要素が、
気持ちいいくらいにバランスが良い。恋愛作品デフレ状態の中、本作みたいな映画が、
ココロに残る素敵な作品なのだと思う。プロデュースのみで、監督は手掛けていないが、
それでも、岩井俊二らしいテイストの、さりげなく何気ない逸品。


ストロベリーショートケイクス
傷つくこともない。悲しいこともない。だけど嬉しいこともない。綴る語尾はどれも“ない”
…そんな“何もない”人生はつまらない。勿論、傷ついたり、悲しい思いはしたくない。
例えそれでも、“何かある”人生の方がいい。きっとそうだ。
辛いこと、嫌なこと、いっぱいあるけど、それでも僕らは生きていく。さぁ歌おう!
♪ぼぉくらはみんなぁいきているぅいきているからうたうんだぁ…(^^;
本作は女性四人の群像劇。辛いこと、てんこ盛り。登場人物に手を差し伸べたくなるくらい、
胸が痛む。でも、これが現実です。リアルです。神様ってどっち向いて立ってんですか?
共感する切なさ・悲しみが必ずあります。そんな映画、観たくないですか?
登場人物に差し伸べたくなった手を、自分に向けてみてください。きっかけは映画から、です。
(KAN「ロック試練の恋」の歌詞から一部、借用いたしました)


レディ・イン・ザ・ウォーター
バカバカしい。実にバカバカしい。でも、ナイトシャマランのバカバカしさ、好きです。
例えば、髪を1ミリカットしただけなので、切ったかどうか他人は気づかない…
程度のことを仰々しく描くナイトシャマランの作品、僕は秘かなファンだったりします。
“世の中はプラスとマイナスで淘汰されている”とか“全ての出来事は意味がある”とか、
観た後「で?」と思われがちな、それでいて本質的なことを、伝えるために撮ってる、
と言ってもいいだろう。それでも今までは、ストーリーにギミックがあり、
興味深いオチがあった。が、しかし、本作に意外なオチは顕在しない。
“誰の存在も必然で、何らかの役割がある”ってことを、ファンタジー丸出しで見せた挙句、
失笑を買う想定内エンディングで幕を閉じる。やったぜナイトシャマラン!
僕はあなたの作品をずっと見続けます、秘かに。


太陽 The Sun
この映画を観たい!と思わせる、観たいゴコロくすぐりポイントは、およそ三点。
今まで誰も映画の題材にしなかった昭和天皇を取り上げていること。
ロシア人の監督によって撮られたロシア作品であること。
そして、イッセー尾形や佐野史郎など、登場する役者陣のほとんどが日本人。
しかも、『ラストサムライ』や『SAYURI』のハリウッド映画とは違って、
日本人が話す言葉はジャパニーズ。もうそれだけでいいじゃーん!
嘘か誠かの時代考証には目をつむろう。くすぐりポイントの意義だけで価値あり気味。
でもまあ、淡々とした静かな映画ですけどね。例えば、当時の記録映像があったとして、
その再現フィルムを忠実に作ってみました…てな感じの地味さ。
イッセー尾形の怪しくも愛しい名演に注目で〜す。


もしも昨日が選べたら
アダム・サンドラーの軽いタッチのコメディ映画って、興行収入ランキング1位だったり、
アメリカでは人気あるけど、日本ではなかなか受け入れられてないねぇ。
『50回目のファースト・キス』『パンチドランク・ラブ』『Mr.ディーズ』『ビッグ・ダディ』等など、
プチヒット!てな感じ。あるいは、その一歩手前レベルだったりする。
「アメリカ人、大爆笑なんだろなぁ。でも日本人、ワカリマセ〜ン!」
みたいなシーンが何箇所もあるある。そういうのってニュアンス難しいよね。
本作、自分の人生を操作するリモコンを手に入れた…って話で、面白可笑しく展開して、
着地点はシミジミ泣かせる系です。安心するぐらいセオリー通りの内容なんです。
この映画、前に観たっけ?再放送?と錯覚しちゃう程、ベタな作りになってます。
アイデアは興味深いんだけどなぁ、出オチみたいなもんです(^^;


幸福のスイッチ
なんてことない、日常の他愛ない風景を描いた映画がある。ときどき、ある。
映画にド派手さを求める人は、多分きっと興味を持たないだろう。
僕はそんな、何気ない日常を“ほのぼの”あるいは“まったり”描いた話が好きだ。
アクションもの、SF大作などに比べれば、日常ほのぼの系は作るのが簡単!
と思われがちかも知れない。でも逆に、こういう作品の方が難しい。
本作は和歌山を舞台に、家族、人と人との繋がりを描いた、日常ほのぼの系。
ただ、取って付けたようなシーン展開や、不自然な演出が目につく。
日常ほのぼの系は、そんな“あざとさ”が色濃いと、興醒めてしまうから難しい。
それでも本作が充実して見える理由は、上野樹里、沢田研二、本上まなみ等、
役者陣の魅力で、画に華があるからだろう。ベベチオが書き下ろした曲はぴったりです。


涙そうそう
ベタ、ベタ、ベタ、ベタ、ベタ、ベタ、ベタ、ベタ、ベタ、ベタ、ベタ、ベタ、 ベタ…。
と、何行も書きまくり、最後にひと言「でも泣いた」という映画評を書くつもりでした。
あっ、ベタって、妻夫木と長澤がラブラブでベタベタという意味ではありません(^^;
血の繋がらない兄妹の話で、とにかくベタ。王道の展開が、これでもか、これでもか、
と続きます。シーンごとに安田大サーカスが紙吹雪で騒ぐのを期待しました。
こまっしゃくれた小学生なら、考えつきそうなストーリー展開!ってくらい。
泣かせどころが何箇所もあるが、「ベタに泣くものか!!」と、距離を置いて観てた僕も、
遂にはベタ連打に完敗、うるうるしちゃいました。悔しい。ベタ好きな人は号泣かも。
本作の長澤は、『タッチ』や『ラフ』、TVドラマ『ドラゴン桜』の長澤より良い。
『ロボコン』みたく、明るくて元気な子供っぽいキャラの方が似合ってると思います。


ワールド・トレード・センター
例えば空腹な時、近所のコンビニに行けば、おにぎりとお茶が買える。
そして、そのことを僕たちは当たり前だと思っている。いや、思ってもいない。
意識すらしないレベルで、お日様が東から西へ沈むくらい、無意識な日常。
でも、そんな当たり前の日常も、それが欠けた時、初めて大切さに気づく。
本作から人々が受ける印象は様々だろう。感情ですら、悲しみ・怒り・喜び…と、
いろんな受け取り方ができる。ただ、描いてることの大きなひとつとして、
“当たり前さ”を挙げたい。良い意味でも悪い意味でも…だ。映画を観なくても、
その“当たり前さ”を気づいてる人にとっては、本作は退屈な内容かも知れない。
事実を、あの大きな出来事を、映画化することこそが大事だ!と言われればそれまでだが、
人物像の描き方、物語の展開、映画としての見応え…は足りない。


日本以外全部沈没
こういう作品の解説、あるいは映画評を書くのは、微妙に難しい。
政治的背景とか人種差別とか、デリケートな問題が描かれた映画なので、
それについて何か述べるのは微妙に難しい…てな訳ではない。
率直に言って「バカバカしい映画で、実につまらな〜い」のだ。
でも、確信犯的に“バカバカしく、つまらない”映画を作ってるので、
それ故に“バカバカしく、つまらない”こと、それこそが面白い!…と、微妙に難しい(^^;
『いかレスラー』『コアラ課長』のスタッフ陣が製作してるので、
そのニュアンスは周知の通り。ディープな映画通の“箸休め”みたいなもんです。
外国人が日本に媚びる姿など、筒井康隆・原作なので、シュール&ブラックで面白い。
ただ、映像にしちゃうと面白さ半減。ミドリカワ書房の新曲が聴けるのは嬉しい。


トランスアメリカ
性転換しようとする男が主人公、つまり、見た目は女性だが、実は男性。
それを女優フェリシティ・ハフマンが演じる。女装した男性に見えちゃう!ってのが凄い(^^;
こういう変わった役を演じると、必ずアカデミー賞にノミネートされますねぇ。
さてさて、性転換の主人公、十数年前に生まれた実の息子が突如現われ、
なんだかんだで一緒に車の旅…って、特異なストーリーだから、なかなか共感できぬ。
いやいや、上辺のストーリー設定だけで判断しちゃいけません。
自分の居場所、誤解と偏見、人との信頼関係…などなど、生きる上での本質が、
この映画には詰まってます。感情移入して、切ない気持ちになります。
もちろん、クスクス笑いが散りばめられた、ユーモラスな作品でもあるので、
たまには、こういうロード・ムービーを観賞するのも、いいんじゃない?


グエムル 漢江の怪物
得体の知れない怪物に娘をさらわれたので、家族一丸となり怪物と闘う!なんだそりゃ?
というか、それ以前に“怪物”って、なんだそりゃ?と思ってしまうのが人の道理です。
昭和の日本映画に見られる怪獣作品を想像しますか?だったら観る気ないですか?
もしかして、間抜けな“おバカ映画”だと決め付けてませんかぁ?
それは偏見です。食わず嫌いです。よ〜く噛んで味わってみなさい。
“おバカ映画”ではなく、“おバカ映画”紙一重だと分かるでしょう(^^;
でも、怪物のVFXは凄い!リアルです。だから迫力あって怖いです。
めいっぱいデジタル感&かなりなアナログ感の折衷で、妙な魅力を醸し出しています。
ソン・ガンホ、ペ・ドゥナ、と出演陣がAクラスなので、見応えはあります。
結局は、怪物パニック映画のプロットで、アメリカ批判しちゃってる作品ですねぇ。


マッチポイント
ウディ・アレン作品じゃないと言われれば、そんな気もしないではない。
シリアス路線だし、ジャズではなくオペラ。何より、舞台がNYじゃない。
でも、ウディ・アレン作品だと言われれば、確かに彼らしい特徴が顕著に見られる。
ロンドンの街並みはウディの目線でフィルムに納められているし、
何より、人生が“運”次第で左右される様を、皮肉っぽく描いてる。
しかも、そのストーリー展開は過去作『重罪と軽罪』に類似する。
彼のセンスを敬愛する僕としては、彼の作品全てを好 きだが、やっぱり“笑い”が欲しい。
次回作のコメディ『スクープ(原題)』が今から楽しみで仕方ない。
とは言え、いろんなタイプの映画を提示してくれるウディ・アレンの、
世界で一番素晴らしいセンスは、作品に“笑い”が無くても充分に陶 酔します。


UDON
『踊る…』シリーズを始め、本広監督作品が好きな人は観るべし。
ユースケ、トータス、そして小西真奈美が好きな人も観るべし。
さらに、夏バテで食欲不振気味?の人も観るべし。必ず“うどん”が食べたくなります。
決してマニアックではなく、最大公約数的な笑いが散りばめられた、
誰でも楽しめる作品に仕上がっています。幅広く、いい意味で“妥当”に笑えます。
どんな話かっつーと、地元ミニ・タウン誌が隠れ家的うどん屋を紹介する記事を載せ、
それがきっかけで“うどんブーム”になる!って、コメディ路線の前半と、
うどん作りを介して父と子の絆を描く、ハートウォーミングな後半で構成されてます。
本筋と関係ないCGアニメの挿入、豪華エキストラ陣の投入、遊びゴコロが満載。
本広監督の『サマータイムマシン・ブルース』を観た人だけが楽しめる要素ありです。


レイヤー・ケーキ
『ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ』『スナッチ』
のスタッフが再結集!英国発スタイリッシュなクライム・ムービー!
そんな宣伝文句を見ると、否応無しに期待しちゃいますよ。盛り上がっちゃう。
マドンナと結婚する前のガイ・リッチー復活…え?ガイ・リッチー監督作品じゃないって?
え?しかも、こっそり単館上映状態?な、なんで?ま、まゆつば。
そうです。地味に公開するだけあって、内容も地味な映画なんです。
目まぐるしくスピーディな展開で魅せる訳ではないし、ユーモア感も欠如。
説明台詞いっぱいで、裏がある複雑なストーリーも目から鱗に及ばず。
“英国発、確かにスタイリッシュかも知れないが、そんなに巧くはない、
地味なクライム・ムービー”と、極私的に訂正させて頂きま〜す(^^;


ダメジン
夏、日本列島に台風が近付く。自分の住む町に上陸するかも知れない。
そんな時、怖いながらもワクワクしませんか?なんかちょっと楽しみ、みたいな。
不謹慎な発言です。ごめんなさい。でも、否めない気持ちだったりします。
好きな監督の新作が公開される時、僕の心情は、台風に対するそれと似た気持ちになります。
楽しみ!でも、万が一、つまらなかったらどうしよう…の不安。
『イン・ザ・プール』『亀は意外と速く泳ぐ』を観て、気に入った監督・三木聡。
本作次第では、僕的に“お気にいり”返上もあり得る?そんな戸惑いの観賞。
で、映画が始まったら、不安なんぞ吹っ飛んで、三木“ゆるゆる”ワールドに夢中。
公開順が入れ替わったが、実は長編初監督作品が、これ。現時点での三本中、
本作が一番、シティボーイズのコント・テイストに近いです。脇腹くすぐられます。


笑う大天使
アニメじゃないよ実写だよ!SFじゃないよ学園コメディだよ!
と注釈を付けたくなるくらい、VFXを駆使した映像。視覚効果てんこ盛り。
だから、ハイテンションなアニメのノリ。愉快・痛快・面白いかい?(^^;
本気の域で、スタイリッシュな馬鹿馬鹿しさを演出した内容…なのに、
残念ながら笑えない。面白いと思えない。すっごく残念です。
例えるなら、“面白い”じゃなく“楽しい”テレビのバラエティ番組な感じ。
かなりの持ち駒があり、素晴らしい技も惜しみなく出してるのに、センスがイマイチ?
そう、“笑い”に関するセンスが良くない…てか、少なくとも僕とは違うので、
全く笑えない“楽しい映画”に終始した印象なんです。勿体ない。
ナレーションに広川太一郎を起用するアイデアは良いが、これも使い方が上手くない。


ゲド戦記
今まで何度も口すっぱくなるくらい言ってることだが(映画評で頻繁に書いてま すが)、
作品に何を求めるか?何を期待するか?で、受け取る印象は天と地の差が生じる。
本作に“宮崎駿”を求めますか?だったら観終わった時に「いまいち」と思うでしょう。
怒濤のストーリー展開ではないし、愛らしく不可思議なキャラも登場しない。
原作を読んでないので、無責任な発言になるが、「映画に工夫がない」ってな感じ。
意識的にシンプルな作品にしただとか、六巻ある原作の一部を映画化したその選択眼も含め、
それもこれもが宮崎駿の息子・吾朗監督のセンスなのだ。それはチェックするべし。
ちゃんと、ジブリ・ブランドとしての映像的充実感はあります。
主人公アレンが父を殺して、自分探しの旅に出る…という設定が、
宮崎親子の関係と重なって見えてきませんか?そんな裏っぽい見方も、これまた面白い。


ハチミツとクローバー
僕みたいな30代のおっつぁんには、正直言って、まぶしいです。恥ずかしいです 。
でも、ちょっぴり胸が痛みます。いつの時代も何歳になっても普遍的な切なさで す。
でも、こういう青春恋愛モノって、僕にとってはSFなんです。空想大活劇!
片想いされてる側の男子を観てると、「ありえねぇ」とか今でも思っちゃいます(^^;
まっ、そんな私的全開な、となりの芝生的な見解はさて置いて、
本作はキャスティングが良いです。役者のキャラと登場人物の設定が、
ジグソーパズルのピースを合わせるかのように、上手くハマってます。
だから、観ていて気持ちいい。魅力的な役者陣だしねぇ。ちなみに加瀬亮は注目株です。
ただ、劇中に何箇所か見られる“笑い”のシーンは、全体から浮いてる印象を受ける。
一貫性が緩い、取って付けたみたいなユニークさ、この映画には必要ないんじゃないかなぁ。


花田少年史
交通事故がきっかけで幽霊が見えるようになる少年が主人公。
母・篠原涼子と父・西村雅彦の、キャラ優先的な笑いを中心とした、
ほのぼの系ホーム・コメディ…と思いきや、それはあくまで前半戦。
涙を誘いつつ、わりとシリアス・モードで、幽霊と幽霊の勧善懲悪対決が、
まるでSF?かのような映像で展開される後半戦。テイストの違う前半と後半、
“ひと粒で二度美味しい”と思うか、不一致な折衷に戸惑いを覚えるか、
それはあなたのセンス次第です。はたまた、全体的にB級感を否めずに、
80年代の邦画を観てるような貧乏くさい気分に陥るかどうか、それもあなた次第です。
原作コミックもアニメ版も良いけど、実写はセンスの善し悪し微妙ですねぇ。
豪華で魅力的なキャスティングに、かなり助けられています。


間宮兄弟
飽和状態の空気感を独特の“間”でフルスイングして空振り。しかも、わざと(^^;
そんな、ゆる〜い作品を撮る、センス良い最近の監督と言えば、山下敦弘とか三木聡…
おっと、既に大御所である森田芳光の存在を忘れていたぁ!だって森田監督、
ゆる〜いの久々なんだもん。こういう路線、まだまだ健在なんですね?安心しました。
でもまあ、脚本も演出も、やり過ぎず、やらなさ過ぎずなテイストがいい感じです。
ちょっと図に乗ったことを言えば、もっと面白くなるのに残念!
とか思えちゃうくらいの感じが、逆に程好くて心地いいんです。
春夏秋冬ずっと寂しくて、切ない男子諸君は必ず観ましょう。小さな幸せ共有ムービー。
てか、キャスティングが絶妙に良い!主人公二人のみならず、隅々まで全て良い!
沢尻エリカの“無敵”感があるだけで、本作は大成功なのだぁ。


春の日のクマは好きですか?
わりとカワイイのに、がさつだからモテなかったり、フラれたりする女のコ。
こりゃ間違いなく血液型はB型だなぁと思えちゃうような主人公。
そういう役柄、ペ・ドゥナにぴったり。そんな彼女が好きです。
図書館の美術本に落書きされた愛のメッセージをたまたま見つけ、
その気になった彼女は、周囲の男性を次々と“メッセージの主”だと思い込む…
という他愛もないラブコメで、しかも妄想コントが挿入される軽〜いタッチ。
ありがち、ありがち!な作風が逆に安堵を誘う腹八分め映画です。
わざわざ劇場で観なくても、DVDになってから観れば充分じゃ〜ん!って、
皆が言う感じの作品であることは否めない。それはそれでオッケェ。
ペ・ドゥナの出演作で一番好きなのは『リンダ リンダ リンダ』だなぁ。


M:i:V
あのテーマ曲が聞こえてきたら、なんか妙に興奮しませんか?ワクワクしますぅ。
もう、その時点で、映画の罠に見事ハマっちゃってま〜す。
冒頭からトム・クルーズ、大ピンチだし、救出劇、潜入、爆破…と、
見応えオンパレード状態。迫力あるシーンとシーンの間の“繋ぎ”も、
無駄にダラダラ長い訳じゃなく、全体的にテンション高め持続。
でも、でも、でも、ずば抜けて高得点を狙う内容じゃなく、
端っから平均点保持が目的みたいな匂いがします。本作、まあ楽しめるのだが、
特別な魅力、新鮮味、目からウロコ的なツイストは希薄、いや、皆無です。
何度か観た映画を、久しぶりに改めて観賞してるような気分かなぁ。
ご機嫌なポップコーン映画ですねぇ。めでたし、めでたし。


カーズ
ディズニーアニメは特に思い入れがないが、ピクサー作品は大好きです。
『トイ・ストーリー1&2』『バグズ・ライフ』『Mr.インクレディブル』最高!
でも『モンスターズ・インク』『ファインディング・ニモ』は、まあまあ。
そんな風に思ってる僕が『カーズ』を期待しない訳ないっしょ?
だって本作は、『トイ・ストーリー』のジョン・ラセター、久々の監督作品なんだもん。
彼の掘った深い落とし穴に見事にハマり、気持ち良く、こてんぱんにやられたい!
そう望んでいた…にも関わらず、実際は浅い浅い落とし穴で、ハマるにはハマったが、
すぐ自力で抜け出ちゃいました。のれんに腕押し。手応えナッシング。夢のまた夢。
映像のディテールは素晴らしいんだけどねぇ、脚本があっさりしてるんだなぁ。
恒例の同時上映、短編『ワン・マン・バンド』の方が毒気あって面白い。


トリック劇場版2
予想通り、期待通り、いつも通り!!相変わらず『トリック』は三大ストリート、健在。
映画だからと言って、余計な特別なことを施して、いつものテイストじゃなくなる…
みたいな気負いは微塵も感じられない、テレビ版のおもしろさ、以下でも以上でもない。
勿論それが良いところ。なんだかんだ言っても、母親や妻が作ってくれる、
家庭の味が一番ホッとする、みたいな安心感を得られる嬉しい作品なのだ。
テレビでも観られる内容に、あなたは1800円払えますか?ってことです。
答えはイエス!それだけの価値あります。堤幸彦の小ネタは最高!
でも、80年代の小ネタが多いので、ナウなヤングは全ての“笑い”が分かるかなぁ?
壮年だけが楽しめる、大人の小粋な娯楽が満載なり。『トリック』万歳。
寅さんシリーズみたいに、毎年一本、劇場版を撮る!って、どうですか?


初恋
犯罪もの?ミステリー?恋愛もの?♪せ〜つ〜な〜い〜片想い…
昭和40年代の青春映画ですねぇ。でも三億円事件の話でしょ?
そうそう、それがメインみたいな宣伝の仕方になってるけど、
三億円事件は、ただのアイテムだよ。確かに映画の大事なギミックではありますが。
淡く切ない片想いの青春ムービーだと思って観ればいいよ。
当時の街の様子とか雰囲気が巧く映像になってるよね。
宮崎あおいも映画女優として魅力あるから貴重な存在だな。
でも実兄が出演してるのは余計な気がする。どんな気持ちで共演してるんだろう?
とか、考えてしまって映画の世界に集中できないよ。気が散る。
日曜の昼下がり、テレビ東京で放送しそうな作品ですねぇ(^^;


花よりもなほ
例えば、山田洋次監督『たそがれ清兵衛』は正統派で上品な時代劇でした。
例えば、クドカン『真夜中の弥次さん喜多さん』はギャグ満載のデタラメ時代劇でした。
本作は是枝監督の初時代劇なのだが、短絡的二分化でカテゴライズするなら、
山田洋次とクドカンの中間に位置するテイスト。少し山田寄り。
キャスト陣のユニークさは、それだけでクドカン的おもしろさですが、
内容のアナーキー感は薄く、演出的には山田寄りと言っていいだろう。
だから、“笑い”を強く求めて観ると、少し肩透かしを喰らうかも。
全く“笑い”が無い訳じゃないんだけどね。満腹感は味わえないってことです。
強い侍!を主人公にするのではなく、本当の強さとは…を気持ち良く描いて魅せる。
岡田くんファンでなくても安心して観られる、腹八分目ムービーです。


ジャケット
“数学が大好きな青年がいました。彼は大学に行きたかったが、家の事情で進学を諦め、
家業を継ぎました。仕事をしながらも、毎日、誰も解いたことのない数式について、
ずっと考えました。晩年、不可能だと言われていた数式の証明を、
遂に自力で解いてしまいました。大発見だと思いました。喜びました。
でも、既に何十年も前に誰かが証明済だということを彼は知りませんでした”
上記は本作の話ではありません。でも、そんなイメージの作品なんです(^^;
記憶、時空間移動、そんな設定の映画は今まで何本もある。本作は全く目新しさがない。
広げた風呂敷を巧妙に畳めてもいない。テーマが似てるから比較しちゃうけど、
『バタフライ・エフェクト』の方が何倍も何十倍も巧く作られてる。
キャスト陣は魅力的なんだけどなぁ。実に残念。十年遅い作品です。


ダ・ヴィンチ・コード
三冊にも及ぶ、分厚くて内容盛り沢山の原作本を、どのように映画化するか?
バカでも解るように親切丁寧に描いて、その分、エピソードは省略しちゃう…あるいは、
原作内容を余す所なく盛り込み、「義務教育じゃないんだから説明しません」態度をとる…
本作は潔く後者です。バカを切り捨て、原作ファンを大切にする方針がプンプン匂う。
でもだから、テンポ良い展開で、長時間ずっと緊張感が持続、飽きない映像に仕上がってる。
トム・ハンクス、オドレイ・トトゥ、ジャン・レノ、日本人が好む出演陣なのも親しみ深い要素。
ただ、何と言っても困難なのは、原作を読んだ人とキリスト教に詳しい人以外は、
映画の展開に付いていけず、ストーリー学園の落ちこぼれになってしまう!ってこと。
特に日本人には馴染みの薄いテーマなので、映画を堪能するために予習は必須。
とは言っても、謎解き・暗号解読レベルは難易度が低く、オーソドックスの集大成かな。


アンジェラ
2タイプの趣が違う文章を書きます。まず【表タイプ】です↓
ベッソン六年振りの監督作がこれか?なんなんだコレ?こんな不味いもん喰わせんなよ!
あんた金あるんだから、こんな映画は趣味で作って、部屋で一人で観てればいいじゃん。
おバカ作品。浴槽の栓を閉めずに湯を入れて、いつまでも風呂を待つくらい間抜けです。
本国フランスでも不評だっつーんだから、もう誰もベッソンの味方はいないねッ!
以上です。では、続いて【裏タイプ】です。本音バージョンとも言います↓
こういう作品、好きだなぁ。シンプルな内容で、確かに都合良い男の妄想的願望だけど、
ココロの中央で、突かれると一番弱い部分です。僕は泣きました。
目新しさも、大したヒネリも無いが、それが逆に今どき新鮮で、幸せな気持ちになった。
ドラマティックさが欠如して、非現実的で、でも精神的には、よりリアルな『レオン』かも。


嫌われ松子の一生
“寂しい歌詞が好き。あるいは、寂しい人が書いた歌詞が好き”
そんな風なことを言った人がいた。僕もそうです。全くその通りです。
しかも、それは歌詞だけではなく、小説、映画、絵画…様々な作品に対して当てはまる。
僕なりの気持ちを付け加えるならば、“悲しくて泣くのではなく、
悲しい時に涙を堪えて笑顔を見せる…そういう人、そんな表情を持つ作品が好き”です。
そんな僕のココロを、真正面から鷲掴みして放さないのが本作なのです。
この話をストレートに映画化したら、昭和の匂いプンプン角川映画みたくなっちゃいますが、
中島哲也監督のセンス良さで、ミュージカル仕立て、アニメ的なCG合成などなど、
楽しくて面白い演出が盛り沢山の“大人のための究極エンターテイメント”になりましたぁ!
悲しみと笑いの振り幅が大きければ大きい程、僕は好きです。拍手!


ナイロビの蜂
ミステリーの要素をベーシックに、魅力的なラブストーリー映画でもある本作…
バニラとチョコ、どっちか選べないから、ソフトクリームはミックスを注文する感覚 (^^;
でも例えば、パンを食べたい人にヤキソバパンはヤキソバが余計でしょう。
ヤキソバが食べたい人にとってはダブル炭水化物がしつこい?なんつって。
ふたつの要素が中途半端なのではなく、一粒で二度美味しい訳です。
アカデミー賞のノミネートでも多かったが、社会派の作品が目立つこの頃。
社会派ドラマって、厚みがあって見応えも充分、でも、そこに娯楽性が欠ける場合、
だったらドキュメンタリーの方がいいんじゃない?とか思っちゃったりします。
本作も娯楽性は微妙だな。カスタードたっぷり詰まったシュークリームではありますが…。
レイチェル・ワイズは印象的で、オスカーゲットも納得。綺麗です。


寝ずの番
子供向け、大人向け、子供から大人まで楽しめる…と、作品が狙う年齢層があるもので、
本作は明確に“大人向け”です。っつーか、“ご年輩向け”です。
映画には観客を制限するR指定とかがあったりしますが、
本作は人生の機微を分かってらっしゃる40歳以上限定!みたいなイメージです。
少なくとも若造の猪突猛進センスでは、この面白さが分からないだろう。
とかなんとか言っても、芸人の楽屋ネタで綴るエロ話のオンパレードだったりします(^^;
作品タイトルが出るまでの冒頭ネタは、間違いなく観客のココロを掴みます。最高。
エロと笑いだけの低俗な映画?ではないんです。人情、生と死、涙…
いろんな意味で良質な“ご年輩向けエンターテイメント”に仕上がっています。
原作の中島らも、監督のマキノ雅彦(津川雅彦)、万歳!


陽気なギャングが地球を回す
ごめんなさい。つまんないです。豪華キャストなのに勿体ない。
どんな映画だろうと、作品の良い箇所を見つけて褒めよう…と、最近は思っていたのに、
それが困難、不可能、挫折しちゃうほど、本作は面白くないです。
原作?脚本?監督の演出センス?どれが駄目要因なのだろうか?
原作小説を読んでないので断定しかねるが、少なくとも監督のセンスが良くない。
昭和の日本映画がちょいと背伸びした!って感じのテイストだなぁ(^^;
スタイリッシュで、かっちょいい〜、小粋な笑いと切ない感動…
そんな映画にしたいのは分かるが、ことごとくスベってます。全く痛快じゃない。
作品の存在を忘れた頃、深夜のテレビで放送されるような映画。
エンドロールが出始める約一分だけ僅かに面白かった。それだけ。


アイス・エイジ2
『Mr.インクレディブル』『マダガスカル』『チキン・リトル』などなど…
劇場公開のアニメ映画と言えば勿論CG!の図式が定着していますが、
老舗ディズニーの作品がいまいちな昨今(ピクサーものは秀逸ですが)、
ドリームワークスやフォックスに頑張ってもらわないといけない。
本作は周知の通り続編だが、その楽しさは前作と変わらず…てか、
基本的なストーリー展開、同じじゃーん!家内制手工業なリメイク?(^^;
仲間数人、いや数匹で旅をしてる中、危険な状況を一緒に回避したりして、
敵対してた者がココロ通わせ仲良くなる。前作も本作も同じパターン。
まあ、そんなベタな内容に安堵する訳です。で、やっぱり面白いのはスクラットの存在。
メインストーリーと無関係に、どんぐりを追い続けるスクラットのコントは爆笑です。


立喰師列伝
映画紹介を書く時「この映画はあの映画と似ている」と別の作品名を挙げる…
そんな書き方は分かり易くて有用です。ただし、引用する映画は有名じゃないと成立しない。
敢えて書くが、ウディ・アレン『カメレオンマン』という作品がある。主人公ゼリグの記録映像、
彼を知る人々へのインタビュー、などで構成された嘘のドキュメンタリーという内容で、
独創的な素晴らしい映画です。秀作。で、ある意味、本作は『カメレオン』に似ています(^^;
数人の立喰師に関するエピソードを軸に、昭和史を描く!架空のドキュメンタリーなんです。
それを押井節なる言葉の応酬で魅せるナレーション劇。声は山寺宏一。
映像はスーパーライヴメーションって技法…つまり、低俗な表現をすれば、写真の紙芝居。
『KILLERS』もそうだったが、本作も押井守が好き放題やっちゃってます。
押井守の独壇場!こういう新感覚、僕は好きですが、あくまで、マニアックな領域です。


マンダレイ
ラース監督の前作、アメリカ三部作の第1弾『ドッグヴィル』は衝撃的でした。
アメリカを皮肉った、善悪の精神構造を暴露った内容は見応え充分で、それにも増して、
余計なものを映像から排除したシンプルな演出にもド肝を抜かれた。
白線と文字でスタジオを区切り、僅かな家具を並べただけのセット…
舞台劇か?新ジャンル映画か?いや、ラース作品だ!てな感じでした。
続編映画がコケる要因のひとつとして“インパクト欠如”が挙げらるが、本作も然り、
テイストは前作で周知の分、衝撃的な印象は薄い。でも、それを補って余りある内容だ。
前作同様、人間の脆さ・醜い部分、例え自分のことでも目を覆いたくなる、
そんな本質を惜しみなく描き出している。興味深いストーリー展開。
勧善懲悪やハッピーエンドを映画に期待する人、ショック覚悟で観てください。


ピンクパンサー
例えば、和食を食べたい気持ちの時に、油こってり中華料理が食卓に出てきて食欲減退。
例えば、本格的な辛いカレーとナンが食べたいのに、レトルトカレーを湯せんして我慢。
これ、すなわち、精神的な“需要と供給”の不一致です。アンバランスな関係です。
で、そういった意味で言うと、本作は“需要と供給”の関係が分かり易い映画です。
観客が求めるものと、作品が提示する要素が、ぴったり合います。問答無用なり。
本作が提示する要素は、つまり、スティーヴ・マーティンのコメディ!ってことです。
金太郎飴のように、どこを切っても、アメリカンでベタなギャグ満載です。
ピンクパンサー?そんなの、ただのフォーマットに過ぎません。
本作は完全にスティーヴ・マーティンのワンマンショーでございます。
そんな、彼流の“笑い”を求める人は必見です!爆笑しちゃってくださいませませ。


かもめ食堂
こういう映画を観ていると、武者小路実篤の短い詩が頭に浮かぶ。
『 いじけて 他人にすかれるよりは 欠伸して他人に嫌われる也 夏の日
嫌う奴には嫌われて わかる人にはわかってもらえる 気らくさ 』
映画と言えばド派手なアクションものだ!とか、製作費数億円の大作が好き!とか、
邦画は観る気がしない!とか、そういう人は本作を観ないでいいです。
な〜んでもない話で、フィンランドに日本食堂がある。ただそれだけ。
抑揚たっぷりのエピソードが展開される訳じゃない。でも、この“ゆるゆる感”が良い。
こんな映画を、の〜んびりと観るのは日常の中のささやかな贅沢。あるいはプチ優雅。
脚本も手掛ける荻上直子の監督作品は本作で三本目だが、『バーバー吉野』『恋は五・七・五』
そして『かもめ食堂』と、ハズレが無い。三発三中!素晴らしい。


ナイスの森
まず、すっごいベタなこと言います。本作、ナイス!です(^^;
てか、本作の映画評を真面目に書く気がしません。実にバカバカしい映画です。笑えます。
嬉しい楽しい大好きッ。ナイス!本作を全く知らない人に、どう説明すれば分かるかなぁ。
21話の短編、ショートムービー、映像コント…つまり、二時間半のバカバカしい映画です。
ああ、すきやき食べたい。焼肉でもいい。肉が食べたいなんて、おいらもまだまだ若い…
て、全く関係ないこと書いて、すみません。だって真面目に書く気ナッシング。
要するに『Grasshoppa』というDVDマガジンとか、石井克人監督の『茶の味』とか、
そういうテイストの、モア・バカバカしさなんです。分からない人は放っておきますよ、
義務教育じゃないんだから。『ナイスの森』もっと観たいで〜す。
しかしまあ池脇千鶴、いつのまにか個性派、演技派、名脇役の道まっしぐらですなぁ。


プロデューサーズ
エンドロールも含めて、本編の上映が終わる数秒前まで、観客を楽しませてくれます。
寂しい気持ち、切なくて苦しい気持ち、悲しい気持ち、一切ありません。楽しい、楽しい!
舞台版は観たことがないので、舞台と映画、どんな違いがあるのか分からないけど、
そんなことはどうでもいい。気にしない、気にならない。だって楽しいんだもん!
歌って踊って笑わせて、観るだけでハッピィになる映画、もうそれだけで充分じゃーん。
日常の憂さを忘れて、映画館で幸せいっぱい、満ちてみませんかぁ?
ネイサン・レイン、マシュー・ブロデリック、ユア・サーマン、ウィル・フェレル…
みんな最高です!劇中劇“春の日のヒトラー”が観たくなります。
ただ、敢えてひとつ希望を言うなら、ロブ・マーシャル監督の『シカゴ』のような、
“舞台 → 映画”の独特な工夫みたいなのが欲しかったかなぁ。


ナイト・ウォッチ
もうこれだけ沢山のいろんな家電製品が存在するので、“目的と方法”に関して言えば、
今まで無かった全く新しい家電製品が作られることはないと思いませんか?
例えば、近年はプラズマテレビが新製品だったりしますが、番組を視聴する目的は変わらず、
製品の方法がグレードアップしただけ。DVDやMDも同じことが言えます。そして、
テレビデオとかカメラ付き携帯などは、二つのモノをくっつけて新しそうに見せてるだけ。
そういう意味で、目的も方法も、全く新しい家電製品なんて、もう無いんじゃないかと…
で、ロシア発の新感覚ムービーと称される本作、確かに“斬新”そうに見えます。が、
端的に言えば、『マトリックス』的な映像で魅せる、現代の地上版『スターウォーズ』です。
ネタバレ気味ですが、本作ラストシーンは『SWエピソード3』かと思っちゃいました(^^;
実際、本作は三部作らしいです。善の光チームと悪の闇チームが超能力で戦う映画で〜す。


ブロークバック・マウンテン
「静かだが熱く激しく、繊細だが大胆、同性愛という形で見せる普遍的な“愛”の秀作」
と、ありきたりな褒め言葉で書くとこんな感じ。遠からず近からず。
で、「男と女に置き換えれば、よくあるタイプの不倫映画じゃーん!男版宝塚かぁ?」
と、悪口レベルの非難で書くとこんな感じ。遠からず近からず。
恋愛映画は数多くある訳で、“許されない愛”を描いた恋愛もののひとつとして見れば、
本作はベタなエピソードの羅列で、特筆すべき点は無いに等しい。
でも、退屈して萎えることなく、逆に惹きつけられてしまう要因は、
やっぱり、ゲイを真正面から描いてることにある。そして、その愛情の苦悩や切なさは、
ゲイでもヘテロでも共感できる内容にまで昇華されている。登場人物の心理描写、生活環境、
少年期の体験など、あざとくなり過ぎず、巧く演出するアン・リーのセンスが効いている。


イーオン・フラックス
観てる間の約二時間はそこそこ興奮しながら楽しめて、観賞後はココロに何も残らない、
何も残さない…そんなタイプの作品。ありがちありがち。
敢えて言うなら『アイランド』『マトリックス』『バイオハザード』系の、
シャーリーズ・セロン主演版!です。『キャッツ・アイ』みたいなエロいコスチューム着て、
セロンちゃんがアクロバティックにゴキブリ歩きする映画で〜す。
『モンスター』で女優魂を見せつけ、世間を「あっ」と驚かせたセロンちゃんが、
本作で、また別の意味で「あっ」と驚かせてくれます(^^;
いやぁ、しかし、本作のセロン然り、ハル・ベリー、ジェイミー・フォックスと、
オスカーを手にした後に何故、お約束のように“おバカ作品”に出るんでしょ?飴と鞭?
セロンちゃんの場合は、オスカー獲得前に本作の出演が決まっていたらしいですけど…。


イヌゴエ
フレンチブルドッグが関西弁、しかもオッサン声で喋る。その声を遠藤憲一が担当。
そして、犬を飼う役が山本浩司。んな感じの低予算バリバリ・ミニシアター系…ってだけで、
めちゃめちゃおもしろいだろう!と、否が応でも期待が高まります。
そう、例えるなら、春が近づくと花粉症の人は鼻がむずむずしてくる感じ。
え?例えが悪いって?花粉症で辛い方、失礼しました。すみません。
とにかく、バカバカしさ満開でナンセンスな世界観まる出し!が、
たまらなくおもしろいんだろうと期待してましたが、これが意外と“普通”で。
まあ、設定そのものが普通じゃないんだけど、決してハチャメチャな展開ではありません。
喋る犬と、その声が聞こえる頼んない青年のエピソード、もっとバカっぽいのが観たかった。
犬の声きっかけで、勇気や自信、自分を変えることができましたぁ!って、いい話です。


僕のニューヨークライフ
「今夜はご馳走になります。とても楽しみに来ました」と僕は満面の笑みで彼に言った。
彼の名はウディ・アレン。手料理を振る舞ってくれると言うので、僕は彼の家を訪ねたのだ。
彼は僕のためにわざわざ新しい手料理を試みる訳ではなく、
かといって、特別な食材を買い出しに行った気配も全くなかった。
彼は冷蔵庫にある、つまり“残り物”だけを遣い、慣れた手つきで素早く調理を済ませた。
「さあ、召し上がれ」と運ばれてきた料理は『僕のニューヨークライフ』という品。
これが“当たり前に”美味い。ひとくち食べると僕はとろけそうになった。いや、とろけた。
決して斬新な味ではないし、特別な工夫も施されていない。でも、彼の手慣れた作り方、
彼らしいいつもの盛り付け、そして『アニー・ホール』と似た風味が僕を至福へと誘う。
「ごちそうさまです」と僕は礼を言い、彼の家を、いや、映画館を後にした。


ウォレスとグルミット 野菜畑で大ピンチ!
年間百本程の新作映画を観てますが、「これは最高傑作!」と僕が太鼓判を押して、
人にオススメできる作品は年に十本程度。その数少ない貴重な太鼓判が本作。
てか、このシリーズ大好きなんです。過去の短編は大好物です!
決して下劣ではない小粋なユーモアが満載で、心地いいテンポと優良なセンス。
子供には勿体ない、大人をくすぐる娯楽傑作なのです。イギリス万歳!と言いたくなります。
テーマパークで丸一日ずっと遊びまくる〜!と同様の楽しさを味わえます。
【過去作を観た人向けのコメント】本作は基本的に、前作『危機一髪』のパターンです。
が、数段にパワーアップされているので、長編だという気負いが裏目に出ることなく、
素晴らし過ぎる出来栄え。後半のアクション場面は笑いと興奮でお腹いっぱいになってください。
【過去作を観てない人向けのコメント】こんな面白いものを観ずに生きるつもりですか?(^^;


クラッシュ
わおぅ!やったね!今年の最優秀作品候補にめぐり逢っちゃいましたぁ。わんだふる〜!
本作の監督ポール・ハギスって、『ミリオンダラー・ベイビー』の脚本書いた人で、
しかも本作が監督デビューなんでしょ?こりゃまいった。素晴らしくセンス良いじゃん。
様々な登場人物がいて、誰が主役という訳でもなく、幾つものエピソードが描かれる群像劇…
と言えば、『マグノリア』『トラフィック』等々あるが、特に本作の脚本は秀逸。
十数人のキャラ全てに感情移入できちゃう程、それぞれの人生が端的に巧く描かれている。
だから、複数人が交錯して、互いに偏見や激情が生じた時、誰の気持ちも痛いくらいに分かる。
故にシーンの意味やメッセージ性が半端じゃなく深い。技術面も精神面も巧妙な作品。
人種差別を扱った映画なので、敬遠する人もいるだろうが、重たくツライだけでなく、
ココロが浄化される(救われる)要素もあります。喜怒哀楽いろんな感情が刺激される。


アサルト13 要塞警察
76年にジョン・カーペンター『要塞警察』って映画があったことすら知りませんでした。
本作はリメイクだそうです。てか、そんなプチ知識がなくたって、
観て、楽しめれば、それでいいんです。面白いか否か、単純な二者択一なんです。
とは言いつつも、本作の善し悪しは微妙。敢えて、ニュアンスを例えるなら、
眠れぬ夜、深夜のテレビで本作が放送されていたら、意外に見入っちゃうかも…です。
大晦日の夜、閉鎖間近のボロ警察署が、とある集団に襲撃され、
署内にいる警官と留置されてた犯人が協力して応戦する!って話なんだけど、
ブルース・ウィリス的キャラが不在の『ダイ・ハード』ってな感じ。
特にオススメはしませんが、他に観る映画がなかったら、本作をどーぞ。
“映画観賞失敗”は避けられますから。とりあえず、二時間ハラハラドキドキです。


ナルニア国物語 第1章 ライオンと魔女
『ROTR』は面白かった。所詮プロローグだった第一作目は首傾げ気味だったけど、
三部作が堂々完成してみると、その偉業の達成に感服した。ピーター・ジャクソン万歳!
そして、配役の無理感を余所に、まだまだ続いてる『ハリポタ』シリーズは、
その優等生っぷりなクオリティに魅力を感じない。もう観る気もしない。
ここ近年の大作ファンタジー繋がりで、ついつい比較したくなるのだが、本作はと言えば、
どちらかってーと、『ハリポタ』みたいな優等生。先生の言うことを聞き、
勉強もスポーツも楽に及第点をクリア、学級委員に選ばれ、先生のお気に入り…てな感じ。
しかも“馬鹿に話を聞かせる”かのように、丁寧過ぎるくらい丁寧に順序立てた構成。
こりゃもう老若男女が無難に楽しめる、究極の“最大公約数”作品です。
まっ、頑張って続編を作りまくってちょーだい。無難、無難。


シリアナ
例えば、寝不足だとか、空腹で映画どころじゃないとか、仕事のことで頭がいっぱい…
にも関わらず、誘われたから仕方なく本作を観に行った!みたいな状態だと、
頭ん中を蜂の巣にされて、その上、映画の内容にも付いていけませんよ。
いや、蜂の巣になるくらい刺激があれば、まだマシで、頭ん中が真っ白になるでしょう。
石油利権をめぐる中東とアメリカの実情を、複数のストーリーが平行で展開していく…
つまり、簡単に言えば、麻薬が題材だった『トラフィック』の石油版!なのだが、
これが良い意味で不親切な描き方で、ややこしくて難しい。把握するのにひと苦労。
子供の頃、政治のニュースなんて興味なくて、見たり聞いてもチンプンカンプンだったでしょ?
本作を観てると、そんな懐かしくも無知な幼少時代を追体験できます(^^;
良く出来た映画なので、深く理解する為、ストーリーを事前に下調べしてから観ましょう。


県庁の星
織田裕二主演の東宝映画っつーと、やっぱり『踊る…』の面白さを期待しませんか?
“それとこれとは別もの”だと頭で分かっていても、つい同様のテイストを求めちゃう。
でも、そんな期待を抱いて本作を観ると、ちょっぴりがっかりするから要注意です。
杓子定規なエリート公務員と、マニュアル無視で現場主義のパート店員。
その二人が三流スーパーで一緒に働くことになる…ってストーリー設定だから、
真逆な行動が衝突を生み、そこが面白いんだろうと、誰もが想像できるはず。
確かにそういう内容なのですが、登場人物の心境変化を妙に時間かけて丁寧に描くから、
仕事で衝突エピソードがいまいち足りない。もっと怒濤のエピソード羅列構成にした方が、
何倍も何十倍も楽しい作品になったはず。こりゃ残念。惜しい。見す見す好機を逃してます。
で、登場人物の心境変化を丁寧に描くわりには、最後ら辺の展開が緩くて説得力欠如です。


ウォーク・ザ・ライン 君につづく道
永遠の“いまいち華の無い二番手三番手”俳優のホアキンが主役!確実に出世作…って、
それだけで妙に嬉しいじゃないですかぁ。別にファンではないけど、な〜んか嬉すぅい。
ホアキン頑張れーッ!!偉そうぶらずに地味な主役級クラスとして、コツコツ頑張れーッ!
さて、本作はどんな感じかと言えば、実在した歌手の半生を描く伝記映画で、
ここ最近の『Ray/レイ』『ビヨンド the シー』と、ほぼ同じです(^^;
歌手を目指す→売れる→落ち目になる→再起する…どの伝記も大雑把に言えば、こんな感じ。
「観慣れちゃったぁ!ありきたりで面白くない」と罵倒するのは簡単ですが、
他の作品との違いを見つけて、自分なりに楽しもうじゃあ〜りませんかぁ。ちなみに本作、
主人公ジョニー・キャッシュの恋愛話が軸になっているので、それが他との違いです。
ただ、恋愛つっても、不倫を美化した内容なので、ちょっと眉唾ですけどね。


PROMISE
中国映画・超大作・時代劇だから小難しいかも…と、肩に力を入れ、眉間にシワ寄せ、
腕組みし、真面目な顔で観ちゃいますか?ノンノンノ〜ン、全然そんなことありゃしない。
笑わせる映画と笑われる映画とは大違いで、本作は後者のテイストがほんのり。
大袈裟な映像演出は『グリーン・デスティニー』『HERO』というより、例えるなら、
シリアス版『少林サッカー』って感じ。チャン・ドンゴンの俊足は失笑きわきわです。
でもでも、大将軍・奴隷・公爵・王妃の三角、いや、四角関係を軸にしたストーリーは、
誤解の愛あり、献身の愛あり、憎しみが故の愛あり、なかなか見応え感じる話です。
真田広之は一番いい役、おいしい役なので、出番も多いし、アクションシーンも満載。
日中韓のアジア・フェスティバルとして、お祭り気分で観賞しましょう。
撮ったが不採用になったらしい真田広之の“やり過ぎ演技”バージョンが是非観たい。


サイレン
『トリック』『溺れる魚』の堤幸彦作品には“笑い、おもしろさ”を求めてしまうので、
それらの要素が皆無の本作は、観ていてちょっぴりツライです。
それでも出来が素晴らしければ拍手喝采するのだが、
本作はギリギリ“B級映画ではない”レベルです。本当もうギリギリ。
最後の最後に明らかになるミステリーの結末は、一応、驚くに値するものだけど、
それまでの数十分間の展開は欠伸を我慢するのに精一杯!てな感じ。
“ココロ惹かれる程の抑揚”が無い脚本だし、市川由衣のアイドル演技には興醒めです。
ネタバレ厳禁ですが、敢えて言うと、『シックス・センス』と和風『ゾンビ』の融合です(^^;
サウンド・サイコ・スリラーと銘打つだけあって、音の恐怖感は一見、いや、一聴の価値あり。
ただし、音響設備の良い劇場で観ないと、それは堪能できません。劇場選び重要!


たべるきしない
伊藤由美子が脚本・監督の約20分のショートフィルム。
ポカリスエットのCMやミスチル『未来』のPVを撮った伊藤由美子です。
ポカリ、未来、そして本作と、つまりは綾瀬はるかフェスティバル!
もっと言うと、本作は綾瀬はるかデビュー曲PVの延長線なんです。
なんだかんだでアイデア湧いてきたのでショートフィルムにしちゃいました…のノリ。
でも、綾瀬はるかファンだけが観て満喫すればいい作品…という訳ではありません。
『茶の味』の佐藤貴広が“格好良くない”彼氏を演じてるのも微笑ましいし、
主人公の妄想が具体的に映像化するファンタジックな演出も楽しいし、
くすっと笑えるところが何箇所もあって、意外に掘り出し物です。
この雰囲気で一時間くらいの短篇映画が観たい!と思います。


ミュンヘン
遊び半分(?)の間に合わせ映画『宇宙戦争』みたいなSF作品を撮りつつも、
時折、重厚な社会派ドラマを描くスピルバーグ。さすが大御所、ビシッと決めてくれます。
オリンピックでのテロ事件、そして報復としてのテロリスト暗殺を事実に基づき描いた作品。
平和について、人が人を殺めること、そんなことをいろいろ考えさせられる内容です。
だからと言って、スピルバーグの主張が強く押し出されてる訳ではなく、
「この事件をこんな側面で描いてみました。あなたはどう思いますか?」という感じ。
事件そのものを“大きな塊”として政治的に捉えるのではなく、
暗殺を任された男のココロの葛藤にスポットを当て、それを映像で提示する。
爆破、銃撃戦、暗殺…と、緻密で迫力あるシーンは見応えありなので、
小難しいものは苦手!という人もスパイ・アクション映画として充分に楽しめます。


スタンドアップ
実在の連続殺人犯を演じた『モンスター』で、CG処理を無視したリアル巨漢と化し、
ヌードも披露する醜い容姿と引き替えに、オスカーを手にしたシャーリーズ・セロン。
そんな女優星人の彼女が主演!ってだけで、観たくなりませんかぁ?
女優という職業に“魂”を売り渡した彼女の主演作は見逃せませんぞぉ!
本作では、男ばかりの鉱山で働き、セクハラされまくるシングルマザーを演じています。
実話に基づいた内容で、アメリカ初の集団セクハラ訴訟を題材にした映画なんです。
逆境、逆境、また逆境、辛い仕打ちが続いた後、遂にラストでは…
まあ、よくあるタイプの映画と申しますか、王道、正統派の優等生作品。
セクハラの場面つっても、そんなに過激な描写ではないし、
なんつぅか、中学や高校で観賞させられる文部省推薦映画って感じです。


最終兵器彼女
出たぁ、出ましたぁ!『デビルマン』的、東映の失敗作品(^^;
人気コミックを実写化すると、駄作になるかマニアックな秀作になるか、両極端な結果。
で、本作は勿論、完璧なる前者。昭和の匂いプンプンです。
例えば、原作の世界観をコピーするが如く忠実に再現するか、あるいは、
原作の設定だけ借りて全く別モノに昇華させるか、そういったセンス良い工夫がまるで無い。
“表面的に『最終兵器彼女』の形式である”だけ。B級以下。
この物語はコミックやアニメだから成立する訳で、実写しかも二時間映画ではかなり難しい。
ヒロインちせの日毎の変化は全く以て映画では巧く表現できてない。
しかも窪塚俊介の存在が、本作の“駄作感”に拍車を掛けていると言っていい。
前田亜季の本作起用は微妙だが、彼女は日本映画界の今後を任う素敵な女優さんです。


フライトプラン
飛行機に一緒に搭乗した娘が居なくなり、乗客も乗務員も娘の存在に知らんぷり…って、
映画好きの人なら、こう思うはず。「それって『フォーガットン』なの?違うの?」と。
映画評ルール破りのネタバレを書くつもりはありません。が、はっきり言います。
本作は『フォーガットン』な“なんでもありあり”オチではないで〜す!リアルです。
だからって、意外な真相、衝撃的なオチという訳ではない。目からウロコは落ちません。
謎が明かされ、全てが終わり、エンドロールが流れた瞬間、「で?」てな感じ。
特に巧くもないし、いまいち説明不足だし、アクションシーンも弱い。納得度かなり低し。
これくらいの内容なら、テレビの『土曜ワイド劇場』でもやりそうだね(^^;
つまりは、母親の娘を想う愛情は何より勝る!ってテーマを描いた映画なので、
優れたミステリー要素を期待して観ない方がいいですよぉ。


オリバー・ツイスト
C.ディケンズの同名小説は読んでません。ので、原作の批評はしません。できません。
ただ敢えて、逆輸入的発想で、この映画を小説に例えるとしたら、
言葉の練り方、フレーズや文章の書き方は巧いのに、肝心な話がつまんない小説!てな感じ。
ポランスキー監督の演出、映像は申し分ない程キレイなのに、内容は意外と淡泊。
往年の『母を訪ねて三千里』や『ロミオの青い空』みたいな天涯孤独なオリバーくん、
ツライ日々を送りながら、いろんな人と出会い、優しさや愛を知っていく…
みたいなノリですが、幾つものエピソードが細切れで浅く、とても散漫な印象を受ける。
だから物語にいまいち入り込めず、感情移入もできないまま、映画は終わっていきます。
19世紀ロンドンの街並みをオープンセットで作り上げた豪華な作品なのに、実に残念。
主演の少年は神木隆之介くん並みに可愛いので、それ目当てに観るのもいいんじゃない?


天使
恋人がいるシングルファーザー、イジメにあう女子校生、コンビニバイトの青年など、
あと少し勇気が足りない彼らの目の前に天使が現れ、背中を押してくれる…
そんなストーリー設定、アイデアは面白い。でも、それだけ。
設定は素敵なのに、内容が伴ってません。中身がアイデアに負けてます。
“安易な描き方”あるいは“深夜ドラマ並み”または“B級アイドル映画”レベル。
幾つかの独立したエピソードが微妙に繋がったりしてるスタイルだが、
『大停電の夜に』同様、本作も『マグノリア』みたいな巧い繋がり方ではない。
いっそのこと、そんな中途半端な工夫なら要らないです。
深田恭子の喋らない天使はハマリ役なので、フカキョンファンはお楽しみください。
結局、本作で一番良いのは大竹佑季の主題歌だな。キレイなメロディが印象的です。


プルーフ・オブ・マイ・ライフ
天才数学者の父親、数学の才能がある娘、世界驚愕の数式証明…数学、数学、数学!
ですが、NHK教育テレビみたいな内容ではありません。秋山先生は出てきません(^^;
同時期に劇場公開の邦画『博士の愛した数式』とも全く違います。微妙なことを言えば、
数学じゃなくても本作は成立するんだけど、まあ、自分証明と数式証明で
ダブル・ミーニングってな具合。上手〜い!山田くん、グウィネスちゃんに座布団持って来てッ!
絶望と言うか、人生の拠り所を失った女性が再び希望を見出だす、
「再生」を描いた感動的な人間ドラマ…だと思ったら、ちょい意外な内容にプチびっくり。
父の死後、書斎から発見された数式証明は一体…?てなミステリー劇に展開しちゃう。
だから推理小説を読み解く如し、話にグイグイ惹き込まれていきます。
でいて、軸はココロに傷を負った女性の再生、ひと粒で二度美味しい映画なり。


プライドと偏見
恋愛が全て、恋愛の喜びこそ人生の喜び、そう思ってる人は共感しまくって楽しいでしょう。
あと、キーラ・ナイトレイ好きな人も彼女の魅力を存分に堪能できるでしょう。
上記に当てはまらない人は観たって面白くないです。つまんないです。それだけです。
はい、映画評これにて終了…って、短い?なげやり?んじゃ、もう少し書きます(^^;
18世紀末の英国が舞台で、文学作品だから“お堅い”映画じゃないの?と敬遠してる人、
全然そんなことないですよぉ。恋愛のことだけで頭ん中いっぱいの五人姉妹が、
いい男や金持ちを狙って家でも外でも大騒ぎぃ!簡単に言っちゃえば、そんな内容。
キムタク格好いい、妻夫木くん最高、あっ今すれ違った男子ちょ〜イケてるよねぇ!
と、そんなことばっか言ってる今時ギャルの古典的作品です。
まあ、この原作を現代に置き換えて書かれたのが『ブリジット…日記』なんだけどね。


スクールデイズ
ルックスで勝負!というより、演技派で売りたい森山未來くんの初主演作。
赤ん坊から子役で人気があった主人公、ドラマの役柄と私生活の垣根が曖昧になって…
という怪しくも可笑しい話を、派手な演出でコミカルに魅せる。
田辺誠一が劇中劇の熱血教師に扮する『金八先生』のパロディなんかもあって、
笑って笑って爆笑映画〜!かと思いきや、これが意外と残酷な悲しい話だったりする。
劇中劇の学園ドラマではイジメられる役、でも私生活では…やっぱりイジメられちゃう。
お父さんは浮気、お母さんは精神的に病んでて、家庭もボロボロ。
“実は悲しい話”をコミカルに描いてるから、振り幅が大きい分、余計に悲しいです。
そして結末…笑える映画だと思って油断してたら、残酷なラストにココロをえぐられる。
良い意味でも悪い意味でも新感覚です。ただ、エンドクレジット後のシーンは要らないなぁ。


ブレイキング・ニュース
事件が1話で完結する“刑事もの”連ドラがあり、登場人物の設定も相関関係も知らず、
いきなり第5話から観てみた…本作はそんな印象を受ける映画だ。
観客としてストーリーに入り込むまで時間がかかるというレベルではなく、
最初から最後までずっと傍観しっぱなし。つまり映画と自分の距離感が縮まらない。
それは登場人物の人間像がほとんど描かれていないのが大きな原因だと思われる。
それ故に誰にも感情移入できない。作品に親近感が湧かない。
でも監督が力量不足なのではなく、クールに観賞できる内容を意図的に構築したのだろう。
クレーンで撮影した銃撃戦やワン・カット長回しの演出は圧倒的な迫力でスタイリッシュ。
コミカル要素を排除した香港版『踊る大捜査線』は客観的な位置から見応え充分。
だけどケリー・チャン、他の映画ではそうでもないのに、本作では演技が下手に見えます(^^;


THE 有頂天ホテル
このラーメン屋いつも行列ができてるから、すごく美味いんだろうと期待したら、
実際に食べると意外に普通の味なので落胆。この店は昼時でも全く客が入ってないから、
不味いラーメンだろうと思って食べたら、意外に普通の味なので感嘆。
そんな偏見や先入観、つまり期待も諦観もせず、ただ無心で本作を観てください。
そしたら充分に面白いです。楽しめます。笑えます。三谷幸喜ワールドを満喫できます。
でも、三谷作品を観まくってる人にとって、満足度やや不完全燃焼気味かも。
幾つものエピソードが緻密に重なり合った上で、ベタなギャグ、計算されたユーモア、
いつもの三谷の力量が存分に発揮されてます。ただ、多過ぎるキャスト陣、壮大なセット、
豪華大作、そんな余計な要素が三谷コメディを堪能するには邪魔な気がします。
だから“無心で観るべし”なのです。嘘に嘘を重ねてドタバタに展開する三谷劇は最高です!


さよならみどりちゃん
こうして映画評を書いてますが、自分でも映画を撮ってみたいと妄想を抱いてる訳です。
偉そうな発言してるから、面白い映画が作れるはず!な〜んて思ったら大間違い。
実際に自分で撮ってみたら、意外としょっぼいしょっぼい作品になるだろう。
“テレビでゴルフ観て批判してる親父、うんちく並べるが実際はゴルフ下手”みたいな感じ(^^;
さて、本作について全く何も述べてませんが、何が言いたいかというと、
そんな僕は「こんな作品を撮ったら、監督として気持ち良いだろうなぁ」と思うんです。
初監督作ではなく、長年温めてる案を二、三本作った後に本作みたいな映画を撮ってみたい。
現実にありそうな他愛もない話で、お世辞にも美談とは言えない内容だが、
映画にするとザラザラとした美しさが胸に痛く、切ない想いが込み上がってきます。
星野真里が男気、いや、女気あふれる素敵な演技で頑張ってます。キュンとしちゃいます。