2009年の映画評



アバター
この映画評は“悪ふじの”が責任を持って、無責任感覚で執筆させて頂きます。
構想14年だとか、2億ドル使って作ったとか、バンバン言ってっけどさぁ、
客はそんなの関係ないんだよ。他の映画と同じように料金払って観るだけ。
『カールじいさん…』や『サマーウォーズ』の方が圧倒的に面白いの!
いや確かに“映像革命”つって、常に奥行きのある3Dは見応えあるけどさぁ、
重たい変な眼鏡掛けさせられて二時間半以上も苦痛だわ。マジだるい。
重いと言えば、ストーリーも重いんだよ。侵略戦争でしょう、これ?
反戦がテーマだとか、人間の利己的なとこを描く、そういう映画はありだけど、
画期的な映像で、いきなりそんなの見せられちゃったら、興醒めするんだよ。
こんな超大作より、ウディ・アレンとかビリー・ワイルダーの作品の方が好きだなぁ。


ジュリー&ジュリア
物語の冒頭に“二つの実話に基づく”と表示されます。その通り、一本で二本立てです。
1949年、人生に迷い、料理に救われた、ジュリア・チャイルドという伝説の料理研究家。
2002年、人生に迷い、ジュリアのレシピ本に救われた、ジュリー・パウエル。
全く違う時代の二つのお話、二人の女性。それらが並行して交互に描かれる。
これ、意外と傑作。秀作。とても素晴らしい作品です。いや、実に美味しい映画です。
ノーラ・エフロンの脚本がさり気なく巧くて、難しい構成を美しく紡ぎ上げます。
メリル・ストリープ扮するジュリアのキャラクターが可笑しくて、ユーモアがあります。
クスクス笑えて、感情移入して、涙もこぼれる。悲しくて泣くのではない“幸せ”な涙。
夢を諦めて、退屈な毎日を過ごし、新しいことを始め、いつしか自己実現する…
ココロに染み入るサクセスストーリー。とにかく温かい映画です。冷めないうちに召し上がれ。


カールじいさんの空飛ぶ家
冒険家のニュース映画に胸ときめかせる少年カールは、活発で冒険好きの少女エリーと出会う。
秘密基地で冒険を語り合い、カールはエリーの夢を叶える約束をする。やがて二人は結婚し、
風船を売り、幸せに暮らす。エリーが子供を産めない体だという事実に落ち込んだりもするが、
それでも夢の為に貯金をしながら仲良く共に生きる。しかし、年老いてエリーが病に掛かり、
冒険の夢を叶える前に先立ってしまう。カールじいさんは一人ぽっちになる。
…ここまでの話が映画の冒頭10分で、台詞も無く音楽のみのモンタージュ形式で描かれる。
この時点で観客は本作に一目惚れし、作品に恋をした瞳で本編を観ることとなる。
まず感動から始まり、巨大鳥や喋る犬たちが登場する冒険劇に興奮し、ユーモアに笑う。
そしてまた涙する。喜怒哀楽全ての感情が心地好く揺さ振られる要素が盛り沢山。完全燃焼。
別れの意味、思い出の位置付け、人生に必要なもの…本作は大切なことを教えてくれる。


イングロリアス・バスターズ
和食?洋食?中華?それとも菓子?なんだか訳の分からない食べ物が目の前にあったら、
気持ち悪くて口にしないし、フードとして受け入れたくもないだろう。
でも、めちゃめちゃ美味しかったら認めざるを得ないし、なんならハマってしまう。
つまり、このタラちゃん映画は、得体の知れない美味作なんです。
和食だと感じながら噛んでいたら洋食に変わり、麺だと思ったらスイーツだったり、
とにかく、既成の感覚では捉えられない斬新な映画なのです。見事!
それ故に、意図的か無意識なのかは問わず、生粋の保守派には受け入れがたい内容です。
タラ作風が好きな人、あるいは映画通が観て楽しむ“映画が観客を選ぶ”タイプの作品。
どの場面もいちいち見応えがあり面白いが、タラ映画特有の良い意味でのB級感が薄く、
かなり洗練された仕上がりという印象が、個人的には若干残念だった。


脳内ニューヨーク
本作の監督チャーリー・カウフマンは『マルコビッチの穴』の脚本家として有名です。
例えば、カウフマンが脚本を書いた2003年日本公開の『アダプテーション』という映画、
ニコラス・ケイジ扮するところの主人公が脚本家チャーリー・カウフマンで、
『アダプテーション』のシナリオを依頼されて、執筆作業に困惑するというメタな話。
架空の双子カウフマンが登場したりして、かなり込み入った構成になっていました。
本作の難易度は『アダプテーション』の比ではない。ウルトラZ級のハイレベルな煩わしさ。
主人公の劇作家がNYの街の中で実生活を演劇作品化しようとする話ですが、
この説明ですら既に間違いなのかも知れない…と懐疑せざるを得ない。かなり解釈が困難。
どこまでが現実で、どこからが虚構?そもそも冒頭から全て幻覚なのか?正解は分からない。
観客の後味は確実に“悪い”だろうが、難易度最高点の傑作として称賛したい。


曲がれ!スプーン
原作が劇団“ヨーロッパ企画”の舞台、そして監督が本広克行、とくれば誰しも誰しも、
『サマータイムマシン・ブルース』のおもしろさを期待するでしょう。
真っ先に言います。それは期待し過ぎです。そこまで想いを抱くと若干がっかりします。
ドタバタ劇として少し物足りなさを感じるし、クライマックスの盛り上がりも消化不良気味。
でも、駄作ではないんだよ。そこら辺りの映画と比べれば断然おもしろい。
舞台版は喫茶店に集うエスパーたちの話がメインで、映画は長澤まさみ演じる番組ADが主役…
そういう違いが作品の本来のおもしろさを損なっている原因かも。
フォーマットの相違が問題な訳で、長澤まさみの演技が悪いということではありません。
女優の魅力はコメディーでこそ表れる!と思うので、本作の長澤ちゃんはすごく良い。
映画よりも舞台で観るべき作品。YUKIの主題歌は素敵。好きです。


スペル
監督サム・ライミは「ホラーとユーモアは関係がある…」みたいな発言をしています。
まさにその通りで、“笑い”は緊張の緩和ですし、“恐怖”は常に緊張状態を伴います。
だから、ホラー映画は“笑い”に適した条件を兼ね備えた、極上のご馳走なのです。
サム・ライミはちゃ〜んと分かった上で作品を撮っているんですねぇ。憎いよこのぉ!
コメディタッチのホラー映画でもなければ、作為的にふざけた作品でもない。
本作はある意味で正統派な、笑えてしまうホラー映画なのです。ずばりセンスが良い。
老婆が逆ギレして襲ってくる!噛みつく!入歯が飛ぶ!鼻血がブー!嘔吐物がシャーッ!
嗚呼、おもしろい。怖くて愉快。愉快で怖い。サム・ライミ良いですなぁ。
何を求めて観るのか?如何で、「つまんな〜い」と片付けてしまう人も多いかも知れません。
まあ多分、濃い映画ファンなら存分に楽しめるはず。あなたは映画マニアですか?


母なる証明
「精神的にも体力的にも万全な状態の時にご観賞ください」と注意を促したくなります。
ホラー映画だから?いいえ、違います。我が子を思う母親の話です。でも、衝撃です。
『殺人の追憶』『ほえる犬は噛まない』のポン・ジュノ監督作品だから、
センス良い映画だろうと安心して観ていたのだが、冒頭の“踊”シーンに戸惑い、
中盤のストーリー展開にも、暖簾に腕押し感覚の物足りなさを感じた。しかし、ラスト…。
信じられない程の結末を描いてくれる。ホラー映画なんて比ではない。恐ろしい。悲しい。
知的障害者の息子。殺人犯として逮捕される。無実の罪を着せられた息子を助けたい。
母親は自ら事件を捜査する。そんなベタなミステリー設定だが、物語は凄まじい結末へ。
オチだけではなく、いちいち演出が巧い。もちろん役者陣の迫真の演技も見応えがある。
よくもまあこんな話を映画にするなぁ!と良い意味で放心状態。後味は悪いが秀作です。


マイケル・ジャクソン THIS IS IT
上映時間111分。映画としては妥当な長さ。でも、もっと観たい!衝動が止まなかった。
自分がリハーサルに参加している気分、いや、新作公演をVIP席で体感している錯覚に陥る。
単なる舞台稽古の垂れ流しドキュメントではなく、可能な限りの完パケ状態で、
コンサート演出を見せてくれる。公演で使用されるはずだった撮り下ろし映像も肝要で、
「They Don't Care About Us」は数百人のダンスシーン。「Thriller」は最新版PVの装い。
そして往年の映画スターと合成共演した「Smooth Criminal」はギャング・ムービー。
圧倒的なパフォーマンスに見惚れ、笑顔なのに涙が溢れる。
演奏アレンジに指示を出したり、スタッフと談笑するマイケル。その姿を観られるだけでも感動。
リハーサルなので全力のマイケルではないし、ライブDVDの特典映像の様にも思えるが、
ロンドン公演が幻となった今、これが本編なのだ。十二分に楽しめるエンターテイメント。


川の底からこんにちは
大福は甘い。梅干しは酸っぱい。当たり前のこと。歌詞、絵画、映画、その他もろもろ、
楽しいことを明るく描いたり、辛いことを暗く描くのは、あまりにも普通です。平凡。
しかし、陰と陽で言うならば、人間の、人生の、陰の部分をコミカルに描く石井裕也監督。
実は人間の陰はそのままで充分にコミカルなんです。その“可笑しさ”を確実に捉え、
きっちり映画に昇華させる、ハイセンスな石井裕也の作品は非凡です。大好き。
個人的なことだが、東京国際映画祭で『君と歩こう』を観て、石井作品は“ご馳走”だと気付き、
そして運命に導かれるかのように、立て続けに本作と出会いました。嬉しい限り。
「私、中の下くらいの女なんです…」と言う主人公。ネガティブゆえのがむしゃらなポジティブが面白い。
台詞がいちいち笑える。だから全ての場面が笑える。満島ひかりは今一番注目すべき女優です!
今回はPFFでの上映だったが、こういう作品が劇場にて一般公開されることを切に願う。


14才のハラワタ
♪仕事も夢も恋愛も思い通りいかない毎日、人生は厳しいことばかり…
そんな元も子も無くなるような歌詞が綴られた名曲がございますが(苦笑)、
大人は辛いことが沢山あります。いや、老若男女問わず!です。
狭い世界範囲の中での逃げ出せない厳しさ、という意味では、むしろ十代の方が辛いかも。
そんな、決して綺麗事では無い、14才の女のコ、原田ワタルの日常を描いた短編映画です。
“14才の暴露本”みたいなエピソードが並びますが、それを特に解決するでも無く、
不平不満を愚痴るでも無く、かといって“救い”が全く無い訳でも無い。
心地良く、まったりとした空気感で魅せてくれる内容になってます。こういう作品、好きです。
“ハラワタは「大丈夫だよ」って、そっとそばにいる”というコピーにも癒されます。
主演の長野レイナも、栗コーダーカルテットの音楽も、19才の監督さんも、みん な素敵です。


君と歩こう
東京国際映画祭、数日間のラインナップから観たい作品を選んだ訳ではなく、
この日、この時間しか、自分の予定が空いてない…という理由で、予備知識も乏しく、本作を観賞。
偶然は必然!そんな絵空事を叫びたくなるくらい、この映画と出会えて嬉しい!幸せ!
人生の楽しみが、ひとつ増えました。“石井裕也監督作品を観る”楽しみ。
本作は、田舎の女教師と生徒が駈け落ちする、という話で、これ以上のストーリー説明は不要。
馬鹿馬鹿しくもシュールで小粋な会話を楽しめる秀作です。どの場面も、いちいち面白い。
登場人物の言動、そしてその元となる彼らの発想が可笑しい。ずっとクスクス笑えます。
低予算の製作費、たった二週間の撮影期間でも、こんな素晴らしい映画が出来上がる!
人間の愚かな部分、醜いところに焦点を当て、人生の機微をコミカルに描く。且つ、切ない。
そんな、臭いモノに蓋をしない、石井監督の作風が大好きです。スタンディングオベーション!


非女子図鑑
コミックで読んだらめちゃめちゃ面白いギャグ漫画でも、実写版で映画化した場合、
役者陣のテンションやセリフの“間”が悪くて、全然笑えない!ということがあります。
本作、漫画が原作ではないが、映画の出来としては近いニュアンスを感じます。
個性的な女性を描いた、六つのショートムービー集なので、中には面白いものもあるが、
全体的には消化不良気味。笑えないコントを映像化したみたいな内容です。
「設定が奇抜だから、演出次第でもっと笑える作品に成り得るのになぁ」と、
悔しい思いで観なければならない話がほとんど。嗚呼、残念無念。
でも、それぞれの主演女優の演技は見応えがある。ただ闘いたいだけの山崎真実、
女に飽きた片桐はいり、混浴マニアな江口のりこ、みんな魅力的です。
中でも、最終話『死ねない女』の仲里依紗は抜群で、今後もコメディエンヌとしての彼女に期待したい。


クヒオ大佐
例えば、自分が古美術の収集家だとする。期待せず入った骨董品屋で意外な掘り出し物を見付ける。
そんな時の感激はひとしお嬉しいだろう。そういうニュアンスなんです、本作。
日本人なのに米軍パイロット・クヒオ大佐と名乗る主人公、そして彼に騙される女性たち、結婚詐欺の話。
観客はクヒオ大佐を憎むべき存在だと思わないし、被害者に感情移入して傷心もしない。
極めて心地良い“悲しさ”と“切なさ”を感じ、良い作品を観たぁ!という気持ちになる。
コミカルな演出、登場人物の間抜けさ加減、役者陣の魅力も含め、構成要素のバランスが絶妙。
そして終盤の、クヒオ大佐が幼少時代を語る場面は、不覚にも泣けてしまう。
冒頭から始まる、日米関係を皮肉ったストーリー背景も巧く本筋に効いているし、
さすが、『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』の吉田大八監督はセンスが良い。
女優・満島ひかりも要注目だし、クレイジーケンバンドの主題歌も楽しい。


空気人形
製作予算と時間、手間暇たっぷり費やして撮った、ペ・ドゥナのプロモーション映像です(苦笑)
というのが過言ではないくらい、彼女の魅力が余すところなく画になってます。
本作、とにかく驚きます。おもしろ可愛いラブファンタジー!なんて思って油断して観ると、
確実にココロに怪我しちゃいます。予想以上にエロ。予想以上に重た〜い内容です。
コスプレのペ・ドゥナ。全裸のペ・ドゥナ。エッチなペ・ドゥナ。とろとろとろけます。
勿論、エロいだけの映画ではなくて、是枝監督が描く“現実の厳しさ・辛さ”が満載。
中が空っぽな空気人形と、人間の虚無感・孤独感を巧く重ね合わせて話が進展します。
象徴的に構成された女性たちの群像劇も、きっちりと切ないです。
観た後にいろいろ考えさせられる映画は苦手!という人にはお薦めしませんが、
でも、心地良い観賞感は味わえます。空気が抜けるペ・ドゥナは必見です。


20世紀少年<最終章>ぼくらの旗
ウォシャウスキー兄弟の『マトリックス』は四年もの長いタームで劇場公開された三部作だった。
一作目はストーリーの斬新さにとにかく驚ろかされた。衝撃的だった。
二作目も見応え充分で見所の金太郎飴状態だったが、繋ぎっぽい感覚がもどかしい。
そして三作目は特に抑揚が無く、終末への過程を静かに見守る様な内容だった。
『20世紀少年』全てを観終えて『マトリックス』を思い出した。三部構成の印象が似ている。
前二作よりスピード感が失速する最終章は、明らかに[解答編]の趣き。
広げた風呂敷を畳むかの如く「実はあの時こうだった」みたいな登場人物の説明台詞が多い。
終わり良ければ全て良し!と言わんばかりに、ただただ象徴的にエンディングが小綺麗で派手。
が、ストーリーの結末そのものは意外と淡泊で、知ってしまうと「あっそう」と興醒め。
美味しい洋食屋の厨房を覗き見すると、実は冷凍食品をチンしてただけだった…そんな落胆(苦笑)


しんぼる
本作について具体的なことを書こうと思うと必然的にネタバレになってしまう。
未見の人に“観賞の参考”にして頂きたい映画評ですから、バレない程度に気遣って執筆します。
松本人志の前作『大日本人』は解釈の仕方次第で賛否両論だったが、
今回はとても分かり易い内容だと言っていい。観客の見解はまず一致するだろう。
しかも小ネタ・ギャグに関しては、意図的に“ベタ”なので、老若男女が笑える。
ま、厳密に言うと、笑えるか笑えないかは、“笑おう”という意識があるかどうか?です(苦笑)
映画のセオリーを無視して、と言うか、セオリーを逆手に取り、わざと逸脱する展開法。
アイデアとしては面白いです。発想の勝利。ワン・アイデアのみの映画ですけど。
ただし、オチへと向かう終盤のくだりは“分かり易く”描き過ぎていて興醒めです。
仮に、海外の全く知らないコメディアンがこの映画を作ったのなら、きっと僕は笑わない。


キラー・ヴァージンロード
初監督作品って、頑張っちゃいますよねぇ。気負いますよねぇ。なんとなく共感 します。
だからこそ、「この映画、つまんな〜い!」と簡素な言葉で片付けたくはない。
細かく計算されたカット割り、コミカルな演出、突然ミュージカルな場面、すごく良いです。
舞台演出をされている岸谷氏だからこそのセンスも巧く画面に活きてます。
怒濤のストーリー展開で、ジェットコースター級の娯楽作品にしたい気持ちも分かります。
でもね、でもね、お客さんが乗車する前にジェットコースターが出発した感じが否めません(苦笑)
冒頭からハイテンションなノリで、お客さんは映画に入り込めず置いてきぼり。
どんどん加速していく作品のモチベーションに観客は追い付くことが出来ません。
終始、作品と観客の距離感が埋まらない空気が劇場に漂うでしょう。
“今年の映画ベストテン”に誰もが11位と挙げたくなるような惜しい作品です。


BALLAD 名もなき恋のうた
『ドラゴンボール』『ゲゲゲの鬼太郎』『デビルマン』『忍者ハットリくん』『タッチ』などなど、
明らかな失敗作の存在も踏まえて、アニメの実写映画化は難しい。
なのに何故?今?『クレヨンしんちゃん/嵐を呼ぶアッパレ!戦国大合戦』に挑戦する?
アニメと全く違ったアプローチで作り上げる演出なら、独自性があって高く評価するが、
本作はコピー同然のストーリー設定で、原作を忠実に再現した展開になっている。
だから、しんのすけらしき少年が主人公として登場する冒頭段階で、もう既に違和感たっぷり。
『クレしん』だから許される戦国時代への無根拠タイムスリップも、
見知らぬ少年がまんまやれば、ただの“くるくるパー”映画になってしまいます(苦笑)
草gくんの演技は熱くていい味出てるのに、作品自体は“?”が拭いきれない出来栄え。
本来の『クレしん…戦国大合戦』の方が数十倍おもしろい。あ〜こりゃこりゃ。


色即ぜねれいしょん
地味。地味な映画は僕の好物のひとつです。主人公は京都の男子校に通う高校生。
青春映画ですが、スポ根『ROOKIES』や、喧嘩上等『クローズZERO』みたいな血湧き肉躍る情熱は無い。
いや、ある。フリーセックスを求めて隠岐島へ旅行する情熱がある(苦笑)
クラスで目立たず、勉強もスポーツも秀でず、異性とロックへの煩悩に満ち溢れた、
そんな文科系男子の他愛もない抑揚もない悶々とした青春ドラマなんです。
十代の頃、辛い思い出ばかりという人は、容易く感情移入することができるでしょう。
みうらじゅん自伝的小説が原作なだけあって、凄まじく緩〜い内容です。いい感じ。
でも、もっと“笑える”シュールさ加減が欲しいなぁと思ってしまいました。惜しい。
同タイプの作品って意味では『グミ・チョコレート・パイン』の方が好きです。
あ、臼田あさ美が演じるオリーブ、ココロ奪われちゃいますよ。かわいい。


南極料理人
の〜〜〜〜〜〜〜〜んびりした映画。日常の憂さを忘れて“まったり”できる映画です。
山下敦弘作品や三木聡作品とはまた違ったタイプの緩さ具合。
観測隊員の調理担当として南極へ単身赴任して来た堺雅人演じる主人公。
ペンギンもアザラシも居ない場所で男8人だけの約一年半の生活。
だから、激しいエピソードはな〜んもありません。サスペンスもアクションも皆無。
他の映画と比べると、時間がゆったり感じます。まったり、ほっこり。味わい深い幸せ。
食事が唯一の楽しみ!という暮らしだから、とにかく料理が沢山出てきます。
美味しいシーンが山盛りなんです。観ていてすごくお腹がすいてくる。
くすくすっと笑えて、ちょびっと泣ける、南極発の食欲増進ムービーです。
余談ですが、キャストに表記されてる小出早織はワンシーンしか出てきません。


ナイトミュージアム2
痛快!爽快!面白い!…と書きたい気持ちいっぱい胸おっぱいですが、そりゃ無理です(苦笑)
“続編いまいちパターン”を脱することなくセオリー通りの出来栄え。
いや、前作より遥かにグレードアップした内容なんだよ。それは間違いない。
今回は世界最大級の博物館の展示物たちが動き出すから、規模は確実に大きくなってる。
でもなぁ“単なる遣り過ぎ”感がどうしても否めない。新たな面白さが全く見当たらない。
噛めば噛むほど味が出る!ではなく、もう味が無くなったガムを噛み続けてる印象。
前作の面白さは展示物が動き出す衝撃とベン・スティラーのリアクションだったけど、
それが周知の事実となった今、続編で大切なのはストーリー展開でしょう。
にも関わらず、取って付けたみたいな説明口調台詞で話を進め、しかも意外性ゼロの筋書き。
まだ沸いてないのに服脱いで風呂入っちゃったぁ!みたいな、ぬる〜い作品。


山形スクリーム
僕が映画評を執筆している理由は幾つかあります。そのうちのひとつを書き記します。
面白い映画を観たい。至福の時間を味わえる映画と出会いたい。至極当然の願いです。
しかし、その為には沢山の数の映画を観賞する必要があります。
となれば、自分のココロの物差しと合わない映画を観る率も否応無く増えてしまいます。
そこで、自分と似た価値観、信頼できるハイセンスな映画ライターが居れば…
つまり、そんな映画評を事前に読むことが出来れば、つまらない映画を観ないで済むだろう。
素敵な映画と解逅できる道標、選択肢の提案として書き続けています。で、本作についてですが、
とても期待していました。『罪とか罰とか』の成海璃子が主演で、竹中直人監督作品。
でも、もし僕が僕の書いた本作の映画評を事前に読むことが出来たとすれば、
「へぇ〜そっかぁ、なるほどね、じゃあ観に行かない」という判断を下したでしょう(苦笑)


ボルト
かつて、ジム・キャリー主演の『トゥルーマンショー』という名作がありました。
主人公トゥルーマンは生まれた時から全世界に生活が生放送されている。
フェイク・ドキュメンタリーで、友達も妻も街の住人たちも実は全員が役者。
しかし本人は放送されているとは知らず、現実の社会だと信じ込んで暮らしている…
そんな画期的なアイデアの“設定”を今さら下手にパクったのが本作(苦笑)
主人公ボルトはTVドラマでスーパードッグとして活躍するヒーロー犬。
それを現実だと信じていたが、ひょんなきっかけで本当の現実に飛び出して落胆する。
冒頭の劇中劇は見応えあるが、ボルトが真実を知って外界を冒険する展開がつまらない。
中心エピソードであるはずの旅部分が大切なのに、描き方が浅いし見所も無い。
もっともっと抑揚の激しい魅力的な内容に出来るはずなのに…残念です。


サマーウォーズ
すご〜い!なんだこれは?びっくりしたぁ!衝撃的!めちゃめちゃ面白い!し、幸せ!
最高級の素晴らしいエンタテイメント作品に出会うと言葉が稚拙になっちゃいます。
広大な土地と緑に囲まれた田舎の村が舞台。登場人物は親戚いっぱいの大家族。
となれば、ほのぼのとしたベタなファミリー物語だと思いませんか?ところがどっこい。
セカンドライフみたいな“オズ”という仮想現実の世界があって、
人付き合いが苦手で数学が得意な主人公・健二は夏希先輩に憧れていて、
そして世界的規模の危機が…うわぁ、説明できましぇ〜ん。とにかく観てください!
まるで不一致に見える“田舎とデジタル”が見事に融合して、信じられない程の気持ち良さ。
喜怒哀楽全ての感情が刺激され、興奮しまくり、観賞後は脱力で座席から立ち上がれなくなる。
今年の映画ベスト1、最有力候補!ちなみに声優初挑戦の桜庭ななみは注目株です。


サンシャイン・クリーニング
高校時代はチアリーダーでアイドル的存在だったが、現在はさえない日々を過ごす姉。
失敗ばかりで仕事が長続きしない妹。そんな姉妹が人生の起死回生として事業を始める。
殺人や自殺…事件現場の後始末、清掃作業を承るサンシャイン・クリーニング。
プロデューサー陣が同じということもあり、『リトル・ミス・サンシャイン』と同様、
悩み、トラウマ、劣等感など、人生の悲しみを抱えた人物ばかりが登場する。
我々は共感し、癒され、少しばかり勇気をもらう。心地良い観賞感。
でも、ストーリーの面白さは『リトル・ミス・サンシャイン』に劣る。
エピソードひとつひとつの笑える要素がいまいち弱い。物足りない。惜しい。残念。
とは言え、そんじょそこらのつまらない映画と比べれば充分に◎です。
僕はこういうタイプの作品、好きです。“ココロにバンドエイド”みたいな映画。


そんな彼なら捨てちゃえば?
こんな映画なら捨てちゃえば?という程のことはないが、ベタな恋愛群像コメディです。
群像劇と言えば、ここ数年は『マグノリア』とか『クラッシュ』など秀作がありますが、
本作はそこまで巧妙な仕上がりではない。わりと“どうでもいい”感じの作品(苦笑)
しかし、キャストは一流!何故こんな映画に出演したの?スカーレット・ヨハンソン。
意外とおいしい役だね!ベン・アフレック。まだラブコメですか?ドリュー・バリモア。
などなど、魅力的な役者陣をグラビア観賞的感覚で眺めるには丁度良い具合の作品です。
結婚したい!彼氏が欲しい!恋愛、恋愛、また恋愛!そんな内容。
“イイ男の選び方”みたいな特集記事が載ってる女性誌を読んで楽しい人向けの映画。
登場人物それぞれのエピソードがそこそこハッピーな着地点で終幕するあたりも含め、
とにかく“無難”で“どうでもいい”印象が否めない凡作中の凡作。


守護天使
例えば『ポケモン』は子供向き映画。『セックス・アンド・ザ・シティ』は女性向き。
本作は男性向きでしょう。ポルノ・ムービーだとかグラドル主演ってな意味ではないです。
男性の気持ちを描いていると言うか、男性だからこそ共感できる要素が色濃い。
故に女性は「え?だから何?」という感想を抱いてしまうかも知れません。
汚れていない女子を自分の手で守りたい!とか、そこに不随するヒーローへの憧れ!とか、
つまり、男性が無意識に求める全知全能感を思いっきりテーマの軸に据えた内容です。
ポッキーCMで変なダンスをしてた時の忽那汐里は、はっちゃけ感が苦手で印象悪かったけど、
本作は別人みたいな輝きです。好印象!ちなみに[くつなしおり]と読みます。
柄本明ご子息達はこういう狂気キャラが似合うね。と言うか、そんな役ばかりじゃないですか?
佐藤祐市監督作品ですが『キサラギ』の巧妙さは無いので、その辺りの期待は禁物です。


いけちゃんとぼく
いやぁ、久々にやられたなぁ。今年の好きな映画ベスト10に確実ランキングされます。
“いけちゃん”って得体の知れない生命体が少年の傍に居ること自体が不条理なのだが、
ちゃ〜んと理由があって、最後は広げた風呂敷を綺麗に畳んでくれます。
まあ、そのオチも完璧にファンタジーなので、中には腑に落ちない観客もいるでしょう。
映画の世界観に素直に入り込みさえすれば、ラストはホロリ泣いちゃう。気持ちいい。
少年の何気ない日常エピソードを描いた、映画的にはありふれた少年の成長記ですが、
カワイイいけちゃんがそこに居るってだけで魅力的な画になります。
センスの良い“笑い”も想像以上に満載で、いや、ちょい遣り過ぎ感は否めませんが、
とにかく、可愛くて面白くて“いい話”風のココロに染み入る佳作です。好きです。
蒼井優の淡々とした声優っぷりも素敵。そして地味な存在ながら蓮佛美沙子も良いです。


それでも恋するバルセロナ
※ A氏とB子の会話。
A氏:「ウディ・アレンの映画、好き?嫌い?癖あるもんね。嗜好が明確に二分するよね。
僕は好きだよ。アレン作品は何本も観てるし、作風を熟知してるから、本作も楽しめた。
慎重派の女性と行動派の女性が画面分割で登場し、第三者的ナレーションが始まった時、
一人の女性の喜劇と悲劇を描いた『メリンダとメリンダ』を思い出しちゃったよ。
とにかく、嗚呼、アレンらしい映画だなぁ!って感じ。ダメ人間のダメな恋愛(苦笑)
本作は映画賞で話題になった作品だから、予備知識も無く観に行く人が多いだろうけど、
ウディ・アレンのセンスを受け入れられない、相性が合わない人は不快に思うかもね。
アレンのどの作品が好き?僕は『地球は女で回っている』、『ブロードウェイと銃弾』、
『カメレオンマン』、『カイロの紫のバラ』、『アニー・ホール』、『泥棒野郎』、『ギター弾きの恋』・・・」
B子:「あのぅ、ウディ・アレンって誰ですか?」
A氏:「 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 。」


ラスト・ブラッド
セーラー服姿でおさげ髪、日本刀を振り回すチョン・ジヒョンと、
ヴァンパイア役の小雪を観る為だけの映画。…あ、映画評が終わってしまった(苦笑)
え〜、チョン・ジヒョンのハリウッド芸名はGianna Junです。
本作は香港・フランス合作映画です。原作は日本のアニメ『BLOOD THE LAST VAMPAIRE』です。
以上、バイバ〜イ!って、もう書くことないよぉ。この映画、どうせ誰も観ないでしょ?
邦画『片腕マシンガール』『カクトウ便』『制服サバイガール』とか好きな人はどーぞ。
ただし、ワイヤーアクションもCGも真新しさは皆無です。ストーリーも見事に浅い。
一般的な感覚、ココロに平凡な物差ししか持ってない人は観ない方がいいです、はい。
嗚呼、トンチンカンなB級映画、バンザーイ!僕はわりと味方だよ。
ジヒョンの殺陣アクションは『ICHI』の綾瀬より見応えあります。


お買いもの中毒な私!
映画を食事に例えます。愛情たっぷりのとても美味しい手料理もあれば、
豪華な食材を調達しつつも残念な味付けのフルコースもある。本作はマクドナルドのハンバーガー。
つまり、良くも悪くも無難で安全パイな作品。その対象となる本作はディズニー実写系。
つまり数年前で言うところのブエナビスタのロマコメです。映画通なら分かるよね?
秀作、佳作、あるいは駄作…そんな評価の範囲外って感じですね。
万人にウケる類の笑い。ベタな展開。程好く愉快に観賞できる。そしてハッピーエンド。
しかし、馬鹿にするなかれ。そういうタイプの映画の中で本作は“美味い”方です。
なぜ主人公が買物依存症になったのか?ファッション誌用のコラムが経済誌で通用するトリック…などなど、
わりと細かなところまで説得力が行き届いてます。
そういった意味では、単なるハンバーガーではなく、クォーターパウンダーかなぁ(苦笑)


ザ・スピリット
フランク・ミラー監督作品!と知った上で劇場予告編の画を観ます。
間違いなく『シン・シティ』のような面白さを切望してしまう。
しかし、本編を観ると、期待も虚しくズッコケます。『シン・シティ』の足元にも及びません。
アメコミの雰囲気を絶妙に映像化した“売り”は称賛するが、とにかく話がつまらな〜い。
原稿用紙1枚で片付くような内容を、「俺はどうして不死身なのだろう?」
という主人公スピリットの苦悩的モノローグだけで無理矢理100分に引き延ばしてる印象。
外見は良いけど、中身がない!まあ、今時のギャルみたいなものです。と書くと、
ギャルを敵に回してしまいますか?とりあえず謝っておきます。失礼しました(苦笑)
サミュエル・L・ジャクソンもスカーレット・ヨハンソンも出てるのに、ああ勿体無い。
コミカルな要素も全然笑えません。こんな映画よりも早く『シン・シティ』の続編が観たい!


インスタント沼
幸せです。本作を観て幸せなのだ。やっぱり三木聡監督の作品は良いよね!
ちなみに“やっぱり”の“ぱり”は地名ですか?「やっ巴里、三木聡監督の作品は良い」と書くと、
まるで渡仏経験ありありの小粋野郎なのだ。それはともかく、こういう映画が大好き。
24時間ず〜っと観続けていたい。ん?ちょっと待てよ。睡眠時間は別途必要だから、
数時間差し引いた時間を表記すべきか?てか、何だこの映画評?文字数半分が既に経過。
文字数制限は誰が決めた?私だ!おいらが自分に課した足かせなのだ。おいどんはMか?
いやいやSだ。隠れドSだ。S度が強いので普段は抑圧してます。それは内緒にしておこう。
とかなんとか、こんなデタラメを書き綴りたくなるような映画なんです(苦笑)
ゆる〜いシュールな作品で、クスクス笑いが絶えない内容。いちいち面白いです。
「沼」とか「水道」とか、シティボーイズが好きだからこそ余計に笑える、そんな自分が嬉しい。


天使と悪魔
バカを切り捨てるストーリー学園の落第生が続出した『ダ・ヴィンチ・コード』の続編。
だからと言って話が巧妙に繋がってる訳ではない。前作とは別の独立した内容なんです。
共通項はトム・ハンクス演じるラングドン教授が謎解きをするというフォーマットのみ。
だから前作を観てない人、または理解できなかったおバカさんでも、充分に楽しめます(苦笑)
しかも分かり易い。ミステリーというよりサスペンスに近い。ドラマ『24』なニュアンス。
下手な勘繰りをせず素直に観れば、二展三展するラストに驚いて、見事に騙されるでしょう。
17世紀、ヴァチカンから弾圧を受けた科学者らが秘密結社を創設。このご時世に復活し、
ヴァチカンへの復讐を始める…そんな親しみにくいストーリー背景が斬新だとも言えるが、
だからって特に素晴らしい出来栄えの作品ってこともない。これ本音でございます。
それより何より、トム・ハンクスの髪型が不自然な気がします。


チェイサー
パク・チャヌク監督の復讐三部作、例えば『オールド・ボーイ』とか、
ポン・ジュノ監督『殺人の追憶』など、韓国の骨太なクライム・サスペンスは見応えがある。
本作は韓国で実際にあった連続猟奇殺人事件を題材に描いており、
決して犯人当ての推理モノではない。観客は誰が犯人なのか分かっているし、
監禁されてる女性の安否も知ってる。それでも手に汗を握る緊張感が持続する。
残酷な場面もあり、それを含め「楽しい」と言うと、不謹慎だと叱られるかも知れないが、
見事に娯楽作品と化している。これが長編初監督の作品なのだから、びっくりくりっくり!
ただし、終盤の“救い”のないストーリー展開は観ていて辛い。歯痒い。
話的に後味が悪い気分と、秀作を鑑賞した心地良さが折衷して、得も言われぬ感情になる(苦笑)
ハリウッドでディカプリオがリメイクするらしいが、さて、オリジナルの出来を 超えられるか!?


GOEMON
だから、以前から口が酸っぱくなるくらい言い続けてるじゃーん!
CG多用して視覚効果凝り過ぎたらまるでアニメになるってさぁ。
だったら最初からアニメにしとけよ!ってツッコミ入るからね。しっかりしてよ紀里谷監督ぅ。
…とかなんとか偉そうな発言しちゃってスミマセン。言うだけ大臣です(苦笑)
映像のテイストは前作『CASSHERN』と似た感じ。これぞ紀里谷映画!ってかぁ。
そこが“売り”なんでしょうが、敢えて別に例えると和風『ムーラン・ルージュ』です。
無機質な画だと思うか、娯楽大作と解するか、観る者のセンス次第。
こういう映像重視作品は、逆にある意味ある反面、ストーリーが大切なのだが、本作は微妙。
信長暗殺の首謀者は秀吉で、なんだかんだ関わる石川五右衛門の過去の秘密とは!?…
というようなフィクション時代劇なのだが、薄っぺらくて安い印象は否めない。


バーン・アフター・リーディング
この監督の新作は公開されたら必ず観る!という僕の好きな監督ラインナップがある。
ウディ・アレンは言わずもがなで、日本人以外を挙げると、ミシェル・ゴンドリー、
ティム・バートン、ファレリー兄弟、パトリス・ルコント、パク・チャヌク、などなど。
そして本作の監督、コーエン兄弟。好きな監督の作品に、まずハズレは無いに等しい。
コーエン兄弟のスタイリッシュでコミカルな犯罪劇、大好物。ヨダレじゅるるぅ。
しかも話が入り組めば入り組むほど嬉しくなる。本作は実に嬉しいねぇ。
でいて、結果的にものすご〜くおバカな内容なので、嬉しくて悶え死にそうです(苦笑)。
「話が複雑で難しい!」とお嘆きの方もいらっしゃるかも知れませんが、
観賞後に何も記憶に残らない程のバカバカしさを堪能すればいいんです。そういう映画。
映画でも音楽でも何でもセンス良い作品に触れると幸福です。コーエン兄弟ありがとう!


グラン・トリノ
単純にハッピーエンドでも、内容がつまらなかったら興醒めです。
アンハッピーな悲しい終幕だとしても、センス良い作品だと幸せな映画観賞感がある。
例えばイーストウッド監督作『ミリオンダラー・ベイビー』は明らかに後者でした。
そして本作、ネタバレ微妙なレベルで敢えて言っちゃいますが、見事に後者です。
しかも巧い。巧過ぎる。巧いベクトル、限りなく最高点に近いと言っても過言ではない。
イーストウッド凄い。マニアック度が高い者のココロをくすぐりつつ、万人ウケもする。
イーストウッドだからこその周知のキャライメージを逆手に取って“笑い”も作る。
前半はほのぼのしたユーモアテイストで、観客の気持ちを緩めておいて、後半にドーン!
アンハッピーエンドかどうかは観る者の捉え方次第でもあります。
本作、イーストウッドの脚本ではないが、見事にイーストウッド作品です。


おっぱいバレー
藤野:いきなりですが、おっぱい見せてください。
先生:何言ってるの!早く映画評を書きなさい。
藤野:この映画つまんない。
    先生がメインで出てる映画『ハッピーフライト』『ICHI』『僕の彼女はサイボーグ』どれもイマイチ。
先生:でも、『ザ・マジックアワー』は面白かったでしょ?
藤野:先生のポジション五番手くらいじゃん。短編『たべるきしない』は良かったんだけどなぁ。
先生:『おっぱいバレー』のどこか駄目なの?
藤野:テンポとか演出が昭和テイスト。
先生:昭和が舞台の話だから仕方ないでしょう。
藤野:にしても、やり様があるはずだよ。監督のセンスが悪い。
先生:監督さんのこと悪く言わないで!
藤野:先生のキャラ設定も妙に軸がブレてた。
先生:私が悪いの?
藤野:ホリプロが先生を活かした仕事を分かってないんだろうな。
先生:映画評もういいです。
藤野:じゃあ、おっぱい見せて!
先生:バカ!


スラムドッグ$ミリオネア
スラム育ちの少年がクイズ番組に出場し大金を手に入れる?不正行為の疑いを掛けられる?
インドが舞台で主人公もインド人?アカデミー賞の作品賞を獲得しちゃった?
ううむ、一体どんな映画なんだろう?と不思議に思っていましたが、
観れば納得。一目瞭然。「なるほど!こりゃ巧い」とつぶやいてしまいました。
何が巧いかって言うと、映像や音楽も素晴らしいけど、やっぱり脚本でしょう!
主人公がどんな風に生きてきたか、番組に出る目的…ああ、ネタバレになるから書けない(苦笑)
とにかく、主人公の壮絶な生い立ちを目撃しつつ、張り巡らされた伏線を堪能してください。
観終わって幸せな気持ちを味わえます。粋なエンディングに拍手。
では問題。あなたは『スラムドッグミリオネア』を鑑賞しますか?
A.劇場で観る  B.DVDで観る C.絶対に観ない D.こんな映画評、読まなきゃよかった


ダウト -あるカトリック学校で-
“人生は辛い、でも明日は必ず晴れる”みたいな綺麗事で決着する歌って多いよね。
TVドラマや映画でもそうです。良い意味でも悪い意味でもそれがセオリーなのです。
そんな中、綺麗事で終わらない作品というのがたまにあって、僕はそういうの好きです。
まさに本作、まぁ〜るくストーリを収めないで、所謂、観客に命題を放り投げ系の作品。
各自それぞれ考えてみてくださいみたいな。そういうの苦手な人は観ない方がいいかも。
平たく言うと、カトリック学校を舞台に、神父とシスター、“疑い”について描く内容。
信仰の習慣が希薄な日本人は観ても分からない、という作品では決してありません。
人の心理作用、本質を端的に突いています。ただし、ストーリー的に明確な着地点は無い。
原作が戯曲なので、台詞劇として堪能すべき映画で、役者陣の演技合戦も見どころ。
特に終盤のストリープvsホフマンの言い争いは見応え満点。その迫力に手に汗握ります。


イエスマン “YES”は人生のパスワード
「ジム・キャリー、嫌いそうですね?」とよく訊かれますが、残念ながら大好きです。
確かに『Mr.ダマー』系の悪ふざけ感たっぷりのジムはあまり好みではないが、
シリアス気味のコメディで奇想天外なストーリーの中で観る彼は素晴らしい味わい。
例えば『トゥルーマン・ショー』や『エターナル・サンシャイン』は最高に好きです。
「それは作品の脚本や監督の良さでしょ」とツッコミ入れられたら頷くばかりですが…。
まあとにかく、本作は主人公が怪しいセミナーに感化される導入部が故、ちょいと引きますが、
とても分かり易いドリフコント的展開で、ベタ&コテコテな“笑い”を存分に楽しめる。
下手すりゃ勇気を得られるかも知れません。ポジティブな気持ちになります。
僕にとって本作の最大の魅力はヒロインを演じたゾーイ・デシャネル。キュートです。
今まで全く印象に残らなかった彼女だが、今回は嘘みたいに可愛い。なんで?なんで?


罪とか罰とか
ハズレ無し宝くじがあったらどうです?買います?そんなのありゃしないですが、でも、
ハズレが無い映画監督!は居ます。その当たりハズレ感覚は個人差があって然りですが、
僕にとってすべらない監督(邦画編)は、山下敦弘・三木聡・内田けんじ・中島哲也・三谷幸喜、等々。
そして忘れちゃいけない、そう、ケラリーノ・サンドロヴィッチ。
『1980』『おいしい殺し方』『グミ・チョコレート・パイン』、そして本作。百戦錬磨。
いやまあ興行的に当たってるかどうかは詮索すること自体が野暮ったい。僕的に当たり。
知的で且つシュールを熟知しているケラだからこその馬鹿馬鹿し過ぎる“笑い”の連続技。
我々のココロを丁寧に鷲掴みする緩〜いストーリー設定&展開。
始まっていきなり笑顔になったきり、最後まで口角が下がりません。幸せをありがとう。
成海璃子のコメディエンヌっぷりも良い。たまりません。こういう路線、またやってね。


ロックンローラ
例えばもし、この映画を作ったのが友達だったら僕は「面白い!」と贔屓目で褒めるだろう。
でも、あのガイ・リッチーの作品でしょう?賛辞は浮かびません。むしろがっかり。
デビュー作『ロック、ストック&トゥ…』、そしてブラピが出演した『スナッチ』、
どちらも巧妙に入り組んだストーリー展開で、かっちょいいクライム・ムービーだった。
当時は作品に見惚れながら「ガイ・リッチー、すげぇ!」と感心したことを記憶している。
マドンナと結婚して妙な映画を一本撮ったが、それはまあいい。無かったことにする。
が、前作『リボルバー』は何だ?以前の様なスタイリッシュ犯罪劇かと期待したら、
クライマックスはまるで『エヴァンゲリオン』状態で内容ブレまくり。(※エヴァを貶してる訳ではありません)
そして本作、ガイ・リッチー復活!てな宣伝文句に対してJAROにクレーム入れたくなる。
もう『スナッチ』みたいなセンス良い作品は観れないの?次回作に淡い期待を抱いて待ちます。


フィッシュストーリー
伊坂幸太郎の小説って面白いですよね…と言いたいところですが、読んだことありません。
でも、周囲で読んだ人が多いので評判は聞いてます。上々です。
原作が傑作だとしても、その映画が面白いか否かは観てみないと分からない。
『アヒルと鴨のコインロッカー』は良かった。『陽気なギャングが地球を回す』は残念だった。
そして本作、原作未読が故、どこからどこまでが脚色アレンジなのか定かではないが、
クライマックスの種明かし的映像演出は映画ならでは!だと分かる。
かつて売れなかったパンクバンドの曲を軸に、時代が異なる幾つかのエピソードが描かれる。
全く関係無い話たちが実は繋がってるという隠された事実を、最後に映像でドーン!
数珠繋ぎ状態でダイジェスト的に順を追って披露されるラストは鳥肌ものです。気持ちいい。
役者陣も登場人物のキャラクターと合っていて、非常に観心地のいい作品です。


チェンジリング
“イーストウッド監督作”表記は、ただそれだけで“見応えある秀作”という意味の保証書。
イーストウッド作品は安心して観ていられる。いつもどの作品も細部まで丁寧に描いている。
しかも本作の見所として挙げることのできる要因のひとつは、ストーリー展開の“凄さ”だ。
ワンエピソード、それ一色だけで構成するのではなく、何色ものカラーが散りばめられている。
行方不明の息子が帰ってきたら、見知らぬ子供だった…というミステリーは導入部に過ぎない。
それをきっかけとして、予想外の恐ろしい事態へと話は進展する。
焦点は決してズレない。むしろ確固たる軸が貫かれた上で構成されている。
良い意味で言うが、三本の映画を一日で観たかのような気持ちいい錯覚に陥る。
しかも、史実を描いた内容だということに衝撃を受ける。1928年のロスで実際に起きた出来事。
アンジェリーナ・ジョリーも好演で、アクション映画の彼女とはまるで別人です。


少年メリケンサック
“コバケン的”笑いが好きです。ケンコバではありません。ラーメンズ小林賢太郎です。
ある意味において“クドカン的”笑いとは相対的位置にあります。
だからクドカン作・演出の舞台作品はあまり好みではない。馬鹿馬鹿しい感じとか、
勢いで笑わせるタイプの“クドカン的”笑い。例えるなら、ちょっとシュールな吉本新喜劇。
ただし、クドカン脚本のTVドラマは好きです。他者が演出を手掛けるくらいが程良い。
で、脚本は勿論のこと、監督二作目となる映画『少年メリケンサック』はというと、
比較的、TVドラマのテイストに近い印象。“やり過ぎず、やらなさ過ぎず”です。
いや、クドカンだから良い意味で“やり過ぎ”な面白さはあります。
分かり易い小ネタの数々、絶妙な台詞の言い回し、グッドタイミングな“間”…笑えます。
後半、若干の中弛みは感じますが、そんなもん宮崎あおいのプリティーさで全然大丈夫。


ベンジャミン・バトン 数奇な人生
世間一般が高く評価してる映画だからといって、自分もその意見に合わせる必要は無い。
逆に、酷評されまくってる作品でも、個人的な観点でココロのツボを刺激されたならば、
その思いを恥じることなく、威風堂堂と「大好きだぁ」と言い放てばいい。
と、意味ありげな冒頭文を綴ったので、映画賞を幾つも獲得している本作のことを非難する、
前振りの様にも捉えられそうですが、いや、そんなつもりは毛頭ございません(苦笑)。
老人の姿から逆行して若返っていく、そんな馬鹿げたワンアイデアのみで作り上げる!
のも偉業だし、短い原作を観疲れする程の長時間の話に脚色した執筆力も素晴らしい。
ブラピやケイトが気持ち悪いくらい綺麗なお肌化する特殊メイク&CGも喝采したい点。
“人生の不思議”を描いた奥行きには共感できるが、あり得ない話のフォーマットなので、
映画と自分との距離感を埋められず、いまいち感情移入できませんでした。


ララピポ
『下妻物語』『パコと魔法の絵本』の監督、中島哲也が脚本を手掛けた作品!
監督は違うけど、見応えあるポップな作品を期待するっちゅーのが標準的ココロ。
が、しかし、中島監督作品ではないので、そんな期待はしちゃいけない。
とにかく下ネタで綴る94分。下ネタしかないんじゃないの?と感じるくらい。
まあそれはあくまで表面的なことで、“生きる”わびさびが存分に描かれています。
成宮くんがAVのスカウトマン的な役柄で便宜上の主演ですが、群像劇です。
分かり易く例えるならば、エロというフィルターを全面に活かした『マグノリア』みたいな印象。
致命的にモテないフリーライター。男性経験無く風俗譲にされる清楚なデパガ…
登場人物みんな悲しいです。辛い。目を背けたくなります。喜劇の装いをした悲劇です。
観終わって落ち込みますので、ご注意ください。大人の映画。子供には分かるめぇ。


20世紀少年 -第2章-
休日の前夜って「明日は休みだぁ!」という解放感で嬉しいよね。
例えば三連休なら、初日も二日目もすこぶるハッピィ。幸せいっぱい胸おっぱい(苦笑)。
でもねでもね、『20世紀少年』において三部作のふたつ目、真ん中は単純には喜べない。
だってまだ途中だもん。観終わっても終わらないんだよ。これ結構つらいです。
映画は興奮して楽しめるのに、なんだか気持ちは不完全燃焼。最終章を早く観せてちょーだい!
とか言いつつ、長〜く楽しめるから、こういうのもまた粋だったりします。
いやしかし壮大な話だね。漫画じゃん!と小馬鹿にしたい衝動と称賛が表裏一体でございます。
今回は前作より配役的な小ネタも顕著で、くすり笑える場面が多いです。
カンナ役で平愛梨も永らく振りの大復活を遂げ、実に喜ばしい。
でも僕的には小泉響子役の木南晴夏の方が印象的でした。今後、注目です。


レボリューショナリー・ロード / 燃え尽きるまで
本編が終わった瞬間、僕は笑った。コメディ映画ではない。むしろ悲劇。なのに笑っていた。
楽しくて笑う?あざけた笑い?愛想笑い?厳密に言うとどれも違う。
「サム・メンデス、よくもまあ、こんなすごい映画を作ったなぁ」という感嘆な笑い。
傑作と騒がれるに値する作品。それは観れば分かる。賞レースで健闘しているのも納得。
表向きは夫婦の倦怠を扱った映画…いや裏などない。殺人事件を推理するサスペンスも、
異星人が地球を征服するSF要素も見当たらない。特にエピソードは描かれていないに等しい。
夫婦がただただ口喧嘩しているだけの話と言っていい。言い争いの演技合戦は凄まじい。
そして様々な登場人物を介して、人の本質的な醜い部分を嫌というほど見せられる。
同監督の『アメリカン・ビューティ』も人生の空虚・敗北感、冷めた夫婦生活を描いていたが、
本作の“救いの無さ”はその比ではない。どん底に突き落とされます。


誰も守ってくれない
お、重い。重たい。暗い気持ちへと落ちていきます。厳しい。つらい。悲しい。
そんな色合いの作品。覚悟してご観賞ください。間違っても“楽しさ”を求めないでください。
数々のTVドラマを手掛けてきた脚本家の君塚良一が監督を務めていますが、
過去作『MAKOTO』も『容疑者室井慎次』も僕的には比較的“なし”です。
TV脚本は面白いけど、映画になると気負って力が入り過ぎた感が否めないし、
何より映像演出にセンス良さを感じない。観ていて居心地が悪いです。
本作は殺人事件の容疑者家族についての斬新なストーリーで、衝撃的な内容だし、
佐藤浩市・志田未来の演技も魅力的。それでもやはり、時折見られる演出のズレは興醒め。
特にネット社会の側面を映像化している場面、中年が無理して若者感覚に合わしてる?
みたいなノリが観ていて痛々しい。改めて言いますが、脚本は良いです。