2007年の映画評
転々
『ダメジン』『亀は意外と速く泳ぐ』『図鑑に載ってない虫』の三木聡、新作。
そもそも、最初に彼の監督作を観ようと思ったきっかけは、僕がシティーボーイズを好きだから。
三木聡がコントの作、演出を手掛けてると知り、彼のデビュー作『イン・ザ・プール』を、
まるでシティーボーイズ・ライブを観るようなワクワク感で劇場に足を運んだ。
それ以来、僕は三木作品のファンです。今では“『時効警察』の三木聡”として有名だが、
“シティーボーイズの三木聡”だと僕は思っています。だって、モロそのテイストですもん。
特に本作は、過去ネタ大行進。“シティーボーイズの三木聡”総ざらい!みたくなってる。
新作を観てるというより、総集編あるいはベスト版を鑑賞してる趣きです。
そういった意味で、シティーボーイズ好きにはたまらなく愛しい映画でございます。
まあファンじゃなくても、この“まったり緩い”世界を楽しんでください。気持ちいい。
アイ アム レジェンド
『キャスト・アウェイ』という映画、覚えてますか?観ましたか?
無人島での孤独な生活を描いた、トム・ハンクスひとり芝居ショータイム。
そのウィル・スミス版が本作です。ウィル・スミス・オン・ステージ!
あ〜あ、なんだか無理矢理な理由で、地球上ひとりぼっちになっちゃったぁ。
これが昔懐かし『ハクション大魔王』なら、それからどしたの?って感じですよねぇ。
孤独なウィル・スミスちゃん、感動的な“いい話”へと展開しちゃってください。
いえいえ、それは出来ません。だって本作、ホラー映画なんですもん。
導入部と設定がちょっと新しめの、単なるホラー。例えばゾンビ映画みたいな話です。
結末も、クラシック作品を観てるような錯覚に陥る、ベタな終わり方です。
数年後には「おバカな映画があったよね」と言われるんでしょうねぇ。
ダーウィン・アワード
う〜む、この作品について何をどんな風にコメントすればいいんだろうか?
…という書き出しで始めましたが、本作を観た人なら、この気持ちに共感してくれるはず。
なんなの?ジャンルというか、立ち位置は何処?宣伝文句通り“異色ムービー”です。
おバカで間抜けな死に方をした人を称える、ダーウィン・アワードという実在の賞があり、
その受賞者のエピソードをコント仕立てで紹介しつつ、全体的には保険調査員の話で、
最終的には殺人事件を解決するという着地点で風呂敷を畳む。むむむ…。
混沌として無茶苦茶な展開かと思うでしょ?でも、良くも悪くも、
意外にこじんまりとまとまってます。だからこそ、評価しづらい。
前人未到の“おバカ”領域まで突っ込んでくれたら「みうらじゅん賞」なのになぁ(^^;
まあ、とにかく、ウィノナ・ライダーの地味な復活に、こっそり乾杯!
タロットカード殺人事件
映画、演劇、音楽、書物、絵画…いろんな作品があり、人それぞれ好みがある。当たり前。
皆それぞれ、ココロの定規に刻まれた自分なりの目盛りで“好き・嫌い”を判断する。
好きな映画、ご贔屓の歌手が特に無い!という人もいる。それも人それぞれ。
だけど、やっぱり好きなモノが明確にある方が、楽しい。嬉しい。幸せを感じる。喜びいっぱい。
僕はウディ・アレン映画が好きです。酸素を吸って二酸化炭素を出すように、
食事をするように、睡眠を取るように、ウディ・アレンの映画を観る。そんなイメージ。
ウディ・アレンの映画を観て、ラーメンズ、フキコシ、三谷幸喜の舞台に行き、
KAN、田辺マモルの音楽を聴いて、チョコと煙草と珈琲があれば、僕は幸福フェスティバル。
つまり本作、ウディ・アレン監督作品、しかも本人出演もの、不満などナッシング。
…と、こんな映画評として成立してない文章を書き綴り、本当すみません。
真・女立喰師列伝
2006年公開のスーパーライブメーション、押井守監督作品『立喰師列伝』を観ましたか?
立喰師という架空の存在を軸に昭和史を描く、嘘のドキュメンタリーでした。
そこから派生した本作は、監督5人による短編オムニバス。それぞれ女立喰師が主人公。
これがマニアック!各エピソード、ウケもせずハズしもせず、微妙なテイストなんです。
例えば、セオリー通りのベタな構成、ストーリー展開ってありますよね?
で、そこから逸脱して、あざとく意外な内容を構築するパターンもありますよね?
本作は前者でも後者でもない。言うなれば、セオリーを逸脱した状態の領域で、敢えて、
わざとらしくセオリーを再現する、みたいな俯瞰的な作風になっています。
極一部のマニアックな人だけが楽しめる映画です。良い意味で観客を差別する、
アンニュイな逸品。僕は小倉優子主演の話が好きです。小ネタがいっぱい。
椿三十郎
映画とは関係ない話から書き出す。例えば音楽について。作詞は歌詞を書くこと、
作曲はメロディを作ること。でも、編曲がどんな作業なのかを知らない人が意外と多い。
そんなニュアンスで、黒澤作品を観たことのない人も意外と多い。
特に、本作を観るであろう織田裕二ファンの世代は相当数匹敵するだろう。
となると、黒澤を知らない人に『椿三十郎』を知らしめる、という意味で、
リメイクする価値があるってもんだ。このくらいしか書くことがない(^^;
森田芳光監督が大胆にアレンジした訳でもないので、だったらまあ、こんな感じだよね…
と特に美化することもないまま、ありのままに本作を受け入れる。可もなく不可もなく。
さて、まだ原稿文字数が残ってますが、もう書くことないので、最後に短歌を詠みます。
“ 織田裕二 内容さて置き 織田裕二 映画会社の 安心材料 ”
ナンバー23
なんですかコレ?どうすればいいの?映画評には何を書けばいい?どう書いてほしい?
ジム・キャリーが好きだから、どんな風に好きかを赤裸々に綴った替え歌でも作って、
その歌詞をここで発表!という場にしましょうか?確かに僕はジム・キャリー好きです。
ギャグやり過ぎタイプの作品より、比較的おバカ控えめの方が好みだったりします。
だったら、シリアスでミステリー感たっぷりの本作、気に入るんじゃないの?
と自分で自分に問いかけますが、はっきり言います。本作、見事に駄作です。
謎が謎を呼び、不可思議な展開、そして予想外のオチ…もう飽きた。“意外性”がベタ。
なんで今時こういうの作るかなぁ?十数年前なら“あり”だったかも知れないけど、
もう通用しないよ。しかも本作、あんまり巧くないし。穴ポコだらけじゃん。
最初から最後までテンションの低いこの映画、あなたは眠らずに観れますか?
ブラザーサンタ
ファンタジー系のコメディ、わりと好きです。しかもクリスマス・シーズンお約束の、
家族でお楽しみください路線ほのぼのテイスト、意外と好みだったりします。
『バッドサンタ』『グリンチ』『ジングル・オール・ザ・ウェイ』みたいな作品です。
目新しさは弱いが、ベタなものをベタに楽しみ、結構いい話にココロ温まったりする。
本作もそういった内容です…と軽めにプッシュしたいが、残念ながらつまんない。浅い。
例えるなら、彩りも鮮やかで美味しそうな豪華料理なのに、実際に食べてみると、無味!
全く味しないじゃーん!調味料入れ忘れたんかぁ?みたいな感じ。
サンタクロースの兄がダメ人間で、珍騒動が巻き起こる…てな具合の話なんだけど、
登場人物の心境変化が取って付けたような不自然さ。感情移入できない。
そして、個性的なサブキャラも巧く活かせてない印象を受ける。う〜む、いまいち。
ディスタービア
Disturbiaとは“不穏な郊外”を示す言葉で、その意味通り、
郊外の住宅地に住む青年が近所を覗き見して、何やら怪しい出来事を目撃してしまう話。
主役の青年に扮するのは『トランスフォーマー』のシャイア・ラブーフ。
何年も前、トビー・マグワイアが世に出てきた頃、「頼んない感じだなぁ」と思ったが、
それに輪を掛けて頼んないシャイア・ラブーフ。でも、そんな弱っちさに好感が持てる。
本作、不思議な魅力を味わえる作品で、意外に見応えがある。おもしろい。
ベタなストーリーで、斬新な印象は受けないが、サスペンス・青春・コメディ・ホラー・エロ…
など、様々な映画ジャンルの要素があり、セオリー通りに展開していく。
なんだかんだ言っても、水戸黄門の“お決まり”加減が心地いい!のと同じ感覚で、
本作の分かり易さは観ていて安心するのだろう。なかなか侮れない佳作です。
ソウ4
目が覚めるとあなたの足は縛られています。『ソウ』という映画の設定に縛られています。
抜け出せますか?「もうこれ以上シリーズを作るのは無理がある」
と言って抜け出せますか?制限時間が迫っています。もし脱出できなければ、
いつまでも永遠に『ソウ』を撮り続けなければいけません。飽き飽きするでしょう(^^;
今回の四作目は、ジグソウもアマンダも死んで居ないのに、何者かが犯行を受け継ぎ、
殺人ゲームを仕掛ける、という進展系の話。でも内容的には『ソウ・ゼロ』ってな感じ。
ジグソウの精神論に焦点を当てた『2』、過去のゲームの種明かしみたいな『3』、
そして本作では、ジグソウがジグソウと化す前の生活を見せます。
シリーズものの壁である“衝撃”度は確実に落ちてます。ネタバレ微妙ですが、
犯人判明のオチも『1』の焼き直しで、『ソウ』は限界です。もう続編は作らないでね。
サイボーグでも大丈夫
ストーリー全貌やネタバレを書くつもりは毛頭ないが、本作を観ていて頭に浮かんだ、
自分のミニ物語を映画評に代えさせて頂きます。本作の話設定を自分に当てはめました。
『僕は修理工。サイボーグ専門の修理工です。最近はサイボーグがほとんど居ないので、
僕の仕事は需要がない。もうサイボーグと出会うこともないのかな?僕なんて必要ない…
そう思っていたある日「私はサイボーグ」という人が現われた。僕を必要だと言ってくれました。
僕は仕事に没頭しました。サイボーグが不調を訴えると、すぐに駆けつけて治療をして、
新しい部品を取り寄せて装着したり、毎日のようにメンテナンスしました。僕の技術不足で、
力になれないこともあったけど、互いに上手くやっていました。ある時、サイボーグが急に、
「私はサイボーグじゃない。フリをしていただけ」と言い残し、僕の前から姿を消しました。
何がなんだかさっぱり分からず、僕は再び、この世に必要のない存在になってしまいました』
ブレイブ ワン
本作のキャッチコピー「許せますか、彼女の選択」とは、結婚直前のラブラブ主人公女性を、
40代半ばのジョディ・フォスターが演じちゃってることについての問い掛け?(^^;
ジョディさんはものすご〜く作品を吟味、選択して出演するらしいけど、
『パニック・ルーム』『フライトプラン』そして本作…こだわりが明後日向いちゃってます。
ネタバレギリギリで書きますが、本作、暴漢に合って彼氏が殺された事件をきっかけに、
次々と町の悪党を拳銃で始末する必殺ジョディ仕事人みたいなストーリーなのです。
まあ最終的には彼氏を殺した犯人を探し出して復讐する訳ですが…
その行為をあなたはどう思いますか?というメッセージがどうのこうのという以前に、
コンビニで、電車で、街角で、ジョディさん犯罪に遭遇し過ぎっす!
こういう社会派ドラマでご都合主義的な展開は悪趣味です。興醒め。
クワイエットルームにようこそ
あらゆるエンタテイメント作品で、個性的且つ特徴ある作品は“巧さ・あざとさ”が紙一重。
いや、両方を含んでいると言っていい。いや、含むというより、観る者がどちらに捉えるか?
なのかも知れない。他に例えると、同じ内容のエッチ行為でも、好きな相手なら嬉しく思い、
嫌い、あるいは見知らぬ人なら痴漢扱い…ああ、話が不謹慎な脱線をしてしまいました。
しかも映画についてまだ何ひとつ触れてません。すみません。何が言いたいかというと、
僕は松尾スズキ作品が苦手なのです。“あざとさ”を強く感じてしまうから。
でも、そんな僕が、素直に「本作はおもしろい!」と言ってしまうのです。
正面から堂々と脇腹をくすぐるような、バカバカしいギャグが全編に散りばめられつつ、
“人間が人間であるが故の悲しい部分”をも見事に描いてます。笑って楽しみ観終わったら、
いい意味で後味の悪さを感じずにはいられない。そして最後にひと言。「内田有紀、良い」
題名のない子守唄
ジョゼッペ・トルナトーレ監督の作品だよ、こりゃ観ない訳にはいかないです。だって、
『ニュー・シネマ・パラダイス』『海の上のピアニスト』のジョゼッペ・トルナトーレだよ。
でも、でも、今回は本格的ミステリーらしいし、なんだか邦題が興醒めだし、う〜む、
観る気が起こらん。いや、そんじょそこらの“つまんない”映画より数段良いはずだ。
ということで、観た。すごい、びっくりした。重い、かなりの重量感。つらい、悲しい。
曲がり間違えて、少年期に本作を観たら、いつまでもいつまでも頭から映像が消えないだろう。
エロティックな衝撃映像から始まり、主人公女性がとある家の家政婦になる話展開なのだが、
謎だらけで緊張感は飽和。意味深な場面、主人公の闇、どんどん引き込まれていきます。
ネタバレを書くつもりはないが、つらいつらい結末が待っています。ただそこには、
ささやかな救いがあり、僅かな望みを見出だせます。嗚呼、涙が止まりません。
プラネット・テラー in グラインドハウス
“グラインドハウス”企画の第二弾。というか、もともと二本立て設定で製作されたうちの、
日本公開版としての二本目。わざと安っぽいB級映画を作る、何とも素敵な企画。
『デス・プルーフ』同様、本作もフィルムが傷んだ仕様だったり、
映像が古くて抜け落ちてたり、遊び感覚いっぱい。映画マニアにはたまらない出来栄え。
フィルムが焼失したという理由で、一巻分まるごと飛び、唐突に話が展開するあたり、
センス良くないと出来ないスーパーウルトラ技です。よだれ、じゅるじゅる。
ゾンビ化した田舎町で、片脚マシンガンのヒロインが大活躍する、
理屈もストーリーも関係ナッシング的なバカバカしい内容で、観ていて爽快。痛快。
タランティーノもロドリゲスも、本当に映画が好きなんだねぇ。それが伝わってきます。
ちなみに、本編前の“えせ予告編”も最高で、手間暇掛けまくってます。
クローズド・ノート
うんうん、いかにも映画的映画。映画ならではの映像演出ですね。
主人公が他人の日記を勝手に読んで、頭ん中で想像するが、顔が分からないので、
部屋のポスターに写ったタレントが想像上のキャラとして、イメージストーリーに登場。
しかも、小説だからこそ活きた原作のサプライズ的オチを、
わりと巧く工夫した映像になってます。これはなかなか難しいところ。
とは言え、映像化しちゃうと、誰でも容易にオチが推測できるレベルですがね。
岩井俊二ファミリーの行定監督だから、コミカル調の前半はわりと岩井ワールドです。
そのままのテイストで最後までいっちゃって欲しいなぁと思うけど、
やっぱり後半はベタに“お涙ちょうだい”モノにシフトしていくんだよねぇ。王道です。
竹内、伊勢谷、永作…は好演ですが、沢尻に誠実な役は不似合いです。違和感たっぷり(^^;
スキヤキ・ウエスタン ジャンゴ
確か上岡龍太郎だったと思うが、「日本人が邦画をあまり観ないのは字幕が無いからだ」
と何年か前に言っていたのを覚えてる。文章を読むという行為は、内容の善し悪しに関わらず、
それだけで充実感を伴う。字幕を読まなければならない洋画は、必然的に観賞充実感が備わっている。
そういった意味で、本作は邦画なのに全編英語。字幕を読む日本映画なのだ。
だから面白い!と言いたいところだが、そんな前置き関係なく、実は何もかもが面白い!
ウエスタン、源平の戦い、タランティーノ…なんじゃこりゃ?ってな大人のエンタテイメント。
三池崇史作品と言えば、バイオレンスな極道モノ、あるいは、安っぽいアイドル映画風…
僕の中でそんな印象が強くて、正直、苦手な監督です。いや、苦手でした。
しかし本作で僕の気持ちは見事に一転。強面だけどセンス良いおっちゃんじゃーん(^^;
一般ウケしない雰囲気ありありだが、この“むちゃくちゃ”加減が最高の秀作です。
めがね
江戸時代、“踏み絵”ってありましたよね?キリシタンを探しだすため、
イエス・キリストの肖像板を踏めるかどうか、で信者か否かを判断しました。
本作、僕にとっての“踏み絵”みたいなものです。この映画を好きか嫌いか、
で友達になれるか否かを判断できそうです。もちろん“好き派”がマイフレンド。
「何が面白いの?退屈だ」とか言う人は、きっと僕とセンスが合わない、と思う。
まったりとした映画です。日々の疲れが癒されるような、肩こりが治りそうな、ね。
登場人物の具体的な詳細も、ストーリーも定かでない。そして台詞も決して多くはない。
でも、そんなこと関係ないんです。どうでもいい。作品そのものの“空気”を楽しむ。
空気が美味しい。水が美味しい。景色が気持ちいい。人が優しい…そんな感じ。
キャスティングが絶妙だし、荻上直子監督作品にハズレなし!
デス・プルーフ in グラインドハウス
嗚呼、つまんねぇ!おもんねぇ!と満面の笑顔で叫びたくなるような作品。褒めてます。
観終わってしばらくはニコニコした気持ちが止まりません。タランティーノ、最高!
映画のほとんどが、ギャルたちのバカ喋り。なんなんだ、この内容は?と思ってると、
急にサイコ野郎の殺人シーン。そして激走、ジャンプ、クラッシュのカー・アクション。
おバカなB級ムード全開で、たっぷり楽しめます。タラちゃん、やりたい放題。
先に言っておくが、タランティーノ作風を嗜んでいる者のみが堪能できる逸品です。
ギャル感も殺人シーンも、タラちゃん風味が濃い濃い。笑けるねぇ。
『キル・ビル』でユア・サーマンのスタントを担当したゾーイ・ベルが本人役で出演し、
CGではない生のスタントを見せてくれる。手に汗握る迫力です。
そして、メアリー・エリザベス・ウィンステッドのチアガール姿がたまらんです(^^;
パーフェクト・ストレンジャー
“ラスト7分11秒まで真犯人は分からない”“あなたは絶対に騙される”などの、
仰々しい宣伝文句に加えて、“決して結末を誰にも言わないでください”とのことなので、
もちろんネタばらしは書きませんが、本作のニュアンスを遠回しに例えさせてください。
『頭の体操』という本の中に、嫌な意味で印象に残り、忘れられないクイズがあります。
女性のヌード写真、その前に何人かの男性が居る、「この写真を見てるのは誰でしょう?」
という問題文です。そして頁をめくると、解答は「あなたです」と記してありました。
本作、そんな感じです。ちょこっと微妙にズルいです。納得度は弱い。
しかも、意味ありげな場面が、サブリミナル的に何回かカットインするし、
“意外な真相”という目線で観ていると、なんとなく犯人が分かってしまいます。
まあ平たく言っちゃえば、浮気や不倫しまくりの、倫理感はちゃめちゃ映画なんだな。
HERO
例えば、手料理を出されて、食べたら、心を込めて「美味しい」と言います。
でも、マクドナルドで買ってきた商品を出されて「ねぇ美味しい?」と訊かれても、
買ってきてくれたことへの感謝はするが、わざわざ「美味しい」とは言わないだろう。
本作、そんな感じです。別段まずくはないけど、いつもの食べ慣れた味、なんです。
( ※ マクドナルドも『HERO』も侮辱するつもりはありません。あしからず )
テレビドラマを映画化すると気合い入り過ぎて、今までの“良さ”がバランスを崩す…
若干そんな気配はありますが、まあ無難に楽しめる。でも、ファンサービス作品の域です。
だってドラマシリーズを観てない人には分からないシーンが、不親切に野放し状態。
ストーリーも60分枠で納まるようなものを無理矢理引き延ばしてる感が否めない。
以前放送されたスペシャル版の方が良かったなぁ、と思ったりします。
シッコ
マイケル・ムーアの映画作品について“好き嫌い・良い悪い”を言うレベルじゃなくて、
マイケル・ムーア!そのものに魅力を感じてしまう。存在そのものがおもしろい。
映画の題材選び然り、冗舌なアプローチ、ユーモアセンス抜群の構成力、
そして何より、ドキュメンタリー形式のエンタテイメント作品を撮っているセンスの良さ。
いち個人の意見や思想を、受け売り状態で信用するか否かは別だが、
彼の考えてること、作品の構築の仕方は、十二分に観る価値あり。
アメリカ医療保険制度の実態を描いてる本作は、入院費を払えない患者が道に捨てられたり、
明確な治療薬があるのにもらえない等、衝撃のエピソードが次々と明かされていきます。
とりあえず観て、知っておいた方がいいでしょう。ムーア暴露には毎回驚かされます。
前作『華氏911』みたいな偏った攻撃性、分かり易いユーモアは幾分薄いですけどね。
ラッシュアワー3
ジャッキー・チェンがハリウッド進出して、成功した作品のシリーズ三作目!となれば、
主人公のキャラ設定も内容の趣も分かっているので、無難に安心して観賞できる…はず。
そんな、友達以上恋人未満みたいなイメージで、必要以上の期待をせずに観たが、
なんだこりゃ?なめとんのか?無難も無難、無難の域にも程があるっちゅうねーん!
スタッフもキャストも、誰も“本気”で作ってないんじゃないの?
シリーズもの、ある意味、ファンサービス作品だから、妥当な興行収入を得られるし、
だいたいテキトーに作っておけばいいじゃん、みたいなニオイがプンプンします。
ストーリーは小学生の作文レベル。ジャッキーのアクション場面はこじんまり。
全体的に山場、盛り上がりが無いまま、映画は終わっていきます。
真田広之と工藤夕貢の熱意は感じるが、扱われ方、使われ方が御座成り。ああ残念なり。
遠くの空に消えた
岩井俊二作品が大好きです。ヨダレが溢れこぼれるくらい好き。
だから、岩井俊二の助監督を務めていた行定勲の作品も基本的には好きです。
この“基本的”の詳細は、原作も脚本も自ら発進の純粋な行定作品なら好き!ってことです。
だって、『北の零年』とか『春の雪』とか、雇われ監督作も多いでしょ?
そういうのじゃなく、本作みたいなタイプが良いのです…と、褒めたいところですが、
これが微妙なんだなぁ。ファールかホームランか、ギリギリの線でファール判定(^^;
レトロ調でノスタルジック、古い昭和の映画テイストに仕上げたのは分かるけど、
意図的にそうしたんじゃなく、下手でそうなっちゃったぁ、みたいな印象です。
内容も的を得ていないと言うか、散漫なストーリー展開が気になります。
よって、かなりB級感たっぷりです。まあ、基本的には好きなんだけどねぇ。
天然コケッコー
山下敦弘監督作品は、夏に観ると清涼感たっぷりで、さわやかな風にニコニコしてしまう。
冬に観ると逆に、ココロぽかぽか暖まって、ニッコリしてしまう。
春には春の気持ち良さ、秋には秋の心地よさがある。つまり一年中いつでも幸せなり。
でも、この観点は万人に共通しないのであしからず。むしろ反論の方が多いかも。
例えるなら、僕は茄子が好きだ!茄子は野菜の王様だぁ!と豪語してるようなもの(^^;
でもやっぱり、山下監督の面白可笑しい人間描写、緩いテイストが、僕は大好きです。
ストーリー全体を楽しむというより、独特な会話の“間”や、登場人物の気まずい空気感、
そんな山下ワールドのひとつひとつを味わいたい作品です。よく噛んで味わいましょう。
ただし、脚本が別の人(渡辺あや)なので、山下色はちょい薄めです。
主演の夏帆も、主題歌のくるりも、絶妙なマッチング!ああ、嬉しい。
トランスフォーマー
いやぁ、こりゃ妙な面白さがあるねぇ。意外な体感です。見た目はパスタなのに、
食べたら味はラーメンで、ラーメンとしては絶妙な味わい。みたいなそんな不思議さ。
スピルバーグとマイケル・ベイがタッグを組んで撮ったSF作品だから、
かっちょいい〜!とか、映像がスゲェ!みたいな“良さ”を期待しちゃってるでしょ?
でも、それより何より、愉快なシーンが多くて、最大公約数的なコメディとして面白い!
主人公の少年の、青春学園ものコミカル・ストーリー!てな感覚で楽しく観れるし、
善玉と悪玉のロボ、まあ正確には金属生命体なんだけど、善ロボと少年のやり取りが笑える。
もちろん、車や飛行機が変形するビジュアル、そして戦闘シーンは圧巻。素晴らしい!
あまりにスピード感ある映像なので、スローモーションで観たいくらいです。
ただ、冷静に見ると、ストーリーや設定はバカバカしくて、B級映画紙一重です(^^;
河童のクゥと夏休み
本作は、倖田來未が河童役で出演している真夏のホラー映画ではありません。
♪こどもだってうまいんだもん〜と唄いたくなる飲み物が河童印な訳でもありません(^^;
『クレしん・オトナ帝国の逆襲』などで有名になった原恵一監督作のアニメです。
そう、御存じの通り、“子供向け”だと油断していたら、大人が感動してしまう…系です。
とある事情で現代に蘇った子供河童と、少年とその家族の物語。
何の変哲もない中流家庭に、得体の知れない“ゆるキャラ”が同居してる、つまり、
ドラえもん、おじゃる丸みたいな感じです。その、もっとリアル版ですねぇ。
だって実際、ドラえもんが居たら、世の中騒然としますよ。本作はそういう現実味、
人間の嫌な部分もハッキリ描きます。少年の切ない初恋なんかもあったりして、
むしろ逆に、子供には分からないんじゃないかなぁ、と思います。“大人向け”ですね。
レミーのおいしいレストラン
いやぁ、もし仮に、究極に美味くても、ネズミが作った手料理は食べる気がしないなぁ…
と、夢もへったくれもない現実的な発言はさて置きまして(^^;
今回のピクサー作品は久々のホームラン。あくまで僕の個人的嗜好ですが、
『トイ・ストーリー1&2』『バグズ・ライフ』『Mr.インクレディブル』がホームラン。
あとはヒット。前作『カーズ』なんてギリギリセーフな内容だったもん。がっかりした。
本作はとにかく楽しい、嬉しい。幸せな気分になる。冒頭の演出からセンス良いです。
それこそ、テーマパークでアトラクション三昧。堪能しちゃいましたぁ!的な楽しさ。
ネズミと料理人見習いの青年、彼等のコミュニケーション過程が面白いし、
ジェトコースター感覚のハラハラドキドキ・シーンもあって、見応え充分。
本年度、ナンバーワン候補作品です。原題と邦題の違いが、若干気になりますがねぇ。
腑抜けども、悲しみの愛を見せろ
センスの良い作品に触れると、ただそれだけで嬉しくなる。幸せ。
本作は、本谷有希子の原作戯曲、吉田大八の脚本と演出、そしてサトエリを始め、
素晴らしいキャスト陣のキャラが、絶妙なバランスを醸し出し、見事な逸品に仕上がってる。
シュールでブラック。極めてダーク。人生は辛くて厳しい。でも、本質。
低俗に例えるなら、昼ドラのコメディ版ってとこ。憎しみや禁断がドロドロてんこ盛り。
一見、ありえない話、ダーク・ファンタジーのように、他人事に思えるかも知れないが、
どんな人間でも、裏側に潜む“醜い”部分が必ずあるものです。
そういうことを丁度いい塩梅の“あざとさ”で描いています。
観終わった時の嫌な気持ち加減が心地いいのです。そんな映画、なかなかないよ。
チャットモンキーが書き下ろしたテーマ曲も雰囲気ハマってます。グッド!
図鑑にのってない虫
図鑑にも掲載されてないような世界的に珍しい虫ばかりを採取してる昆虫学者、
その生活をフィルムに収めたドキュメンタリー作品。…というのは全くの嘘です(^^;
本作は、TV『時効警察』の作・演出で一般的に認知された三木聡の“ゆるゆる”コメディ。
このタイトルから、あなたはどんなストーリーを想像しちゃいますか?
仮死体験ができる謎の薬?虫?を探し求める三人のお話なんです。
というか、そんなことどうでもいいんです。ストーリーなんて、あってないようなものです。
起承転結?そんな些細なこと気にしてちゃ駄目です。独特な三木ワールドに浸かりまSHOW。
脇腹をくすぐられる絶妙な“間”と、どうでもいいような緩い会話を楽しみまSHOW。
シュールでナンセンスな小ネタが幕の内弁当大盛り状態。満腹!
日頃の憂さを忘れられる、三木聡のファンタジーで、心地いい時間を過ごしてみませんか?
サイドカーに犬
濃いか薄いで言えば、薄い。ソースか醤油で言えば…どちらでもなくポカリスエット。
そんな作品です。薄いと言っても、水の割合が多過ぎカルピスみたいな駄目さではない。
むしろ本作は薄いのに美味しい。濃厚なインパクトではなく、さり気なく心地いい感じ。
今まで「この映画は最高!」と思えた作品たちは、独特の濃い作風がポイントだったから、
濃くないにも関わらず好きになれた映画って、僕にとっては初めてかも。処女的衝撃。
小4の女のコが大人の女性と過ごした、とある夏休みを描いた他愛ない内容なのだが、
人物の心境変化やセリフがスムーズで巧い。演出もあざとさ・嫌味を感じるところがない。
“やり過ぎず、やらなさ過ぎず”の、空気みたいな、ありがた〜い作品。
大人は何でも出来る全能の存在で、そんな未知なる世界を垣間見るような、
子供の頃の不思議な気持ちを回帰できるノスタルジックな逸品です。
ラブデス
北村龍平監督、わざとですよね?意図的ですよね?このB級感(^^;
北村作品だと知らなかったら、知らないまま観終わってしまうような仕上がりですが、
もちろん、わざとですよね?お願いだから「わざと」と言ってください。
“ルール無用、ハイパー・クレイジー・ラブストーリー”とのことですが、
もうちょっとルールあった方がいいんじゃないっすか?口幅ったいこと言ってゴメンなさい。
ギャグ漫画テンションで、笑いが満載なのは楽しくていいが、なんつったらいいかなぁ、
香港カンフー映画でよく見られるタイプのギャグ・テイストです。
そういうノリだと予め覚悟した上での観賞をオススメいたします。
いい意味でも悪い意味でも、キャスト陣の顔ぶれが多彩で、ミュージシャンがいっぱい。
中でも、ドクター役のKANが嬉しいなぁ。個人的にファンです。
ボルベール<帰郷>
ペネロペさんが好きだから観たい!とか、女性たちの物語だから観たい!とか、
そんな軽い気持ちで観賞すれば、たちまち衝撃の深海で溺れてしまいます。
だってアルモドバル監督作品なんだもーん!変態気質なんだもーん!
でもだからって、“ヨゴレ”映画なのではなく、“純粋”な印象を受ける。
これ、アルモドバル作風の不思議なところね。たまらなく興味深いです。
アルモドバルを知らない人は『バッド・エデュケーション』『トーク・トゥ・ハー』など、
彼の奇想天外な世界観を予め把握してから観ることをオススメします。
人間の醜い部分、欲深さ、人生は辛いことが多いなぁ、という実感を覆い隠さず描いてます。
人物描写も繊細で丁寧。ココロ惹きつけられること必至。アルモドバル、バンザイ!
主要キャスト六人全員がカンヌで最優秀女優賞を獲得したのも納得。魅力的です。
ダイ・ハード4.0
とにかく、派手なアクション・シーンを満喫してハラハラドキドキ興奮したい人、
地味な社会派ドラマとか考えさせられる映画が苦手あるいは飽きて、大作を堪能したい人、
そういう方々に“ド直球”の娯楽作品であることは間違いナッシング!
サイバーテロリスト集団の手際が洗練されてるのか否か、ご都合主義たっぷりだったり、
トム・クルーズを主演にして『M:I:4』でも成立するんじゃないの?
ブルース・ウィルスじゃなくても…みたいなストーリーではありますが、
こういう映画は細かいことにツッコミ入れず、ただただ盲目に楽しむべし。
もうこれは“ダイ・ハード:ファン感謝祭”みたいな作品だからねぇ。
不死身のマクレーン刑事が活躍すれば、それだけでOK!ファン満足。
本シリーズの中では、二作目並みに魅力が薄いけど、サービス品!ってことで。
憑神
多くの人々のココロの共通項をキッチリ押さえた“最大公約数”的な作品。
つまり老若男女問わず、誰もが皆ほどよく楽しめるってこと。
ボーリングで例えるなら、十人それぞれスコア100〜120出すイメージです。
それを否定するつもりは毛頭ないが、十人中ほとんどがガーターしまくり状態でも、
たった一人がパーフェクトを出す、そんな作品が僕は好きだなぁ。
で、その一人が僕なら尚更大好きです。そんな映画なかなか無いねぇ。年に数本。
さて本作ですが、とある武士が間違った神頼みをして、貧乏神や疫病神が取り憑く…
という原作・浅田次郎の話は面白い設定なのだが、監督・降旗康男の脚本がいまいち。
ストーリー展開、登場人物の心境変化がスムーズに描けていない印象を受ける。
そして終わり方がひどい。ラストと言うか、エンドクレジットとの境目、の演出は興醒め。
舞妓Haaaan!
Q.面白いの? A.まあね。でもわざわざ「面白いよ!」とお薦めする程のことはない。
Q.笑える? A.比較的ベタなユーモア満載だから、馬鹿馬鹿しくて誰でも無難に笑えます。
Q.脚本はクドカン? A.はい。だから楽しさは保証付。でも、監督の映像化センスが…
例えるなら、クドカンの美味いドーナツに、監督が砂糖まぶし過ぎて甘くて喰えない。
Q.え?ドーナツの話なの? A.違います。舞妓しか愛せない男が主人公の話です。
その役を阿部サダヲが演じていますが、はっきり言って“阿部サダヲ祭り”状態です。
Q.他の出演陣は? A.舞妓役の小出早織が良いですねぇ。際立ってます。
『ケータイ刑事』『帰ってきた時効警察』に出てたコです。注目株だね。
アイドル路線なのにコメディが出来る女優さん、素敵だと思います。
Q.結局、本作は? A.悪くはない!って感じ。オチがいまいちつまらないかなぁ。
大日本人
※いつもはネタバレ厳禁ですが、今回は微妙。何も知りたくない方は読むべからず。
映画が好き。お笑いが好き。そんな僕が本作を観てどう思ったか?
“おもしろい・おもしろくない”の尺度ではなく、“なるほど!”という驚きの感心。
ここでひとつ、間違ってるかも知れないが、僕の勝手な解釈を書きます。
この映画、一般的にオチと思われる最後15分くらいが実は本編で、
それまでは長〜い“前フリ”かも。だとすれば、本作に関する幾つかの事柄に納得がいく。
例えば、公開前に内容を多く明かさず、シークレット状態にしていたこと。
例えば、松本自身が「コメディではなく、お笑いの映画を作った」と言ったこと。
例えば、カンヌ映画祭で途中退場する観客に松本が不満を持ったこと。
嗚呼、合点がいく。映画という形態を逆手に取った、いい意味で“無茶”な作品。
キサラギ
映画でも音楽でも、人との出会いでも、良いセンスに触れると嬉しくなる。幸せ感じる。
“ワンダフォー”と語尾マイケルで叫びたくなる。本作は密室ワン・シチュエーションで、
男五人の会話劇。キャラの違う五人が、それぞれ少しずつ焦点が当たる展開。
「これは三谷幸喜『12人の優しい日本人』を模倣して真似しきれていない失敗作かも」と、
前半部分で眉唾意識が全開だったこと、ここに謝罪いたします。すみません。
次々に真実が明るみになって、ジェットコースター的に状況が変わっていくあたり、
かなり巧妙に計算された脚本は圧巻。とにかく全編に伏線が張り巡らされていて、
些細な事柄も全て後から効いてくる。キャスティングも絶妙なバランスで心地いい。
アイドルのファンサイトで知り合った集会、というマニアな設定もココロくすぐられる。
舞台版も観てみたい!と思える程、素晴らしい脚本の映画。今年の秀作ベストテン当確。
ゾディアック
観賞前にその作品の予備知識が必要か否か?必要なものもあれば、そうでないものもある。
それは作品に何を求めるか?という命題にも関わることだったりする。
例えば、紙ヒコーキが自分に迫って来ると思い手で払おうとしたが、
実はラジコン飛行機だったからケガをした…みたいな誤算が映画観賞にも起こりうる。
本作はデビッド・フィンチャー監督作品で、殺人事件の謎を追う話だから、
僕は『セブン』を期待してしまい、そして“退屈”という名のケガをしてしまいました。
監督が「僕は『セブン』をもう一本作る気なんかなかった」と言ってるように、
本作は“驚愕のラストが!”的な映画ではありません。そういうのを求めずに観ましょう。
1970年頃の実際の未解決事件を描いてるので、映画の中でも未解決です。
だったら2時間半の尺は長くねぇ?もうちょっとコンパクトにまとめてほしいなぁ。
300 スリーハンドレッド
こりゃ、成人男性向け映画だなぁ。“エロとバイオレンス”三昧。
オンナコドモは観るな!いや、観ても嫌悪するんじゃないの?てなテイスト。
古代スパルタの物凄く強い戦士たちが闘う、闘う。血みどろでございます。
まあ、原作&総指揮がフランク・ミラーだからねぇ。ご存じ『シン・シティ』のノリ。
ストーリー、そして、そこに描かれているテーマも極めて単純明快。
むしろシンプル過ぎて、時折バカバカしさに笑っちゃうくらいです。
が、しかし、本作の“売り”は映像なのです。そのこだわりが肝心な魅せ場なのです。
アングルも色彩も、原作の画が持つ雰囲気を、まんま忠実に再現してます。
ほとんどの背景がCG処理だし、アクション場面も独特。マニア大喜びの出来栄えです。
つまり『シン・シティ』同様、一般ウケしない作品であろうことは容易に推測できます。
恋愛睡眠のすすめ
『ヒューマンネイチュア』も『エターナル・サンシャイン』も大好きな映画です。
それは脚本がチャーリー・カウフマンだからです。彼の偉業は見事、神業の域だと思う。
でも正直言って、ミシェル・ゴンドリーの映像演出手腕に関しては興味薄でした。
が、しかし、彼が撮ったPV集をDVDで観て、僕の気持ちは一転。センス良いじゃん!
だから、ゴンドリー脚本・監督の本作、期待に胸膨らませて観ました。素敵!これ好き。
映像の面白みは然ることながら、僕がココロ鷲掴みにされたのは内容です。
片想い成就せず、妄想と夢の中で願望を満たす主人公。ああ胸に染みる。切ないファンタジー。
監督が「この主人公は僕自身なんだ」と言ってますが、自分の孤独や劣等感を昇華させて、
エンターテイメントを作る人、そしてその作品、僕は個人的に大好きです。
ユーモアの中に見え隠れする切なさ、切なさから生み出されるユーモア、良いですねぇ。
プレステージ
二人のライバル・マジシャンが、互いに騙し騙され、命がけで競い合うトリックの攻防戦。
『メメント』のC・ノーラン監督最新作で、“全てのシーンに張り巡らされた罠”があり、
びっくりオチで魅せつける!てな宣伝文句を聞かされると、否応なしに期待しちゃいます。
もちろん、生番組を観るような、手品そのものの技には驚かない。編集できる映画だからね。
でも、監督は作品そのものを“マジック”に仕立て上げた…という作り方。
その発想とセンス、心意気は高く評価したい。確かに、ひと筋縄ではいかない結末。
が、しかし、「こりゃ巧い!目からウロコ」とは決して言い難いストーリー展開です。
喉に突っ掛えた魚の小骨が、スーッと取れる気持ち良さはイマイチ感じられない。
むしろ、観終わって何日か経ってから「なんと馬鹿馬鹿しい話だったんだ」と思えてくる。
具体的な馬鹿馬鹿しさはネタバレになるから、言えやしないよ、言えやしないよ(^^;
主人公は僕だった
規則正しく平凡な日常を過ごす主人公ハロルド。扮するはウィル・フェレル。
その、孤独で退屈な日課を紹介するところから映画は始まります。
特にセリフもなく、淡々と日常生活のシーンが続き、第三者的ナレーションが付く。
よくある感じの映画冒頭として違和感はない。が、急に怪訝な表情の主人公が、
ナレーションに返事をする。彼にだけナレーションの声が聞こえる。ああ、ナンセンス。
まるで『トゥルーマン・ショー』みたいなシュールさがおもしろい!と思ったが、
いまいち“巧さ”が足りなくて消化不良気味。大満足には及ばない。
『トゥルーマン・ショー』もあり得ない話だったが、意味や理由に納得するところがあった。
本作は、奇妙な設定についての明白な根拠が欠如していて惜しい。
自分で人生を切り開く!的なココロ温まる、いい話なんだけど…ちょっと残念。
そのときは彼によろしく
観賞途中から“この映画に面白みを見出だせない”理由を考え始めた。
原作を読んでないので、オリジナル・ストーリーについては分からないが、
取って付けたような映像演出が悪い?それとも、ぎこちなさを感じる脚本のせい?
そして、「あの日、好きだと言えない代わりにキスをした」な〜んて場面で、
ココロの中のスリーハンドレッドな自分の大群が総ツッコミする始末。
“好きと言えんのに、キスなんかもっと出来へんぞぉ!”と、フィクションに酔う余裕なし。
で、最後まで観て、全体の核となるトリックというか、フォーマットを知って、
改めて思ったことは、“これ、意外と、おバカ映画だったんだねぇ”です。
泣かせ映画に免疫のない、ハードルの低い人、それと、長澤まさみ・山田孝之のファン、
は是非どーぞ観てください。あと、おバカ映画好きの人も(^^;
スパイダーマン3
ヒーローものとかSF映画、あるいはテレビドラマでも、ツッコミどころって、ある。
それはおかしい!どうしてそうなるの?ありえへん!など、粗探しすればキリがない。
本作、ツッコミどころ満載ムービーのキング!ダントツ一位です。
そもそもスパイダーマンって?とか基本的なところはツッコミませんが(^^;
ありとあらゆることが説明不足。いや、説明すら、端からする気ナッシングな感じ。
ストーリーの穴ぽこ率は映画史上最大じゃないの?笑えます。笑っちゃいます。
サンドマンが生まれた科学的根拠は?謎の液状生命体は謎のまま?その弱点に関しては?
何にも全く分かりません。そんなこと気にせず素晴らしい映像を観ろ!と言いたいのでしょう。
そりゃそうだ。確かに画はスゴイっす!緻密でリアルで、しかもスピード感ありまくり。
シリーズ当初は“地味なキャスト”と思ったけど、今や、みんな大スターだねぇ。
スモーキン・エース / 暗殺者がいっぱい
タランティーノみたいな作風?ガイ・リッチー作品『スナッチ』のようなクライムもの?
それでいて、ひとりの人物を狙って、個性的な暗殺者がいっぱい出てくる話?
そりゃ楽しそうじゃん!おもしろそうだ!と、期待に胸膨らませていた…んだけど、
ありゃりゃぁ。期待度のハードルを上げ過ぎちゃったかなぁ。ああ残念。
例えるなら「あの人、笑いが分かる、おもしろいセンスの持ち主だよ」って紹介されて、
で、実際に話してみたら、ジョークも通じない、おもしろみのない人だった、みたいな(^^;
いや確かに、スタイリッシュだし、最後まで観ないと真相が把握できない作りだけど、
“巧妙な脚本、入り組んだ話”感がイマイチ薄い。というか、ユーモアが足りな〜い。
もっと、はちゃめちゃでお願いします。後半30分くらいのバイオレンスな場面は、
まあ見応えあったけど、結果的には“残念”でした。観終わってココロに何も残らない作品。
リンガー!替え玉★選手権
ファレリー兄弟の映画だぁ!っちゅうことで、こりゃ観るべし!と思っていたけど、
脚本も監督も別人なのね?ファレリー兄弟はプロデュースのみ、でした。
でも、『メリーに首ったけ』『愛しのローズマリー』『ふたりにクギづけ』と同様、
映画の題材として真正面からは取り上げにくいタイプの内容を設定し、
ブラックで馬鹿馬鹿しく描いた本作は、まさに“ファレリー兄弟ブランド”と言える。
金儲けのために、知的発達障害者のフリをして、障害者のスポーツ大会に出場…って、
コメディにしちゃっていいの?です。ただ、差別や偏見、馬鹿にした話で終わる訳じゃなく、
ちゃんとココロ温まる“いい話”に仕上がってます。とは言いつつも、
ファレリー兄弟が脚本・監督した作品群と比べると、全ての要素が少し弱い気がします。
それだけ、ファレリー兄弟のセンスは素晴らしい!ってことです。
バベル
全く覚えられない名前で、今も資料を横目に見ながら書いているのだが(^^;
アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督の作品は特徴が分かり易い。
ひとつの事件に関わった登場人物たち、それぞれのエピソードをオムニバス形式で描く。
それはパズル・ピースの組み合わせを探すかの如く、時間軸が一定ではなくバラバラ。
そして何より、生活に密着した悲しみ、不幸がずっしりと重い。重過ぎますぅ。
『アモーレス・ペロス』『21g』、そして本作然り、イニャリトゥ監督の十八番パターン。
例えば、缶珈琲があるとします。僕らは自販機などで買う消費者の目線しか知りません。
でも、運搬して自販機に補充する人の立場、あるいは工場で生産してる人から見た缶珈琲、
もしくは豆を栽培してる者の物語を知ると、缶珈琲の見方・思い入れが変わってきます。
そんな描き方のイニャリトゥ作品は見応えがあり、見入ってしまいます。
ブラッド・ダイヤモンド
ここ数年、『ナイロビの蜂』『シリアナ』など、フィクションの装丁でありつつも、
社会の裏側を暴く系ドラマが多い。本作もそうだが、こういう社会派作品を観賞してると、
いつも思うことがある。子供の頃はカレーやハンバーグ、分かり易い味が好きだったのに、
大人になると、煮物や和え物を好きになる。でも、子供の頃に聴かなかった演歌を、
大人になったら好きになるかも、と思ったりしたけど、今でも全く聴きゃしない。
と、映画無関係な素朴疑問はさて置き、本作、二時間を超える上映が少し辛いが、
シリアス度の見応えは充分。美しいダイヤの見えざる背景で、利権、紛争、残虐な行為…
いろんな闇が存在することを描き、きっちり分かり易いドラマで見せてくれる。
主演男優として高く評価されてるだけあって、本作のディカプリオはすごく良い。
いい意味で、ディカプリオだということを忘れてしまうくらい、役にハマっている。
蟲師
原作を読んでない者として言わせてもらいます。何が何だか、よう分からん。
“蟲”と呼ばれる得体の知れぬ存在。それに取り憑かれた人を助ける蟲師。
そんなエピソードが幾つか描かれていて、話らしきものは見られるが、
基本的には全編、抑揚のない、テンションの低〜い約二時間です。
きっと、原作は面白いんだろう。そのアニメ版も良いのかも知れない。でも、でも…
大友克洋ワールドで撮られた、この実写版は、ちょっとツライぞ。しんどいぞ。
確かに、映像は美しい。幻想的で雰囲気ありあり。大友美学!を体感できる。
だけどなぁ、映像だけじゃなく、ストーリー展開までもが幻想的なので、
二時間も観賞意欲が持続しない。役者陣の使い方、魅せ方は上手くて、
オダギリ、江角、蒼井、大森…と、みな“おいしい”です。
秒速5センチメートル
いやぁ、新海誠、やってくれるなぁ。期待すれば、ちゃんと応えてくれる。
ココロの中のレーンで、期待という名のボウリング球を投げると、
見事にピンが十本倒れるイメージの気持ち良さだねぇ。嬉しいよ。
新海誠作品は確実に切ないわぁ。甘酸っぱい。胸がキュンとする。
僕みたいな、汚れたぐったりエロじじぃでも泣いてしまいます。切ないねん。
前作『雲のむこう、約束の場所』みたいな、ちょっと難しい設定よりも、
『ほしのこえ』的な本作の方が好きだなぁ。何気ないストーリーの中にあるセンチメンタル。
ただ、主題歌として起用した、山崎まさよしの「One more time,One more chance」が、
あまりにテーマと合い過ぎていて、一時間のPVを観てる印象だったりします。
まあ、どっちにしろ、こういう“想い”を作品にしたいですねぇ。
ホリデイ
全く新しい電化製品なんて、もう無いと思ってます。ただ、新しそうに見える類はある。
例えば、テレビデオなんかがそうです。既製品を足すことで、新しそうな物を作る。
あるいは、DVDのように、既にあるビデオの用途を技術改良した物を作る。
という意味で、今まで生活の中に根付いてなかった、新用途の電化製品は、もう無い。
そんな“出尽くした感”は、ラブストーリー映画にも当てはまる。
で、本作は、主人公の女性二人が家や環境を交換する、ホームエクスチェンジの話。
想像通り、予想通りのラブストーリーが展開される。設定だけ“新しそう”なのです。
別にそれでいいじゃん。安心して観てられる。で、観た後はすぐ忘れる(^^;
とにかく豪華キャスト陣なので、それを楽しめばいいと思う。お祭りだね。
さらに、あの人とあの人の、カメオ出演を見逃すな!
松ヶ根乱射事件
『リアリズムの宿』や『リンダ リンダ リンダ』…山下敦弘監督の作品が公開された年、
必ず年間ベスト10に、それをランキングしてしまう僕は、山下作品の大ファンです。
だから本作、もちろん大好きです。最高です!と言うのも口幅ったいくらい。
人間の弱気な部分、あるいは、美化したくても美化できない醜い心情を、
まったりしたテンポと緩い会話で描きます。決して、最大公約数的なポップさは見当たらない。
そのドロ臭さが、たまらなく魅力的で、僕は“山下センス”の中毒患者です(^^;
自分なりの映画評を執筆しなくちゃいけないのですが、もうこれ以上、書く気ないです。
仕事放棄。だって、僕だけが秘かに、この作品の良さを楽しめば、それで満足なんだもの。
あ、そうそう、『松ヶ根乱射事件』というタイトル、センス良いねぇ。嬉しくなる。
その真意は、最後まで観た者だけが分かります。“切なさ”と“笑い”って大切だよね。
パフューム ある人殺しの物語
観終わった時にココロの中でつぶやいた言葉は「えらいもん観てしもたなぁ」です。
関西人が遣う、この“えらい”には二重の解釈があって、称賛的な“すごいなぁ”と、
馬鹿にした“アホやなぁ”が含まれます。表裏一体です。本作、えらい作品やで(^^;
天才的な嗅覚を持つ男が、世界で最も素晴らしい香水を作る話…というと何気ないけど、
その為に次々と処女の女性を殺害しては匂いを集める、淫靡な内容なんです。
これが意外に見応えあって、僅かながらユーモアも感じつつ、魅入ってしまいます。
主人公視点の展開ではなく、あくまで主人公の言動を軸に、様々な場面を描きます。
ただ、問題なのは結末です。かなり衝撃的。良い意味、悪い意味、紙一重で、
映画史に残るクライマックス・シーンだろう。驚愕の展開に目が点になった。
思わず座席から前のめりになり、でも気持ちは引いちゃう。と、とりあえず拍手。
ナイト ミュージアム
な〜んにも考えず安心して観てられる映画、たまには良いねぇ。楽ちん観賞だな。
恐竜の骨、蝋人形、モアイ像、猿、ライオン…が暴れ回る夜の博物館。
そんなバカバカしい設定に加えて、出演がベン・スティラーとロビン・ウィリアムス。
楽しくない訳ないじゃない。頭からっぽにして、映画の中に入り込みましょう。
テーマ・パークのアトラクションを堪能してる気分を味わえます。
ただ、騒々しいミラクル・ファンタジーを楽しむべき作品なので、
ストーリーはあってないようなもの。見せ場を先に考えて、後から話を適当き構成した?
と思いたくなるくらい、ストーリーは浅い。むしろ、それでいい。それがいい。
ロビン出演作が久々にヒットしたことが嬉しい。最近は不発ばかりだったから。
カウボーイ役でオーウェン・ウィルソンが出てますが、ベンとホント仲良いねぇ。
さくらん
♪育ってきた環境が違うから好き嫌いは否めない〜 でも、予期せず目のあたりにすると、
プチびっくり。本作を観終わり、センス良い作品に触れると気持ち良いなぁ、
と心地好く劇場を出ようとした時、女性20代二人組の会話が聞こえた。
「この映画、あかんなぁ。良いって人に勧める人、絶対おらんわぁ」「そやなぁ」
この女性が本作の映画評を執筆したら、毒舌辛口の酷評だろう。読んでみたい(^^;
衣裳やセットも含め、映像の色具合、そして映画全体のテイストが、ポップでキャッチー。
さすが写真家の蜷川実花監督。昭和の東映系“吉原”作品みたいな泥臭さは無い。
だから、濡場で菅野美穂や木村佳乃がセミヌードを見せるが、いやらしさを感じない。
本作をセンス良い作品に仕上げた、大きな要因のひとつは、椎名林檎の楽曲。
敢えて例えるなら、監督は違うが、林檎のPV作品『百色眼鏡』を長編化した雰囲気です。
ボビー
例えば、坂本龍馬をリスペクトした、新しい日本映画が作られたとします。
龍馬が主人公ではなく、暗殺された日、近江屋に居た人々のエピソードを描く群像劇です。
龍馬の存在は周知のものとして詳しく触れないし、完成度の低い群像劇です。
だとしたら、そんな映画、龍馬に関心のない一般的アメリカ人が観て、面白いか?
日本人が、本作『ボビー』を観る感覚、そんなニュアンスなんだなぁ(^^;
ロバート・F・ケネディの人柄、どんなことを唱っていたか、周知のものとして物語は進む。
まあ、生前のモノホン演説映像が挿入されるので、多少は分かったりもするが、
何がつまらないって、群像劇の部分が暖簾に腕押し状態。豪華キャストにも関わらず、
『マグノリア』や『クラッシュ』みたいな、目からうろこ的“巧さ”は無い。
良さげな映画風の匂いは出ているが、食するとたいして旨くない、微妙な作品。
ハッピーフィート
ピクサー、ドリームワークスなどのCGアニメ映画、全作品を観てる訳ではないが、
どれもこれも似たり寄ったりの設定や内容で、最近の作品は五十歩、百歩。
技術の問題?いや違う、ストーリーが問題なんです。つまり、脚本の段階で魅力なし。
僕はピクサー作品が大好きですが、最近の『カーズ』は駄目でした。プチがっかり。
そんな中、本作は久々の大当たり!目から鱗の大盛り上がりフェスティバ〜ル!
まず、ペンギンたちが歌うシーンが沢山。まるでミュージカル、楽しくて幸せな気分。
いきなりプリンス「Kiss」を歌いだしたのには感激しちゃいました。
そして何よりストーリーが良い。ペンギン世界の話だと思っていたら、後半は意外な展開。
じっくりココロに訴える部分と、アクション的な見せ場の、抑揚までもが巧い。天晴れ。
自分の居場所を探してる人、自分の非凡さに悩んでる人、是非ご覧ください。
ドリームガールズ
ミュージカル、なんでもかんでも至上主義!ではないけれど、センスの良い作品は好き。
例えば『ムーラン・ルージュ』や『シカゴ』は大、大好きで〜す。
『シカゴ』みたく、舞台版とは違う、映画ならではの工夫演出があれば最高なのだが、
本作は、そこまでの特別感は薄い。“いかにもミュージカル”の領域です。
だからって悪い訳じゃないんだよ。豪華で楽しくて素晴らしい!作品であることは確か。
歌って踊ってミュージカル!の場面を観てると、楽しくて泣けてきちゃいます。嬉し涙。
ただ、ストーリーが辛いねぇ。人間の嫌な部分を、悪意的・偽善的な本質を、
もろ見した気分で、後味が悪い。ミュージカルの楽しさと、話のつらさでプラマイゼロ。
しかし、エディ・マーフィは久々に良かった。エディ・マーフィと思えなかった(^^;
物凄くエネルギッシュに、生き生きと、落ちぶれていくスター役を熱演してます!
となり町戦争
原作未読。だから、映画ならではの脚色に関して、知ったかぶりで書くのは無責任です。
でも、少しだけ立ち読みしたこと、人からの感想、映画観賞経験で蓄積した“勘”を元に、
自信あり気味の推測で断言します。本作、駄目です。原作の面白さを台無しにしてます。
“実感はなくても戦争は起きてる”という視点で、町と町とが開戦する斬新な設定は見事。
原作は素晴らしい。映画化となると、文字だけでは伝わりにくい“恐怖”や心理描写を、
巧みに演出して映像化するのが重要ですが、本作、原作の“良さ”すら露出できてない。
特に顕著なのは、センスの悪いチープなユーモアを随所に散りばめていること。
例えるなら、スイカの甘さを際立たせる塩の役目になっていない。味を潰し合ってる。
それ故に、感動へ導こうとするラストシーン近辺で、観客は置いてきぼり状態。萎えます。
原作者の三崎亜記が可哀相です。怒ってないのかなぁ?原作は面白いだろうはず。
バブルへGO!タイムマシンはドラム式
最近、全面的酷評だけは書くまい!と思っていたけど、我慢できないので書きます。
本作、脚本も映像もスカスカです。バブル崩壊を阻止するためにタイムスリップする、
という設定は愉快だが、ストーリー展開が浅く、工夫も巧さも垣間見れない。
アイデア一発勝負!って印象が拭いきれず、骨組みも肉付けもプロの仕事と思えません。
タイムスリップのこと御座成りに、バブル時代の風潮を面白可笑しく紹介してるだけ。
しかも、取って付けたような、あざとい“タレントネタ”はセンス悪く、痛々しくて笑えない。
本作の立ち位置、ポジションが分かりません。ホイチョイプロ、わざと?と疑いたくなる。
本広監督『サマータイムマシン・ブルース』の爪の垢でも煎じて飲んでください。
広末涼子の扱い方も微妙で、まるで売出し中のアイドルか?みたいなニュアンス(^^;
水着姿あり、変なダンスあり、いまさら若手のノリ。この映画、へなちょこです。
ユメ十夜
複数の監督が撮った短編、が集まったオムニバス映画…と言えば、
『Jam Films』を思い出します。7人の監督の7つの作品。
その中で、2、3話でも面白かったら、観た甲斐ありなのに、全部良かった。
でも、本作は監督自らの原案じゃなく、夏目漱石『夢十夜』という点で、ちと趣きが違う。
なんせ原作がシュール、平たく言うと“意味不明”だから、その映像作品集も奇妙奇天烈。
凡人には理解しがたい映画に出来上がっています。クリエイター系の人が、
自分ならどう撮る?この監督はこんな映像にしたか!みたいな視点で観ると楽しいだろう。
そんな中、僕は、サダヲ主演の松尾スズキ監督作と、緩い“間”が特徴的な山下敦弘監督作と、
『ババアゾーン』『クロマティ高校』のノリで押し切る山口雄大監督作に笑ってしまった。
2、3話でも面白かったら、観た甲斐あり、ということで、めでたしめでたし。
ラッキーナンバー7
すごい豪華なキャスティング。お祭りだね。なのに、宣伝に力が入ってない印象を受けます…
つまり、それは、役者陣が魅力的なだけで、ヒットしなさそうな内容だから?
単純にそう思っちゃうよね?そんな気持ちで観賞したら、あれ?なかなか面白いじゃん。
犯罪モノ、所謂、クライム・サスペンスで、不思議な話展開の末、意外などんでん返し。
まあ、『スナッチ』ほどスタイリッシュじゃないけど、それに近いニュアンスの作品。
巧い脚本だと頷けます。ただ、近年は“意外な結末”の映画が多い為、
ちょっとやそっとじゃ驚かない免疫が出来てます。そういった意味で、新鮮さに欠けるかな?
まあ、でも、そこら辺の“つまんない”映画を観るよりは、充分に楽しいです。
ネタバレを書くつもりはないですが、本作の原題は『Lucky Number Slevin』です。
邦題は“7”ですが、実は“スレヴン”だということ、知っておいてもいいんじゃない?
幸せのちから
父ちゃん、息子のこと好き。でも、父ちゃん、収入ない。貧乏。母ちゃん、愛想尽かす。
母ちゃん、出ていく。それでも、父ちゃん、息子のこと好き。父ちゃん、頑張る。
かなり頑張る。我慢して我慢して、努力して努力して、すっごく頑張る…そんな話。
予想不可能な奇抜な展開ではなく、まるで『男はつらいよ』を観るが如く、
分かり切った王道の内容なのに、それでも涙腺は緩んじゃう。
「ベタな映画には負けないぞ!」と斜に構えていても、気持ち良くのめり込んでしまう。
ベタでも斬新でも、登場人物の心境変化や、心理描写に無理があると、興醒めするもんだ。
でも、本作はそういうところが巧く描かれているので、心地好く観賞できる。
ウィル・スミスが実の息子と共演してること、フィクションの足かせになるんじゃないの?
と心配だったが、リアル父子だからこその息ぴったり具合が映画を盛り上げます。
どろろ
2003年、北村龍平監督作品、上戸彩主演『あずみ』を観た時、衝撃だった。
原作の内容がおもしろいのも勿論だが、実写映画としても良く出来ていた。
そのせいで、それまで気にもとめてなかった上戸彩の高感度が、僕の中で一気に上がった(^^;
さて、本作を観て、全く興味ない柴咲コウ、いつも同じ演技の柴咲コウ、
の僕的高感度が上がったか否か?答えは“NO”です。ということは…
本作つまんなかった?そういう単純な方程式だと捉えていいですか?答えは“NO”です。
矛盾した前フリですみません。いや、期待してなかったのに、本作、なかなかの美味です。
百鬼丸が化け物と闘うアクションシーンは見応えありで、その要素が多過ぎず少な過ぎず、
絶妙なバランスで構成されています。雰囲気バッチリの映像も◎です。
このテイスト・キープで、『西遊記』みたく、連ドラ化してほしいなぁ、と思ったりしました。
ディパーテッド
本作はリメイクで、元ネタは、あの見応えのあった『インファナル・アフェア』だ。
それをレオナルド・ディカプリオとマット・デイモン主演で、ハリウッド映画化。
ジャック・ニコルソンも出てる上に、監督は、男くさい作風の長まゆ毛スコセッシ。
元ネタの話そのままだし、全米でも高い評価…間違いないでしょう。観て間違いない。
ジャニーズの誰かを主演にしたドラマは視聴率12、3%は間違いない、くらい間違いない(^^;
ずっしりとした重圧感です。ただ、ハリウッド・リメイクといえば、
金を掛けて派手にし、展開を簡略化したり、よりスタイリッシュに仕上げるものだが、
本作はなんだか「逆?」な印象すらある。元ネタみたいな凝った構成にせず、
話を頭から順を追って見せてくれる。ある意味、本作の方が泥くさい。
主要キャスト、皆が格好良く見える、なかなかの力作。でも僕は元ネタ三部作の方が好き。
それでもボクはやってない
本作は、おもしろい!でも“おもしろい”という言葉にはいろんな側面があるので、
その思惟を明らかにする必要があります。本作は、リアルな裁判、その内情を描きつつ、
過剰でも不足でもなく、娯楽映画として成立している点が興味深く、おもしろい。
僕はマニアではないが、かつて一年くらい、裁判傍聴に通っていました。
テレビドラマや映画の、フィクションでしか見たことがなかった裁判ですが、
実際のものを傍聴して、様々なことに驚きました。形式的な裁判の進め方、その遅さ、
次回公判日の決め方、刑事の乱暴な取り調べ、弁護士が下手だったこともあります。
そんな実情を、この映画は見事に端的に描いています。かなり現実味あります。
しかも、一般人には知られない“裏側”も垣間見ることができます。
とにかく、裁判に興味ある方は、裁判傍聴に行くか、あるいは本作をご観賞ください。